長期優良住宅の認定基準・耐震性を正しく理解する
「耐震等級3相当」と説明した物件で、地震保険割引が50%から10%に激減した事例があります。
長期優良住宅の耐震性認定基準とは何か——等級と要件の全体像
長期優良住宅は「長期優良住宅の普及に関する法律」に基づき、劣化対策・耐震性・省エネルギー性など、合計9つ(一戸建ての場合)の性能項目すべてをクリアして初めて認定が受けられます。その中でも、今まさに不動産従事者が正確に把握しておかなければならないのが「耐震性」の基準です。
耐震性の要件は、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)に基づく「耐震等級」によって判断されます。等級は1〜3の3段階で、数字が大きいほど地震に強い設計です。長期優良住宅の認定を受けるためには、この耐震等級のうち一定以上のレベルを取得している必要があります。
各耐震等級の基準を整理すると、以下のとおりです。
| 耐震等級 | 耐震性の水準 | 同等の公共建物 |
|---|---|---|
| 等級1 | 震度6強〜7で倒壊しない(建築基準法の最低基準) | 一般住宅 |
| 等級2 | 等級1の1.25倍の耐力 | 学校・病院(避難所) |
| 等級3 | 等級1の1.5倍の耐力 | 消防署・警察署(復興拠点) |
耐震等級2とは、大規模災害時に避難所として使われる学校や病院と同等レベルです。耐震等級3は消防署・警察署と同じ水準で、地震後も住み続けられることを想定した最高ランクにあたります。
これが原則です。
加えて、認定には耐震等級の数値だけでなく、「どのような計算方法でその等級を算出したか」も問われます。この点が、現場で混乱を招きやすいポイントです。
参考:国土交通省「長期優良住宅認定制度の概要」
長期優良住宅の耐震性基準は2025年4月に変わった——改正の経緯と現行ルール
2025年4月の改正で「壁量計算でも耐震等級2でOK」になりました。しかし、この変更を知らずに旧ルールの感覚で対応してしまうと、申請や顧客説明にミスが生じる可能性があります。
改正の経緯を時系列で整理しておくと、把握しやすくなります。
- 2009年(制度発足当初): 壁量計算または許容応力度計算で耐震等級2以上が基準
- 2022年10月改正: ZEH水準の省エネ化で断熱材や太陽光パネルの導入が増加し、建物が重量化。壁量計算のみの場合は暫定的に耐震等級3が必要に変更
- 2025年4月改正: 壁量計算そのものが実態に即した方法へ刷新されたことにより、壁量計算または許容応力度計算で耐震等級2以上に戻る形で整理された
つまり2022年〜2025年3月の間は、「壁量計算=耐震等級3が必要」という暫定ルールが存在していたのです。これは意外ですね。この暫定ルール期間中の物件と、最新基準の物件では認定の根拠が異なります。顧客に説明するときは、いつの基準で建てられた物件かを確認するのが大切です。
現行(2025年4月以降)の基準をシンプルにまとめると下記のとおりです。
| 計算方法 | 必要な耐震等級 |
|---|---|
| 壁量計算(2025年4月以降の新基準) | 等級2以上 |
| 許容応力度計算 | 等級2以上 |
ただし壁量計算の場合、2025年4月以降の新しい計算方式(建物の仕様・重量の実態を反映した算定方式)に基づく必要があります。それ以前の旧壁量計算では等級2相当になっていても、新基準を満たしていないケースがある点に注意が必要です。
参考:国土交通省「長期優良住宅に係る壁量基準の見直し」(PDF)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001486502.pdf
壁量計算と許容応力度計算の違い——どちらを選ぶべきか
「どちらの計算方法でも耐震等級2以上なら認定を受けられる」と理解した上で、次に気になるのが2つの計算方法の実質的な差です。これが非常に重要なポイントです。
壁量計算は、床面積に対して地震・風圧力に必要な耐力壁の量を計算する、比較的シンプルな方法です。設計者の負担が少なく、コストや工期が抑えやすいメリットがあります。ただし、壁の配置バランスや接合部の強度、水平構面(床・屋根)の強さは詳細に考慮されません。実際に、長期優良住宅で耐震等級2を取得した物件でも、水平構面に使う釘の種類を間違えるだけで(N釘ではなくNC釘を使用するなど)、床倍率が基準を満たさなくなり、告示仕様違反として認定基準不適合になった事例が報告されています。施工管理には細心の注意が必要です。
許容応力度計算は、柱・梁・接合部・基礎など構造部材の一つひとつにかかる力を精密に計算する方法です。計算に時間とコストがかかる分、個別の建物の実態に応じた安全性が客観的に証明できます。また、大開口・大空間・吹き抜けといった間取りに対応しやすく、設計自由度が高いというメリットもあります。
どちらが優れているかは一概に言えません。コスト・スピード重視なら壁量計算、証明力・設計自由度重視なら許容応力度計算、というように目的に応じて使い分けるのが基本です。
不動産従事者として顧客に説明するときは「耐震等級2と一口に言っても、計算方法によって実質的な安全性の担保レベルが異なる」という点を正確に伝えることが求められます。
参考:環境・省エネルギー計算センター「長期優良住宅の耐震等級の改正はいつから?」
「耐震等級3相当」では地震保険割引が50%から激減する——見落としがちな金銭的リスク
