振れ公差の測定方法と円周振れ・全振れを正しく使い分けるポイント
Vブロックで測定OKと思っていると、合格品が不良判定になることがあります。
振れ公差の測定方法を理解する前に知っておくべき基礎知識
振れ公差とは、部品をある軸を中心に回転させたとき、その表面がどれだけ変位するかを規制する幾何公差です。軸・ローラ・コロといった回転させて使う円筒部品に使われ、図面上では必ずデータム(基準軸)とセットで記載されます。これが基本です。
振れ公差と似た公差に「真円度」や「同軸度」がありますが、振れ公差との決定的な違いを押さえておく必要があります。真円度は単独の断面が真円かどうかだけを見るため、データムは必要ありません。一方、同軸度はデータム軸線に対して評価対象の「軸線」が同軸かどうかを規制します。振れ公差はデータム軸線を回転中心として、評価対象の「外表面」の振れ幅を規制するものです。つまり、対象が軸線なのか外表面なのかで公差の種類が変わります。
重要なのは、振れ公差の測定値は同軸度を代替して評価できる場合があるという点です。ただし、後述する「5節」で解説するように、振れ測定値をそのまま2倍にして同軸度と読み替えるのは誤りです。この点は現場で混同されやすいため、正確に理解しておくと後々の品質トラブルを防げます。
振れ公差は幾何公差の分類において「振れ偏差」に属します。JIS B 0021に基づき、公差記入枠には「振れ公差の記号」「公差値」「データム記号」を記入します。公差値の前にφ(直径記号)は付けません。これは公差域が直径ではなく、2円間の幅や2直線間の幅で表されるためです。
参考:幾何公差・振れ公差の図面記入ルールについて詳しく解説されています。
振れ公差は回転部品に使う幾何公差|円周振れ/全振れの違いと使い方 – アイアール技術者教育研究所
振れ公差の測定方法①:円周振れと全振れの違いを現場視点で整理する
振れ公差は「円周振れ」と「全振れ」の2種類に分かれており、この違いを間違えると測定の目的そのものがズレてしまいます。意外ですね。
円周振れは、部品を1回転させたときの「任意の1箇所の断面(母線1本)」における変位を規制します。たとえば、シャフトの中央部をダイヤルゲージで1点測定したときに針が振れた幅がそのまま測定値になります。測定断面を1本ずつ評価するため、テーパー形状やくびれ形状であっても適用が可能です。測定は特定の位置ごとに実施します。
全振れは、部品を回転させながら測定子を軸方向にトレースさせ、「表面全体」の変位を評価します。円周振れとは異なり、表面全体が均一に規制されます。たとえばひょうたん型のような複雑な輪郭形状では、円周振れだと任意の断面ごとにしか評価できませんが、全振れを使えば全体の形状誤差も含めて検出できます。これは使えそうです。
ただし、全振れはテーパー型やくびれ型の表面には適用できません。全振れの公差域が「2つの同心円筒面の間」または「2つの平面の間」で定義されているため、直円筒や平面端面以外では正しい評価ができないのです。図面に全振れが指示されていても、測定対象の形状を確認せずに測定を始めると、誤った判定につながるリスクがあります。
| 比較項目 | 円周振れ | 全振れ |
|---|---|---|
| 評価範囲 | 任意の1断面(母線1本) | 表面全体 |
| 測定方法 | 1点ずつ回転させて測定 | 回転+軸方向にトレース |
| 適用形状 | 円筒・テーパー・球面なども可 | 直円筒・平面端面のみ |
| 公差域 | 同心の大小2円の間(または2直線間) | 2同心円筒の間(または2平面の間) |
| 検出できるもの | 断面ごとの振れ | 全体の振れ+テーパー・角度誤差 |
参考:ミスミmeviyによる円周振れの定義・測定方法・真円度との違いについての解説記事です。
さぁ回りな、振れないで!−円周振れの意味と記号の使い方− | meviy(ミスミ)
振れ公差の測定方法②:ダイヤルゲージ+Vブロックで測定する手順と注意点
現場でもっとも手軽に振れ公差を測定できる方法が、ダイヤルゲージとVブロックの組み合わせです。特別な設備がなくても実施できるため、多くの加工現場で採用されています。
