フォーミング加工とプレス加工の違いと使い分けを解説

フォーミング加工とプレス加工の違いと選び方

プレス加工の金型費は「製品の形状が決まってから」ではなく、設計段階から金型コストが積み上がっています。

📋 この記事の3ポイントまとめ
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加工の基本的な違いを整理する

フォーミング加工はプレス・曲げなど複数工程を1台で連続実行。プレス加工は金型で高速大量生産が強み。それぞれ用途が異なります。

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コスト面での差を数字で把握する

順送プレスの金型費は試作で100万〜600万円に対し、フォーミング金型はシンプル構造で大幅に割安。材料歩留まりでも明確な差があります。

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現場に合った選定基準を知る

形状の複雑さ・ロット数・初期投資の許容範囲・材料ロスへの感度など、複数の軸で判断することが現場コスト改善の近道です。

フォーミング加工とプレス加工の基本的な仕組み

金属加工の現場でよく耳にする「フォーミング加工」と「プレス加工」は、どちらも塑性加工の一種ですが、その仕組みと得意とする領域は明確に異なります。まずは基本構造から整理しておきましょう。

プレス加工とは、専用の金型とプレス機械を組み合わせて、金属材料に強い圧力を加えることで目的の形状を得る方法です。加工の種類は「切る(せん断加工)」「曲げる(曲げ加工)」「絞る(絞り加工)」の3つに大きく分類されます。1回の加工サイクルは数秒以内で完結することも多く、大量生産において圧倒的な生産スピードを誇ります。

フォーミング加工は、フォーミングマシンを用いて、プレス(スタンピング)・曲げ・せん断などの複数工程を1台の機械で連続的・自動的に実行する加工法です。NC(数値制御)またはCNC(コンピュータ数値制御)機能を備えており、材料の送り出しから完成品の排出まで、プログラムに従って一気通貫で処理します。

これが基本的な違いです。

フォーミングマシンは大きく2種類に分かれます。板材や帯板材(幅3mm〜100mm程度、板厚0.05mm〜2.5mm)を加工するマルチフォーミングと、線径0.1mm〜5mm程度の線材を扱うワイヤーフォーミングです。ピン・クリップ・板バネ・止め輪・コイルなど、小〜中型の精密部品の量産に広く使われています。

フォーミングマシンにはスタンピング装置・フィード装置・フォーミング装置の3つが連なっており、フォーミング装置では360°あらゆる方向から曲げパンチを当てられるため、3次元の複雑形状も1工程で成形できます。これは従来のプレス単体では実現困難な動きです。

つまり、プレス加工は「スピードと量」、フォーミング加工は「複雑さと工程集約」が原則です。

参考:フォーミング加工の種類・特徴・適した材質について詳しく解説されています。

フォーミング加工のプレス加工に対する材料歩留まりの優位性

フォーミング加工がプレス加工よりも「実は材料を大幅に節約できる」という事実は、現場でも見過ごされがちなポイントです。知らないまま順送プレスを選び続けると、材料コストで毎月の損失が積み重なっていく可能性があります。

順送型プレス加工では、金型内で材料を送っていく際、製品を切り離すために「余肉(よにく)」と呼ばれる押さえしろが必要です。この部分は製品にならず、すべてスクラップになります。板幅の両端や工程間のつなぎ部分など、材料の相当部分が捨てられる構造になっています。

フォーミング加工では、このスクラップ部分がほぼ発生しません。帯材の幅をそのまま製品の幅に合わせて加工できるため、材料ロスが最小限に抑えられます。これは「材料歩留まり率の向上」を意味し、同じ重量の材料からより多くの製品を取ることができます。

材料コストは削減できます。

実際に、アドバネクス株式会社が公開しているアニメーション比較でも、同一形状の板バネをプレス加工で製造した場合と、マルチフォーミングで製造した場合とでは、スクラップとなる斜線部分の面積が大きく異なることが視覚的に確認できます。

これは「お金」に直結します。材料費が製品原価に占める割合は品目によって異なりますが、金属加工品では一般的に原価の30〜60%程度を材料費が占めることも多く、歩留まりの改善は製品単価の引き下げに直接効きます。試算してみるのが早いです。

参考:プレス加工とマルチフォーミング加工の材料歩留まりをアニメーションで比較しています。

プレスとフォーミング加工の違い | アドバネクス株式会社

フォーミング加工の金型費とプレス加工の金型費を比較する

「プレスの金型は高い」と現場でよく言われますが、その差がどれくらいなのかを数字で把握している人は意外と少ないです。この差が選定判断に直結するため、しっかり把握しておく必要があります。

順送プレス金型の費用相場は、試作レベルで100万円〜600万円、量産向けになると150万円〜千数百万円に上ることもあります。順送プレスは複数の加工工程を1つの金型セットにまとめる構造上、金型部品点数が多くなり、設計・製作コストが膨らみます。

一方、マルチフォーミング用の金型はシンプルな構造が特徴です。複雑な曲げ加工の大部分をフォーミング装置の曲げパンチが担うため、スタンピング(打ち抜き)用の金型形状を簡素化できます。部品点数が少ない分、金型製作費は順送プレスと比較して大幅に安価になります。

