相続登記の登録免許税、建物に免税措置は一切適用されない

相続登記の登録免許税と建物への課税ルールを正しく理解する

土地と一緒に申請しても、建物の免税措置ゼロ円はあなたが損をします。

📋 この記事の3ポイント要約
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建物の登録免許税は固定資産税評価額×0.4%が原則

相続登記にかかる登録免許税は「固定資産税評価額×0.4%」で計算。土地と建物はそれぞれ別々に評価額を確認し、1,000円未満を切り捨てた合計額が課税標準となります。

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建物は免税措置の対象外、土地との混同に注意

100万円以下の土地や数次相続の免税措置は「土地のみ」が対象です。建物の登録免許税は一切免税されないため、土地と一括で申請しても建物分は必ず課税されます。

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遺贈・未登記・共有持分など状況別に税率・手続きが変わる

相続人以外への遺贈は税率が2%と5倍に跳ね上がります。未登記建物は表題登記→所有権保存登記の2段階が必要で、それぞれ登録免許税の扱いが異なります。

相続登記の登録免許税とは:建物にかかる基本の仕組み

 

不動産の所有者が亡くなった際に行う名義変の手続き、これが「相続登記」です。この申請時に法務局へ納める税金が「登録免許税」であり、土地・建物を問わず原則として課税されます。登録免許税法に基づく国税の一種で、登記という行為そのものに対して課される仕組みです。

相続登記における登録免許税の基本的な計算式は次のとおりです。

登録免許税 = 固定資産税評価額 × 0.4%(税率1,000分の4)

つまり基本は0.4%です。税率はシンプルに見えますが、実務では「課税標準額」の計算に細かいルールがあります。具体的には、取得したすべての不動産の固定資産税評価額を合計し、1,000円未満を切り捨てた額が課税標準額となります。

課税標準額の計算例を示すと、土地の評価額が1,250万3,500円、建物の評価額が680万4,200円だった場合、合計額は1,930万7,700円です。ここから1,000円未満を切り捨てると1,930万7,000円が課税標準額となります。これに0.4%をかけると77,228円となり、さらに100円未満を切り捨てて、登録免許税は77,200円となります。

ちなみに計算の結果が1,000円未満になった場合は、最低税額として一律1,000円が適用されます。低額物件でも「ゼロ円」にはなりません。これが基本です。

固定資産税評価額の確認には、毎年4〜5月に自治体から届く「固定資産税・都市計画税 課税明細書」を使います。手元にない場合は、不動産所在地の市区町村役場窓口で「固定資産評価証明書」を取得します(取得手数料は1物件あたり300円程度が一般的です)。

参考:相続登記時の登録免許税計算の基本と端数処理ルールの詳細を法務局が解説しています。

法務局「登録免許税の計算」(PDF)

建物の相続登記の登録免許税:免税措置が一切適用されない理由

ここが実務上、最も見落とされやすいポイントです。令和9年3月31日まで延長されている相続登記の登録免許税免税措置は、土地のみが対象であり、建物には一切適用されません。

免税措置には大きく2種類あります。1つ目は「数次相続型」で、相続人が相続登記をしないまま亡くなってしまったケースで、一次相続の相続登記に係る登録免許税が免税になります(根拠:租税特別措置法第84条の2の3第1項)。2つ目は「100万円以下の土地型」で、固定資産税評価額が100万円以下の土地の相続登記が免税になります(根拠:同法第84条の2の3第2項)。

いずれも条件に「土地の所有権の移転の登記」と明記されており、建物の所有権移転登記は明示的に除外されています。この制度が「所有者不明土地」問題の解決を主目的として設計されたものだからです。建物については所有者不明になっても土地ほど社会問題化しにくいという立法上の判断があります。

建物は免税の対象外です。

つまり、固定資産税評価額が100万円以下の土地であっても、同時に申請した建物の登録免許税はきっちり課税されます。たとえば土地の評価額が80万円(→免税・0円)、建物の評価額が200万円の場合、建物分の登録免許税は200万円×0.4%=8,000円が必ず発生します。土地と建物を一括申請するからといって建物が免税になるわけではないという点は、顧客への説明でも注意が必要です。

