ブランク型プレスで知るべき金型選びと精度の要点

ブランク型プレスの基礎と金型選びの実践知識

クリアランスを小さくするほど、バリは出なくなるどころか金型が早く壊れます。

この記事でわかること
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ブランク型プレスの基本構造

パンチ・ダイ・ストリッパの役割と、ブランク加工がプレス工程全体の精度を決定づける理由を解説します。

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クリアランスと不良の関係

板厚の4〜10%が適正値とされるクリアランス設定のポイントと、バリ・破断面が発生するメカニズムをわかりやすく説明します。

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金型タイプの選び方と歩留まり改善

単発型・順送型・トランスファー型の違いと、ブランクレイアウト最適化による材料ロス削減の実践的な考え方を紹介します。

ブランク型プレスの仕組みとプレス加工全体での位置づけ

ブランク型プレスとは、金属板(コイル材や定尺板)から製品の展開形状を打ち抜き・切り出す工程に使用するプレス金型のことです。英語の “Blank(空白)” が示す通り、まだ曲げや絞りが施されていない平面状の素材片(ブランク材)を作り出すことが目的です。

加工の仕組みはシンプルに見えますが、実は非常に繊細です。上型であるパンチが材料に押し当てられ、下型であるダイとの隙間(クリアランス)を通じて板材がせん断されます。加工後にパンチへ材料が張り付かないよう引き剥がすストリッパも欠かせない構成部品です。この3つの要素の精度と設定が、切断面の品質や金型寿命を大きく左右します。

プレス加工全体の流れの中で、ブランク加工は「下ごしらえ」に相当します。料理でいえば、野菜を正確に切り分ける工程にあたり、ここでの寸法誤差がそのまま曲げ・絞り・組み立て工程へと連鎖します。ブランクの精度が最終製品の品質の土台です。

ブランク加工で得られた製品(ブランク材)はダイの中に入り込み、ノックアウトという機構で押し出して取り出すか、ダイを通過させて下方へ落とす方式のいずれかで回収されます。また、材料には「さん(bridge)」と呼ばれる余白部分が必要で、送りさんの最小幅の目安は板厚の1.5倍または0.7mmとされています。さん幅が狭すぎると正常な打ち抜きができず、パンチ・ダイの摩耗が早まりバリ発生の原因になります。

バリの発生方向も重要です。外形抜き(ブランク加工)では、バリはダイ側に出ます。製品によっては外形と穴のバリ方向を揃える要求仕様があるため、設計段階から確認が必要です。

参考:ミスミの技術情報「抜き加工(ブランク加工)の基礎解説」では、さん幅やブランク寸法と金型寸法の関係が詳細に解説されています。

ブランク加工(抜き加工のいろは その1)| ミスミ技術情報

ブランク型プレスのクリアランス設定と断面品質の関係

クリアランスは、ブランク型プレスにおける最重要の設計パラメータです。正しく設定されていなければ、バリ・ダレ・破断面の比率が乱れ、製品不良や金型破損につながります。

一般的なクリアランスの目安は、板厚の4〜10%です。薄板(板厚0.1〜0.8mm)では板厚×4〜5%、中板(板厚0.8〜2.0mm)では板厚×6〜7%が目安とされています。たとえば板厚2.0mmの鋼板であれば、クリアランスは0.12〜0.14mm前後が適正値です。はがきの厚みが約0.2mm程度であることを考えると、いかに微細な値かがわかります。

打ち抜き後の断面は4つの層で構成されます。上から「ダレ面(材料が引っ張られて丸まる部分)」「せん断面(綺麗に切れた光沢のある部分)」「破断面(ちぎれた粗い部分)」「バリ(突起)」の順です。一般的なプレス加工では、せん断面が断面の約3分の1、残りの3分の2が破断面となります。これは脆性破壊加工であるプレスの本質的な特性です。

クリアランスが大きすぎる場合は、材料が切断されるよりも引きちぎられる割合が増え、破断面とバリが大きくなります。反対にクリアランスが小さすぎる場合は、せん断面は広がりますが、二次せん断(二段階でせん断される現象)が発生し、かじりや金型破損のリスクが急激に高まります。クリアランスを小さくすればバリが消えるという考えは誤りです。これが冒頭の「驚きの一文」に直結する話です。

均一なクリアランスを保つことも非常に重要です。たとえば板厚0.05mmの薄板でクリアランスが0.002mmに設定されている場合、パンチのセンターが0.001mmずれるだけで、左右のクリアランスが0.001mmと0.003mmに分かれてしまいます。左右差があると、バリ・ダレの発生が不均一になり、再研磨サイクルが短くなり、金型寿命が著しく低下します。均一なクリアランスが原則です。

参考:南雲製作所の技術コラムでは、クリアランスの大小が各断面層に与える影響が図解入りで詳しく解説されています。

精密プレス金型 クリアランスとは?| 南雲製作所

ブランク型プレスに使う金型の種類と選び方の判断基準

ブランク型プレスに使用する金型は、生産数量・製品形状・コスト目標に応じて選ぶ必要があります。主な分類は単発型(シングル型)・順送型(プログレッシブ型)・トランスファー型の3種類です。

単発型は、1工程で打ち抜きのみを行うシンプルな金型です。構造が単純なため製作コストが安く、試作や少量生産に向いています。ただし、工程ごとに人手で材料をセットし直す必要があるため、生産スピードが遅いというデメリットがあります。数十〜数百個レベルの小ロット生産では、まず検討すべき選択肢です。

