表面粗さ測定方法JISの基礎とRa・Rz実践ガイド

表面粗さ測定方法のJISを正しく理解し現場に活かす

図面に「Rz」と書いてあっても、旧規格と現行規格では意味がまったく異なり、同じ部品を測っても数値に大きな差が出てしまいます。

この記事の3つのポイント
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JIS規格の変遷を正しく把握する

JIS B 0601は1982年・1994年・2001年・2013年と複数回改正されており、RzやRyなどのパラメータの定義が年代によって異なります。古い図面を扱う際は規格年代の確認が必須です。

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Ra・Rzの正しい使い分けを知る

算術平均粗さRaは全体の粗さ管理に向いており、最大高さ粗さRzは局所的な傷や凹みの評価に適しています。用途に応じた選択が品質の安定につながります。

合否判定ルールと測定手順を習得する

現行JIS B 0633では「16%ルール」と「最大値ルール」の2種類の合否判定基準が定められており、図面指示のないケースではカットオフ値の決定手順も踏まえた正しい測定フローが求められます。

表面粗さ測定方法の基本:JIS B 0601の概要と改正の歴史

 

表面粗さの測定に関する日本の基本規格は JIS B 0601 です。この規格は1982年に初めて制定され、その後1994年、2001年、そして2013年と計3回の大きな改正を経て現在に至ります。国際規格(ISO)との整合性を図るために改正が重ねられてきたという背景があります。

2001年の改正は特に大規模なものでした。それまで使われていた「最大高さ Ry」というパラメータが「最大高さ Rz」に名称変され、従来の「十点平均粗さ Rz」は規格から実質的に削除され「RzJIS」という別名に変更されました。つまり、同じ記号「Rz」が年代によってまったく異なる意味を持つという、非常に紛らわしい状況が生まれました。

現行のJIS B 0601:2013では、表面性状のパラメータは断面曲線・粗さ曲線・うねり曲線という3種類の輪郭曲線ごとに分類されています。金属加工の現場で日常的に使われる Ra(算術平均粗さ)や Rz(最大高さ)は、どちらも粗さ曲線から算出されるパラメータです。

まず規格の年代を確認する、というのが基本です。

古い設計図面を扱う際は、その図面がいつの規格に基づいているかを必ず確認してください。特に「Rz」という表記がある場合、それが2001年以降の最大高さを指すのか、1994年以前の十点平均粗さを指すのかによって、測定値の意味がまったく異なります。ミツトヨの技術資料でも「新旧規格による測定値の差が、無視できるほど小さいとは限らない」と明記されています。

ミツトヨ公式:表面粗さの基礎知識(パラメータ定義・旧規格との対比)

表面粗さ測定方法のJIS規格:Ra・Rz・RzJISの違いと使い分け

金属加工の現場で最もよく登場するパラメータが Ra(算術平均粗さ) と Rz(最大高さ粗さ) です。どちらも粗さ曲線から計算されますが、その算出方法と評価できる内容が根本的に異なります。

Raの仕組みと特徴について説明します。Raは、基準長さの範囲内における粗さ曲線の平均線からの偏差の絶対値を平均したものです。イメージとしては、山と谷すべての高さを平均した値で、表面全体のならしの粗さを示します。キズや突起などの一時的な異常値に左右されにくく、安定した測定結果が得られるのが強みです。切削面や研削面の一般的な品質管理には、Raが最もよく使われます。

Rzの仕組みと特徴はRaとは対照的です。Rzは基準長さ内で最も高い山の高さ(Rp)と最も深い谷の深さ(Rv)の和として定義されます。つまり「その範囲内での最大の凹凸幅」です。Raでは見えてこない局所的な深い傷や突起の存在を把握するのに役立ちます。シール面やパッキンの接触面など、わずかな凸凹でも気密性に影響する部位ではRzの管理が特に重要です。

RaとRzは別物です。

パラメータ 定義 適した用途
Ra 平均線からの偏差の絶対値の平均 一般的な品質管理・加工条件管理
Rz 最大山高さ+最大谷深さの和 シール面・接着面・局所傷の評価
RzJIS 上位5山+下位5谷の平均の和(旧JIS) 旧規格図面との互換確認

