グリーンビルディング認証一覧と種類・制度・費用の全解説
認証を取得しているビルの賃料は、そうでないビルより平均4.7%高く取引されています。
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グリーンビルディング認証とは何か・一覧で見る制度の全体像
グリーンビルディングとは、立地選定から設計・建設・運用・解体にいたる建物のライフサイクル全体で、環境・社会への負荷を低減するよう配慮された不動産の総称です。そのうえで「本当に環境配慮がなされているか」を第三者が客観的に評価・証明する仕組みが、グリーンビルディング認証制度です。
認証の意義は、環境性能の「見える化」にあります。つまり認証が原則です。
建物オーナーにとっては資産価値の訴求、テナント企業にとってはESG経営の裏付け、投資家にとってはリスク評価の指標として機能します。国土交通省も環境認証を不動産評価の重要要素として位置づけており、グリーンファイナンスや補助金とも連動する場面が増えています。
主要なグリーンビルディング認証を一覧で整理すると、以下のとおりです。
| 認証名 | 運営主体 | 主な評価軸 | 有効期間 | 申請費の目安 |
|—|—|—|—|—|
| CASBEE | 国土交通省支援・IBECs | 環境品質+環境負荷(総合) | 3年 | 約60万円 |
| DBJ Green Building | 日本政策投資銀行(DBJ) | 環境×社会×防災×コミュニティ | 3年 | 約60万円 |
| BELS | 住宅性能評価・表示協会 | 省エネルギー性能(星評価) | 期限なし | 約20〜40万円 |
| ZEB | 環境省・経済産業省 | ネット・ゼロ・エネルギー | 5年 | 約20〜40万円 |
| LEED | USGBC(米国) | 環境性能・総合国際評価 | 更新制 | 比較的高額 |
| WELL | IWBI(米国) | 健康・ウェルビーイング | 更新制 | 比較的高額 |
| GRESB | GRESB B.V.(オランダ) | ESG不動産ポートフォリオ評価 | 年次 | ポートフォリオ単位 |
この一覧は代表的な7制度の概要を整理したものです。各制度は評価の「何を重視するか」が大きく異なります。省エネ性能に特化したものもあれば、健康・快適性や金融評価を軸にしたものもあります。
注目すべきは、日本国内の取得件数の約9割超はCASBEEとDBJで占められているという事実です(JLL調べ)。意外ですね。LEEDは2024年5月時点で国内271件にとどまっており、世界の約11万件と比較するとまだまだ少数派です。一方でESGやグローバル投資を意識する動きにより、LEED取得は年々増加傾向にあります。
参考:グリーンビルディング認証の取得件数動向に関する詳細データはJLL公式レポートで確認できます。
取得件数から見る日本のグリーンビルディング認証の将来性|JLL
グリーンビルディング認証の種類ごとの特徴と評価基準を詳しく解説
認証の「種類」を理解することが選択の第一歩です。ここでは主要7制度の特徴を深掘りします。
🏛️ CASBEE(建築環境総合性能評価システム)
国土交通省が支援し、一般財団法人住宅・建築SDGs推進センター(IBECs)が運営する日本独自の評価制度です。「環境品質(Q)」と「環境負荷(L)」の2軸で建物を評価し、QをLで割った「建築物の環境効率(BEE)」というスコアで性能を示します。
CASBEEには新築・既存・改修・戸建て・不動産・街区・ウェルネスオフィスといった7種類以上のバリエーションがあり、状況に応じた選択ができます。評価は「Sランク〜Cランク」の5段階で、最高ランクであるSランクは東京都条例でも義務対象となるほど社会的な認知度が高い認証です。
🏦 DBJ Green Building認証
2011年に日本政策投資銀行(DBJ)が創設した制度で、認証業務は一般財団法人日本不動産研究所(JREI)が担います。環境性能だけでなく、テナント利用の快適性・危機対応力・多様性・周辺環境・ステークホルダー協働といった多面的な観点から5段階で評価します。
2023年3月末時点の有効認証件数は1,417件。金融機関での評価が高く、認証物件は「グリーンローン」「サステナビリティ・リンク・ローン」の対象となるケースも多いです。これは使えそうです。
⭐ BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)
国土交通省のガイドラインに基づき、一般社団法人住宅性能評価・表示協会が運営します。省エネ性能を1〜5つ星でシンプルに表示するため、消費者・入居者にとって最も「わかりやすい」認証です。有効期限がなく、費用も比較的抑えられるため取得件数は国内最大規模です。ZEB認証取得への入口としても機能します。
