高齢者等配慮対策等級5の基準と取得メリットを徹底解説

高齢者等配慮対策等級5の基準と知って得するメリットを徹底解説

等級5を取得すると、住宅ローンの金利が最大10年間も下がることをご存じですか?

この記事でわかること
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等級5の具体的な数値基準

廊下幅850mm・浴室短辺1,400mm・寝室12㎡以上など、設計時に押さえるべき寸法をわかりやすく解説します。

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金融・税制上のメリット

フラット35Sによる金利優遇、長期優良住宅との連携による減税など、お金に直結する情報をまとめました。

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等級4との違いと取得の流れ

等級4では不十分な理由と、住宅性能評価書の申請手順をステップごとに説明します。


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高齢者等配慮対策等級5とは何か:制度の概要と等級の仕組み

高齢者等配慮対策等級とは、住宅品質確保促進法(品確法)に基づく住宅性能表示制度の一項目で、住まいのバリアフリー性能を1〜5の5段階で評価したものです。平成12年(2000年)の制度創設以来、加齢や障がいによる身体機能の低下に対し、住宅がどこまで対応できているかを客観的な数値で示しています。
評価の視点は大きく「移動時の安全性」と「介助の容易性」の2本柱です。これが原則です。移動時の安全性とは転倒・転落を防ぐための措置を指し、介助の容易性とは車いすを使う介助者と被介助者がスムーズに動ける空間の確保を意味します。
等級は専用部分(住戸内)と共用部分マンション等の共用廊下・エレベーター等)に分かれており、専用部分は一戸建て・集合住宅ともに申請できます。

等級 移動時の安全性 介助の容易性(車いす対応)
等級5 転倒・転落防止に特に配慮 介助式車いす使用者が基本生活行為を特に容易に
等級4 転倒・転落防止に配慮 介助式車いす使用者が基本生活行為を容易に
等級3 転倒・転落防止の基本的措置 介助式車いす使用者への基本的措置
等級2 転倒・転落防止の基本的措置 なし
等級1 建築基準法の最低基準のみ なし

等級5が「最高水準」というだけでなく、「特に」という言葉が示すとおり、等級4との差は設計数値の一つひとつに表れます。つまり数字の差が安全の差です。
2021年の厚生労働省調査によると、住宅内の不慮の事故による死亡者数は年間約1万3,000人で、そのうち65歳以上が約9割を占めています。転倒・浴室事故が主な原因であり、バリアフリー設計の不足が背景にあるとされています。高齢者等配慮対策等級5の基準は、こうした事故リスクを構造的に下げることを目的としています。
参考:住宅性能表示制度における高齢者等配慮対策の全体像
住宅性能評価・表示協会「既存住宅における性能表示項目の解説 高齢者等への配慮」

