移住支援金制度・国の仕組みと申請条件を理解する
移住後に転職しただけで、受け取った100万円を全額返還させられた人がいます。
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移住支援金制度とは国が推進する地方創生の柱
国の移住支援金制度の正式名称は「地方創生移住支援事業」といい、2019年度から内閣府(地方創生推進室)が主導してスタートした制度です。東京一極集中の是正と地方の人口減少対策を同時に実現することを目的としており、東京圏から地方へ移住する方を国と都道府県・市町村が共同で金銭的に支援するという仕組みになっています。
具体的には、国が交付金を都道府県に対して支出し、都道府県がさらに市町村と連携して移住者に直接「移住支援金」を支給します。つまり、窓口はあくまで転入先の市町村であり、申請も転入先の役場で行う点が重要です。国が直接振り込んでくれるわけではありません。
制度が始まった2019年当初と比べ、対象要件は段階的に緩和されてきました。特に2020年12月以降はテレワークで移住前の業務を継続するケースも対象に加わり、転職しなくても支援金を受け取れるようになりました。これは使えます。さらに2023年度からは、地方出身の東京の大学卒業者(Uターン)も対象に加わっています。
制度の趣旨を一言で表すなら、「東京の人が地方で働きながら定住すること」を国が強力にバックアップするための仕組みです。対象者が条件を満たせば、引越し費用や生活費の一部を大きくカバーできる、非常に実用的な制度といえます。
内閣府(地方創生)の公式制度説明ページ(制度概要・対象者・申請先リストが確認できます)。
起業支援金・移住支援金|地方創生(内閣府)
移住支援金制度の国の支給額と子ども加算の全体像
国の移住支援金の基本的な支給額は、世帯(2人以上)での移住で最大100万円、単身での移住で最大60万円です。この金額は国が定める上限であり、実際の支給額は都道府県が設定するため、自治体によっては上限に届かないケースもあります。
加えて、18歳未満の子どもを帯同して移住する場合は、子ども1人につき最大100万円が加算されます。たとえば夫婦と子ども2人の4人家族で移住した場合、世帯100万円+子ども加算200万円(100万×2人)=最大300万円に達します。東京ドーム1個分のような大きな話に感じるかもしれませんが、これは実際に国が設定している数字です。
| 移住形態 | 支給額(国の上限) |
|---|---|
| 単身での移住 | 最大60万円 |
| 2人以上の世帯での移住 | 最大100万円 |
| 18歳未満の子ども帯同(1人) | +最大100万円(子ども加算) |
| 子ども2人を帯同した4人家族 | 最大300万円(100+100×2) |
| 地域課題解決型の起業を行った場合 | 別途、起業支援金として最大200万円 |
さらに自治体独自の上乗せ補助が加わる場合があります。宮崎県都城市では「全国どこから移住しても最大500万円」という独自制度を設けており、子ども帯同の家族であれば国の制度と合わせてさらに手厚い支援が受けられる事例もあります。つまり、移住先の選び方次第で総受給額は大きく変わります。
自治体独自の手厚い補助制度を含めて比較したい場合は、ふるさと回帰支援センターの情報が参考になります。2025年の移住希望地ランキング1位は群馬県、2位は栃木県、3位は長野県です。
移住支援金制度における国の対象者の要件と意外な落とし穴
国の移住支援金を受け取るには、①移住元、②移住先、③就業等の3つの要件をすべて満たす必要があります。それぞれに細かい条件があり、一つでも外れると対象外になります。
まず移住元の要件として、「移住直前の10年間で通算5年以上、かつ直近1年以上」東京23区に在住または通勤していた方が対象です。東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県のいわゆる「東京圏」に住んでいるだけでは不十分で、あくまで「23区内」への通勤が必要になります。
ここが最初の落とし穴です。たとえば、埼玉県さいたま市に住んでいて、さいたま市内の会社に通っている場合は対象外です。23区内への通勤が条件ですね。また、雇用保険の被保険者としての通勤に限られるため、自営業やフリーランスで「通勤」扱いにならない場合も注意が必要です。
次に移住先の要件として、東京圏(東京・埼玉・千葉・神奈川)以外の都道府県、または東京圏内でも「条件不利地域」に指定された市町村への移住が対象です。大阪・名古屋・福岡などの大都市は対象外です。沖縄県については、一部の指定市町村のみが対象となる形で参加しています。
就業等の要件として、以下のいずれかを満たす必要があります。
- 都道府県のマッチングサイトに「移住支援金対象求人」として掲載されている法人に就業すること
- プロフェッショナル人材事業・先導的人材マッチング事業を活用して就業すること
- テレワークにより移住前の業務を継続すること(自己の意思による移住が必要)
- 市町村が認める「関係人口」としての独自要件を満たすこと
- 起業支援金の交付決定を1年以内に受けていること
2つ目の落とし穴がここにあります。「地方の中小企業に就職すれば何でもOK」ではなく、その求人が都道府県の「マッチングサイト」に移住支援金の対象として掲載されている必要があります。良い求人を自分で見つけて応募・採用されても、その求人がマッチングサイト未登録であれば、残念ながら対象外です。就職先が決まってから申請しようと考えると、後で受け取れないことが判明するリスクがあります。移住前に必ずマッチングサイトで確認するのが原則です。
