一級建築士と二級建築士の違い・給料の実態と年収差を徹底解説
一級建築士を持っていても、勤務先が小規模事務所なら二級建築士の大手社員より年収が低くなることがあります。
一級建築士と二級建築士の給料・基本スペック比較
不動産業界で働いていると、建築士という資格を持った社員や外部の設計パートナーと関わる機会は決して少なくありません。しかし「一級と二級で何がどう違うのか」を正確に理解している方は、意外と多くないのが実情です。まずは基本スペックから整理しておきましょう。
| 比較項目 | 一級建築士 | 二級建築士 |
|---|---|---|
| 管轄 | 国土交通大臣 | 都道府県知事 |
| 設計できる建物 | 制限なし(超高層・公共施設含む) | 小規模建物のみ(主に住宅・アパート) |
| 試験の総合合格率 | 約10%弱 | 約25%前後 |
| 必要勉強時間の目安 | 約1,000〜1,500時間 | 約500〜700時間 |
| 平均年収の目安 | 約700万円 | 約500万円 |
| 主な就職先 | 大手ゼネコン・大手不動産会社・組織設計事務所 | 中小工務店・設計事務所・ハウスメーカー |
一言で言えば、「設計できる建物の規模と種類」が最大の違いです。二級建築士は木造3階建て・高さ16m以下・500〜1,000㎡以下などの制限があるのに対し、一級建築士は超高層ビルから公共施設まですべてに対応できます。この業務範囲の差が、年収差へとそのまま直結しているわけです。
不動産従事者の視点で言えば、大規模物件の開発や確認申請に関わる案件では一級建築士の関与が必須となる場面が多く、求人ニーズも圧倒的に一級寄りです。資格の格は試験難易度にもはっきり表れており、一級は学科・製図合わせた総合合格率が10%を切る難関資格です。
これが基本です。
参考:一級建築士・二級建築士の試験合格率など公式データ
一級建築士と二級建築士の給料・平均年収の数字を読み解く
「一級の方が年収が高い」という話は広く知られています。ただ数字の中身を正確に把握していないと、実際のキャリア判断を誤るリスクがあります。
厚生労働省が公表している令和元年賃金構造基本統計調査によると、一級建築士の平均年収は約702.9万円(月給46.1万円+年間賞与148.7万円)です。一方、二級建築士については公的な統計データが存在しないため、各種調査の推計をもとに約500〜550万円程度とされています。日本の平均年収が約460万円であることを考えると、どちらの建築士も高水準といえます。
数字に少し驚きませんか?
ただしこれはあくまで平均値であり、実態はかなりの幅があります。2025年7月に発表された「建築士の収入・キャリア調査2025」(PRIZMA社調べ、対象1,007名)では、一級建築士の44.2%が年収700万円以上と回答しています。裏を返せば、一級建築士でも半数以上は700万円未満ということでもあります。
注目すべきは会社規模による差です。
| 企業規模(従業員数) | 一級建築士の平均年収 |
|---|---|
| 10〜99人 | 約576.7万円 |
| 100〜999人 | 約747.1万円 |
| 1,000人以上 | 約900.3万円 |
大企業(1,000人以上)と中小企業(10〜99人)の間には、同じ一級建築士でも年収差が約324万円も開いています。これはコンパクトなセダン1台分のローンに相当するくらいの差です。つまり資格の種類だけでなく、どの会社で働くかが年収を大きく左右するのです。
参考:会社規模別の一級建築士年収データ
資格手当という観点で見ると、二級建築士の資格手当は月々8,000〜30,000円、一級建築士は月々20,000〜55,000円が相場とされています。手当だけの差は月1〜2万円程度のこともあり、「資格を取ったのに給料がほとんど変わらない」という実感が生まれやすい背景もここにあります。
つまり手当だけが年収差の全てではありません。
一級建築士と二級建築士の給料に影響する「勤務先」の実態
不動産従事者にとって特に重要なのが、「どこに就職・転職するか」という勤務先の選択です。同じ資格でも、勤務先によって年収の天井が変わります。
一級建築士が最も年収を得やすいのは、大手ゼネコン・組織設計事務所・大手不動産デベロッパーといった業態です。1,000人以上規模の企業では年収900万円超が統計上の平均となっており、プロジェクトマネージャーや管理職に昇格すれば1,000万円超も現実的な射程に入ります。
二級建築士の主な就職先は工務店・中小設計事務所・ハウスメーカーです。ただし、住宅設計に強みを持つ二級建築士は、ハウスメーカーで設計担当として昇格し、インセンティブを積み上げることで600〜700万円レンジに到達するケースもあります。これは使えそうです。
以下に主な勤務先ごとの特徴を整理します。
| 勤務先の種類 | 主な対象資格 | 年収の目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 大手ゼネコン | 一級建築士 | 700〜1,000万円超 | 大規模案件・年功序列傾向 |
| 大手不動産デベロッパー | 一級建築士 | 700〜900万円 | 開発・監理・提案型業務 |
| 組織設計事務所(大手) | 一級建築士 | 600〜900万円 | 裁量大・独立志向者向け |