高齢者等配慮対策等級5の基準:部屋の配置・段差・手すり・通路幅を詳しく解説

等級5の認定を受けるには、6つの評価項目すべてで基準をクリアする必要があります。ここでは各項目を具体的な数値とともに確認していきましょう。
① 部屋の配置
玄関・便所・浴室・食事室・脱衣室・洗面所のすべてが、特定寝室(高齢者等が使う主寝室)と同一の階にあることが必須です。等級4では便所と浴室のみの同一階配置で足りますが、等級5では食事室や脱衣室まで含む点が大きな違いです。
なお、ホームエレベーターを設置し、かつ等級3相当のエレベーター基準(出入口幅750mm以上)を満たす場合は、この階配置の条件が免除されます。意外と知られていない規定です。
② 段差の解消
日常生活空間内の床は、設計寸法3mm以下(仕上げ寸法5mm以下)の段差のない構造が必須です。例外として認められるのは以下の箇所に限られます。
– 玄関のくつずり段差(20mm以下)
– 玄関の上がりかまち(110mm以下、接地階は180mm以下)
– 居室の小上がり床(300mm〜450mm)
– バルコニーの出入口(180mm以下)
等級4では浴室の出入口段差(20mm以下)も例外として認められますが、等級5では浴室段差の例外が認められません。これが原則です。浴室への出入りをほぼフラットにする必要があることを意味します。
③ 階段の安全基準
等級5の階段は以下の条件をすべて満たす必要があります。
– 勾配:6/7以下、かつ「けあげ×2+踏面=550mm以上650mm以下」
– 蹴込み:30mm以下、かつ蹴込み板を設けること
– 段鼻(だんはな):突き出しのない形状(テーパー角60°〜90°)
– 回り階段等、安全上問題のある形式を使わないこと
一般的な住宅でよく見られる「けあげ200mm・踏面220mm」という設計は勾配が約6/7.3となり、等級5の基準を超えてしまいます。厳しいところですね。
④ 手すりの設置場所
| 設置場所 | 等級5の基準 | 等級4との違い |
|——–|———–|————|
| 階段 | 両側に700〜900mm高さ | 等級4は片側のみ |
| 便所 | 立ち座り用 | 同じ |
| 浴室 | 出入り・浴槽出入り・立ち座り・姿勢保持・洗い場立ち座りの5箇所 | 等級4は浴槽出入りのみ |
| 玄関 | 昇降・靴の着脱用 | 同じ |
| 脱衣室 | 着脱用 | 同じ |
階段手すりを両側に設置する点と、浴室内の手すりが5箇所必要という点が等級5の特徴です。これは使えそうです。
⑤ 通路・出入口の幅員
日常生活空間内の通路の有効幅員は850mm以上(柱等の部分は800mm以上)が必要です。出入口の幅員は800mm以上です。等級4では通路780mm・出入口750mmでよいため、等級5では70mm広い設計が求められます。
70mmは一見わずかな差ですが、介助式車いすで通行する際の余裕空間として大きな意味を持ちます。幅85cmの廊下は、縦に並べた一般的な雑誌(幅約21cm)を4冊分並べた程度の余裕があり、介助者が車いすの横に立って操作できる空間が確保されます。
⑥ 寝室・便所・浴室の広さ
| 空間 | 等級5の基準 | 等級4との比較 |
|—–|———–|————|
| 浴室(短辺) | 内法1,400mm以上、面積2.5㎡以上 | 等級4と同じ |
| 便所(短辺) | 内法1,300mm以上 | 等級4は短辺1,100mm・長辺1,300mm以上 |
| 特定寝室(面積) | 内法12㎡以上 | 等級4と同じ |
便所の基準に注目してください。等級5では「短辺1,300mm以上」という一方向の規定ですが、等級4では「短辺1,100mm・長辺1,300mm」と長方形を意識した規定です。つまり等級5では正方形に近いほぼ四方1,300mmのトイレ空間が求められており、車いすごと入って方向転換できるスペースを確保します。
参考:国土交通省が定める評価基準の詳細(PDF)
国土交通省「9 高齢者等への配慮に関すること」評価方法基準(PDF)

高齢者等配慮対策等級5と等級4の実質的な違い:設計上の独自視点

等級4と等級5は数値上の差はわずかに見えますが、実際の生活シーンでは大きな差となって現れます。これは設計者の間でも意外と語られにくい視点です。
最も実感しやすい差が「浴室の手すり本数」です。等級4では浴槽出入り用の1箇所だけで基準を満たせますが、等級5では出入り・浴槽出入り・浴槽内立ち座り・姿勢保持・洗い場立ち座りの計5箇所に手すりが必要です。これは後から追加できる改修工事で対応可能なものもありますが、壁下地の補強が必要なため、新築時に施工しておくのと後工事では費用が大きく異なります。新築時に施工しておくのが基本です。
次に廊下幅の差です。等級4の780mmは、標準的な介助式車いす(幅600〜620mm)が通過できる最低限の幅ですが、等級5の850mmは車いすが通りながら介助者が横に立てる幅です。介護の現場では「通れる」と「介助しながら通れる」では疲労度と事故リスクが大きく異なります。意外ですね。
また、階段手すりの片側・両側の違いも安全性に直結します。下りの際に利き手と逆側に手すりがないと、体の重心が偏ります。特に夜間の移動や体調不良時に、両側手すりの有無が転倒防止に決定的な差を生むことが、国土交通省の長寿社会設計指針でも指摘されています。
さらに、等級5では部屋配置の条件が厳しく、食事室・脱衣室まで特定寝室と同じ階に置く必要があります。「食事→排泄→入浴→就寝」という一連の生活行為がワンフロアで完結することで、階段を使う頻度そのものを減らす設計思想が等級5には込められています。つまり階段の安全より「階段を使わなくていい間取り」の実現が等級5の本質です。
新築時に等級5相当の設計を実現するためのプラスアルファコストは、廊下・出入口の幅拡張・手すり下地工事・浴室スペース拡張で30〜50万円前後とされています。後から改修する場合は100万円以上かかることも珍しくありません。新築段階での対応が条件です。