「耐震等級3相当」という言葉を、耐震等級3と同じものとして顧客に説明していると、後々大きな問題になりかねません。
耐震等級3は、品確法に基づく第三者機関(登録住宅性能評価機関)が審査し、「建設住宅性能評価書」または「設計住宅性能評価書」を発行することで初めて公的に認められるものです。一方、「耐震等級3相当」とはハウスメーカーや工務店が自社の基準で計算した結果として主張するもので、公的な第三者証明がありません。
この違いは、地震保険の割引率に直結します。
| 区分 | 地震保険割引率 |
|---|---|
| 耐震等級1(証明書あり) | 10%割引 |
| 耐震等級2(証明書あり) | 30%割引 |
| 耐震等級3(証明書あり) | 50%割引 |
| 耐震等級3相当(証明書なし) | 建築年割引(10%程度)のみ |
仮に年間の地震保険料が25,000円だとすると、35年間の総支払額は等級3(50%割引)なら約437,500円、相当品(実質10%割引相当)なら約787,500円になります。その差は約35万円です。痛いですね。
加えて、「耐震等級3相当」では長期優良住宅の公式な耐震等級証明書として認められないため、住宅ローン控除の優遇措置を最大限に活かすこともできません。新築長期優良住宅の2025年時点での住宅ローン控除の借入限度額は4,500万円(13年間・年末残高0.7%控除)と設定されており、一般住宅の3,000万円と比べて大きく有利です。正式な認定・証明書がなければ、この差を享受できません。
不動産従事者として、物件の説明資料や重要事項説明での「相当」表記の扱いには、細心の注意が必要です。
長期優良住宅の耐震性を守る維持保全義務と認定取り消しのリスク
長期優良住宅は取得して終わりではありません。これが独自視点のポイントです。
認定後も「維持保全計画」に基づいた定期点検・修繕が義務付けられています。具体的には、「構造耐力上主要な部分」「雨水の浸入を防止する部分」「給水・排水の設備」について、10年以内ごとに点検を実施しなければなりません。さらに地震や台風などの大規模災害が発生した後は、随時点検が求められます。
なぜこれが重要かというと、義務を怠ったまま放置した場合、所管行政庁から改善指導を受け、それでも応じなければ認定を取り消される可能性があるからです。認定取り消しになると、住宅ローン控除・固定資産税の減額・不動産取得税の控除といった税制優遇措置がすべて遡って適用されなくなるリスクがあります。
さらに、調査拒否や虚偽の報告をした場合は、30万円以下の罰金に処される場合もあります。金銭的なペナルティだけでなく、信用上のダメージも深刻です。
不動産会社として長期優良住宅を顧客に紹介する際は、取得後の維持管理義務について丁寧に説明することが、長期的なトラブル回避につながります。特に中古の長期優良住宅を仲介する場合は、直近の点検記録と維持保全計画書の提出を前オーナーに求めることが重要です。維持保全計画書の確認は必須です。
長期優良住宅の点検履歴や維持管理状況は、物件の資産価値を評価する上でも重要な根拠になります。購入希望者への説明資料として、点検記録のコピーを提供できる体制を整えることをおすすめします。
参考:国土交通省「長期優良住宅認定制度の概要(PDF)」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001970912.pdf
熊本地震のデータが証明する耐震等級の実力——等級3が選ばれる理由
「耐震等級2で長期優良住宅の認定基準は満たせる」という理解は正しいです。しかし、実際の大地震におけるパフォーマンスのデータを見ると、等級3の優位性は明らかです。
2016年に発生した震度7の熊本地震(益城町)のデータでは、国土交通省の調査報告書をもとに以下のような事実が明らかになっています。
耐震等級1(建築基準法の最低基準)では、大地震で倒壊はしないものの損傷する可能性は十分あります。大規模な損傷が発生した場合は大規模修繕や建て替えが必要になることもあります。一方、等級3の住宅は熊本地震クラスの地震でも8割以上が無被害でした。いいことですね。
「倒壊しなければよい」という最低基準の発想と、「地震後も生活を継続できる」という高耐震の発想では、住宅の持つ役割が根本的に異なります。
この点を踏まえると、不動産従事者として顧客に提案する際は「認定基準をクリアしているか否か」だけでなく、「大地震後に住み続けられるか」という観点での耐震等級の説明が、信頼感の向上につながります。
耐震等級3の認定を受けた住宅であれば、地震保険料が50%割引になるだけでなく、長期にわたって資産価値が維持されやすくなるという観点からも、投資効率の高い選択です。
また、子育て世帯・若者夫婦世帯向けの「子育てグリーン住宅支援事業」など補助金制度を活用することで、耐震等級3取得に伴うコスト(目安で等級1比較時に約200万円程度の増加)の一部をカバーできます。補助金の活用はメモしておく価値があります。
参考:国土交通省「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会 報告書のポイント(PDF)」
https://www.mlit.go.jp/common/001155087.pdf
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