注意すべきは RzJIS です。これは現在のRzとは定義が異なり、1994年以前の旧JIS規格で用いられていた「十点平均粗さ」を指します。図面に「RzJIS」と記載されている場合は、現行のRzとは別の計算式が適用されます。同じ表面を測っても、RzとRzJISでは数値に無視できない差が出ることがあるため、現場での混同は品質トラブルに直結します。

ミスミmeviy:Ra・Rzの一覧と新旧規格の変換表(図面での使い分けも解説)

表面粗さ測定方法のJIS手順:カットオフ値の決め方と測定フロー

表面粗さを正確に測るには、測定機器を用意するだけでは不十分です。JIS B 0633:2001に定められた測定手順に沿って、適切な カットオフ値(λc) を設定することが不可欠です。カットオフ値とは、粗さ曲線とうねり曲線を分ける境界の波長のことで、この設定を誤ると、どれだけ高精度な粗さ計を使っても信頼性のある数値は得られません。

カットオフ値の設定手順は次の通りです。まず図面にカットオフ値が明示されている場合は、その値をそのまま設定します。図面に記載がない場合は、測定対象の表面を目視で観察し、粗さ曲線が「周期的」か「非周期的」かを判断するところから始まります。

🔍 非周期的な面(切削・研削面など)の場合のカットオフ値目安(JIS B 0633準拠)

Ra(μm) Rz(μm) カットオフ値λc(mm) 評価長さ(mm)
0.02以下 0.1以下 0.08 0.4
0.02〜0.1 0.1〜0.5 0.25 1.25
0.1〜2 0.5〜10 0.8(最頻値) 4
2〜10 10〜50 2.5 12.5
10〜80 50〜200 8 40

切削面や研削面の多くはRaが1 μm前後に収まることが多く、λc = 0.8 mm・評価長さ4 mmが標準的な設定となります。これはハガキの横幅(約10 cm)の25分の1程度の長さで測定するイメージです。

カットオフ値が正しければ測定は安定します。

測定結果が表に示した範囲から外れた場合は、カットオフ値を正しい段階に修正して再測定します。このフィードバック確認が省略されると、誤ったパラメータ値のまま合否判定が行われ、品質不良品を出荷してしまうリスクがあります。なお、カットオフ値λsはλcが決まると自動的に定まります(λc/λs ≒ 300の関係)。触針先端半径が2 μmであるため、λs は最小でも2.5 μmが採用されます。

KEYENCE:触針式表面粗さ測定機の測定手順(JIS B 0633準拠・ステップ別解説)

表面粗さ測定方法JISの合否判定:16%ルールと最大値ルールの実践

測定値が得られた後、それが規格内かどうかを判定するためのルールがJIS B 0633で規定されています。それが 16%ルール と 最大値ルール です。多くの現場では「数字が指示値以下なら合格」と単純に判断してしまいがちですが、実際のルールはより細かく設定されています。これは重要な点です。

16%ルールは、JIS規格で図面に特別な指示がない場合のデフォルトの判定ルールです。一つの評価長さから切り取ったすべての基準長さで算出したパラメータの測定値のうち、図面指示の要求値を超えるものが 16%以下 であれば合格と判断します。実務では下記のような簡易目安が使われます。

🔎 16%ルール 実務上の簡易判定基準

測定回数 超過件数の上限
最初の1個 指示値の70%を超えない
最初の3個 2個以上が超えない
最初の6個 2個以上が超えない
最初の12個 3個以上が超えない

最大値ルールは、図面に「max」と明示されている場合に適用されます。この場合は評価長さ全域で取得したすべての測定値が指示値以下でなければなりません。16%ルールより厳しい判定基準です。

どちらのルールかの確認が先決です。

現場でよくある落とし穴は、図面に何も書かれていないので16%ルールが適用されるにもかかわらず、「1回でも指示値を超えたら全数不合格」という過剰な判断をしてしまうケースです。逆に「最大値ルール」が適用される図面なのに16%ルールで判定し、本来不合格の部品を出荷してしまうケースもあります。どちらのルールが適用されるかを必ず確認することが大前提となります。

ミツトヨ:JIS 2001年規格の解説(16%ルール・最大値ルールの詳細)

接触式と非接触式:表面粗さ測定方法の選び方と現場での注意点

表面粗さの測定方式は大きく 接触式(触針式) と 非接触式(光学式) の2種類に分けられます。どちらも同じ部品を測れると思いがちですが、原理の違いから測定値に差が生じることがあります。使い分けを間違えると、正しい品質評価ができません。