高齢者等配慮対策等級5の取得で得られる金融・税制メリット

等級5を取得することは安全性の向上だけでなく、直接的な経済メリットにもつながります。知らないと損する情報です。
フラット35Sによる金利優遇
住宅金融支援機構が提供する長期固定金利ローン「フラット35」には、一定の性能基準を満たした住宅への優遇金利プラン「フラット35S」があります。
| プラン | 金利優遇 | 高齢者等配慮対策等級の条件 |
|——|——–|———————-|
| 金利Bプラン | 当初5年間:▲0.25% | 等級3以上 |
| 金利Aプラン | 当初10年間:▲0.25% | 等級4以上 |
等級5を取得することで金利Aプランが適用され、3,000万円を借り入れた場合、10年間で約75万円の利息軽減効果があります(試算値・金利変動等による差異あり)。これは使えそうです。
長期優良住宅の認定要件との関係
長期優良住宅の認定を受けるには複数の性能基準を満たす必要があり、そのうちバリアフリー性の項目では「高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上」が要件となっています。等級5を取得すれば当然この要件も満たすことになり、長期優良住宅に認定された場合、さらに以下の税制優遇が受けられます。
住宅ローン控除の借入限度額の拡大(2025年入居:4,500万円)
不動産取得税の控除額拡大(1,300万円控除)
登録免許税の税率引き下げ
固定資産税の減額期間延長(一戸建ては5年間→7年間)
長期優良住宅の認定申請費用は申請先により異なりますが、所管行政庁への申請は5〜6万円程度が相場です。登録住宅性能評価機関を通じた場合は10〜20万円前後が目安となっています。
住宅性能評価書としての価値
住宅性能評価書は、売却時の資産価値証明としても有効です。住宅流通市場において、等級の高い住宅は買主に客観的な品質の証として認識されるため、将来の売却や賃貸において有利に働くケースがあります。結論は「取得コストより長期的なリターンが大きい」です。
参考:フラット35Sの性能基準と金利優遇の詳細

