青色申告と白色申告の違いを不動産従事者向けに解説

青色申告と白色申告の違いを不動産従事者向けに徹底解説

白色申告でも、2014年以降は帳簿作成が義務なので「楽さ」はほぼ変わりません。

📋 この記事の3つのポイント
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最大65万円の控除が受けられる

青色申告(複式簿記+e-Tax)なら、不動産所得から最大65万円を控除できます。白色申告では控除はゼロ。年間の税負担に大きな差が出ます。

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3月15日が命運を分ける

青色申告承認申請書の提出期限は原則その年の3月15日。1日でも過ぎると、その年は強制的に白色申告になり、控除や赤字繰越のメリットがすべて消えます。

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赤字を3年繰り越せるのは青色だけ

大規模修繕などで赤字になった年も、青色申告なら翌年以降3年間、黒字と相殺できます。白色申告では赤字はその年で消滅し、節税機会を失います。

青色申告と白色申告の違い:基本的な仕組みと対象者

 

確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。どちらを選ぶかで、毎年の手取り額に数十万円単位の差が生まれることもあります。

白色申告は、青色申告の承認を受けていない納税者が行う、いわば「デフォルト」の申告方式です。必要書類が少なく、簿記の専門知識がなくても対応できる点が特徴です。しかし、かつては「帳簿付けが不要」と言われていた白色申告ですが、2014年1月以降はすべての白色申告者にも帳簿作成と保存が義務化されています。つまり「帳簿を付けなくていいから楽」というのは、もはや過去の話です。

一方、青色申告は税制上の優遇措置を受けられる申告方式です。対象となるのは、事業所得・不動産所得・山林所得のいずれかがある人に限られます。不動産賃貸業を営む方は、アパート・マンションを1室だけ持っている段階でも青色申告を選択することが可能です。これは意外と知られていないポイントです。

青色申告を選ぶには、事前に「青色申告承認申請書」を所轄の税務署に提出する必要があります。申請書を提出していなければ、自動的に白色申告になります。二つの申告方式の大枠を理解した上で、次のセクションから具体的な違いを見ていきましょう。

比較項目 青色申告(65万円控除) 青色申告(10万円控除) 白色申告
事前申請 必要 必要 不要
記帳方式 複式簿記 簡易簿記 簡易簿記
特別控除 最大65万円 10万円 なし
赤字繰越 3年間可能 3年間可能 原則不可
専従者給与 全額経費(上限なし) 全額経費(上限なし) 配偶者86万円・他50万円が上限
貸倒引当金(一括評価) 計上可能 計上可能 計上不可

国税庁が公開している青色申告特別控除の解説は、制度の正確な理解に役立ちます。

国税庁|No.2072 青色申告特別控除(公式)

青色申告の最大65万円控除:不動産で受けるための条件と金額の差

青色申告の最大のメリットは、やはり「青色申告特別控除」です。この控除額には65万円・55万円・10万円の3段階があります。どの段階になるかで、税負担に大きな差が出ます。

まず10万円控除は、青色申告承認申請書を提出済みであれば、不動産が1室でも適用されます。事業的規模(後述する5棟10室基準)を満たしていなくても受けられるため、副業として区分マンションを1室だけ保有している方でも対象になります。これは基本中の基本です。

55万円・65万円控除になると、条件が加わります。まず「事業的規模」であること、つまりアパート・マンションなら10室以上、独立家屋なら5棟以上の賃貸物件を保有していることが必要です(いわゆる「5棟10室基準」)。さらに複式簿記での記帳と、貸借対照表・損益計算書の提出が求められます。この2条件を満たした上でe-Taxによる電子申告を行うと、65万円控除になります。紙の申告書を提出すると55万円止まりになるため、10万円分の差が生まれます。

65万円控除と0円(白色申告)の差は、所得税率によって実際の節税額が変わります。課税所得が695万円超900万円以下のケースでは所得税率が23%ですから、65万円×23%=約15万円分の節税になる計算です。住民税(10%)と合わせると、年間で約21万円の差になります。これは使えそうです。

  • ✅ 青色申告10万円控除 → 区分マンション1室からでもOK(複式簿記不要)
  • ✅ 青色申告55万円控除 → 5棟10室以上+複式簿記+貸借対照表の提出が必要
  • ✅ 青色申告65万円控除 → 55万円控除の条件に加え、e-Taxでの電子申告が必要
  • ❌ 白色申告 → 特別控除ゼロ

e-Taxの利用開始は、スマートフォンとマイナンバーカードがあれば手続きできます。ICカードリーダーが不要になった今、ハードルはかなり下がっています。

国税庁|青色申告承認申請書の提出手続(A1-8)

青色申告の赤字繰越3年と白色申告の違い:不動産大規模修繕で差が出る場面

不動産賃貸業では、定期的に大きな出費が伴います。築古物件の外壁補修、給排水設備の交換、屋根の葺き替えなど、数百万円規模の修繕費が発生することも珍しくありません。こうした年に赤字となった場合、青色申告と白色申告では翌年以降の税負担に大きな差が生まれます。

青色申告を選んでいる場合、その年の損失(純損失)を翌年から最大3年間にわたって繰り越すことができます。翌年以降に黒字が出ても、繰り越した赤字と相殺できるため、課税所得を大幅に圧縮できます。

