宅地の評価単位と使用貸借の判定が、相続税額を左右する
使用貸借で貸しても、相続税評価は1円も下がりません。
宅地の評価単位における使用貸借とは何か?基本の定義を整理する
宅地の相続税評価において、まず押さえておくべき大前提があります。それは、土地の評価単位は「1筆」ではなく「1画地の宅地」だという点です。
財産評価基本通達7-2では、宅地は「利用の単位となっている1区画の宅地」ごとに評価すると定められています。つまり、登記簿上で何筆に分かれていようと、実際に一体として使われている土地であれば、まとめて1つの評価単位として扱うのが原則です。これが基本です。
ここで問題になるのが「使用貸借」です。使用貸借とは、対価(地代)を受け取らずに、または固定資産税程度の低額な金額しか受け取らずに土地を貸す契約のことを指します。親が子に無償で土地を貸して家を建てさせるケースが代表例で、親族間では非常によく見られる形態です。
一般的な賃貸借(借地権が発生する契約)と使用貸借の最大の違いは、借主の権利の強さです。借地権が発生する賃貸借では、借主は法的に強く保護された権利を持ちます。一方、使用貸借の借主(使用借人)は、貸主との人的なつながりのみを基盤とした極めて弱い権利しか持ちません。そのため国税庁は「使用借権の価額はゼロ」として取り扱うと明示しています。
この原則が、評価単位の判定にも直結します。使用借権はゼロなので、使用貸借で貸している土地も、貸していない土地(自用地)と同じように評価するということです。
国税庁 質疑応答事例「宅地の評価単位−使用貸借」|使用貸借時の評価単位の具体的な判定方法を図解で確認できます
宅地の評価単位の「一体評価」と「別評価」を使用貸借パターンで理解する
使用貸借が絡む場合の評価単位は、大きく2つのパターンに分かれます。判定を誤ると評価額が数百万円単位でずれることもあるので、正確に把握しておくことが重要です。
【パターン①:所有地の一部を自己使用、残りを使用貸借で貸している場合】
たとえば、甲が所有する600㎡の宅地のうち、400㎡(A部分)を自宅として自己使用し、200㎡(B部分)を子の乙に使用貸借で貸しているとします。この場合、A部分とB部分は合わせて1画地として評価します。一体評価が原則です。
なぜかというと、B部分には使用借権しか存在せず、その価額はゼロだからです。実質的に甲が自由に使用・収益できる土地として扱われるため、両部分を分けて評価する理由がありません。
【パターン②:隣接する他人の土地を使用貸借で借りて、自己所有地と一体利用している場合】
甲が自己所有のA土地に加えて、隣接する乙所有のB土地を使用貸借で借り受け、A・B一体でアパートの敷地として利用しているとします。このケースでは、A土地・B土地はそれぞれ別々に評価します。
甲の権利(使用借権)は極めて弱く、いつでも返還を求められる可能性があるため、B土地を甲の評価に取り込むことはできません。B土地は乙の自用地として単独で評価されます。つまり借りた土地は合算されないということです。
この2つのパターンの違いは、「誰が所有しているか」という点にあります。自分が所有している土地の一部を使用貸借で貸している場合は一体評価。他人の土地を使用貸借で借りて使っている場合は別評価。これだけ覚えておけばOKです。
実務でよく見られる混乱は、「隣の土地を借りて一体利用しているから、まとめて評価できる」と誤解するケースです。相続申告の現場で、賃貸アパートの敷地として一体利用されていた2筆の土地をそのまま合算して評価してしまい、後から否認されるケースも報告されています。
国税庁 タックスアンサー No.4603「宅地の評価単位」|8パターンの評価単位判定基準を網羅した公式解説ページです
宅地の評価単位で使用貸借を「自用地評価」とすることの相続税上の影響
使用貸借によって土地を貸しているにもかかわらず、評価額が自用地と同じになる。このことが相続税の計算において、どれほどの影響を及ぼすのかを具体的に見ていきましょう。
たとえば、路線価が30万円/㎡のエリアに300㎡の宅地があり、子に使用貸借で貸しているとします。この土地の相続税評価額は、路線価方式によって計算すると概算で9,000万円(30万円×300㎡)です。
通常の賃貸借(借地権割合60%の地域)であれば、自用地価額から借地権価額を控除した「貸宅地評価」となり、9,000万円×(1-0.6)=3,600万円まで下がります。しかし使用貸借では借地権を設定していないため、評価額はそのまま9,000万円です。その差は5,400万円にもなります。
厳しいところですね。
