教育資金の一括贈与はいつまで?廃止前に押さえる期限と注意点
1,500万円を孫に贈与しても、信託銀行への申込期限を1日でも過ぎると、非課税はゼロになります。
教育資金の一括贈与はいつまで?2026年3月31日で廃止が確定した経緯
教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置は、2026年(令和8年)3月31日をもって廃止されることが確定しました。2025年12月19日に発表された「令和8年度与党税制改正大綱」に延長の文字はなく、13年続いた制度がいよいよ幕を閉じます。
この制度は、祖父母や父母といった直系尊属が、30歳未満の子や孫に対して教育資金を一括贈与する場合に、受贈者1人あたり最大1,500万円まで贈与税が非課税となる仕組みです。2013年(平成25年)4月にスタートし、その後、2023年・2026年と2度の延長を経てきましたが、今回は延長なしの廃止が決まりました。
廃止の主な理由は「制度の利用が富裕層に偏り、格差固定化につながる」という政府・与党の判断です。国税庁の発表によると、直近の利用件数は約6,800件程度にとどまっており、1,500万円をまとめて拠出できる資力のある家庭にしか実質的に活用されていませんでした。NISAの拡充など、より幅広い層が使える制度への移行という流れも後押しとなっています。
「何度も延長されてきたから、今回もどうせ延びる」と思っていた方はいませんか。今回はその期待が裏切られた形です。廃止が確定である以上、制度の仕組みと期限を正確に理解しておくことが急務です。
参考として、制度の公式情報を文部科学省が公開しています。
文部科学省「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置について(PDF)」
教育資金の一括贈与の「期限」は申込日ではなく着金日が基準
「2026年3月31日まで」という期限について、多くの方が誤解しているポイントがあります。重要なのは、申込書を提出した日ではなく、実際に専用口座へ資金が着金した日が適用の基準日になるという点です。
実際にみずほ信託銀行は2026年2月10日をもって新規契約の申込受付を終了しており、三井住友信託銀行も申込期限を2月20日に設定していました。三菱UFJ信託銀行でさえ、新規契約の申込期限を3月17日に変更する告知を行っています。つまり、金融機関によっては「3月31日より数週間以上前に受付が締め切られている」という現実があるのです。
書類の不備や混雑による処理遅延が起きると、結果として期限を超過するリスクがあります。この点が今回の廃止期限で最も見落とされがちな落とし穴です。
手続きの流れを整理すると以下の通りです。
- ① 利用する金融機関(銀行・信託銀行・証券会社)を選ぶ
- ② 受贈者(子・孫)名義の専用口座を開設し、教育資金管理契約を締結する
- ③ 金融機関経由で税務署に「教育資金非課税申告書」を提出する
- ④ 贈与者が専用口座に資金を入金する(ここまで2026年3月31日中に完了)
- ⑤ 受贈者が教育費の領収書を金融機関に提出し、払い出しを受ける
口座開設だけ、書類提出だけでは非課税の適用を受けられません。着金まで完了が条件です。3月末直前の駆け込みは書類不備や窓口混雑のリスクが高く、手続きに余裕のある時間を確保するのが基本です。
教育資金の一括贈与で非課税になる範囲と「使えないお金」の落とし穴
最大1,500万円という非課税枠ですが、そのすべてを自由に使えるわけではありません。使途の区分と年齢による制限を正確に知らないと、課税される部分が生じます。
非課税の対象となる費用は、大きく2種類に分けられます。
- 🏫 学校等に直接支払う費用(上限1,500万円):入学金・授業料・施設設備費・給食費・修学旅行費など。幼稚園から大学・専門学校(学校教育法に定める機関)への支払いが対象です。
- 📚 学校等以外に支払う費用(上限500万円):学習塾・習い事の月謝、通学定期代、留学渡航費、教科書代など。上限が500万円であり、1,500万円全額を塾や習い事に使うことはできません。
非課税の対象外となる主な費用には、下宿の家賃・光熱費などの生活費、書店で購入した書籍(一部例外を除く)、同窓会費、自動車免許の取得費用などが挙げられます。「教育に関係しそうなもの」がすべて認められるわけではなく、国税庁が定める範囲内に限られます。
さらに、受贈者が23歳を超えると、塾や習い事などの「学校等以外への支払い」が非課税対象から外れます。つまり、500万円分の枠が実質的に使えなくなるケースが生じます。これは意外と見落とされがちな点です。
