土地信託方式のメリットと相続対策・資産運用の仕組み

土地信託方式のメリットを相続対策・資産運用の視点で徹底解説

賃貸マンションを建てれば、相続税評価額が現金の約10分の1になることがあります。

📋 この記事の3つのポイント
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専門知識ゼロでも始められる

土地信託方式は事業計画の立案から管理・運用まで信託会社がすべて担います。土地オーナーは配当を受け取るだけでOKです。

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相続税評価額が最大10分の1になる

賃貸建物を建築することで相続税の評価額が大幅に圧縮されます。節税効果と土地活用が同時に実現できる点が最大の魅力です。

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倒産隔離機能で資産を守れる

信託財産は委託者・受託者双方の破産手続きから独立しており、万一の自己破産時でも差し押さえの対象外となります。


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土地信託方式の仕組みと信託受益権の基礎知識

土地信託方式とは、土地オーナーが自分の土地を信託銀行信託会社に預け、その会社がプロとして土地活用・運用・管理を行い、得られた収益の一部を配当として地主へ還元する仕組みです。たとえるなら「土地版の式投資」に近く、株式投資では投資家がお金を企業に預けて配当をもらいますが、土地信託では土地そのものを会社に預けて配当を受け取ります。
土地を預けた際に地主が取得するのが「信託受益権」と呼ばれる権利です。これは、信託会社が運用で生み出した収益(賃料収入など)の分け前を定期的に受け取る権利を指します。土地の所有権は一時的に信託会社へ移りますが、信託期間が終了すれば土地と建物はまとめてオーナーに戻ってきます。
信託会社は大きく2種類に分類されます。
– 信託業務を兼営する信託銀行(三菱UFJ信託銀行・三井住友信託銀行・みずほ信託銀行など)
– 信託業務を専門に行う信託会社(スターツ信託〈運用型〉・大東みらい信託〈管理型〉など)
前者は信用力が高く相続関連業務も一体で対応できる点が強みで、後者は土地活用に特化したノウハウを持つ会社が多い傾向があります。どちらを選ぶかは、土地の規模や目的によって変わります。
土地信託の契約期間は一般的に10年〜30年という長期にわたります。契約の際は所有権移転登記と信託登記を同時に法務局で行い、信託受益権を取得して初めて運用がスタートします。つまり土地信託は始めるまでの手続きの正確さが後の安定運用につながるということですね。
信託協会「信託と税金」|信託設定時・運用中・終了時の課税ルールを網羅的に解説

土地信託方式のメリット①資金調達・専門知識が不要で手間がかからない

土地信託方式の大きなメリットのひとつが、自己資金と専門知識なしで土地活用をスタートできる点です。通常、土地にアパートや賃貸マンションを建てて運用しようとすると、不動産投資の知識、建設会社との交渉、金融機関への融資申し込み、入居者募集など、膨大な手間と判断が必要になります。
土地信託方式ではこれらをすべて信託会社が代行してくれます。事業計画の立案から建設費用の資金調達、竣工後の賃貸管理まで一任できます。これは使えそうです。
特に注目したいのが資金調達の面です。個人が金融機関から融資を受ける場合、本人の収入・年齢・信用情報によって借り入れ可能額が大きく制限されることがあります。一方、信託会社・信託銀行は高い信用力を持つため、個人では難しい規模の資金調達が可能になります。たとえば1億円規模の賃貸マンション建設でも、信託会社の信用力を活用すれば資金調達のハードルが大幅に下がります。
信託報酬は収益の5〜20%程度が一般的です。この費用がかかる分、自分で直接運営するよりも手取りの収益は若干低くなります。ただし、手間・時間・リスク負担を大幅に軽減できるという点で、土地活用の経験がない地主にとってはトレードオフとして十分成立する選択肢といえます。管理を任せるのが原則です。

土地信託方式のメリット②相続税評価額が最大10分の1に圧縮される節税効果

土地信託方式が相続対策として注目される最大の理由が、相続税評価額の劇的な圧縮効果です。地のまま相続すると、路線価固定資産税評価額をもとに高い相続税が課されます。しかし信託会社が賃貸マンションを建築すれば、その土地は「貸家建付地」として評価され、相続税評価額が現金の約10分の1になるケースも生まれます。
具体的なイメージを持つために、簡単な数字で確認してみましょう。たとえば固定資産税評価額が6,000万円の土地に賃貸マンションを建てた場合、貸家建付地評価と建物の借家権割合の適用により、評価額全体が数百万円台まで圧縮されることがあります。東京ドームの面積(約4.7万㎡)に換算するほどの大きな土地でなくても、郊外の500㎡程度の土地でも十分にこの節税効果が機能します。
節税効果が大きいということですね。ただし節税の前提として、賃貸マンションに入居者が確保されていることが必要です。空室が多い状態では評価額の圧縮率が下がる場合もあるため、土地の立地ポテンシャルを事前に見極めることが重要です。
さらに、信託財産として土地の所有権が信託会社に移った状態で相続が発生した場合、相続人は「土地の所有権」ではなく「信託受益権」を相続することになります。信託受益権は口数単位で分割できるため、複数の相続人へ公平に分配しやすくなります。土地そのものは物理的に分割できませんが、信託受益権なら1口単位での分割が可能です。
HOME4U「土地信託を相続対策に活用するための基礎知識」|相続税評価額の圧縮事例と節税の仕組みを詳しく解説