具体的なイメージで示すと、たとえば今年に外壁補修で300万円の赤字が出たとします。翌年は家賃収入が好調で200万円の黒字、翌々年も150万円の黒字だったとしましょう。青色申告なら、繰越損失を活用して翌年・翌々年の所得をゼロまたはマイナスにできるため、2年分の所得税・住民税の支払いをほぼゼロに抑えられる可能性があります。白色申告の場合は赤字が出た年で損失が消えるため、翌年からは黒字分にそのまま課税されます。赤字繰越は青色申告のみの特権です。

なお、白色申告でも「被災事業用資産の損失」や「変動所得による損失」については例外的に繰り越せる場合がありますが、通常の不動産修繕費による赤字はこれに該当しません。原則として赤字の繰越は不可と考えておく必要があります。

大規模修繕を前提とした築古物件を複数保有している方ほど、青色申告への移行メリットは非常に大きくなります。税理士への相談と合わせて、検討することをおすすめします。

弥生|青色申告と白色申告の違いとは?それぞれのメリットを解説

青色申告の専従者給与と貸倒引当金:不動産従事者だけが使える節税ポイント

青色申告には、控除額の違い以外にも、不動産賃貸業ならではの節税手段が2つあります。専従者給与と貸倒引当金です。

まず専従者給与について解説します。帳簿管理や入居者対応などで配偶者や家族を手伝わせている場合、その給与を経費として計上できます。白色申告では配偶者への控除上限は年間86万円、その他の親族は年間50万円が上限です。これに対して青色申告では、労働の実態に見合った金額であれば上限なく全額を経費にできます。

たとえば、配偶者が月20万円(年間240万円)で帳簿作成・入居者対応・物件管理を担っているとします。白色申告なら86万円しか経費計上できませんが、青色申告なら240万円すべてを経費にできます。その差は年間154万円です。厳しいところですね。

ただし青色専従者給与を経費計上するには、事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出しておく必要があります。また、その専従者が年間6カ月超、その事業に専ら従事していることが条件になります。届出書の提出前に支払った給与は遡って経費にできないため、家族に手伝ってもらっている方は早めに手続きすることが重要です。

次に貸倒引当金についてです。入居者の家賃滞納が続いた場合、青色申告者(事業的規模)は「一括評価」による貸倒引当金を経費計上できます。計上できる金額は、年末時点の売掛金(未回収の家賃)残高の合計額の5.5%以下が目安です。白色申告では一括評価による計上は認められていないため、これも青色申告ならではのメリットです。

賃料滞納リスクのある物件を多く保有している方にとっては、実際の損失が確定する前から損失見込みを経費として処理できる点で、節税効果を先取りできます。

  • 📌 専従者給与の届出書提出先:所轄の税務署
  • 📌 提出タイミング:事業開始または専従者が業務に就いた日から2カ月以内
  • 📌 貸倒引当金(一括評価):青色申告かつ事業的規模のみ適用可能

国税庁|No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除(公式)

青色申告に切り替える手順と3月15日の期限:不動産の確定申告で失敗しないために

青色申告のメリットがわかっても、手続きを誤ると「その年は白色申告しか使えない」という状況になってしまいます。手順と期限の正確な理解が条件です。

青色申告を行うには、まず「青色申告承認申請書」を所轄の税務署に提出します。この申請書は、国税庁のウェブサイトからダウンロードするか、税務署の窓口でもらうことができます。記入内容はそれほど複雑ではなく、氏名・住所・事業の種類・簿記方式の選択などを記入します。

提出期限に注意が必要です。すでに不動産賃貸業を営んでいる方が翌年分から青色申告を適用したい場合、「その年の3月15日まで」に申請書を提出しなければなりません。この期限を1日でも過ぎると、その年は自動的に白色申告になってしまいます。もし1月16日以降に新たに賃貸を開始した場合は、開始日から2カ月以内であれば申請できます。

なお、一度承認を受けた後は毎年申請する必要はありません。青色申告の取り消しや事業廃止の手続きをしない限り、継続して青色申告を使えます。これは問題ありません。

55万円・65万円控除を目指すなら、複式簿記の習得または会計ソフトの導入が現実的な選択肢です。freee会計、弥生会計、マネーフォワードクラウド確定申告などのクラウド型ソフトは、不動産所得に対応した仕訳テンプレートが充実しており、複式簿記の知識がなくても入力できる設計になっています。こうしたサービスの多くは月額1,000〜3,000円程度で利用でき、65万円控除の節税効果と比較すれば費用対効果は十分に高いといえます。

  • ✅ ステップ1:青色申告承認申請書を税務署に提出(3月15日までに)
  • ✅ ステップ2:帳簿方式を選択(10万円控除なら簡易簿記、65万円控除なら複式簿記)
  • ✅ ステップ3:e-Taxの利用登録を行う(マイナンバーカードがあるとスムーズ)
  • ✅ ステップ4:会計ソフトで日々の収支を入力し、年間の収支を管理する
  • ✅ ステップ5:確定申告期間(2月16日〜3月15日)にe-Taxで申告書を送信する

不安な点は最寄りの税務署や税理士に確認するのが確実です。税理士に依頼した費用も「経費」として計上できるため、節税メリットを試算した上で相談を検討してみてください。

freee|青色申告と白色申告の違いは?メリット・デメリットやおすすめの申告方法を解説



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