みなし有価証券・集団投資スキームの規制と登録義務
無登録でファンドを勧誘すると、法人には罰金5億円が科されます。
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みなし有価証券・集団投資スキームとは何か:基本定義を整理
「みなし有価証券」という言葉は、金融商品取引法(以下「金商法」)第2条第2項に根拠があります。金商法上の「有価証券」には本来該当しないものの、投資家保護の観点から有価証券と同じ扱いをする一定の権利のことを指します。金商法では第2条1項で定められた有価証券を「1項有価証券」、同条2項で定められたものを「2項有価証券」または「みなし有価証券」と呼び分けています。
1項有価証券には株式、国債、地方債、社債、投資信託受益証券など、いわゆる伝統的な金融商品が含まれます。これに対して2項有価証券には、信託の受益権、合同会社の社員権、そして集団投資スキーム持分などが含まれます。つまり、みなし有価証券です。
集団投資スキームとは、他者から金銭などの出資・拠出を受け、それを用いて事業や投資をおこない、その事業や投資から生じる収益などを出資・拠出者に分配する仕組みのことです。金商法第2条第2項第5号及び6号で包括的に定義されています。いわゆる「ファンド」がこれに当たります。
ポイントは3つの要素です。
- 💰 権利を有する者(出資者)が金銭等を出資または拠出すること
- 🏗️ 出資・拠出された金銭等を充てて事業(「出資対象事業」)が行われること
- 📊 出資者が出資対象事業から生ずる収益の配当または財産の分配を受けることができる権利であること
「集団」という言葉がついていますが、出資金が必ずしも合同運用されることは要件とはなっていません。意外ですね。法的形式や事業の内容を問わず、上記3要件を満たせば包括的に金商法の規制対象となります。
1項有価証券と2項有価証券(みなし有価証券)の大きな違いは規制の度合いです。1項有価証券は多数の投資家が参加することを前提としているため厳しい規制が適用されます。2項有価証券は投資家の参加規模が相対的に小さいとみなされ、より柔軟な金融が可能となるように規制が緩和されています。
参考:集団投資スキームの仕組みと組合形態の詳細について(金融商品取引業の規制との関係を含む)
集団投資スキームとは?投資家が知っておきたい基礎知識を解説|ソライチファンドメディア
みなし有価証券・集団投資スキームの具体例:どんな権利が該当するのか
みなし有価証券に該当する権利は、金商法第2条第2項に第1号から第7号まで列挙されています。代表的なものを整理しましょう。
| 号 | 権利の内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 1号 | 信託の受益権 | 不動産信託受益権、金銭信託受益権 |
| 3号 | 合同会社等の社員権 | 合同会社(LLC)の社員権、合名・合資会社の社員権 |
| 5号 | 集団投資スキーム持分 | 任意組合・匿名組合・LPS・LLP等のファンド持分 |
| 6号 | 外国法令に基づく5号類似の権利 | 海外ファンドの持分 |
| 7号 | 特定電子記録債権・政令で定める権利 | 学校債など |
5号にあたる集団投資スキーム持分は、組合の形態を問わず幅広く対象となります。それが原則です。
具体的な組合形態としては、民法上の任意組合(NK)、商法上の匿名組合(TK)、投資事業有限責任組合(LPS)、有限責任事業組合(LLP)などが挙げられます。投資型クラウドファンディングのサービスで多く利用されているのは匿名組合形式で、インターネットを通じて多数の投資家から小口で資金を集めるという性格に適合しているためです。
ただし、集団投資スキームから除外される権利もあります。以下がその主な例外です。
- 🔹 出資者全員が出資対象事業に関与する場合(投資クラブのように全員が投資判断に常時関与するケース)
- 🔹 出資額を超えた配当・分配がないことを内容とする権利
- 🔹 保険契約・農協共済契約・消費生活協同組合共済契約等に基づく権利
