BREEAMとは:世界最古の環境認証が不動産価値を左右する
BREEAM認証のない物件は、近い将来テナントに選ばれず賃料も下がります。
BREEAMとは何か:読み方・正式名称・誕生の背景
誕生の背景には、1980年代後半の英国での環境意識の高まりがあります。当時、建築物が環境に与える影響を客観的に評価する仕組みが存在しなかったため、BREがその解決策として開発しました。以来35年以上にわたり、世界標準の環境認証として機能し続けています。
2023年6月時点で、認証が有効な建築物は世界93か国で34,245件にのぼります。欧州を中心に普及が進んでおり、フランスが最多件数を誇るなど、欧州の不動産市場では「BREEAM認証の取得はあって当たり前」という水準になりつつあります。
一方、日本での認証取得は現時点では物流施設を中心に少数にとどまっています。つまり日本の不動産従事者にとっては、今がまさに先手を打てるタイミングです。
日建設計総合研究所によるBREEAMの詳細解説(認証件数・評価カテゴリー・有効期限)
BREEAMとLEED・CASBEEの違い:不動産従事者が押さえる比較ポイント
世界には複数の建物環境認証制度が存在しますが、不動産従事者が特によく混同するのがBREEAM・LEED・CASBEEの3つです。それぞれ出身国や評価軸が異なります。
| 認証名 | 発祥 | 評価ランク | 特徴 |
|---|---|---|---|
| BREEAM | 英国(1990年) | Pass/Good/Very Good/Excellent/Outstanding | 欧州で最も普及。既存・新築・改修に対応 |
| LEED | 米国(1998年) | 認証/シルバー/ゴールド/プラチナ | 国際認知度が最も高い。グローバル企業向け |
| CASBEE | 日本(2001年) | S・A・B+・B-・C | 日本の気候・法規に最適化。国内普及率が高い |
BREEAMが特に優れている点は、「既存建物(In-Use)」への対応です。新築だけでなく、すでに運用中の物件にも適用できます。これはCASBEEにはない柔軟性であり、既存ポートフォリオを持つ不動産オーナーやファンドにとって重要なポイントです。
また、BREEAMは国際的な機関投資家、特に欧州系のファンドからの認知度が極めて高い認証です。日本の物流施設に欧州資本が流入している昨今、BREEAMを知ることは資金調達の文脈でも欠かせません。
日本のグリーンビルディング認証の取得数の90%超はCASBEEとDBJ Green Buildingが占めており、LEEDは少しずつ増加、BREEAMはまだ黎明期です。つまりBREEAMを理解している不動産従事者は、まだ少数派なのです。
JLL Japan:グリーンビルディング認証の取得件数推移と属性分析(BREEAM・LEED・CASBEEを網羅)
BREEAMの10の評価項目とスコアの仕組み
BREEAMの評価は「Pass(30%以上)」「Good(45%以上)」「Very Good(55%以上)」「Excellent(70%以上)」「Outstanding(85%以上)」という5段階のランクで決まります。スコアの合計は100%を上限とし、各カテゴリーのポイントに重み係数を掛けて合計点が算出されます。
評価カテゴリーは新築の場合、主に以下の10項目で構成されています。
- 🏥 健康・快適性(Health & Wellbeing):室内空気質、照明、温熱環境など
- ⚡ エネルギー(Energy):CO₂排出量削減、省エネ設備の採用
- 🚃 交通(Transport):公共交通アクセス、自転車設備の有無
- 💧 水(Water):節水設備、雨水・グレイウォーターの再利用
- 🧱 材料(Materials):環境負荷の低い建材の使用
- ♻️ 廃棄物(Waste):建設廃棄物の削減・リサイクル
- 🌱 土地利用と生態系(Land Use & Ecology):生物多様性への配慮
- 🏭 汚染(Pollution):外部への冷媒・排水・騒音の影響
- 🏢 マネジメント(Management):設計・施工・運用段階の管理体制