基本的な手順は次のとおりです。まず、データムとなる円筒部(軸受に挿入される部分など)をVブロックに乗せて固定します。次に、ダイヤルゲージの測定子を測定したい表面に当て、スピンドルの圧縮量を適切に設定します。そのまま部品を手で1回転させ、ダイヤルゲージの最大値と最小値の差(振れ幅)を読み取ります。この「最大値−最小値」が円周振れの測定値です。
ここで重大な落とし穴があります。90°のVブロックを使用した場合、「等径歪み円(おむすび形)」と呼ばれる特殊な形状が真円度ゼロとして見逃されることがあるのです。これは、5角形のおむすび形が90°Vブロックで回転したとき、Vブロックの溝に対する接触点の幾何学的な関係から振れがほぼゼロと表示されてしまう現象です。ダイヤルゲージを上方から当てた場合と側面から当てた場合で測定値が変わる原因のひとつもここにあります。
この問題を回避するには、以下の方法が有効です。
- 両センター台を使用する:センター穴を活用して両センターで支持することで、真の回転軸を基準にした測定が可能になります。一般的な円筒研削後の部品であれば、0.003〜0.005mm程度の振れを正確に確認できます。
- 異なる角度のVブロックで複数回測定する:90°と120°などで測定結果を比較すると、Vブロック特有の誤差を検出しやすくなります。
- 0.01mm以下の精度が必要な場合:ダイヤルゲージとVブロックの組み合わせは信頼性が低下します。後述する真円度測定機や三次元測定機を使うべきです。
また、ダイヤルゲージそのものの取り付け方にも注意が必要です。スタンドのアームが長すぎると、ダイヤルゲージの自重でアームがたわみ、測定誤差が発生します。測定子は被測定面に対して直角に当てることが基本です。測定前にゼロ合わせを実施し、数回の繰り返し測定で再現性を確認することも忘れないようにしましょう。
参考:ミツトヨによるダイヤルゲージを使った振れ測定の正しい手順と注意点が解説されています。
振れ公差の測定方法③:三次元測定機・真円度測定機を使った高精度な測定手順
ダイヤルゲージとVブロックによる測定では限界がある場合、三次元測定機(CMM)または真円度測定機を使います。精度が条件です。
三次元測定機(CMM)で円周振れを測定する場合の基本手順は次のとおりです。まず、軸受に挿入される部分の軸線をデータムとして設定します。測定したい位置にスタイラス(接触子)を当てて点データを取得し、ソフトウェアが最大・最小変位を自動計算して振れ量を算出します。全振れを測定する場合は、表面全体をトレースするよう測定点を増やして評価します。
三次元測定機の最大のメリットは、部品を回転させる必要がなく、複雑な形状の部品でも段取り替えなしに複数の幾何公差を同時に評価できる点です。接触式プローブを持つ門型CMMMの測定精度は約1μm程度であり、ダイヤルゲージ(通常0.01mm = 10μm分解能)と比べて格段に精度が高いといえます。
真円度測定機は、振れ公差の測定において最も精度が高い方法のひとつです。回転テーブルに測定ワークを乗せ、精密なスピンドルを回転させながら検出器で表面をトレースします。Vブロックのような接触形状による誤差がなく、データム軸線を回転テーブルの軸に正確に合わせることができます。0.01μm単位の分解能を持つ機種もあり、超精密部品の検査に適しています。
どの測定機を選ぶかは、要求される公差値と測定精度の目安(一般的に管理すべき公差値の1/10以下の精度が必要)によって決まります。例えば、公差値が0.1mmであればダイヤルゲージ(精度0.01mm)でも対応できますが、公差値が0.01mmになるとダイヤルゲージでは信頼性が確保できません。三次元測定機や真円度測定機の導入が必要になります。
| 測定方法 | 分解能の目安 | 主な用途 | コスト感 |
|---|---|---|---|
| ダイヤルゲージ+Vブロック | 0.01mm(10μm) | 現場での簡易測定・粗い公差 | 低 |
| ダイヤルゲージ+両センター台 | 0.01mm(10μm) | 現場での精度改善測定 | 低〜中 |