高齢者等配慮対策等級5の申請手順と設計時の注意点

等級5を取得するには、住宅性能表示制度に基づく「住宅性能評価書」の取得が必要です。手続きには設計段階と竣工段階の2段階があります。申請は設計段階から始まるのが原則です。
ステップ1:設計住宅性能評価の申請
新築住宅の場合、まず設計段階で登録住宅性能評価機関に「設計住宅性能評価書」を申請します。間取り・仕様・各部の寸法が記載された設計図書を提出し、等級5の各基準(廊下幅850mm・浴室短辺1,400mm等)を図面上で審査してもらいます。
申請は建主・施工会社のどちらでも行えますが、図面審査に必要な書類(平面図・仕上表・設計内容説明書)を設計担当者と連携して揃えるのが現実的です。
ステップ2:施工中の現場検査
設計住宅性能評価書を取得したら、建設住宅性能評価の申請に進みます。施工段階で複数回の現場検査が行われ、設計図どおりに施工されているかが確認されます。
工事工程に応じた検査タイミングを管理する必要があるため、施工会社と事前に工程を共有しておくことが重要です。
ステップ3:建設住宅性能評価書の発行
現場検査が完了すると「建設住宅性能評価書」が交付されます。フラット35Sや長期優良住宅の申請にはこの書類が必要になるため、竣工後に紛失しないよう保管してください。
設計上の注意点
既製品のユニットバスを選択する場合、内法寸法1,400mm以上・面積2.5㎡以上を確保できる製品は限られます。一般的な1坪タイプ(内法1,600mm×1,600mm)なら基準を満たしますが、コンパクトタイプ(内法1,400mm×1,200mm)は面積が1.68㎡で基準未満となります。設計段階でのメーカー確認が必要です。
また、廊下幅850mmを確保するには、隣接する壁と仕上げ材の厚みを考慮した構造上の壁間隔(芯々距離)が概ね1,000〜1,050mm程度必要になります。一般的な住宅の廊下(内法750〜780mm)より約100mm広くする計画が必要です。
なお、等級5では「日常生活空間外」の廊下も段差のない構造(一部例外あり)を求める規定があります。日常生活空間外とは特定寝室以外の居室や廊下も含まれるため、住宅全体の設計として段差をなくす意識が必要です。段差がないことが条件です。
設計内容説明書(高齢者等配慮対策用)は評価機関や地域のまちづくり機関から入手でき、各項目のチェックリストとして活用できます。設計担当者への確認アクションとして、この書類を事前に参照しておきましょう。
参考:住宅性能評価の申請フロー
上岡祐介建築設計事務所「設計住宅性能評価の申請の流れと評価基準」

高齢者等配慮対策等級5に関するよくある疑問と見落としがちなポイント

Q. 既存住宅でも等級5は取得できますか?
既存住宅でも住宅性能評価の申請は可能ですが、現況の調査が必要なうえ、廊下幅や浴室スペースの変を伴う大規模なリフォームが必要になるケースがほとんどです。等級5相当の改修工事費は数百万円に上ることもあります。新築・建て替えのタイミングでの対応が現実的です。
また、既存住宅向けの評価には「等級2−(マイナス)」という新築にはない特殊な等級も設定されています。等級2と等級1の間に位置するもので、dansakaishousurkanhetotonoeruhouhou.html”>段差解消範囲を一部緩和した基準です。これは既存住宅だけの規定です。
Q. 住宅性能評価書なしで等級5相当の住宅を建てることはできますか?
設計・施工自体は評価書の取得なしに行えますが、フラット35Sや長期優良住宅の申請には「住宅性能評価書」または「住宅性能証明書」等の第三者機関による証明書が必要です。税制優遇や金利優遇を目的とする場合、評価書の取得は必須です。
Q. 等級5を取得すると施工費はどのくらい上がりますか?
廊下幅拡張・出入口幅拡張・手すり下地施工・浴室スペース確保など、等級3〜4相当から等級5へのグレードアップにかかる追加費用は30〜50万円前後が目安とされています。ただし間取りの設計変更が必要な場合はさらにコストが膨らむことがあります。
一方、前述のフラット35Sによる10年間の金利軽減(3,000万円借り入れで約75万円)と税制優遇を合わせると、追加費用を十分に回収できる計算になります。コスト増加より回収できる優遇の方が大きい場合がほとんどです。
見落としがちなポイント:脱衣室の手すり
等級5では脱衣室での「衣服の着脱のための手すり」が必要です。これを見落とす設計者も少なくありません。脱衣室は浴室ほど注目されませんが、着脱動作は腰や膝への負荷が大きく、転倒リスクが高い場所の一つです。
設計段階でのチェックリスト確認を習慣にすることと、施工完了後に設計内容説明書との照合を行うことが等級5認定を確実にするための実践的なアクションです。
参考:住宅性能評価・表示協会による等級の詳細解説
住宅性能評価・表示協会「高齢者や障害者への配慮(既存住宅における性能表示項目の解説)」