表面粗さ測定方法JISで知るRaとRzの正しい使い方

表面粗さ測定方法JISの基礎から判定ルールまで完全解説

図面に書いてあるRzが、実は2001年以前と以降で全く別のパラメータを指しているため、旧図面をそのまま使うと加工者に誤った仕上げ指示を出してしまうことがあります。

📋 この記事の3つのポイント
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JIS規格は3回改訂されている

JIS B 0601は1994年・2001年・2013年と改訂されており、同じ「Rz」でも年代によって意味が異なります。古い図面の流用は品質トラブルの原因になります。

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カットオフ値の設定が合否を左右する

カットオフ値λcの設定を誤ると、同じ面でも測定値が大きく変わります。JIS B 0633に基づいた正しい設定が品質保証の基本です。

合否判定には「16%ルール」がある

図面に指示がなければ「16%ルール」が自動適用されます。全ての測定点が規格値を超えなくても合格になるケースがあり、現場での運用に影響します。

表面粗さ測定方法の種類——接触式と非接触式の原理と使い分け

 

表面粗さを測定する方法は、大きく「接触式(触針式)」と「非接触式」の2種類に分けられます。JIS B 0651で規定されている触針式測定機は、先端半径2〜10μm程度のダイヤモンド製スタイラス(触針)を測定面に接触させ、その上下変位を電気信号に変換して粗さ曲線を取得するものです。金属加工の現場では、長年にわたって触針式が主流として使われてきました。

接触式の最大の強みは、明瞭な形状波形が得られる点にあります。JIS規格への適合性が高く、品質保証データとしての信頼性も折り紙付きです。一方で、触針を測定面に押し付けるため、アルミや銅などの軟質材に対してはスタイラスが表面を傷つける可能性があります。これは意外と見落とされがちなポイントです。

非接触式には、レーザーや白色干渉光を使った光学式測定機があります。測定面を傷つけない点が大きな利点で、精密研磨面や薄膜コーティング面の評価に向いています。ただし、測定精度の目安として接触式が約1μm程度であるのに対し、非接触式は約10μm程度とされており、精度の差が存在します。また、鏡面に近い超精密仕上げ面では光が乱反射してしまい、非接触式では正確に測定できないことも珍しくありません。これは使えそうな知識です。

接触式・非接触式のどちらを選ぶかは「何を評価したいか」によって決まります。

測定方式 代表的な機器 適用範囲 注意点
接触式(触針式) 触針式表面粗さ計 金属加工面全般 軟質材の傷つきに注意
非接触式(光学式) レーザー顕微鏡、白色干渉計 鏡面・薄膜・軟質材 鏡面で反射NG、精度は接触式より低め

品質保証データとして提出が必要な場面では、JIS規格に準拠した触針式を第一の選択肢として検討することが現場の基本です。

キーエンス:表面粗さ測定の種類と規格(接触式・非接触式の原理と規格の違いを詳しく解説)

表面粗さ測定方法JISのパラメータ——RaとRzの定義と計算の違い

現場でよく使われるパラメータはRaとRzの2つです。それぞれ定義が異なるため、目的に合わせて正しく使い分ける必要があります。

Ra(算術平均粗さ) は、粗さ曲線から基準長さを抜き取り、平均線からの偏差の絶対値を算術平均した値です。表面全体の凹凸の「平均的な荒れ具合」を示すため、安定した数値が得られます。キズや突起などの局所的な異常には鈍感な面がありますが、加工面の全体的な品質管理に最もよく使われます。

Rz(最大高さ粗さ) は、基準長さにおける粗さ曲線の最大山高さZpと最大谷深さZvの和(Rz = Zp + Zv)です。これが現行のJIS B 0601:2013における定義です。Raとは異なり、一番高い山と一番深い谷の差を見るため、局所的なキズや突起の有無を判断するのに適しています。

おおよその目安として、Rz ≒ Ra × 4 という換算式が知られています。Ra 1.6μmであれば、Rz は約 6.3μm 程度になる計算です。ただしこれはあくまで目安です。実測ではRa × 4よりもRzが大きく出ることも多く、換算だけで判断するのは危険です。

粗さ曲線から求めるパラメータはRa・Rzが中心ですが、他にも以下のようなものがあります。

  • RSm(粗さ曲線要素の平均長さ):周期的な粗さの評価に使用
  • Rq(二乗平均平方根粗さ):Raの別バージョン、統計処理に使われる
  • Rsk(スキューネス):表面の非対称性(傷か突起かの判別)に役立つ
  • Rku(クルトシス):山や谷の鋭さを評価する

