CLT工法のメリットと耐震性・断熱性・工期短縮の全貌

CLT工法のメリットと不動産事業への活用ポイント

木造建築なのに、火災が起きても鉄骨より30分以上長く倒壊しないことがあります。

この記事でわかること
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CLT工法とは何か

ひき板を繊維が直交するよう積層接着した木質パネル工法。コンクリートの約1/5の重量でありながら、一般的な木造軸組工法の耐力壁比4倍以上の強度を持つ次世代建材。

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不動産事業者が注目すべきメリット

工期短縮・高い断熱性・耐震性・CO2削減効果による環境価値など、賃貸経営の差別化戦略につながるメリットを複数持つ。国の補助金制度も充実しており、コスト面の課題を軽減できる。

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活用できる国の支援制度

「CLT活用建築物等実証事業」では建築費の3/10〜1/2を助成。「JAS構造材実証支援事業」ではCLT使用量1m³あたり13万円の助成が受けられる(上限1,500万円〜3,000万円)。

CLT工法とは何か:構造と耐震性の基礎知識

CLT(Cross Laminated Timber)とは、ひき板(ラミナ)を繊維方向が直交するように交互に積層接着した、厚みのある木質パネルです。「直交集成板」とも呼ばれ、1995年頃にオーストリアで実用化が進んだ後、ヨーロッパ各国やアメリカ・カナダ・オーストラリアへと急速に普及してきた建材です。日本では2016年に国土交通省が中高層建築への活用を認める告示を公布したことで、本格的な普及フェーズに入りました。

CLTパネルは、最大で幅3m×長さ12mという大判サイズで製造できます。縦横どちらの方向にも均等な強度を持つため、床・壁・屋根のすべてを一体的に担える万能な構造材として機能します。これがRC造や在来木造と大きく異なる点で、建物全体の設計自由度を高めます。

不動産従事者が特に押さえておきたいのが耐震性能のデータです。震度6強を想定した実大振動台実験では、一般的な在来工法の建物が1階部分で約12cmの変形・大破に至ったのに対し、CLT建築物では同条件で約3cmの変形にとどまり、地震後も継続使用が可能でした。変形量の差は実に4倍です。これはビジネス的に言えば「震災後の修繕コストリスク」が大幅に下がることを意味します。

強度の根拠はその比重にあります。木材の比重は約0.3〜0.8で、コンクリートの2.3や鉄の7.8と比べると圧倒的に軽量です。それでいながら、比重当たりの強度は鉄やコンクリートの数倍から百数十倍になります。つまり、軽くて強い、という一見矛盾した性能を両立しているのがCLTの最大の特徴です。

大東建託の実証データによれば、CLT壁の強度は一般的な木造軸組工法の耐力壁と比較して4倍以上。つまり、壁の枚数を減らしながら同等以上の耐震性を確保できる設計も可能です。これが大空間・大開口のデザインにつながり、賃貸物件としての付加価値向上にも直結します。

CLT建築の10のメリット(日本CLT技術研究所)|実験データを含む耐震・耐火・断熱性能の詳細解説

CLT工法の断熱性と遮音性:賃貸物件の入居率を高めるメリット

不動産従事者にとって、入居者が長く住み続けてくれる物件づくりは経営の核心です。CLT工法はその点で、賃貸物件の居住快適性を大幅に高める力を持っています。

断熱性能から見ていきましょう。木の熱伝導率は、コンクリートの約1/13、鉄の約1/440です。厚さ9cmのCLTパネルは、約120cmのコンクリートと同等の断熱性能を発揮します。120cmというのは、だいたい成人の腰の高さに相当します。それほどの厚みがなければ得られない性能を、わずか9cmの木材が実現するのです。これは使えそうです。

この断熱性は、入居者の光熱費削減に直結します。エアコンの稼働時間が短くなり、夏の夜も室内が冷えすぎず、冬は足元から温かさを感じやすい室内環境が実現します。大東建託のシミュレーション解析では、CLT造建物は一般的なRC造と比較して、夏期の室内環境において同等以上の快適性を示すことが確認されています。