⚡ ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)
建物のエネルギー消費量を高断熱化・高効率設備・再生可能エネルギーによって実質ゼロ以下にすることを目指す制度です。「ZEB」「Nearly ZEB」「ZEB Ready」「ZEB Oriented」の4段階があり、省エネ率50%以上から段階的に認定されます。環境省の補助金事業とセットで活用できるため、費用対効果の高さが魅力です。
🌎 LEED(Leadership in Energy and Environmental Design)
米国グリーンビルディング協会(USGBC)が運営する国際的な認証制度です。エネルギー効率・水資源管理・材料選定・室内環境など幅広い項目でポイントを獲得し、その合計でCertified・Silver・Gold・Platinumの4段階に認定されます。グローバル企業が関わる物件や外資系テナントを狙う賃貸ビルでは訴求力が高くなります。
🌿 WELL Building Standard(WELL認証)
米国IWBI(国際ウェルビーイング研究所)が運営する、人の「健康と快適性」に特化した認証です。空気・水・光・音・食物・温熱・心・材料・コミュニティ・運動の10コンセプトで評価し、必須24項目+加点90項目という構成です。Bronze・Silver・Gold・Platinumの4段階があり、従業員のウェルビーイング向上を訴求したい企業に向いています。
📊 GRESB(グローバル不動産サステナビリティ・ベンチマーク)
個別ビルではなく「不動産ファンド・ポートフォリオ全体」のESGを評価する国際的な制度です。2009年に欧州の年金基金が中心となって創設しました。保有物件のグリーンビル認証取得率が評価基準の一つとなるため、J-REITや不動産ファンドにとっては個別認証の「取得率」を上げることがGRESBスコア向上に直結します。
参考:各認証制度の費用・期間の比較は以下でまとめられています。
不動産環境認証の取得のステップとは?期間と費用について比較|menteru media
グリーンビルディング認証を取得する経済的メリット・賃料への影響
「環境への貢献」という印象が強いグリーンビルディング認証ですが、取得には具体的な経済的効果もあります。これが認証を取得する現実的な動機の中核です。
まず賃料への効果です。DBJが2024年に実施した分析によると、環境認証を取得した東京23区内のオフィスビルは、未取得ビルと比べて募集賃料が平均4.7%高いという結果が出ています。東京の大型オフィスビルの坪単価が仮に3万円だとすれば、認証1枚で1,410円/坪のプレミアムが乗る計算です。これは痛いですね(競合物件が先に取得した場合)。
東京大学の研究によれば、DBJ Green Building認証ありのビルの賃料は約11%高いという相関も報告されています。さらに賃料最高ランク認証取得ビルは取得前比で平均4.6%の賃料上昇も日経クロステックが報告しています。
資産価値面では、LEED認証を取得した建物の市場価値が平均で5%程度高くなるという推計もあります(chiou.jpコラム)。グリーンビルディング認証は「環境コスト」ではなく「資産への投資」という考え方が、不動産業界では急速に広まっています。
テナント企業側にも直接のメリットがあります。環境認証ビルへの入居は、GHGプロトコルのScope3(カテゴリ8:リース資産)の削減に貢献します。脱炭素を掲げる企業にとって、オフィスの選択がCO2削減の実績になるわけです。JLL調査では「将来は賃料プレミアムを払ってでもグリーンビル認証取得物件を賃借したい」と回答した企業が7割に上っています。
つまり、認証取得は空室率の低下と安定需要の確保にもつながる可能性があります。
金融面でも、環境認証取得物件はグリーンボンド・グリーンローンの適格資産として扱われるケースが増えており、資金調達コストの低減効果が期待できます。
参考:DBJによる環境認証の経済価値分析の最新データは以下の公式資料で確認できます。
DBJ Green Building認証制度のご案内(DBJ公式PDF)
グリーンビルディング認証の選び方:目的・用途別の比較ポイント
認証の種類が多いぶん、「どれを選べばよいか」で悩む方は多いです。選び方の軸は大きく3つです。
① 目的で選ぶ:省エネ重視・総合評価・健康配慮
– 🔋 省エネ効果を数値で示したい場合 → BELS・ZEB
エネルギー消費量の削減率を定量的に示せるため、補助金申請や省エネ経営の対外説明に有効です。ZEBは補助金との連動が強みです。