- 🔹 不動産特定共同事業契約に基づく権利(ただし不動産特定共同事業法第2条第3項に規定する通常の不動産特定共同事業契約に基づく権利は集団投資スキームから除外されているため、みなし有価証券ではありません。一方で、同法第2条第9項に規定する特例事業者と締結した不動産特定共同事業契約に基づく権利はみなし有価証券となります。実務では判断が難しいところですね。
参考:金融商品取引法上の有価証券の分類と集団投資スキームの除外規定について
ファンド関連ビジネスを行う方へ(登録・届出業務について)|金融庁みなし有価証券・集団投資スキームと開示規制:1項と2項の決定的な違い
みなし有価証券(2項有価証券)は、金商法の開示規制において1項有価証券と明確に扱いが異なります。これは実務上、非常に重要なポイントです。
金商法は投資者保護の観点から、有価証券の発行者に対して企業内容の開示義務を課しています。しかし、金商法第3条第3号により、2項有価証券(みなし有価証券)は原則として開示規制の対象外とされています。つまり、有価証券届出書の提出義務が課されないということですね。
ただし、重要な例外があります。それが条件です。集団投資スキーム持分のうち、その出資対象事業が主として有価証券に対する投資を行う事業である場合(金商法施行令第2条の9に規定するもの)は、「有価証券投資事業権利等」として開示規制の対象となります。- 📋 運用資産の50%超を有価証券投資に充てるファンド:有価証券投資事業権利等として開示規制の対象
- 🏭 運用資産の50%超を事業に充てるファンド(事業型ファンド):開示規制の対象外(適用除外有価証券)
つまり、太陽光発電ファンドや農業ファンドなどの事業型ファンドは、投資資産の過半数を有価証券以外に充てていれば、開示規制の適用外になります。これは使えそうです。
また、1項有価証券の「募集」の閾値は50名以上への取得勧誘ですが、2項有価証券の「募集」の閾値は500名以上が所有することとなる場合です。この違いも実務上の大きなポイントです。有価証券届出書の提出が必要となる規模が異なるということです。
なお、有価証券届出書の提出義務が発生するとしても、発行価額または売出価額の総額が1億円未満の募集・売出しであれば、有価証券届出書の作成は不要とされています。1億円未満なら問題ありません。
参考:金融商品取引法における1項有価証券・2項有価証券の開示規制の詳細解説
金融商品取引法(総論、有価証券、募集・私募、開示制度)|IKP税理士法人アーカイブみなし有価証券・集団投資スキームと登録義務:無登録営業の法的リスク
集団投資スキーム(ファンド)を扱うビジネスで最も注意しなければならないのが、金融商品取引業の登録義務です。これが原則です。
金商法では、集団投資スキーム持分の自己募集や、出資・拠出を受けた財産の自己運用(有価証券等投資に限ります)を業として行う者に対して、金融商品取引業の登録を受けることを義務付けています。ファンドの自己募集は「両罰規定によって5億円以下の罰金が科される可能性があります。痛いですね。
金融庁が公表している無登録業者リストには、集団投資スキーム持分の募集または私募の取扱いを行っていたとして令和6年6月に裁判所への申立てが行われた事例も掲載されています。このような事例からも、無登録営業の摘発が継続して行われていることがわかります。
投資家として、または事業者として集団投資スキームに関わる際は、必ず金融庁の「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」または「金融事業者一括検索機能」で登録の有無を確認することが重要です。
参考:無登録業者の公表と注意喚起(金融庁による最新情報)
無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について|金融庁
参考:ファンド形態での販売・勧誘等業務と登録義務に関する金融庁の公式解説
いわゆるファンド形態での販売・勧誘等業務について|金融庁みなし有価証券・集団投資スキームの登録不要な例外:適格機関投資家等特例業務とは
すべての集団投資スキーム(ファンド)販売・運用に金融商品取引業の登録が必要かというと、重要な例外があります。それが「適格機関投資家等特例業務(QII特例)の届出実務を「時系列」で解説|永田町リーガルアドバイザー
参考:金融庁による適格機関投資家等特例業務の届出手続きと要件の公式案内
ファンド関連ビジネスを行う方へ(登録・届出業務について)|金融庁