断熱性が高い物件は、省エネ性能をアピールポイントにできます。省エネ基準適合住宅の義務化(2025年4月施行)の流れと組み合わせれば、「光熱費が安い、環境にやさしい」という訴求軸が生まれ、入居者の意思決定に影響を与えます。

遮音性も重要なポイントです。CLTを用いた界壁は厚さ150mmの密実なパネルで構成されており、一般的な鉄筋コンクリート造と同等の遮音性能を確保しています。界床のLH-55という数値は、上の階の足音が「気にはなるが我慢できる」レベルで、集合住宅としては十分な性能です。

遮音性の確保は、入居者トラブルの防止にもつながります。騒音クレームは退去原因の上位に入ることが多く、防音性能の高さは長期入居率の維持という観点から見逃せない要素です。つまり、CLT工法は入居者満足度を底上げする構造を持っているということです。

さらに木の調湿性も見逃せません。CLTはJAS規格の中でも無垢の木に最も近い素材とされており、接着剤の使用量が少なく、有害なホルムアルデヒドの放出量がゼロ。アレルギーや健康への配慮を求める入居者ニーズにも応えられます。

CLT工法の工期短縮メリットと不動産投資の収益性

不動産投資における「時間」は、そのままお金です。工期が1ヶ月短縮されれば、家賃収入が1ヶ月分早く入り始め、建設中の利子負担も軽くなります。CLT工法はこの観点で、RC造に対して明確な優位性を持っています。

CLTは工場で精密に加工されたパネルとして現場に搬入されます。現場作業の中心は「組み立て」のため、現場での加工・調整・養生が大幅に省略できます。RC造の場合、コンクリート打設後に各階ごとに約5日の養生期間が必要ですが、CLT工法であれば構造部分の組み立てが1〜2日程度で完了します。これが基本です。

共同住宅の事業報告書のデータでは、CLTパネル工法はRC造と比較して全体工期が約2.0ヶ月短縮されることが確認されています。またCLT造とS造との比較では、CLT4日・S造10日という工期差が記録されており、鉄骨造と比較しても半分以下の施工日数で完了した実証事例もあります。

工期短縮は直接的な収益アップにつながります。仮に月額家賃収入が50万円の物件であれば、2ヶ月の工期短縮で100万円分の家賃収入が前倒しで得られる計算です。さらに施工中の借入利息や仮設費用の削減も加わります。

作業員数の観点からも優位性があります。CLT造の作業員数を100とした場合、RC造は約254、S造は約136という比較データがあります。職人不足が深刻化する昨今の建設業界においては、必要な人員を抑えられることは工程管理の安定性を高める要素にもなります。厳しいところですね。

CLTは工場プレカット品のため、天候の影響を受ける「コンクリート養生」がなく、雨天でも予定通りに工事が進みやすいという特徴もあります。これにより、竣工時期の予測精度が上がり、資金計画の立てやすさにつながります。

CLT建築物の事業性開発 事業報告書(日本CLT協会)|RC造とのコスト・工期比較の詳細データ収録

CLT工法の環境価値とCO2削減:SDGs対応で物件の差別化を図る独自視点

多くの不動産従事者がCLT工法を「環境にやさしい建材」として認識しています。しかし、その「環境性能」が具体的に何円・何トンの差を生むのかまで把握している人は多くありません。この数字を知っているかどうかで、物件の提案力に大きな差が生まれます。

大東建託のデータによると、CLT工法を採用した4階建て・12戸のマンションは、RC造と比較してCO2排出量が約150t-CO2削減されます。150tとは、約34世帯が1年間で排出するCO2量に相当します。東京23区の一般家庭が約34世帯集まって1年間生活した分のCO2を、1棟の建設で削減できるイメージです。