また、免税措置の適用には申請書への法令条項の記載が必須です。「租税特別措置法第84条の2の3第1項(または第2項)により非課税」という文言を登記申請書に記載しないと、要件を満たしていても免税が受けられません。これは意外と見落とされるポイントです。

参考:土地のみに適用される2種類の免税措置の要件・適用期間を法務局が公式解説しています。

法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」

遺贈と相続では建物の登録免許税の税率が5倍違う

相続と遺贈では、同じ「名義変更」でも登録免許税の税率が大きく異なります。厳しいところですね。

登記原因 税率 具体例(建物評価額500万円の場合)
相続(法定相続・遺産分割) 0.4% 20,000円
相続人への遺贈 0.4% 20,000円
相続人以外への遺贈 2.0% 100,000円
贈与 2.0% 100,000円

相続人以外の人(例:内縁の配偶者、友人、慈善団体など)が遺言で不動産を受け取る「特定遺贈」の場合、税率は2.0%です。相続の場合の5倍になります。評価額が1,000万円の建物なら差額が16万円にのぼります。

つまり0.4%と2.0%は5倍の差です。

遺言書の内容によってこれほど税負担が変わることは、依頼者があらかじめ知っておかなければ「聞いてなかった」というトラブルにもなりかねません。特に遺言作成のサポートをしている不動産関係者は、遺言内容と受遺者の属性が税率に直結することを頭に入れておく必要があります。

また、相続人以外への遺贈では不動産取得税が別途発生する点も見逃せません。相続であれば原則非課税になる不動産取得税が、相続人以外の遺贈だと課税されるため、登録免許税と合わせてトータルの税負担で説明するのが親切です。

参考:遺贈にかかる登録免許税・不動産取得税・相続税の違いをわかりやすく解説しています。

アトム法律事務所「遺贈でかかる税金は?登録免許税・不動産取得税・相続税を解説」

建物が未登記だった場合の相続手続きと登録免許税の扱い

相続案件で意外と頻繁に遭遇するのが「未登記建物」です。古い家屋や増築した部分が登記されていないケースは少なくありません。未登記建物の場合、相続登記を直接申請することができないため、手続きが2段階になります。

  1. 建物表題登記土地家屋調査士が申請)→ 登録免許税は非課税(0円)
  2. 所有権保存登記(司法書士が申請)→ 固定資産税評価額×0.4%の登録免許税が発生

表題登記は建物の物理的な現況を登記簿に記録するもので、税金はかかりません。いいことですね。しかし、所有権保存登記には登録免許税が発生します。たとえば建物の固定資産税評価額が300万円なら、所有権保存登記の登録免許税は300万円×0.4%=12,000円です。

注意したいのは、固定資産税が「非課税」と記載されている建物でも、相続登記の際には登録免許税が課税されることです。固定資産税が非課税=登録免許税も非課税、という誤解が実務現場でも散見されます。

固定資産税非課税と登録免許税非課税は別物です。

また、未登記建物があっても相続税の課税対象から外れるわけではありません。「登記していないから相続税はかからない」という思い込みで申告漏れが起きると、追徴課税のリスクが生じます。未登記建物を発見したら、登記の前後問わず相続財産の申告に含めることを確認するよう、顧客への説明が重要です。

未登記建物の調査には、市区町村の固定資産課税台帳の確認が有効です。課税明細書に記載があるのに登記記録がない場合は未登記建物の可能性が高く、土地家屋調査士への相談が最初のステップになります。

参考:未登記建物の相続手続きの流れと費用の全体像を実務ベースで解説しています。

名義変更手続き情報サイト「実家の建物が未登記だった!相続登記は必要?リスクと手続きの流れ」

共有持分の建物相続と複数不動産一括申請で変わる登録免許税の計算

建物が複数人の共有名義になっているケースや、複数の不動産をまとめて相続するケースでは、登録免許税の計算に独自のルールが加わります。

共有持分の場合は、建物全体の固定資産税評価額に、被相続人が持っていた持分割合を乗じた額が課税標準になります。

例)建物の固定資産税評価額が600万円で、被相続人の持分が1/2の場合
課税標準額:600万円 × 1/2 = 300万円

登録免許税:300万円 × 0.4% = 12,000円

土地の場合、持分を乗じた後の額が100万円以下であれば免税措置の対象になりますが、建物は持分後の額がいくらであっても免税にはなりません。この点を混同しないよう注意が必要です。