接触式(触針式)は、先端半径2〜10 μmのダイヤモンド製触針を表面に沿って走査し、その上下変位を電気信号に変換してパラメータを算出します。JIS規格の基準測定法として位置づけられており、品質保証データとしての信頼性が高い方法です。金属・プラスチック・樹脂など材質を問わず使用できます。ただし、触針が直接接触するため、鏡面仕上げ品や柔らかい材料には微小な傷をつけるリスクがあります。精度は 1 μm程度 とされています。

非接触式(光学式)は、レーザーや白色光を表面に照射し、反射光の情報から凹凸を計算します。対象物に触れないため、傷をつける心配がなく、柔らかい材料や光学部品にも対応できます。また広範囲を短時間でスキャンして三次元的な面情報を得られる点が大きな利点です。一方で、精度は 10 μm程度 とされており、接触式に比べると分解能は低くなります。透明体や高光沢の面では乱反射により正確な測定が困難になる場合があります。

目的に合わせた選択が基本です。

比較項目 接触式(触針式) 非接触式(光学式)
JIS規格対応 ◎ 基準測定法 △ 参考に使える
精度目安 約1 μm 約10 μm
傷のリスク あり(微小) なし
測定速度 比較的遅い 速い
対象材質 ほぼ全材質 透明・高光沢は難
得意な評価 線粗さ(JIS準拠) 面粗さ・3次元評価

金属加工部品の品質保証書類にJIS規格準拠の数値が必要な場合は、接触式が第一の選択肢になります。傷をつけられない精密光学部品や、広範囲の面状態を把握したい場面では非接触式が適切です。なお、ミツトヨやキーエンスをはじめとした計測機器メーカーは、機器の選定相談窓口を設けており、用途に応じた機器選定のサポートを提供しています。

アキヤマNC:接触式・非接触式の原理と適用範囲の詳細比較

現場で見落としがちな表面粗さ測定の独自視点:測定方向と測定位置のズレが数値を狂わせる

規格の知識や正しい機器があっても、実際の測定現場では 「どこで・どの方向に測ったか」 によって数値が大きく変わるという事実を見落としている人が少なくありません。測定方向と測定位置の選択こそ、現場でRaやRzが「なぜかばらつく」原因の一つです。

JIS B 0633の手順では、測定方向の指示が図面にない場合、Raが最大になる方向に部品をセットする ことが求められています。つまり、加工の筋目(加工方向)に対して直角方向に触針を走査するのが原則です。旋盤加工品であれば軸方向に沿った送り目に対して直角に測る形になります。しかし、現場では「そのまま置いてさっと測る」というケースも多く、意図せず筋目の方向に沿って測定してしまうことがあります。この方向の違いだけでRa値が数倍異なることもあります。意外ですね。

もう一つの落とし穴が 測定位置のばらつき です。部品の端部は切削バイトの入退場時の影響で粗さが変化しやすく、中央部と端部では同じ表面でも測定値が異なることがあります。また、複数箇所を測定して判定する際は、JIS規格に従って目視で最も粗く見える箇所を優先的に選定する必要があります。感覚で「無難そうな場所」を選んでしまうと、本来の品質評価ができません。

測定位置と方向の確認が条件です。

さらにあまり語られない事実として、触針の摩耗による測定誤差があります。触針先端半径が規格値(通常2 μmまたは5 μm)を超えて摩耗していると、微細な谷の底まで触針が届かず、本来より小さいRz値が出てしまいます。「合格だった」はずの部品が実は不合格だった、というリスクです。JIS B 0651:2022(触針式表面粗さ測定機の特性)では触針の定期確認を求めており、精度保証のためには校正片を使った定期的な確認が欠かせません。測定機器を購入したメーカーの保守サービスや、JCSS認定機関による定期校正を活用することも品質管理の観点から有効な手段です。

💡 現場チェックリスト:測定精度を守るための3つの確認

  • ✅ 測定方向:加工の筋目に対して直角方向になっているか
  • ✅ 測定位置:目視で最も粗さが大きそうな箇所を優先して選んでいるか
  • ✅ 触針状態:校正片を用いた触針の定期確認を実施しているか

ミツトヨ:粗さ測定の基礎知識(触針特性・カットオフ・フィルタ処理の詳細)

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