減価償却の計算方法・定額法で節税できる仕組みと注意点

減価償却の計算方法・定額法を正しく理解して節税につなげる

定額法で10年以上償却した資産でも、帳簿から消すと税務調査で指摘されることがあります。

📊 この記事の3つのポイント
🧮

定額法の基本計算式はシンプル

「取得価額 × 定額法の償却率」で毎年同額を経費計上。耐用年数に応じた償却率を正しく使えば、計算ミスを防げます。

⚠️

中古資産・月割計算には落とし穴がある

年の途中で取得した資産は月割計算が必須。中古資産は「簡便法」で耐用年数を再計算しないと過少申告になるリスクがあります。

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30万円未満の資産は即時全額経費にできる可能性あり

青色申告を行う中小企業者・個人事業主なら「少額減価償却資産の特例」を使い、30万円未満の資産を購入年に一括経費計上できます。


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減価償却の計算方法・定額法の基本と計算式

 

減価償却とは、建物・機械・パソコンなど長期にわたって使用する固定資産の購入費用を、使用する年数にわたって少しずつ経費に分配する会計処理のことです。使用期間が1年以上で取得価額が10万円以上の資産に適用され、企業や個人事業主の利益と費用を正確に把握するために欠かせません。
定額法とは、毎年同じ金額の減価償却費を計上し続ける方法です。計算式は非常にシンプルです。

項目 内容
📌 計算式 減価償却費 = 取得価額 × 定額法の償却率
📌 償却率の決まり方 耐用年数ごとに法令で定められている
📌 特徴 毎年同額を計上。最終年のみ1円少なくなる

償却率は「1 ÷ 耐用年数」で算出されます。たとえば耐用年数が5年であれば償却率は0.200、耐用年数が10年であれば0.100です。毎年の償却額が一定なので、将来の費用予測がしやすいという大きなメリットがあります。
定額法が原則です。
たとえば、取得価額100万円・耐用年数5年のパソコンを購入した場合を考えてみましょう。

年度 減価償却費 未償却残高
1年目 200,000円 800,000円
2年目 200,000円 600,000円
3年目 200,000円 400,000円
4年目 200,000円 200,000円
5年目 199,999円(1円を残す) 1円

注目すべき点は、最終年度だけ1円少ない計算になることです。これは「備忘価額」と呼ばれ、資産がまだ存在していることを帳簿上に示すための重要なルールです。この1円は、資産を廃棄・売却するまで帳簿に残し続けなければなりません。誤って削除すると、前年の期末残高と一致しなくなり、税務調査での指摘を招く原因になります。
参考:減価償却の計算方法に関する国税庁の公式情報
国税庁「No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後取得分)」

減価償却の計算方法・定額法の主な耐用年数と償却率一覧

定額法で正確に計算するには、対象資産の法定耐用年数を正しく把握することが第一歩です。耐用年数を1年でも誤ると、毎年の減価償却費が変わり、税額にも直接影響します。ここが重要です。
法定耐用年数は、財務省令「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」で資産の種類・構造・用途ごとに細かく定められています。代表的な資産の耐用年数と定額法の償却率は以下のとおりです。

資産の種類 耐用年数 定額法償却率
💻 パソコン・サーバー 4年 0.250
🚗 普通自動車(一般用) 6年 0.167
🏢 事務所(木造) 24年 0.042
🏢 事務所(鉄骨鉄筋コンクリート造) 50年 0.020
❄️ 冷暖房機器 6年 0.167
🪑 金属製事務机・椅子 15年 0.067
📱 スマートフォン・タブレット 5年(器具備品) 0.200
🛻 軽自動車(一般用) 4年 0.250

意外と知られていないのが、建物と建物附属設備・構築物・ソフトウェアは、法人でも個人事業主でも必ず定額法を使わなければならないという点です。定率法は選べません。これは原則です。
また、耐用年数の一覧表はすべての固定資産を網羅しているわけではありません。一覧表に見当たらない資産については、税務署や税理士に確認してから計算を進めるのが確実です。耐用年数の設定を誤ったまま申告を続けると、過少申告または過大申告につながる可能性があるため、早めの確認を怠らないようにしましょう。
参考:法定耐用年数の確認に役立つ国税庁の耐用年数表
国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」(PDF)

減価償却の計算方法・定額法で月割計算が必要になるケース

定額法は「毎年同額を計上するだけ」というイメージを持っている方が多いです。しかし、事業年度の途中で資産を取得した場合は、1年目の減価償却費を月割りで計算しなければなりません。月割計算が必要です。
年度途中に取得した場合の計算式は以下です。

計算式
減価償却費 = 取得価額 × 定額法の償却率 × 使用月数 ÷ 12

具体例で確認しましょう。取得価額120万円・耐用年数10年(償却率0.100)の機械を、12月決算の会社が9月から使い始めた場合、初年度の減価償却費は次のように計算します。

  • 年間償却費:1,200,000円 × 0.100 = 120,000円
  • 使用月数:9月〜12月 = 4ヶ月
  • 初年度の償却費:120,000円 × 4 ÷ 12 = 40,000円

もし月割を忘れて120,000円を計上してしまうと、1年分を丸ごと経費にしたことになり、過大計上として税務調査の対象になるリスクがあります。痛いですね。
もう一つの注意点は、「購入した月」ではなく「使い始めた月」から計算が始まる点です。たとえば5月に購入してもそのまま倉庫に置いておき、6月から実際に使い始めた場合は6月が起算月になります。購入日と使用開始日が異なる場合は、きちんと記録を残しておくことが重要です。
さらに、月の途中で取得した場合でも「1ヶ月分を満額で計上」するのが基本ルールです。たとえば3月31日に資産の使用を開始した場合でも、3月1ヶ月分の減価償却費を計上できます。この点も覚えておけばOKです。

