抵当権の追加設定の登録免許税を正しく計算する方法
土地にローンを組んだ時点では、建物への抵当権は自動的に広がりません。
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抵当権の追加設定とは何か:基本的な仕組みを理解する
抵当権の追加設定とは、すでに特定の不動産に設定されている抵当権と同一の債権を担保するために、別の不動産にも抵当権を設定することを指します。一つの債権を複数の不動産で担保する「共同抵当」の形態になるわけです。
最もよくあるのが注文住宅のケースです。まず土地を購入し、後から建物が完成した際に建物にも抵当権を追加設定するという流れが典型的です。勘違いされやすいのですが、土地に抵当権が設定されても、後から建った建物には自動的に抵当権の効力は及びません。建物を担保に加えるためには、改めて抵当権追加設定登記の手続きが必要です。
これが原則です。
企業の場合も同様のシーンが発生します。工場の土地を担保に銀行から融資を受けていた会社が、新たに別の不動産を取得した際に、その不動産を既存のローンの追加担保として差し入れる場面です。このような場面では「抵当権の追加設定登記」という手続きが必要になります。
追加設定登記を行うと、登記簿上に共同担保目録が作成・更新されます。共同担保目録には、一つの債権を担保している全ての物件の一覧が記載され、登記情報の最後のページに反映されます。
| 手続き | 内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| 抵当権設定(初回) | 初めて担保に加える不動産への設定 | 債権額×0.4%の登録免許税 |
| 抵当権追加設定 | 既存の抵当権に担保物件を追加する | 1件あたり1,500円(特例適用時) |
抵当権の追加設定の登録免許税:1,500円になる条件と根拠
抵当権の追加設定において最大のポイントとなるのが登録免許税の計算です。通常の抵当権設定登記では、債権額(借入金額)の1,000分の4(0.4%)が登録免許税として課税されます。3,000万円の借入なら12万円、5,000万円なら20万円という金額になります。
ところが、追加設定の場合はまったく異なります。
登録免許税法第13条第2項の規定により、共同担保となっている抵当権の追加設定登記の登録免許税は、追加する不動産1件あたりわずか1,500円の定額となります。3,000万円の借入であっても、5,000万円の借入であっても、追加する物件1つにつき1,500円です。これは使えそうです。
ただし、この1,500円の特例を受けるためには、以下の条件をすべて満たす必要があります。
- ✅ すでに同一の債権を担保する抵当権設定登記が存在していること
- ✅ 今回の登記が「共同担保」としての追加設定であること
- ✅ 申請書に前登記の登記事項証明書(前登記証明書)を添付すること(同一管轄法務局の場合は省略可)
- ✅ 申請書の登録免許税欄に「登録免許税法第13条第2項による」と根拠条文を明記すること
特に見落としやすいのが、前登記証明書の添付です。前登記証明書とは、すでに抵当権が設定されている物件の登記事項証明書(登記簿謄本)のことです。これがないと1,500円の特例が適用されず、通常通り債権額の0.4%が課税されます。数万円の差になることも珍しくありません。
注文住宅で土地と建物が同じ法務局の管轄内にある場合は、前登記証明書の添付を省略できます。省略する場合でも、申請書の添付情報欄に「前登記証明情報(省略)」と明記する必要があります。
参考:登録免許税の計算根拠となる法令については法務局の公式資料が参考になります。
登録免許税はどのように計算するのですか?(法務局公式PDF)
抵当権の追加設定の登録免許税:具体的な計算例で理解する
実際の数字で見ると、登録免許税の差がよく分かります。
Aさんは注文住宅を建てるため、まず3,500万円の住宅ローンを組んで土地を購入しました。その後、建物が完成したため、建物にも抵当権を追加設定することになりました。
| タイミング | 手続き | 登録免許税 |
|---|---|---|
| 土地購入時 | 抵当権設定登記(土地) | 3,500万円 × 0.4% = 14万円 |
| 建物完成時 | 抵当権追加設定登記(建物) | 1,500円(特例適用) |
追加設定の段階では、たった1,500円です。土地の設定時と比べると実に99%以上安くなる計算です。
複数の物件を追加設定する場合は、1件あたり1,500円が加算されます。たとえば建物と駐車場(別筆)の2件を同時に追加するなら、1,500円×2件=3,000円となります。件数分だけかかるということです。
一方、もし前登記証明書の添付を忘れたり、追加設定という形式を取らずに新規設定として申請してしまうと、3,500万円×0.4%=14万円の登録免許税が発生します。手続きの方法を間違えただけで14万円近い差が生じる可能性があります。痛いですね。