地方創生移住支援事業「移住支援金」を解説|いいかも地方暮らし(内閣府)
移住支援金の申請手続きの流れと転入後1年以内という期限の重要性
国の移住支援金を実際に受け取るには、正しい手順と期限を守ることが必須です。申請窓口は国でも都道府県でもなく、転入した市町村の担当窓口です。
申請から受給までの大まかな流れは以下の通りです。
- 移住支援事業を実施している都道府県・市町村を事前に確認する
- マッチングサイトで対象求人を探し、就業先を決定する(または起業・テレワーク要件を確認)
- 対象地域に転入し住民票を移す
- 転入後3か月以上1年以内に転入先市町村へ申請書類を提出する
- 審査を経て支援金が支給される
期限に注意が必要です。申請できるのは転入後1年以内で、さらに自治体によっては転入後3か月経過後でないと申請できないところもあります。移住時期が11月末だった場合、3か月後は2月になり、そのまま年度末の3月に申請期限が来ると年度内申請が難しくなることがあります。年度予算が尽きてしまうと翌年度まで待たなければならないケースも実際に起きています。早め早めの動きが基本です。
準備すべき主な書類は、住民票の写し、就業証明書や雇用契約書(マッチングサイトの対象求人に就業したことを証明するもの)、移住元での在住・通勤を証明する書類(住民票の除票・雇用保険被保険者証など)、申請書などです。自治体によって求める書類が異なるため、事前に窓口に相談することを強くおすすめします。
移住支援金の返還義務と課税という2つの盲点
移住支援金を受け取った後も、油断は禁物です。知らないと大きな損失につながる2つの重要事項があります。
ひとつ目は返還義務です。申請から5年以内に移住先から転出した場合や、虚偽の申請をした場合には、受け取った支援金を全額または一部返還しなければなりません。5年未満で転出した場合の返還額は自治体によって異なりますが、「5年以内なら全額返還」と設定している自治体が多くあります。
さらに重要なのが、転職による返還リスクです。移住支援金の対象法人(マッチングサイト掲載の就業先)を退職し、別の対象法人に転職した場合でも、返還が必要になります。これは岩手県をはじめ多くの都道府県が明示しているルールです。「同じ地域内の転職だから問題ないだろう」という感覚は危険ですね。移住後1〜2年以内に職場が合わず転職を考えた場合、返還義務が生じる可能性があることをあらかじめ理解しておく必要があります。
ふたつ目は税金の問題です。移住支援金は「一時所得」として所得税と住民税の課税対象になります。一時所得の計算は、受給額から特別控除額(最大50万円)を差し引いた残額の1/2が課税所得として算入されます。たとえば100万円を受け取った場合の課税対象は以下のように計算できます。
$$\text{課税所得} = (100万円 – 50万円) \times \frac{1}{2} = 25万円$$
課税所得25万円が発生するということです。給与所得者の場合、給与以外の所得が年間20万円を超えると確定申告が必要になるため、支援金を受け取った翌年は確定申告が必要になります。普段確定申告をしていない会社員でも申告義務が生じる点は見落としやすいポイントです。
なお、子ども加算を含めて300万円を受け取った場合は課税所得がさらに大きくなるため、税理士や税務署への事前確認をおすすめします。
税金の計算方法や確定申告の要否について詳しく解説されているページ。
個人事業主が使える移住支援金とは?条件・手続き・注意点まとめ|マネーフォワード
移住支援金制度を国と地方で最大限に活用するための独自視点・組み合わせ戦略
「国の制度だけ」で完結させようとするのは、実はもったいない考え方です。移住支援金の受給額を最大化したい場合、国の制度と自治体独自の補助制度を組み合わせるのが賢い選択です。
たとえば、国の移住支援金(世帯100万円+子ども加算100万円×2人=300万円)に加えて、自治体独自の「引越し費用補助(例:20〜30万円)」「空き家バンクを活用した住宅取得補助(最大50〜100万円)」「就農支援や創業支援(数十〜数百万円)」などが同時に受け取れる場合があります。自治体によっては合計500万円を超える支援が受けられる事例もあります。
また、移住支援金の受給後に地域で社会的事業を起業する場合は、別途「起業支援金(最大200万円)」の申請もできます。地域課題を解決するビジネスに取り組む意欲があるなら、移住支援金と起業支援金を組み合わせることで最大300万円以上の支援を受けられる可能性があります。これは大きなメリットです。
自治体選びの際に意識したいポイントをまとめると、「移住支援金の加算額」「住宅取得・賃貸補助の有無」「子育て支援の充実度」「マッチングサイト掲載求人の多さ」の4点です。移住先の自治体担当窓口に直接問い合わせると、制度の詳細や申請タイミングについて丁寧に教えてもらえることが多く、情報収集の第一歩として有効です。
さらに、移住後の生活設計において、就業先の選択は移住支援金の継続受給資格にも直結します。マッチングサイトで求人を探す際は、「移住支援金対象」のフラグが付いている求人を必ず確認したうえで応募する手順を守ってください。求人票を保存しておく、就業日