不整形地の評価を国税庁ルールで正しく減額する方法
台形の土地を「四角形だから整形地」と判断すると、相続税を数百万円余計に払う羽目になります。
不整形地の評価とは:国税庁が定める基本的な考え方
不整形地とは、正方形・長方形以外の形をした土地の総称です。国税庁の財産評価基本通達第20条では、三角地を含むすべての不整形地について、整形地よりも評価額を下げる計算方法を定めています。
意外に思われるかもしれませんが、台形の土地も不整形地として扱います。「角が多少歪んでいるくらいなら整形地だろう」と判断してしまうと、本来受けられる評価減をみすみす見落とすことになります。これは実務でも起きやすいミスです。
不整形地の相続税評価額は、基本的に次の式で求めます。
| 計算の構造 | 内容 |
|---|---|
| ①整形地として計算した価額 | 路線価 × 奥行価格補正率 × 地積(㎡) |
| ②不整形地補正率を乗じる | ①の金額 × 不整形地補正率(0.60〜1.00) |
| ③評価額の完成 | ②が相続税・贈与税計算に使う評価額 |
不整形地補正率が0.60まで下がるということは、路線価を基準とした通常の評価から最大で40%もカットされる可能性があるということです。評価額の40%分は、東京都内の住宅地なら数百万円〜1千万円以上になることも珍しくありません。つまり、不整形地補正を正しく適用するかどうかは、支払う税金の金額に直結します。
国税庁では路線価図や評価倍率表と合わせて、不整形地の評価に必要な各種補正率表を公表しています。実務で必ず参照すべき一次情報です。
国税庁 財産評価基本通達20「不整形地の評価」本文(公式・一次情報)
不整形地補正率の求め方:かげ地割合と地積区分表の使い方
補正率を決めるには3つの数字が必要です。「地区区分」「地積区分(A〜C)」「かげ地割合」の3つをセットで確認します。
地区区分の調べ方は路線価図を使います。路線価の数字を囲む記号の形が地区区分を示しており、何も囲まれていない場合は普通住宅地区です。
地積区分(A〜C)は、地積区分表で地区区分と面積を照合して判定します。普通住宅地区の場合、500㎡未満がA・500〜750㎡がB・750㎡以上がCとなります。
かげ地割合は、以下の計算式で求めます。
> かげ地割合 =(想定整形地の地積 − 不整形地の地積)÷ 想定整形地の地積
「想定整形地」とは、不整形地の全域を囲む、正面路線に垂直な直線を含む矩形(くけい)または正方形のことです。ちょうど不整形地の外側にぴったりかぶせる四角形をイメージすると分かりやすいでしょう。
たとえば想定整形地が540㎡で不整形地が400㎡なら、かげ地割合は(540−400)÷540≒25.9%、切り捨てて25%となります。この数値が大きいほど形が悪い、つまり補正率が低く、評価減が大きくなります。これが基本です。
具体的に数字を当てはめると、普通住宅地区・地積区分A・かげ地割合25%の土地は、不整形地補正率表により0.92が適用されます。かげ地割合が65%以上の場合は0.60(最大減額)まで下がります。
| かげ地割合 | 普通住宅地区A | 普通住宅地区B | 普通住宅地区C |
|---|---|---|---|
| 10%以上 | 0.98 | 0.99 | 0.99 |
| 25%以上 | 0.92 | 0.95 | 0.97 |
| 40%以上 | 0.85 | 0.88 | 0.92 |
| 55%以上 | 0.75 | 0.78 | 0.83 |
| 65%以上 | 0.60 | 0.65 | 0.70 |
補正率を確認する前に、必ず路線価図で地区区分を確認する、という手順を守りましょう。地区区分を誤ると補正率の数値が変わり、評価額も変わってしまうためです。
不整形地の4つの評価方法:国税庁が認める選択肢
国税庁の通達では、不整形地の評価に使える方法を4種類認めています。どれを使っても構わず、2つ以上適用できる場合は一番評価額が低くなる方法を選べます。税務署はそれを認めています。
方法①:整形地に区分して合計する
不整形地を複数の長方形・正方形に分割し、それぞれの評価額の合計に不整形地補正率をかける方法です。比較的シンプルな形状の土地に向いています。分割の仕方は評価者が自由に決められるため、最も評価額が下がる切り方を探すことが実務上のポイントです。
方法②:計算上の奥行距離を使う
不整形地の地積を間口距離で割って奥行距離を算出し、整形地として評価してから不整形地補正率をかける方法です。どんな形の不整形地にも使えるため汎用性が高く、実務で最も多く使われます。ただし、この計算上の奥行距離は想定整形地の奥行距離を上限とするルールがある点を忘れないようにしましょう。
方法③:近似整形地を使う
不整形地にできるだけ近い形の長方形(近似整形地)を設定し、その評価額に補正率をかける方法です。近似整形地は「はみ出す部分」と「くぼんだ部分」の面積がほぼ等しくなるように設定します。近似整形地の奥行距離を使うため、想定整形地の奥行距離と混同しないよう注意が必要です。