| ハウスメーカー | 二級建築士 | 500〜700万円 | インセンティブあり・提案営業と兼務も |
| 中小設計事務所・工務店 | 二級建築士 | 350〜500万円 | 地域密着・経験積みやすい |
注目すべき点は、不動産会社に在籍する建築士の評価のされ方です。不動産開発・仕入れの現場では、一級建築士の資格があると「建物の法的制限を自社内で判断できる人材」として重宝されます。確認申請の可否判断や用途地域に基づく設計条件の精査など、不動産の目利きに建築的知識を組み合わせられると、市場価値が一段上がります。
これはキャリアの大きなポイントです。
参考:建築士の勤務先と年収に関する包括的な情報
GATEN職|建築士の年収は低い?一級建築士と二級建築士の平均年収や男女・年齢・経験別の年収差
一級建築士と二級建築士の給料差を生む「年齢・経験年数」の要因
年収は資格と勤務先だけで決まるわけではありません。年齢と経験年数も重要な変数です。
厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)によると、建築士の年収は年齢とともに上昇し、55〜59歳がピークで約795.9万円に達します。20代のスタート時点では約372〜510万円程度であることを考えると、ピーク時との差は約285万円。キャリアを積むほど着実に上がる職種といえます。
経験年数別に見ると、以下の通りです。
| 経験年数 | 所定内給与から算出した年収目安 |
|---|---|
| 0年(新卒) | 約330万円 |
| 1〜4年 | 約339万円 |
| 5〜9年 | 約409万円 |
| 10〜14年 | 約447万円 |
| 15年以上 | 約515万円 |
経験5〜9年で年収が大きく跳ね上がる傾向があります。この時期はちょうど一通りの実務を経験し、任される案件の規模も上がるタイミングです。
不動産業界で活躍する建築士の場合、20代のうちに二級建築士を取得し、実務を積みながら30代前半で一級建築士に合格するルートが一般的です。一級を取得するための受験資格は「指定学歴+実務なし」または「二級建築士取得後に受験可能」など複数の経路があり、現場経験を積みながら受験準備を進めることができます。
痛いのは試験勉強の負担です。
一級建築士の試験は、1,000〜1,500時間の学習が必要とされます。働きながらこれをこなすには、1日2〜3時間の学習を2年間継続するレベルの覚悟が必要です。仮に30歳で一級取得に成功すれば、残りのキャリア30年間で得られる累積年収の上昇は非常に大きくなります。
長期視点で見ることが大切です。
参考:年齢・経験年数別の建築士年収データ
厚生労働省 職業情報提供サイト job tag|建築設計技術者の詳細情報
不動産従事者が知っておくべき「一級建築士と二級建築士の給料」に関する独自視点
ここまで一般的な年収データを見てきましたが、不動産業界に特化して考えると、また別の側面が見えてきます。
不動産会社やデベロッパーに在籍する建築士は、純粋な設計事務所と異なり「設計+営業提案+事業判断」の複合的な業務を担います。たとえばマンション開発の用地取得段階から、容積率・建蔽率・高度制限・日影規制といった建築基準法上の諸条件を読み解き、収益シミュレーションに落とし込む能力が求められます。この領域では一級建築士の資格は「法的判断の責任者」として機能し、資格手当以上の価値を生み出します。
逆に言えば、二級建築士のままでは担当できる物件の規模に上限が生まれます。3階建て以上・300㎡超の非木造建築物などが入ってくると、二級では設計監理の名義人になれません。不動産業界では中規模マンションや商業施設の開発案件も多く、そこで責任を持って動けるかどうかは一級の有無に直結します。
また不動産会社での建築士は、宅地建物取引士(宅建士)との「W資格保有者」として希少価値が高まります。建築士+宅建士の組み合わせは、設計から仕入れ・契約まで一気通貫で動ける人材として評価が高く、求人市場での交渉力も上がります。実際に転職市場では、W資格保有者は資格なしと比べて年収オファーが50〜100万円程度高くなるケースも報告されています。
これは知っておくと得です。
さらに、二級建築士として住宅設計に特化したキャリアを築く場合でも、注文住宅のコンサルティングや高付加価値なリノベーション提案など、「住宅のプロ」として差別化する道があります。特に相続不動産の活用提案や空き家対策など、地域密着型の不動産×建築の掛け合わせニーズは今後も増加が見込まれており、二級でも確実に活躍できるフィールドが広がっています。
建築士資格の取得や転職を検討している場合、現状の市場価値を把握したうえでキャリアの方向性を定めることが重要です。建設・不動産業界に特化した転職エージェントを活用すると、自分の資格・経験がどの勤務先でどの程度の年収になるかを具体的に確認できます。まずは「今の条件が適切かどうか」を知ることが、年収アップへの第一歩です。
参考:建築士資格と転職市場での評価について詳しく解説
建キャリNEXT|一級建築士・二級建築士・木造建築士の年収・市場価値比較
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