減価償却の計算方法・定額法と定率法の違いと選び方

減価償却の方法には定額法と定率法の2つがあり、それぞれに向いている場面が異なります。選択を間違えると、節税のチャンスを逃したり、初年度の利益計上に影響を与えたりすることがあります。
つまり正しく選ぶことが条件です。

比較項目 定額法 定率法
毎年の償却額 ✅ 一定(同額) 📉 初年度ほど多く、年々減少
計算の複雑さ ✅ シンプル ⚠️ やや複雑(保証率・改定償却率あり)
初年度の節税効果 普通 ✅ 高い
個人事業主の原則 ✅ 定額法 届出が必要
法人の原則(建物以外) 届出が必要 ✅ 定率法
建物・建物附属設備・ソフトウェア ✅ 必ず定額法 ❌ 選択不可

個人事業主は原則として定額法が適用されます。定率法を使いたい場合は、確定申告書の提出期限(翌年3月15日)までに税務署へ「所得税の減価償却資産の償却方法の届出書」を提出する必要があります。届出なしで定率法を使った場合は、計算が認められない可能性があるため要注意です。
一方、法人の場合は建物・建物附属設備・構築物・ソフトウェア以外の資産は定率法が原則で、定額法を採用するには税務署へ届出が必要です。法人が定額法を使いたい場合は、設立1期目の確定申告書の提出期限(事業年度終了日から2ヶ月以内)までに届出を行わなければなりません。
初年度に多くの経費を計上したい(節税を優先したい)なら定率法、毎期の利益を安定させたいなら定額法が向いています。どちらが有利かは経営状況によって変わるため、迷ったときは税理士への相談が確実です。
参考:個人事業主の償却方法の届出に関する詳細
弥生「個人事業主の減価償却の計算方法は?法人との違いも解説」

減価償却の計算方法・定額法で中古資産を取得した場合の耐用年数

中古資産を購入した際は、新品の法定耐用年数をそのまま使えないケースがほとんどです。これは意外ですね。
中古資産には「見積法」または「簡便法」という方法で耐用年数を再計算する必要があります。実務では「簡便法」が広く使われています。

  • 法定耐用年数をすでに全部経過している資産の場合
    耐用年数 = 法定耐用年数 × 20%(端数切捨て、最低2年)
  • 法定耐用年数の一部が残っている資産の場合
    耐用年数 =(法定耐用年数 − 経過年数)+ 経過年数 × 20%(端数切捨て、最低2年)

具体的に「9年落ちの普通自動車(法定耐用年数6年)」を購入した場合で考えてみましょう。
法定耐用年数(6年)をすでに超えているので、6年 × 20% = 1.2年 → 端数切捨てで1年、しかし最低2年のルールにより耐用年数は2年になります。定額法の償却率(耐用年数2年)は0.500ですから、取得価額の半分を毎年経費にできます。これは使えそうです。
この簡便法を使わずに新品と同じ耐用年数で計算してしまうと、本来より少ない経費しか計上できず、税務上の損をすることになります。中古資産を購入したときは、必ず耐用年数の再計算を行いましょう。
また、中古資産に大規模な修繕(資本的支出)を加えた場合は、簡便法が使えなくなるケースもあります。修繕費が取得価額の50%を超える場合などは原則として法定耐用年数に戻りますので、購入前に試算しておくことをお勧めします。
参考:中古資産の耐用年数計算に関する国税庁の公式ページ
国税庁「No.5404 中古資産の耐用年数」

減価償却の計算方法・定額法を超える節税策:少額減価償却資産の特例

定額法で毎年少しずつ経費計上するよりも、購入した年に全額を経費にできる方が節税効果は大きくなります。一定の条件を満たす場合、「少額減価償却資産の特例」という制度を利用することで、30万円未満の資産を購入した年に一括で経費計上できます。
結論は一括計上が有利な場合があるということです。
この特例の主なポイントをまとめます。

  • 🏢 対象者:青色申告を行う中小企業者(資本金1億円以下かつ従業員500人以下など)または青色申告の個人事業主
  • 💴 対象資産:取得価額が10万円以上30万円未満の減価償却資産
  • 📋 上限額:1事業年度で合計300万円まで
  • 📅 適用期限:2026年3月31日取得分まで(現行制度)

たとえば、1台28万円のパソコンを購入した場合、通常の定額法(耐用年数4年・償却率0.250)では毎年7万円ずつ4年間かけて経費にします。しかし少額減価償却資産の特例を使えば、購入した年に28万円を一括で経費計上できます。節税のタイミングを前倒しできるため、キャッシュフローの改善にもつながります。
ただし、この特例を使う際には申告書への記載が必要です。青色申告決算書の「減価償却費の計算」欄の「摘要」に「措法28の2」と記入する必要があります。記入漏れがあると特例が認められない場合があるため、確定申告前に必ず確認しましょう。
また、白色申告の個人事業主はこの特例を利用できません。白色申告から青色申告に切り替えることで、来年以降はこの特例の恩恵を受けられるようになります。節税を本格的に考えるなら、青色申告への変は最初の一歩として非常に有効です。
参考:少額減価償却資産の特例に関する国税庁の詳細情報
国税庁「No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」

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