23歳以降も非課税で使えるのは、大学・大学院など正規の教育機関への学費と、国が指定する教育訓練給付金の対象講座受講費のみです。孫が大学3・4年生や大学院生のうちに贈与を受けた場合、使えるお金の範囲が想定より大幅に狭まる可能性があります。贈与額を決める前に、必ず使用予定の費目と年齢を照らし合わせて試算する必要があります。
国税庁「No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税」(最新情報の確認に)
教育資金の一括贈与の残額と贈与者死亡時に発生する相続税リスク
制度を使った後の「出口」についても、令和5年度(2023年度)の税制改正によって課税ルールが大幅に厳しくなっています。この改正内容を知らないまま手続きを進めると、想定外の税負担が生じる可能性があります。
まず、受贈者が30歳に達した時点で口座に残額がある場合、その残額は贈与税の課税対象となります。ただし、通常の贈与と同様に年間110万円の基礎控除を差し引いた金額に対して課税されます。たとえば残額が300万円であれば、「300万円 − 110万円 = 190万円」に対して贈与税が課されます。残額が110万円以下であれば申告不要です。
なお、30歳時点で大学・大学院などに在学中の場合は、契約を最長40歳まで延長できる特例があります。この点は知っておくと有利に働く例外ルールです。
次に、贈与者が死亡した場合の取り扱いです。令和5年4月1日以降の拠出分については、贈与者の死亡時点での口座残額(管理残額)が原則として相続財産とみなされ、相続税の課税対象となります。以前は「贈与者が亡くなっても残額は課税されない」という設計でしたが、それは過去の話です。
さらに厳しいのが、贈与者の相続税の課税価格の合計額が5億円を超える場合の扱いです。この場合、受贈者の年齢や在学状況にかかわらず、残額に相続税が課税されます。不動産を複数保有するオーナーや地主家庭では、土地・建物の評価額だけで相続財産の合計が5億円を超えるケースも珍しくありません。「自分は関係ない」と思い込まず、事前に資産総額のシミュレーションをしておくことが重要です。
加えて、孫が法定相続人でない場合(代襲相続人でない孫など)、相続税額に2割加算が適用される点にも注意が必要です。非課税制度を使っていたとしても、残額が相続税の対象になった場合、孫が負担する税額は他の相続人より2割高くなります。
令和5年度の税制改正詳細については、下記が参考になります。
税理士法人丸石事務所「教育資金贈与の特例はいつまで適用できる?要件と手続き方法を解説」
教育資金の一括贈与が終わった後の代替策:不動産従事者が知っておくべき3つの方法
制度が廃止されても、子や孫への教育資金の援助ができなくなるわけではありません。4月以降に活用できる代替手段を整理します。非課税枠の種類と特徴を理解した上で、家族構成・資産規模に合わせて選ぶのが原則です。
① 都度贈与(直接払い)の活用
教育費を必要なタイミングで直接学校等に支払う「都度贈与」は、一括贈与制度に関係なく、贈与税が課されません。これは措置法の特例ではなく、民法・税法上の大原則です。入学のたびに祖父母が学校へ振り込む形は、2026年4月以降も継続して使えます。1,500万円の枠にとらわれることなく、子ども1人にかかる実際の教育費(私立中高大一貫で総額1,500万円以上になることも珍しくない)を、必要な都度支援することが可能です。
② 暦年贈与(年間110万円の基礎控除)
年間110万円以下の贈与は、誰から誰への贈与でも贈与税がかかりません。ただし、2024年1月1日以降の贈与から、生前贈与加算期間が相続前「3年以内」から「7年以内」へ段階的に延長されました。相続対策として長期的に暦年贈与を活用する場合、より早期から計画的に進める必要があります。
③ 相続時精算課税制度(2,500万円の生涯非課税枠+年間110万円の基礎控除)
相続時精算課税は、累積2,500万円までの贈与に贈与税がかからない制度です。2024年の改正で、年間110万円の基礎控除が別途追加されました。この110万円分は相続時にも加算されないため、長期間にわたって贈与を続ける場合の実質的な節税効果が高まっています。たとえば、祖父母が毎年130万円を孫に贈与する場合、110万円は基礎控除で完全に非課税、残り20万円のみが2,500万円の枠に充当されます。
ただし、一度相続時精算課税を選択すると、その親からの贈与は撤回できず、ずっと同制度が適用される点に注意が必要です。
不動産オーナーや地主の方にとっては、相続税の全体戦略と照らし合わせながらどの手段を選ぶかが非常に重要です。「孫への教育支援」という一点だけで制度を決めるのではなく、相続税の概算・法定相続人の構成・資産構成を踏まえた専門家への相談を、4月以降の計画立案の第一歩とするのが得策です。
代替策の詳細な比較は以下が参考になります。