根抵当権の変更登録免許税を種類別に徹底解説

根抵当権の変更と登録免許税を種類別に徹底解説

極度額を増額すれば、根抵当権を抹消して新規に設定し直すより登録免許税を数十万円節約できます。

この記事のポイント
💡

変更の種類で税額が激変

根抵当権の変更登記の登録免許税は、「極度額の増額」か「債務者・債権の範囲の変更」かで計算方法がまったく異なります。増額なら増加分×0.4%、それ以外は不動産1個につき1,000円が原則です。

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抹消→新規設定より変更登記が圧倒的に安い

極度額2億円の根抵当権を抹消して新たに設定し直すと登録免許税は約80万円。同じ条件で変更登記(移転+変更)を使えば約40万円台で済む場合があります。

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複数管轄にまたがる場合は要注意

共同根抵当権が異なる法務局管轄にまたがっている場合、極度額増額の手続きには追加の書類(前登記証明書など)が必要になることがあり、申請の順序を間違えると登記が通りません。


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根抵当権の変更登記の種類と登録免許税の基本ルール

 

根抵当権の変更登記とは、すでに登記されている根抵当権の内容(極度額・債権の範囲・債務者など)を書き換える手続きのことです。変更の内容によって、登録免許税の計算ルールがまったく異なります。これが基本です。
まず整理すると、根抵当権の変更登記は大きく以下の種類に分かれます。
| 変更の種類 | 登録免許税の計算方法 |
|—|—|
| 極度額の増額 | 増加額 × 1,000分の4(0.4%) |
| 極度額の減額 | 不動産1個につき1,000円 |
| 債権の範囲の変更 | 不動産1個につき1,000円 |
| 債務者の変更 | 不動産1個につき1,000円 |
| 根抵当権者の変更(移転) | 極度額 × 1,000分の2(0.2%) |
たとえば、土地・建物の2筆に設定された根抵当権の債務者を変更する場合、登録免許税は1,000円×2筆=2,000円です。これは極めて安い水準といえます。
一方、極度額を1,000万円増額する場合は1,000万円×0.4%=4万円の登録免許税が発生します。同じ「根抵当権の変更」という名称でも、金額の差は桁違いです。
根拠となる法律は登録免許税法の別表第一1(14)で、「抵当権または根抵当権の変更の登記」のうち、極度額の増額以外については不動産1個当たり1,000円と定められています(登録免許税法別表第一1(14)、同法第9条)。
国税庁:No.7191 登録免許税の税額表(根抵当権・抵当権に関する登記の税率早見表)

根抵当権の極度額増額における登録免許税の計算方法と具体例

事業拡大などによって借入枠を増やしたい場合、根抵当権の極度額増額変更登記を行います。登録免許税の計算方法は、「増加した金額(増加分のみ)」を課税標準として、それに1,000分の4(0.4%)を乗じた金額です。
たとえば、現在の極度額が5,000万円で、これを6,000万円に増額する場合、課税標準は差額の1,000万円となり、登録免許税は4万円です。なお、根抵当権の設定登記と同様の税率が増加分にだけかかる仕組みで、もともと設定されている5,000万円分に対して再び税がかかることはありません。
増額の場合は金額が大きくなりやすいので注意が必要です。極度額を5,000万円増額する場合は20万円、1億円増額なら40万円の登録免許税がかかります。100mのトラックを1周するイメージで言えば、1,000万円の増加ごとに4万円が積み上がるイメージです。
また、増額変更の場合は登記義務者が設定者(不動産の所有者)側となるため、設定者の印鑑証明書登記識別情報権利証)の提出が必要になります。
一方で、極度額を減額する場合はまったく異なります。不動産1筆につき1,000円の登録免許税で済み、課税標準は減額する金額ではなく「不動産の数」です。これは、減額は根抵当権者(金融機関側)に不利な変更であり、設定者側に有利な変更のため、税の取り扱いが軽くなっているためです。
尼崎司法書士事務所:根抵当権極度額変更登記について(増額・減額の登録免許税を比較解説)

債務者・債権の範囲変更における登録免許税と抵当権との違い

根抵当権の登記事項である「債務者」や「債権の範囲」を変更する場合、登録免許税は不動産1個につき1,000円です。これが原則です。
ここで意外なのが、「根抵当権の債務者変更 不動産1個につき1,000円 必要(3ヶ月以内) 根抵当権の債権の範囲変更 不動産1個につき1,000円 内容による

印鑑証明書の取得には数百円の手数料がかかりますが、それよりも忘れると登記申請が受理されないという実務上のリスクの方が大きいです。準備の段階でリストに加えておくことが確実です。
司法書士ブログ:根抵当権の債務者変更登記に必要な添付情報と登録免許税(抵当権との印鑑証明書の要否の比較)