子に「無償で土地を貸してあげている」という感覚で使用貸借を続けると、相続時には借地権控除のない自用地評価が適用され、相続税の負担が想定より大幅に重くなるリスクがあります。
また、忘れてはならない視点があります。使用貸借では「貸付事業用宅地等」としての小規模宅地等の特例(200㎡まで50%減)も適用できません。国税庁の通達上、使用貸借による使用借権はゼロと扱われるため、「事業のために貸している」とは認められないのです。ただし、一定の要件を満たせば特定居住用宅地等(330㎡・80%減)や特定事業用宅地等(400㎡・80%減)として適用できるケースもあるため、個別の状況確認が必須です。
税理士法人 S&Tコンサルティング「使用貸借により貸していた土地の評価」|使用貸借地の相続税評価における注意点を実例をもとに解説しています
宅地の評価単位と使用貸借が絡む「地積規模の大きな宅地」の判定落とし穴
使用貸借が絡む評価単位の話で、不動産実務者がとりわけ見落としやすいポイントがあります。それが「地積規模の大きな宅地」(旧・広大地評価)の適用面積の判定です。
地積規模の大きな宅地とは、三大都市圏では500㎡以上、それ以外の地域では1,000㎡以上の宅地を指します(財産評価基本通達20-2)。この特例に該当すれば、規模格差補正率による大幅な評価減が可能になります。意外ですね。
ここで重要なのが、面積要件の判定は「筆単位」ではなく「評価単位(1画地の宅地)」で行うという点です。
具体例を挙げます。甲が所有する1,000㎡の土地のうち、800㎡を自宅敷地(A部分)として使い、200㎡を子の乙に使用貸借で貸しています(B部分)。この場合、A部分とB部分は先に述べたとおり一体評価(1画地)となります。つまり評価単位は1,000㎡です。
三大都市圏内であれば500㎡以上の要件を満たしますので、1,000㎡全体に対して地積規模の大きな宅地の評価が適用できます。もし「使用貸借のB部分(200㎡)は除いて800㎡で判定する」と誤解していると、評価単位を正しく捉えられず、同じ土地でも評価額が変わってしまいます。
これは使えそうです。
逆に、他人の土地を使用貸借で借りて一体利用している(パターン②)場合は、あくまで自己所有のA土地のみが評価単位です。借りているB土地を加算して面積要件を判定してしまうミスが起こりやすいため、注意が必要です。
評価単位を正確に判定した上で地積規模の要件を確認するという順序を必ず守ることが、正確な相続税評価の第一歩です。評価単位が条件です。
宅地の評価単位の使用貸借における独自視点:「低額地代」は使用貸借とみなされる境界線
不動産実務者が意外と知らない落とし穴として、「地代を受け取っているから使用貸借ではないはず」という誤解があります。結論は違います。
国税庁の通達(昭和48年11月1日付 直資2-189)では、「地代が無償または固定資産税程度の低額である場合は、使用貸借として取り扱う」と定めています。つまり、年間10万円程度の地代を受け取っていても、それが固定資産税額以下であれば相続税上は使用貸借とみなされるのです。
「一応、少し地代をもらっているから大丈夫」と思っているケースが、実は使用貸借と判定されている可能性があります。その場合、借地権割合を控除できず、自用地価額のままで相続税が課税されます。
では、どうすれば通常の賃貸借として認められるのでしょうか。判断の目安となるのは「固定資産税の3倍超」です。通達上の明確な基準ではありませんが、実務上は固定資産税・都市計画税の合計額の3倍程度以上の地代が設定されていると、相当の地代や通常の地代として認められやすいとされています。
また、法人への使用貸借には別のリスクがあります。個人が法人に対して無償で土地を貸す場合、法人に対して借地権が認定課税される可能性があります。これを回避するためには「土地の無償返還に関する届出書」を税務署に提出する必要があります。個人間の使用貸借では届出書の提出は不要ですが、法人が絡む場合は必須です。ここは有料の専門相談が必要です。
現在、親族間や同族法人への土地貸借が絡む相続案件では、地代の水準・届出書の有無・評価単位の判定の3点が税務調査における主要な確認ポイントとなっています。相続開始前の段階で、取引形態を整えておくことが節税の観点から非常に重要です。
国税庁「使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて」(昭和48年直資2-189)|使用貸借と賃貸借の区分判定に関する根拠通達の全文です
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