| 三次元測定機(CMM) | 約1μm | 複合評価・複雑形状 | 高 |
| 真円度測定機 | 約0.01μm〜 | 超精密・データム精度重視 | 高 |
参考:三次元測定機による振れ公差(円周振れ・全振れ)の測定手順と機器選定の比較情報が掲載されています。
三次元測定機による振れ公差の測定について解説 | CMM Guide
振れ公差の測定方法で誤解されやすい「同軸度との混同」問題
現場でとくに多い誤解が、振れ測定値を使って同軸度を判定する際の「2倍誤解」です。痛いですね。
同軸度はJIS B 0621にて直径(φ)で定義されています。基準軸に対して評価軸が芯ズレした量の「2倍」が同軸度の値になるため、「振れ測定値を2倍にすれば同軸度になる」という勘違いが生まれやすいのです。しかし実際には、振れ測定で得られる値はすでに「最大値−最小値」の差、つまり芯ズレの「最大と最小の差」を見ています。これは直径方向の変位幅を示すため、2倍にする必要はありません。
具体例で説明します。基準軸からの最大芯ズレ量が0.05mmだったとします。測定値の最大は+0.05mm、最小は−0.05mmとなり、振れ量(最大−最小)は0.10mmです。同軸度も直径定義なので0.10mmとなります。測定値をさらに2倍にすると0.20mmになってしまい、実際より厳しい判定を下すことになるわけです。結果として、本来合格品であるにもかかわらず不合格と判定してしまうリスクがあります。
また、振れ測定による同軸度評価には「真円度の影響」も含まれることに注意が必要です。Vブロックで振れを測定した場合、真円度の誤差も振れ量に加算されてしまいます。そのため、振れ測定で同軸度を評価する前提として「測定対象の真円度があらかじめ十分に小さいこと」を確認しておく必要があります。
振れ公差と同軸度は図面上の記号も似ていますが、目的と評価対象が根本的に異なる公差です。図面に同軸度が指示されているのに振れ測定だけで判定するのは、公差の解釈として正確ではありません。設計者の意図を読み取り、適切な測定方法を選ぶことが品質保証の第一歩です。つまり、図面の公差の種類を正確に読み取ることが前提です。
参考:同軸度の定義・振れ測定との関係・測定値の2倍誤解について詳細に解説されています。
機械加工021 ~同軸度と同心度 | taikick2020
振れ公差の測定結果を確実に活かす「データム設定」の正しい考え方
振れ公差の測定で最終的に結果の信頼性を左右するのが、データムの設定方法です。これが条件です。
データムとは、振れを測るときの「回転の基準となる軸」のことです。たとえば軸受に挿入される側の円筒部が基準(データムA)として図面に指示されていれば、測定時もその円筒部を基準に支持する必要があります。Vブロックや両センター台でデータム部を正確に支持しないと、別の部分を基準にした測定になってしまい、図面の意図と異なる評価結果が出ます。
2か所の軸受で支持される部品に対して「共通データムA-B」が指定されている場合は、両端の円筒部を同時にVブロック(またはセンター台)で支持し、その2点の共通軸を回転の中心として測定します。片側だけで支持して測定すると、共通データム軸線を正しく再現できないため、測定値そのものが無意味になります。
また、データムとなる部分に真円度の誤差がある場合も問題です。データム部の真円度が悪いと、Vブロック上での回転中心が一定しなくなり、測定するたびに結果が変わってしまいます。データム部の真円度も事前に確認しておくことで、測定の再現性が大きく改善されます。
現場での対策として有効なのは、測定前にデータム部をマイクロメータで数か所確認し、真円度の影響が少ないことを把握しておくことです。精密な測定が必要な場合は、真円度測定機でデータム部の形状を先に評価してから振れ公差の測定に進むのが確実な順序です。
振れ公差の測定は、測定器の操作よりも「何を基準として、何を評価しているか」を正確に把握することが本質です。図面を正確に読み解き、データムを適切に再現できるかどうかが、品質管理の精度を決める根幹になります。
参考:キーエンスによる幾何公差の種類・振れ公差のデータムに関する解説ページです。