方法④:差し引き計算をする
近似整形地と隣接する整形地を合わせた全体の価額を計算し、そこから隣接する整形地の価額を差し引く方法です。4つの中で最も計算が複雑ですが、土地の形状によっては最も評価額を下げられるケースがあります。
ここで大切なのは「一番有利な方法を選ぶ権利がある」という点です。この選択を誤ると、余分な相続税を払い続けることになります。
国税庁 質疑応答事例「不整形地の評価—近似整形地を基として評価する場合」
不整形地評価の落とし穴:補正率が使えないケースと複数補正の注意点
不整形地補正率さえかければ完了、と思っていると痛い目を見ます。補正を組み合わせるルールには複数の注意点があります。
帯状部分がある土地は不整形地補正を適用しない
旗竿地のように細長い通路部分(帯状部分)が本体の土地とつながっている場合、国税庁の質疑応答事例では「帯状部分とその他の部分に分けてそれぞれ評価し、合計する」と定められています。この場合、全体を一つの不整形地として扱い不整形地補正率を使ってしまうと、帯状部分のせいでかげ地割合が過大になり、逆に評価額が下がりすぎて不合理な結果になります。国税庁はそれを認めていません。
つまり旗竿地の評価は、形の悪さを過剰に評価するのではなく、部分ごとに正確に評価するというルールです。
間口狭小補正率との併用ルール
間口が狭い不整形地には、不整形地補正率と間口狭小補正率を掛け合わせて使えます。ただし、この掛け合わせた結果が0.60を下回る場合は0.60が下限です。ここを見落として0.60以下の数値をそのまま使ってしまうケースが見受けられます。
奥行長大補正率との関係
奥行長大補正率と不整形地補正率は、原則として併用できません。間口に対して奥行が2倍以上の細長い土地に対しては、「不整形地補正率×間口狭小補正率」と「奥行長大補正率×間口狭小補正率」を比較し、どちらか低い数値(=評価減が大きい方)を使います。この選択を誤ると、本来より高い補正率を使ってしまい評価額が余計に増えることがあります。
| 組み合わせ | ルール |
|---|---|
| 不整形地補正率 × 間口狭小補正率 | ✅ 併用OK(下限0.60) |
| 不整形地補正率 × 奥行長大補正率 | ❌ 原則併用不可 |
| 奥行長大補正率 × 間口狭小補正率 | ✅ 不整形地補正率の代替として選択可 |
補正の組み合わせが複雑に感じるのは当然です。しかし実務では「有利な方を選ぶ」という大原則さえ押さえておけば、方向性は間違えません。
国税庁 質疑応答事例「不整形地としての評価を行わない場合(1)」(帯状地の取り扱い)
不動産従事者が実務で見落としがちな不整形地評価の独自視点:地積規模との二重補正と更正の請求
不整形地の評価をめぐって、実務でとくに重要なのに見落とされがちなポイントが2つあります。
不整形地補正と規模格差補正率の二重適用
平成30年1月1日以降の相続・贈与から「地積規模の大きな宅地の評価」という制度が施行されました。三大都市圏では500㎡以上、それ以外では1,000㎡以上の宅地が対象です。
この制度では、不整形地補正率などの各種補正率に加えて、さらに規模格差補正率を掛けることが認められています。三大都市圏で面積500〜1,000㎡未満の宅地の場合、規模格差補正率はおよそ0.80〜0.95前後になります。
たとえば路線価方式で求めた評価額5,000万円の土地に、不整形地補正率0.85・規模格差補正率0.85の両方を適用すると、評価額は5,000万円 × 0.85 × 0.85 ≒ 3,613万円まで下がります。通常の整形地での評価と比べると1,400万円近い差になります。これは使えそうです。
ただし、工業専用地域や市街化調整区域など、規模格差補正率が使えない地域もあるため、事前に適用要件を確認することが条件です。
国税庁 質疑応答事例「地積規模の大きな宅地の評価—計算例⑥(不整形地の場合)」
更正の請求で払いすぎた相続税を取り戻す
不整形地補正を見落として申告してしまった場合でも、申告期限から5年以内であれば「更正の請求」という手続きで税金を取り戻せます。払いすぎた税額の還付を受けることが可能です。
実際に、不整形地補正を見落として申告した案件が税理士の見直しで発覚し、数百万円の還付が認められた事例は珍しくありません。とくに、一般の税理士が申告した相続案件を土地評価の専門家が再チェックすると、不整形地補正の適用漏れが見つかるケースが一定数あります。
申告期限の5年という期限には注意が必要です。期限を過ぎると請求できなくなります。過去に不整形地を含む相続を扱ったケースで「補正をかけたかどうか不明」という場合は、申告書の内容を確認してみることをお勧めします。
不整形地の評価は、税理士の中でも専門性に差が出やすい分野です。土地評価に強い税理士や不動産鑑定士のセカンドオピニオンを活用することで、正しい評価額を導き出せる可能性があります。更正の請求は、税理士か国税局の窓口で相談するのが最初のステップです。