根抵当権の変更登記で登録免許税を大幅節税できるケースとは

根抵当権の最大の特徴の一つは、「独立性」です。被担保債権とは独立して根抵当権そのものを移転・変更できるため、これを活用すると登録免許税を大幅に節約できる場面があります。これは使えそうです。
具体的なケースを見てみましょう。
【ケース1:借り換えのケース】
甲社がA金融機関との間で5筆の不動産に極度額2億円の根抵当権を設定しています。融資先をB金融機関に変更する場合、通常の方法では次のようになります。
根抵当権抹消登記:登録免許税 5,000円(5筆×1,000円)
– 根抵当権設定登記(新規):登録免許税 80万円(2億円×0.4%)
合計で約80万円超の登録免許税が発生します。
ところが、根抵当権を移転(A→B)+変更(債権の範囲変更等)とする方法を使うと、次のようになります。
– 根抵当権移転登記:登録免許税 40万円(2億円×0.2%)
– 根抵当権変更登記:登録免許税 5,000円(5筆×1,000円)
合計で約40万円台となり、差額は約40万円の節税です。極度額が大きければ大きいほど、この差も広がります。極度額5億円なら節税効果は100万円を超えることもあります。
【ケース2:売買を伴うケース】
売主甲が1億円の根抵当権を設定していた5筆の土地を、買主乙(同じA金融機関から融資)に売却するケースです。通常の「抹消+新規設定」なら約40万円超かかる登録免許税が、根抵当権の債務者を甲から乙に変更するだけなら5,000円で済みます。
金融機関側の協力が必要ですが、オーナー社長と会社間の売買など、当事者が近しい関係の取引では特に有効な手段です。
桑原司法書士事務所:登録免許税を抑える方法/根抵当権の有用性(移転・変更による節税事例の詳細解説)

複数管轄にまたがる共同根抵当権の極度額変更登記の注意点

根抵当権が複数の不動産に設定されている「共同根抵当権」の場合、極度額の変更には特別な注意が必要です。厳しいところですね。
民法398条の5の規定により、共同根抵当権の極度額変更は「すべての不動産について登記をしなければ効力を生じない」とされています。つまり、1筆だけ先に登記してほかを後回しにするといった対応はできないのです。
さらに複雑になるのが、管轄の異なる法務局(他管轄)にまたがるケースです。たとえば、A市(大阪法務局管轄)とB市(神戸地方法務局管轄)に共同根抵当権が設定されている場合、極度額増額の変更登記を申請する際に「前登記証明書」(もう一方の管轄の法務局が発行する、根抵当権の同一性を証明する書類)が必要になる場合があります。
この前登記証明書の取得と申請の順序を間違えると、申請が受理されないという実務上のリスクがあります。同日付で申請する場合は特に事前の法務局との確認が欠かせません。
また、不動産が20筆以上ある場合には特例があり、抹消の登録免許税の上限は2万円になります(通常は1筆1,000円のため、20筆以上の場合は単純計算よりも安くなります)。この上限ルールを知らないと、不必要に高い金額を試算してしまう場合もあります。
共同根抵当権を複数物件で持つ事業者の方は、変更登記を検討する際に必ず登記を担当する司法書士に管轄の確認と手続きの順序を事前に相談することをお勧めします。
大津法務事務所:複数管轄にまたがる既登記根抵当権の極度額増額登記の免許税(実務的な備忘録)

根抵当権の変更登記と登録免許税:司法書士に依頼する際の費用目安

根抵当権の変更登記は、登録免許税だけでなく司法書士への報酬も発生します。合計費用の全体像を把握しておくことで、「想定外の出費だった」という状況を防げます。
一般的な司法書士報酬(税別)の目安は以下の通りです。
| 変更の種類 | 司法書士報酬の目安 | 登録免許税 |
|—|—|—|
| 根抵当権設定 | 3~5万円程度 | 極度額×0.4% |
| 極度額増額変更 | 2~3万円程度 | 増額分×0.4% |
| 極度額減額変更 | 2万円前後 | 1,000円/筆 |
| 債務者変更 | 2~3万円程度 | 1,000円/筆 |
| 債権の範囲変更 | 2~3万円程度 | 1,000円/筆 |
| 根抵当権抹消 | 1~2万円程度 | 1,000円/筆 |
💡 事務所によって報酬額は異なりますが、多くの司法書士事務所では「変更する極度額(債権額)の規模に応じて加算する」方式を採用しています。たとえば、極度額5,000万円までは一律の基本額に加算なし、その後1,000万円ごとに数百〜数千円追加というケースが典型的です。
重要な点が一つあります。登録免許税は司法書士の報酬に含まれて請求されるケースが多いですが、これは代理納付(司法書士が申請時に立て替えて収入印紙等で納める)の費用であり、報酬とは別の実費です。請求書の内訳を確認する際は「報酬」と「実費(登録免許税)」を分けて確認するとよいでしょう。
また、変更登記の申請には、登録免許税の他に戸籍謄本や印鑑証明書などの書類取得費用(数百〜数千円)や、法務局への交通費・郵送費も実費として発生します。事前に司法書士に「合計でいくらかかるか」を見積もり依頼するのが最も確実な方法です。
登録免許税の金額が大きい場合(極度額増額で数十万円規模になる場合)は、複数の司法書士事務所に見積もりを依頼して比較するのも一つの選択肢です。報酬額の差が数万円になることもあります。

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