金型費が安いということは、いくつかの現実的なメリットをもたらします。まず、新製品開発や試作の初期投資ハードルが下がります。次に、設計変が発生した際の金型修正・再製作費用が抑えられるため、試行錯誤のコストが下がります。最後に、製品単価への上乗せが少なくなり、受注競争力が上がります。

これは使えそうです。

ただし、注意点もあります。フォーミングマシン本体の設備投資は必要です。また、プレス加工では金型交換が比較的シンプルなのに対し、フォーミングマシンの段取り替えにはスキルが求められる場面もあります。段取り時間はマルチフォーミングで約3時間程度かかることもあり、段取り頻度が高い場合は生産効率とのバランスを見る必要があります。

参考:マルチフォーミング金型が順送プレスより安価な理由と、具体的なメリットが解説されています。

金型費が安価で製造コストを削減 | 日本フォーミング株式会社

プレス加工の不良率とフォーミング加工の品質安定性

プレス加工は「金型で管理するから品質が安定している」と思われていることが多いですが、実態は別の角度からも見る必要があります。厳しいところですね。

日刊工業新聞が運営するMF-TOKYO2023特設サイトに掲載された調査によると、プレス加工中小企業の加工不良率は3〜5%という結果が示されています。生産数量が多い大量生産品においては、この不良率が莫大な損失コストにつながります。たとえば月産10万個の部品で3%の不良が出れば、毎月3,000個分の材料・加工時間・管理コストが丸ごと無駄になる計算です。

不良の主な原因は、金型の摩耗・変形、材質のばらつき、プレス速度の不均一、段取りミスなど多岐にわたります。複数の工程間で加工品を移し替える場合は、位置決めのズレも品質リスクになります。

フォーミング加工では、NC・CNCによる数値制御で材料の送りから加工・排出まで一貫して自動化されているため、工程間の移し替えによる位置ズレが発生しません。加工の再現性が高く、均一な品質を安定して維持できます。

加えて、スプリングバック(曲げ加工後に材料が弾性で戻る現象)への対応も整理しておく必要があります。特に高強度鋼板(ハイテン材)のプレス加工では、スプリングバックによる寸法精度不良が深刻な問題になることが多く、金型の修正に多大な時間と費用がかかります。フォーミングマシンでは独立したスライド調整機能により、スプリングバック量を現場で細かく補正できる機種も登場しており、対応の柔軟性があります。

品質安定化が条件です。

一方で、プレス加工がすべて品質面で劣るわけではありません。高い加圧能力が必要な絞り加工や厚板加工では、プレス機械の圧力能力がフォーミングマシンを上回ります。板厚2.5mmを超えるような素材、または深絞りが必要な製品では、プレス加工が品質・寸法ともに有利です。

フォーミング加工とプレス加工の現場での選定基準と独自視点

「どちらを選ぶべきか」という問いに対して、教科書的な答えだけではなく、現場目線で「引き金になる判断軸」を整理しておくことが実際の役に立ちます。これが本当に重要です。

まず、形状の複雑さで判断します。多方向への曲げが複数回必要な3次元形状、あるいはプレス加工で複数工程にわたる複雑な形状は、フォーミング加工が有利です。逆に、比較的シンプルな打ち抜きや深絞りが主体であれば、プレス加工の方がスピードとコスト効率に優れます。

次に、ロット数と金型投資のバランスで考えます。数百〜数万個規模の量産を長期継続するなら、プレス加工の高い金型費も量産数でならすことで製品単価が下がります。対して、試作・小ロット・多品種・設計変更が頻繁な案件なら、フォーミング加工の低い金型費と段取り替えの柔軟性が効いてきます。

判断軸 フォーミング加工 プレス加工
形状複雑度 複雑な3次元形状◎ シンプル〜中程度◎
金型費 低コスト◎ 高コスト(順送)
材料歩留まり 高い◎ スクラップ発生しやすい
大量生産スピード 中程度 高い◎
板厚対応(厚物) 2.5mm程度まで 厚板対応可◎
段取り時間 やや長い(約3時間) 比較的短い
設計変更への対応 柔軟◎ 金型修正コスト高

ここで、現場でほとんど語られない独自の視点をひとつ紹介します。「工法転換のタイミング」という観点です。

すでに順送プレスで量産している部品であっても、素材の高強度鋼板(ハイテン)への切り替えが検討される局面では、フォーミング加工への工法転換を同時に検討することが有効な場合があります。ハイテン材はスプリングバックが大きく、プレス金型の修正が何度も発生しがちです。この修正コストを加味すると、フォーミングへの切り替えが総コストで優れる可能性があります。

また、EV化に伴いモーターコイルやセグメントコイルなど銅材の精密曲げ需要が急増している中、マルチフォーミングマシンで汎用機のまま対応できる工程開発を進めている企業事例(東邦発条株式会社など)も出てきており、設備の有効活用という観点でも注目されています。

選定は形状と数量だけ見ればOKです、という時代ではなくなっています。材料種・金型修正コスト・段取り頻度・工法転換のタイミングなど、複合的に見ていくことが、現場のコスト最適化につながります。

参考:マルチフォーミング加工の5つのメリットと、プレス加工との詳細な比較が掲載されています。

高い精度と効率を誇るマルチフォーミング加工とは? | 東邦発条株式会社

参考:フォーミングマシンと順送プレスの比較表(金型費・加工スピード・材料ロス等)が確認できます。

フォーミングマシンと順送プレスの比較表 | 特発産業株式会社