- 🔬 イノベーション(Innovation):追加加点項目
注目すべきポイントは、スコアの配点に重み係数がかかるため、「エネルギー」や「健康・快適性」といった項目が相対的に重要になることです。これが基本です。
項目が多く感じるかもしれませんが、すべてを一度にクリアする必要はありません。目指す認証ランクに応じた優先項目を絞ることが戦略的な対応になります。BREEAMアセッサー(公認評価者)に相談すると、どの項目に注力すべきか具体的なアドバイスが得られます。
株式会社ヴォンエルフ:BREEAMの評価項目・評価ランク・取得プロセスの詳細(日本語)
BREEAMが不動産の賃料・資産価値に与える具体的な影響
「環境認証は建物のブランド向上にはなるが、収益には直結しない」と考えている不動産従事者は少なくありません。しかしデータはその逆を示しています。
PwCの「Emerging Trends in Real Estate® Global Outlook 2021」の調査によれば、BREEAMの評価が高い建物は低評価の建物に比べて賃料プレミアムが6〜11%高く、より早く賃貸される傾向が確認されています。パーセンテージだけで考えると実感しにくいですが、坪単価20,000円の物件であれば1坪あたり1,200〜2,200円の上乗せがある計算です。
さらに具体的な事例として、JLLが2020年にロンドン中心部で実施した調査では、BREEAMの最高ランク「Outstanding」を取得したオフィスビルが市場全体の4〜11%の賃料プレミアムを記録しただけでなく、竣工前予約契約率が100%を達成しています。一方、標準的な物件の竣工前予約率は50%でした。これは使えそうです。
東京市場においても、内閣府経済社会総合研究所の分析では、環境認証付きオフィス物件が平均で約1.5%の賃料プレミアムを獲得していることが示されています。さらに、環境認証取得物件は非認証物件と比べて新規賃料が約4%高いというザイマックス総研の報告もあります。
反対のリスクも見ておく必要があります。JLLは「グリーンビルディング認証は耐震化と同じく『あって当たり前』の必要条件として不動産市場に定着する可能性は低くない」と指摘しています。認証を持たない物件が不動産市場で淘汰される「座礁資産化(ブラウンフィールド化)」のリスクは、J-REITや機関投資家が投資判断にESGを組み込んでいる現状では現実的な脅威です。
ザイマックス総研:東京オフィス市場における環境不動産の経済性分析(環境認証と賃料プレミアムの関係)
BREEAMの取得プロセスとGRESBへの活用:不動産運用担当者が知るべき実務ポイント
BREEAMの取得を検討する際に最初に把握しておきたいのが、「誰が評価するのか」という点です。BREEAMの認証評価はBREEAMライセンスを持つ「BREEAMアセッサー」と呼ばれる国際的な第三者評価者が行います。自己申告型ではなく、第三者が客観的に評価する仕組みです。これが原則です。
取得の流れは大きく3ステップです。まずBREEAMアセッサーによるプロジェクト登録と査定、次にBRE Globalによる品質監査(QA)、最後に認証マークの付与という順序です。費用面では、コンサルティングフィーに加えてプロジェクト登録費用と審査費用が必要で、延床面積や用途(住宅か非住宅か)によって変動します。
有効期限について重要な点があります。既存建物向けの「BREEAM In-Use」の有効期限は3年間です。新築(New Construction)は有効期限が特に定められていませんが、In-Useは3年ごとの更新が求められます。物件運用フェーズの管理スケジュールに組み込んでおく必要があります。
BREEAM認証とGRESB(グローバル不動産サステナビリティ・ベンチマーク)との連動も重要です。GRESBはJ-REITや私募ファンドが投資家から評価を受ける際の指標として機能しており、2021年のGRESBへのJ-REIT参加率はJ-REIT市場の98.6%に達しています。BREEAMなどのグリーンビルディング認証取得はGRESBスコア向上に直結するため、IR戦略の一環として取得を進めるケースが増えています。