– 🏆 総合的な不動産価値の向上を図りたい場合 → CASBEE・DBJ Green Building認証
環境性能だけでなく、快適性・防災・地域貢献まで含めた多面的な評価で不動産の総合評価を高めます。日本国内の認知度が最も高く、取得実績も豊富です。
– 🧑💼 従業員の健康・人材採用力を訴求したい場合 → WELL認証
健康経営やウェルビーイング経営を推進する企業に適しており、採用力・従業員満足度の向上につながります。
② 対象読者(テナント・オーナー・投資家)で選ぶ
自社ビルのオーナーであればCASBEEやZEBが長期的な運用コスト削減と設計段階からの取り組みを可能にします。賃貸ビルオーナーであればDBJ・LEEDがテナント誘致力の向上と賃料プレミアムの獲得に有利です。機関投資家向けの資金調達を意識するならGRESBスコアの向上を軸に、保有物件全体の認証取得率を高める戦略が重要になります。
③ 既存ビルか新築かで選ぶ
新築ビルは設計段階から認証基準を盛り込めるため、取得しやすい環境にあります。一方、既存ビルでも取得可能な認証は多く、CASBEE不動産・DBJ・BELS・LEED O+Mなどが主な選択肢です。特にBELSは既存建物にも対応しており、設備改修なしで現状評価から取り組めるケースもあります。
④ 費用対効果を考える
「CASBEEのB+からSに上げるのに10%程度コストアップする」という調査結果もあります(JPX掲載レポートより)。認証ランクを上げるほど初期コストが増える一方で、賃料・資産価値の向上効果との兼ね合いで費用対効果を検討することが重要です。費用と効果のバランスが条件です。
複数の認証を組み合わせる「マルチ認証」も増えています。LEEDとWELLの組み合わせは国際基準の環境性能と健康性能を両立でき、グローバル企業テナントへの訴求に有効です。CASBEEとZEBの組み合わせは国内認知度と省エネ特化型の強みを両立できます。ただし、認証が増えるほど管理コストと更新負荷も増えるため、対象読者(ステークホルダー)を絞って最適な組み合わせを判断することが大切です。
グリーンビルディング認証の取得手順と注意点・グリーンウォッシュリスク
認証取得の大まかな流れはどの制度も共通しています。事前相談→申請書類準備→提出→審査(書類+実査)→認証付与という流れです。重要なのは「取得後の維持管理」まで含めて計画することです。
新築物件の場合は設計段階から動く
分譲マンションや大型オフィスビルでは、竣工前に販売・テナント募集を開始するため、「計画認証(設計段階での仮認証)」を活用するケースがあります。CASBEEの計画認証やZEHの計画認証がその代表例です。設計着手の段階から認証コンサルタントや認証機関に相談しておくことで、後から評価が取れないという事態を防ぎやすくなります。
DBJ Green Buildingの申請は87問のシートがポイント
DBJの申請では、87の質問項目からなるスコアリングシートへの回答と、最小限の図面等を日本不動産研究所(JREI)に提出します。申請から約1〜2ヶ月程度で認証が付与され、費用は申請費のみで約60万円です。3年ごとの更新が必要です。
取得後の維持管理こそが真の課題
多くの認証制度は「取得して終わり」ではなく、更新や継続管理が求められます。LEEDのO+M認証ではエネルギー・水使用量などの実績データを年次で報告する必要があります。更新を怠ると認証が失効するリスクがあることも覚えておきましょう。有効期限があります。
グリーンウォッシュには十分な注意が必要
認証取得が「ESG見栄え向上の手段」として形骸化するリスクが指摘されています。認証はあくまで実質的な環境性能の証明であり、取得後に適切な運用管理を行わなければ、投資家や取引先から「グリーンウォッシュ」と判断されるリスクがあります。
欧州ではグリーンウォッシングへの規制が強化されており、日本でも環境表示ガイドラインが2026年3月に改定予定です。不当な環境訴求は景品表示法の優良誤認に抵触する可能性もあります。認証取得後も、エネルギーデータのモニタリングや定期的な改善活動を継続することが、リスク回避の基本姿勢です。
認証取得を検討する際は、認証機関への事前相談を最初のアクションとして設定しておくことが現実的です。DBJとCASBEEはともに事前相談・取得後の相談窓口を持っており、無料相談からスタートできます。
参考:各種グリーンビルディング認証の公的な情報は環境省の以下ポータルでも確認できます。
グリーンファイナンスポータル|環境省

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