参考:複数管轄にまたがる追加設定登記の実務については以下の専門家コラムも参考になります。
他管轄にまたがる共同抵当・根抵当権の追加設定登記(司法書士コラム)
抵当権の追加設定の登録免許税と住宅ローン軽減税率の関係
住宅ローンを組む際には「登録免許税の軽減措置」がよく話題になります。通常0.4%の税率が0.1%に引き下げられる措置で、租税特別措置法第75条に規定されています。令和9年(2027年)3月31日まで適用される時限措置です。
ここで多くの人が混乱しやすいポイントがあります。
軽減税率(0.1%)は「住宅用家屋を目的とする抵当権の設定登記」に適用されます。つまり、建物への設定登記が対象なのです。土地だけへの設定登記には、この0.1%の軽減は適用されません。
注文住宅の場合、土地取得時にローンを組んだ段階では「土地への抵当権設定」であるため、0.1%の軽減は使えず0.4%が適用されます。そして建物完成後の追加設定では、そもそも1,500円の定額になるため、軽減税率の0.1%との比較自体が意味をなしません。1,500円のほうがはるかに安いからです。
ちなみに、土地と建物を同時に担保として一本のローンを組む建売住宅購入の場合は、建物が含まれているため0.1%の軽減税率が適用されます。
では、土地購入時に0.4%の税率が適用された後、建物への追加設定で1,500円、という流れになるAさんと、最初から土地・建物一本のローン(軽減税率0.1%)を組んだBさんの費用差はどうなるでしょうか。
| ローンの組み方 | 登録免許税の合計イメージ |
|---|---|
| 土地ローン(0.4%)+建物追加設定(1,500円)の2段階 | 土地分が高くなる可能性あり |
| 土地・建物一本のローン(0.1%軽減) | トータルでは安くなることが多い |
これが条件です。ローンの組み方によって登記費用が大きく変わります。住宅ローンの計画段階で、土地と建物を別々のローンにするか一本にするかを検討する際に、登録免許税のシミュレーションも行っておくと安心です。
参考:住宅ローンの軽減税率の適用要件については以下のページが詳しく解説しています。
抵当権設定の登録免許税とは?支払う時期・計算方法もやさしく解説
抵当権追加設定の登録免許税で見落としがちな独自視点:ペアローンと複数申請の落とし穴
住宅ローンのペアローンを選択した場合、追加設定登記の件数が2倍になることを知らずに損するケースがあります。これは意外ですね。
ペアローンとは、夫婦それぞれが個別に住宅ローンを契約する方法です。この場合、抵当権は夫名義・妻名義でそれぞれ設定されます。建物完成後の追加設定登記も、夫の抵当権・妻の抵当権それぞれについて行う必要があります。
つまり、追加設定登記は2件申請することになります。
登録免許税は1,500円×2件=3,000円とわずかな増額ですが、問題は司法書士報酬です。追加設定登記の登録免許税は安くなるとはいえ、司法書士への報酬は通常の抵当権設定登記とほぼ同額かかります。報酬の相場は事務所によりますが、1件あたり3万~5万円程度が目安です。ペアローンなら2件分の報酬が必要になります。
さらに、他管轄の法務局にまたがる場合には追加のコストと時間が発生します。たとえば既存の土地がA市(A法務局管轄)にあり、追加担保にする建物がB市(B法務局管轄)にある場合は、前登記証明書(登記事項証明書)の添付が必要になります。同一管轄であれば省略できる書類ですが、管轄が異なると省略できません。
登記事項証明書の取得には1通600円の手数料がかかります(オンライン請求・窓口受取の場合)。枚数が増えれば増えるほどコストが積み上がります。以前は既登記物件が10筆あれば全部の謄本を提出する必要がありましたが、現在は共同担保目録があればどれか1筆分の提出で対応できるようになっています。
また、根抵当権の追加設定には抵当権よりも厳格な条件があります。根抵当権は「極度額」「債権の範囲」「債務者」の3点がすべて最初の登記と一致していないと、追加設定として認められません。一方、普通の抵当権は既登記と完全一致でなくても登記自体は通ります(ただし不一致のまま追加設定を行うと軽減措置が適用されない場合があります)。つまり根抵当権が条件です。
| 項目 | 抵当権 | 根抵当権 |
|---|---|---|
| 追加設定の一致条件 | 比較的緩やか | 極度額・債権範囲・債務者が一致必須 |
| 申請書の目的記載 | 「抵当権設定」でOK | 「共同根抵当権設定(追加)」と明記が必要 |
| 登録免許税(特例適用) | 1件1,500円 |
参考:抵当権追加設定の申請書の書き方・ひな形については以下のページが詳しいです。
抵当権追加設定登記の登記申請書のひな形(茨木市の司法書士事務所)

不動産登記の書式と解説 第5巻 抵当権に関する登記