複数不動産の一括申請については、同一法務局の管轄内で、同じ登記の目的・原因・相続人による申請であれば一括申請が可能です。一括申請すると、課税標準額を合算して計算するため、低評価額の物件が複数ある場合に最低税額(1,000円)が適用される件数が減り、トータルの登録免許税が若干高くなることがあります。チェスター税理士法人の試算では、評価額が96,385円の土地3筆を別々申請すると各1,000円×3件=3,000円になるのに対し、一括申請すると合算額約289,000円×0.4%=約1,100円と差額が生じるケースもあります。

これは使えそうです。

複数の土地・建物が混在している場合、一括申請と個別申請のどちらが有利かを事前に試算する習慣を持つと、顧客への付加価値ある提案ができます。

なお、複数の不動産を管轄する法務局が異なる場合は一括申請できないため、管轄確認を忘れずに行いましょう。法務局の管轄は、法務省の「登記・供託オンライン申請システム」の管轄検索機能で確認できます。

参考:共有持分の相続登記における申請書の書き方と登録免許税の計算方法を詳しく解説しています。

チェスター税理士法人「共有持分の相続登記を解説!申請書作成時のポイント、注意点」

相続登記の義務化と建物への登録免許税:2024年以降の実務対応

2024年4月1日から相続登記の申請が義務化されました。不動産(土地・建物)を相続で取得したと知った日から3年以内に登記しないと、正当な理由がない限り10万円以下の過料が科される可能性があります。

過料のリスクは土地だけでなく建物にも等しく及びます。顧客の中には「土地だけ先に登記して建物は後回し」という判断をするケースもありますが、建物も義務化の対象である点を改めて確認しておく必要があります。

義務化の対象は2024年4月1日以降に発生した相続だけではありません。それ以前に発生した相続も対象で、過去の未登記物件については2027年3月31日が最終期限とされています。期限には注意が必要です。

また、相続登記の義務化と並行して「相続人申告登記」という新制度も創設されました。これは遺産分割が完了していなくても、「自分が相続人である」と法務局に申告するだけで登記義務を一時的に果たせる制度です。この申告登記の費用は登録免許税がかかりません。

ただし相続人申告登記はあくまで暫定的な措置であり、正式な名義変更(所有権移転登記)ではないため、最終的には通常の相続登記が必要になります。相続人申告登記をした後に遺産分割が成立したら、改めて所有権移転登記を申請し、建物分の登録免許税を納付します。

登録免許税の納付方法は3種類あります。最も一般的なのは収入印紙による納付で、郵便局やコンビニで購入した印紙を登記申請書の別紙に貼って提出します。現金納付の場合は金融機関や税務署で手続きし、領収書を申請書に添付します。オンライン申請の場合はインターネットバンキングによる電子納付も可能です。

納付方法 特徴・注意点
収入印紙 最も一般的。郵便局・コンビニで購入。印紙に消印・割印は不可
現金納付 金融機関・税務署で納付。法務局の窓口では現金直接払い不可
電子納付 オンライン申請時のみ。インターネットバンキングを利用

なお、登録免許税を正しく計算したうえで固定資産税評価額の年度にも注意が必要です。登記申請日が属する年度(4月1日〜翌3月31日)の評価額を使用するのが原則であり、3月末〜4月上旬の申請では年度の切り替わりに要注意です。

また、賃貸物件など事業用の建物を相続登記した際に支払った登録免許税は、不動産所得の必要経費として計上できます。投資用不動産オーナーの相続案件では、税理士との連携でこの経費算入を漏れなく処理することも、顧客にとっての大きなメリットになります。

参考:相続登記義務化の正式な内容・過料の適用条件・相続人申告登記の制度を法務省が解説しています。

法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」

参考:国税庁による登録免許税の税率表(建物・土地・その他の登記種類別に整理されています)。

国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」

相続登記相談対応マニュアル