この数値は建設時のCO2排出量と、森林更新の促進による炭素固定量を合算したもので、木材が大気中のCO2を固着するという性質が大きく寄与しています。CLT工法は一般的な工法と比べて4倍以上の国産材を使用するため、林業の活性化を促し、森林の健全な管理サイクルにも貢献します。

この環境価値は、入居者への訴求軸になるだけでなく、機関投資家・ESG対応ファンドや企業の寮・社宅ニーズを取り込む際の武器にもなります。近年、大手企業はCSRやESG経営の観点から、オフィスや社宅の環境性能を重視する傾向が強まっています。CLT建築の「CO2削減150t」という数字は、そういった法人顧客に対して具体的な根拠として提示できます。

環境省の「新築建築物のZEB普及促進支援事業」では、CLTを使用する建築計画に対して優先採択枠が設けられています。ZEB(Net Zero Energy Building)化の費用が最大2分の1補助される制度で、事務所・飲食店などの賃貸物件も対象となります。CLT工法は省エネとの組み合わせで、補助金獲得のハードルを下げる可能性があるのです。

また、CLT建築物はZEH-M(ゼロエネルギーハウス・マンション)との相性も良好です。CLTの高い断熱性に太陽光発電を組み合わせることで、ZEH-M Ready基準を満たしやすくなり、余剰電力の売電収入を得ることも可能になります。これは、賃料以外の収益源として検討に値します。

CLT支援制度一覧(内閣官房)|令和7年度の補助金・助成金制度の最新情報まとめ

CLT工法の補助金制度と導入時のポイント:不動産従事者が知っておくべき支援策

CLT工法の最大の課題として挙げられるのが「材料費の高さ」です。CLT木材の価格は1m³あたり約15万円程度が目安で、RC造と比較すると躯体コストが高くなる傾向があります。しかし、国の補助制度をうまく組み合わせれば、このデメリットを相当程度カバーできます。

現在利用可能な主な制度は3つです。1つ目は「JAS構造材実証支援事業」で、CLT使用量1m³あたり13万円の助成を受けられます(上限は1棟1,500万円、延べ床面積3,000m²超の場合は3,000万円)。4階建て以上の共同住宅も対象で、建設コストを直接圧縮する効果があります。

2つ目は「CLT活用建築物等実証事業」です。建築費などの10分の3または2分の1を助成する制度で、設計・施工の実証データ提供が条件になりますが、規模の大きい物件ほど恩恵が大きくなります。

3つ目は先述した「新築建築物のZEB普及促進支援事業」で、CLT採用計画に優先採択枠があります。賃貸オフィスや商業施設を検討している場合は特に注目すべき制度です。

これらの制度を最大限に活用するには、計画の初期段階から施工会社と補助金の申請スケジュールを確認しておく必要があります。一般社団法人日本CLT協会が公開している「主なCLT助成制度一覧」(PDF)は最新情報が随時新されており、制度の窓口・申請期限・対象用途を一覧で確認できます。対応可能な施工会社を早期に選定することが条件です。

制度名 主な対象 助成内容 上限額
JAS構造材実証支援事業 4階建て以上共同住宅など CLT使用量1m³あたり13万円 1,500万円〜3,000万円
CLT活用建築物等実証事業 CLTを用いた建築物全般 建築費の3/10または1/2 事業規模に準じる
ZEB普及促進支援事業 事務所・商業施設など(住宅は除く) 省エネ設備費の最大1/2 CLT採用で優先採択枠あり

CLT工法を採用する際のもう一つの注意点は、対応できる施工会社が限られるという現実です。現在、国内でJAS規格に適合するCLT製造メーカーは8社程度。設計・施工に精通した会社を見つけるには、日本CLT協会や内閣官房のCLT一元窓口を通じて事前に情報収集することをおすすめします。地方ではさらに選択肢が絞られる可能性があるため、計画の早い段階から動き始めることが重要です。

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