Raだけ覚えておけばOKです、とはならない局面が実際の現場にはあります。シールや摺動部品などの機能面では、RaだけでなくRzやRskを組み合わせて評価することが品質向上につながります。

ミツトヨ:表面粗さの基礎知識(輪郭曲線・パラメータ定義・基準長さを詳しく解説)

表面粗さ測定方法JISで見落としがちなRzの旧規格混在リスク

現場で最も注意が必要なのが「Rz」の新旧解釈の違いです。意外ですね。

JIS B 0601はこれまで複数回の改訂を経ており、特に2001年の改訂で大きな変更が行われました。年代ごとに「Rz」が指すパラメータが全く異なります。

規格年代 「Rz」が示すパラメータ 備考
1994年以前(旧JIS) 十点平均粗さ(断面曲線から計算) 現在の「RzJIS」に相当
1994〜2001年(旧JIS) 十点平均粗さ(粗さ曲線から計算)、Ryが最大高さ RyがJIS2001のRzに相当
2001年以降(現行JIS) 最大高さ粗さ(Rp+Rv) 現行規格

つまり、1994年以前の図面に書いてある「Rz」は、現在の「Rz」とは全く別の計算式に基づいたパラメータです。長年使い続けている社内図面や、取引先から届いた古い図面を確認せずにそのまま流用すると、加工者と設計者の間で意図がまったく噛み合わない事態が起きます。

この混乱を防ぐため、2001年改訂以降は旧JIS規格の十点平均粗さを「RzJIS」と表記するよう変更されました。ただし、RzJISに対応していない測定機器も存在します。海外メーカーの測定機では、日本独特のパラメータであるRzJISが対応していないケースが多く、機器の選定時には注意が必要です。

旧規格の記号(▽マークや数字表記のみ)を今も使い続けている企業があるのも現場の実情です。1952年制定の三角記号(▽)はすでに廃止されて30年以上が経ちますが、一部の企業では現役で使用が続いています。

旧規格の図面を見かけたら必ず確認する、が基本です。

具体的な対処としては、図面に「JIS B 0601:2013」と規格年度を明記するか、使用するパラメータ名を「Ra」「Rz(現行JIS)」のように明示することが、品質トラブルを未然に防ぐうえで有効です。新規取引先への図面提出時には特に意識するとよいでしょう。

キーエンス:JIS B 0601-1994と2001の主な変更点(新旧パラメータ比較表あり)

表面粗さ測定方法JISで必須のカットオフ値——λcの正しい設定手順

測定値の正確さを左右するのが、カットオフ値λc(ラムダシー)の設定です。これが原則です。

カットオフ値とは、「うねり」と「粗さ」を分離するための境界波長のことです。λcより長い波長成分はうねりとして除去され、λcより短い波長成分だけが粗さ曲線として残ります。つまり、λcの値を変えると同じ面を測定しても全く異なるRa・Rz値が得られることになります。

JIS B 0633:2001では、Raの値に応じてλcの標準値が定められています。

Ra(μm) 標準λc(mm) 評価長さ(mm)
0.006 < Ra ≦ 0.02 0.08 0.4
0.02 < Ra ≦ 0.1 0.25 1.25
0.1 < Ra ≦ 2 0.8 4
2 < Ra ≦ 10 2.5 12.5
10 < Ra ≦ 80 8 40

一般的な切削面や研削面はRaが1μm前後になることが多く、λcは0.8mmが標準的な設定です。この「0.8mm」という数字を覚えておくと、現場で迷う場面が減ります。

λcが決まると、もう一つのフィルタであるλs(ショートウェーブレングスカットオフ)も自動的に決まります。λsはスタイラスの先端半径(標準2μm)以下の極微細な凹凸ノイズを除去するためのフィルタで、λc/λs ≒ 300 の関係があります。ただしλsが2.5μmを下回る場合は2.5μmを採用します。

設定手順として覚えておきたいのは次の流れです。

  1. ✅ 図面にλcが指示されている → 指示値をそのまま設定する
  2. ✅ 指示がない・周期的な表面 → 目視でRSmを推定し、表から該当λcを選ぶ
  3. ✅ 指示がない・非周期的な表面 → 予備測定でRa/Rzを推定し、表から該当λcを選ぶ