順送型(プログレッシブ型)は、コイル材をプレス機にセットし、一定ピッチで自動送りしながら複数工程を連続加工する金型です。1つの金型内にパイロット穴開け・ブランク抜き・曲げなどが組み込まれており、高速かつ精度が安定した大量生産が可能です。金型製作コストは単発型より高くなりますが、量産効果でトータルコストは大幅に下がります。材料送りの精度がすべての工程に影響するため、送り装置の設定管理が重要です。

トランスファー型は、素材を専用搬送装置で各金型間を移動させながら加工する方式です。深絞りや複雑な段付き形状など、順送型では難しい立体部品に適しています。各工程が独立しているため、部分的な修理・調整がしやすいというメリットがあります。

また、特殊な選択肢としてコンパウンド型(複合型)があります。打ち抜きと穴あけを1ストロークで同時に行う構造で、工程数を減らしながら寸法精度を高められます。設計的な工夫で、コストと品質を両立できる場面があります。

下記の表を参考に、現場の条件に合わせた選定を行ってください。

選定要素 単発型 順送型 トランスファー型
生産数量 少量・試作 大量生産 中〜大量生産
製品形状 単純形状 平板・中程度 複雑・深絞り
初期コスト 低い 高い 中程度
歩留まり 中程度 高い 中〜高
メンテナンス性 高い 低い 高い

金型タイプの選択は最初が肝心です。途中で変更すると金型製作コストが二重にかかるため、生産計画の段階で決定するのが原則です。

参考:ニチダイのプレス金型解説コラムでは、各金型タイプの構造・メリット・デメリットが詳しく整理されています。

プレス金型の基礎知識—構成・種類・設計精度を高めるポイント | ニチダイ

ブランク型プレスにおける材料歩留まりの改善とブランクレイアウトの考え方

材料費はプレス加工のコスト構造の中で大きな比率を占めます。ブランク型プレスで材料を無駄なく使うためには、ブランクレイアウト(板取り)の最適化が不可欠です。

ブランクレイアウトとは、金属板の上にブランク形状をどのように配置して打ち抜くかを設計することです。直線配列、千鳥配列(ジグザグ配列)、傾斜配列などのパターンがあり、形状によって最適な方法が異なります。円形や対称形状の場合は千鳥配列にすることで、同じ形を直線に並べるより材料の無駄を数%単位で削減できます。たとえばL字型や非対称形状では、向きを交互に反転させてネスティング(形状をかみ合わせる)することで、歩留まりが大幅に改善される場合があります。

さん幅の設定も歩留まりに直結します。さん幅が広いと材料ロスが増え、狭すぎると打ち抜き不良が発生します。「送りさん」「縁さん」それぞれの最小値を守りながら、できる限り小さく設定することがポイントです。

また、多列取りも有効な方法です。1列で打ち抜いていた工程を2列・3列に変更することで、材料幅あたりの取り数が増え、端材ロスを相対的に減らせます。材料廃棄部を減らすほど歩留まりは向上します。これは実質的なコストダウンに直結する話です。

ファインブランキング(FB加工)を採用する際は注意が必要です。V字型環状突起(Vリング)が被加工材を拘束するため、さん幅と送りピッチが一般プレスより広く必要になります。精度は高くなりますが、材料歩留まりが悪化するというトレードオフがあります。コスト計画ではこの点を必ず考慮してください。

参考:ミスミの技術情報にはブランクレイアウト設計の具体的な手法が掲載されています。

ブランクレイアウトの設計 | ミスミ技術情報

ブランク型プレスの品質を上げるファインブランキングという選択肢

通常のブランク型プレスでは、断面の約3分の1しかせん断面が得られません。これが製品に許容できない場合、二次加工(シェービング・ブローチ・リーマなど)が必要になり、工程数とコストが増加します。この課題を解決するのがファインブランキング(FB加工)です。

ファインブランキングは1920年代にスイスで開発された塑性加工法で、「静水圧効果」を利用しています。仕組みとしては、V字型の環状突起(Vリング)を設けた板押さえ(ストリッパ)で被加工材を上下からしっかり拘束し、極小のクリアランス(板厚の0.25〜0.5%。これは一般プレスの約10分の1の値)で打ち抜くことで、ほぼ100%のせん断面を得ます。100%のせん断面が得られるということは、切削加工に匹敵する平滑面が1回のプレスで出せるということです。これは使えそうです。

ファインブランキングのメリットは明確です。二次加工が不要になるため、工程数が減り、工程間の精度のばらつきも排除されます。自動車のATクラッチプレート・スプロケット・ブレーキパッド・パワーシートギヤなど、摺動部を持つ精密部品の量産で広く採用されています。ステンレス・炭素鋼・ハイテン材などの難加工材にも対応できます。

一方でデメリットも押さえておく必要があります。専用の油圧プレス機と専用金型が必要なため、イニシャルコストが高くなります。また、加工専用潤滑油の使用、作動油や油圧パッキンの定期交換、複雑な構造によるメンテナンスコストなど、ランニングコストも増加します。さらに前述の通り、材料歩留まりが一般プレスより悪化します。ファインブランキングは「高精度だから何でも向いている」わけではなく、量産規模と要求精度でコストが合うかどうかの判断が条件です。

参考:不二工機製造(FS WORKS)のコラムでは、ファインブランキングの仕組みから金型製作事例まで詳しく解説されています。

ファインブランキング加工とは?仕組みからメリット・デメリット | FS WORKS