土地信託方式のメリット③信託受益権の売買で不動産取得税・登録免許税がかからない

土地信託方式には、あまり知られていない税務上の優位性があります。それが「信託受益権」として資産を売買した場合、通常の不動産売買と比べて不動産取得税登録免許税の負担が大幅に軽減される点です。
通常の不動産売買では、購入時に不動産取得税(固定資産税評価額の3〜4%)と登録免許税が課税されます。しかし信託受益権の売買では、法律上「実質的な不動産の取得」とは異なる取引として扱われるため、不動産取得税は原則として非課税となります(地方税法73条の7第3号)。また登録免許税や印紙税についても大幅に低減されます。
意外ですね。たとえば評価額1億円の土地付き建物を通常売買で購入した場合、不動産取得税として最大数百万円規模の税負担が生じることがあります。これが信託受益権の売買であれば、この税コストをほぼゼロに抑えることが可能です。これは大きな節約です。
信託受益権は口数単位で分割して売買できるため、土地ごと売るという大きな決断をせずに、一部だけ売却して資金を調達するといった柔軟な資産運用も選択できます。流動性の確保という点でも、通常の不動産所有より利便性が高いといえます。
ただし注意点として、信託受益権を売却すると土地の所有権も実質的に移転することになります。「信託受益権だけを手放す」つもりが結果的に「土地を手放す」ことと同義であることを理解した上で売買を判断することが条件です。
森・濱田松本法律事務所「不動産を信託受益権化した売買によるコスト削減」|不動産取得税の非課税根拠と信託受益権売買の税務整理を解説

土地信託方式のメリット④認知症対策・倒産隔離機能で資産を守る

土地信託方式が持つもうひとつの重要なメリットが、認知症による資産凍結を防ぐ機能と、倒産隔離機能による資産保全効果です。この2点は相続・土地活用の文脈でもやや見落とされやすいポイントです。
まず認知症対策について整理します。個人で賃貸マンション経営をしていた場合、オーナーが認知症になり判断能力を失うと、その土地・建物に関する契約行為がすべてストップします。入居者との契約更新、修繕発注、融資の手続きなど、土地活用に必要な意思決定が事実上凍結されるのです。場合によっては収益が滞り、ローン返済が困難になるリスクもあります。
一方、土地信託方式では土地の運用・管理は信託会社に委ねられているため、オーナーが認知症になっても土地活用は継続されます。配当もそのまま受け取り続けられます。つまり、土地信託を行う前に「元気なうちに意思表示をしておく」ことで、認知症後の資産凍結リスクを大幅に下げることができます。
次に倒産隔離機能について確認しましょう。信託法第23条では、信託財産は委託者の固有財産からも受託者の固有財産からも独立しており、委託者や受託者が差押えや破産の手続きを受けても、信託財産は原則としてその影響を受けないと規定されています。つまり万一の自己破産・民事再生が発生しても、信託財産は差し押さえられません。
倒産隔離が機能するということですね。ただし例外があります。地主が自己破産することを最初から織り込んだ上で信託を設定した場合(詐害信託に該当する場合)は、取り消しや否認権の対象になることがあります。正当な目的で信託を設定することが前提です。
不動産所有者のための家族信託相談窓口「家族信託と破産の関係」|信託財産の倒産隔離機能と差押え不可の法的根拠を解説

土地信託方式のメリット⑤契約満了後に建物付きで土地が戻ってくる長期資産形成の視点

土地信託方式には、多くの土地活用手法と一線を画す特徴があります。それが「契約終了後に土地と建物の両方がオーナーに返還される」という点です。これは長期的な資産形成の観点から非常に重要な意味を持ちます。
土地信託の契約期間は10〜30年が一般的です。この長い年月の間、信託会社が土地に賃貸マンションや商業施設を建て、運用します。契約が満了すると、その建物ごと地主に返還されます。建設費用をオーナーが直接負担したわけではないのに、資産が増えた状態で戻ってくるわけです。
たとえば30年間の契約で25室・月額家賃6万円の賃貸マンションを運用した場合、単純計算でも年間1,800万円の家賃収入を信託会社が生み出すことになります。そこから運営コスト(ローン返済・管理費・固定資産税など)と信託報酬(家賃収入の10%程度)を差し引いた残額が毎年の配当として地主に入ります。ある試算では年間920万円前後の配当が得られた事例もあります。
長期の資産形成が基本です。ただし、ローンが残った状態で契約が満了した場合、建物とともにローン残高もオーナーに引き継がれます。つまり建物だけでなく借入金の返済義務も戻ってくる点に注意が必要です。信託契約締結前に、満了後のローン返済計画を信託会社と一緒に確認しておくことが肝心です。
土地信託方式が他の土地活用手法(定期借地権方式・等価交換方式・建設協力金方式など)と大きく異なるのは、所有権を手放さずに長期運用を可能にしながら、最終的に資産増加という形で土地オーナーに還元される点にあります。売却でも権利譲渡でもなく「増やして返してもらう」という発想が、土地信託方式の核心にあります。これは使えそうです。
土地信託の成否は信託会社の実力に大きく依存します。契約前には複数の信託会社・信託銀行から提案を受け、実績・信用力・土地活用ジャンルでの経験値を比較検討することが欠かせません。一括提案サービス(例:HOME4Uオーナーズなど)を活用すれば、複数社の提案を一度に比較できるため、選定の手間を大きく省くことができます。

土地信託方式と他の土地活用手法の比較
比較項目 土地信託方式 自己建設方式 等価交換方式
土地の所有権 信託期間中は信託会社に移転(満了後返還) オーナーが保持 一部を業者に譲渡
自己資金 原則不要 必要 原則不要
専門知識 不要(信託会社に一任) 必要 比較的不要
相続税対策 ◎(受益権分割・節税) ○(貸家建付地評価) △(一部譲渡による制限)
認知症対策 ◎(運用継続可能) ✕(意思能力喪失で凍結)
倒産隔離 ◎(信託財産の独立性)