評価長さは標準で「基準長さ × 5区間」です。例えばλc = 0.8mmなら評価長さは4mmになります。この区間数が少なすぎると測定の信頼性が下がるため、測定時間の短縮を優先してむやみに区間数を減らすことは避けるべきです。

大阪産業技術研究所(ORIST):表面粗さの測定(フィルタ・パラメータ・三次元評価まで網羅)

表面粗さ測定方法JISの合否判定——16%ルールと最大値ルールの実務への影響

「規格値を1回でも超えたら不合格」と思っている方は少なくありません。しかし現行JIS(JIS B 0633:2001)では、図面に合否判定ルールの指示がない場合は「16%ルール」が自動的に適用されます。

16%ルールとは、評価長さ全体から切り出した全基準長さで算出したパラメータのうち、図面の要求値を超える数が16%以下であれば合格とするルールです。例えば、評価長さが5区間(基準長さ5個)の場合、1個が規格値を超えても「1/5 = 20%」となり不合格ですが、5区間のうちいずれかが「最初の1測定値が規格値の70%以内」などの簡易条件を満たせば合格と早期判定できます。

具体的な早期合格判断の目安(JIS B 0633:2001より)。

  • 📌 最初の測定値が指示値の70%を超えない → 合格
  • 📌 最初の3測定値がすべて指示値を超えない → 合格
  • 📌 最初の6測定値のうち2個以上が指示値を超えない場合は継続測定 → 最終的に16%以下なら合格
  • 📌 最初の12測定値のうち3個以上が指示値を超えない場合は継続測定

一方、最大値ルールは、対象面全域で求めたすべてのパラメータ値が指示値以下でなければ不合格とする厳しいルールです。図面に「U」(上限値)や「max」の記載がある場合、あるいは取引先から明示的に指定された場合に適用されます。

なお、新しいISO規格では「最大値ルール」がデフォルトになっています。JISとISOで判定ルールのデフォルトが違う点は、ISO規格準拠の海外向け製品を扱う現場では特に注意が必要です。

どちらのルールが適用されるかによって、同じ測定データでも合否が変わることがあります。測定の前に図面や製品技術情報を確認することが重要です。

品質保証資料として粗さ測定データを提出する際は、どのルールで判定したかを明記しておくと、取引先とのトラブルを防げます。

ミツトヨFAQ:16%ルール・最大値ルールとは何か(図解付きで判定フロー解説)

表面粗さ測定方法JISで現場が見落とす「測定方向」と「3次元評価」の重要性

測定機のセッティングに問題がなくても、測定方向を誤るだけで数値が大きくブレることがあります。これは現場で見過ごされやすいポイントです。

JIS規格では、測定方向が図面に指示されていない場合、「高さ方向のパラメータ(Ra・Rz)が最大になる測定方向」に対象物を設置して測定することが定められています。一般的に、切削加工や研削加工で生じる「筋目」(加工痕)と直交する方向に触針を走らせると、Ra・Rzが最大値に近い値が得られます。筋目方向と平行に測定してしまうと、実際よりも粗さが低く算出される場合があります。

厳しいところですね。ただし、これをきちんと理解しておくと、「どのく方向に測ったか」を記録に残す習慣につながり、再現性の高い測定が実現できます。

現在の主流は「2次元(線粗さ)評価」ですが、近年では「3次元(面粗さ)評価」への移行が進んでいます。線粗さは一断面のデータに過ぎないため、測定場所や方向によって値がばらつくことが課題とされてきました。

3次元評価に対応した規格として「ISO 25178」があり、JIS B 0681シリーズがこれに対応しています。面粗さのパラメータは、線粗さのR(Ra・Rz)に対してS(Sa・Sz)を使います。例えば、線粗さのRaに相当する面粗さのパラメータがSaです。

評価方法 パラメータ例 メリット 課題
2次元(線粗さ) Ra、Rz、RSm 測定が速い・JIS準拠 測定方向・場所依存
3次元(面粗さ) Sa、Sz、Ssk 面全体を評価・再現性高い 測定に時間がかかる

3次元評価には短時間で多くのデータを取得する必要があるため、非接触式(レーザー・白色干渉計)の活用が進んでいます。精密部品や機能面の品質管理に3次元評価を導入することで、従来の線粗さでは見落としていた面の異常を早期に発見できるようになります。

3次元評価への移行を検討する際は、ISO 25178に対応した測定機器かどうかを確認することが最初のステップになります。キーエンスやミツトヨなどのメーカーが対応機器を展開しており、自社のワークや評価目的に合ったものを選ぶとよいでしょう。


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