外国人不動産購入の規制と今後の法改正を完全解説

外国人不動産購入の規制と実務対応を不動産従事者が押さえるべき全知識

外国人のお客様が「別荘として使いたい」と言った瞬間、外為法の届出義務が発生するのをご存じですか。

📋 この記事の3ポイントまとめ
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現在の規制は「ゼロ」ではない

外国人の不動産購入を直接禁止する法律はないが、外為法・重要土地等調査法・犯収法など複数の義務が不動産業者にも課されている。違反すれば罰則あり。

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2026年度から国籍届出が義務化

登記申請書への国籍記入が2026年度早期に施行予定。外国人取引のある不動産会社は書類確認フローの見直しが急務となっている。

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居住者か非居住者かで手続きが大きく変わる

在留カードを持つ外国人は「居住者」扱いで外為法届出が不要。一方、海外在住の外国人が別荘を購入する場合は投資目的とみなされ届出が必要になる。

外国人不動産購入に対する現行規制の全体像と誤解されやすいポイント

「外国人の不動産購入は規制なし」——この認識は半分正しく、半分誤りです。

現在の日本には、外国人の不動産取得を直接禁止する法律は存在しません。土地・建物ともに、国籍やビザの種類を問わず、日本人と同じ手続きで所有権を取得できます。これは世界的に見ても珍しく、実質的に外国人が無制限に土地を購入できる国はマレーシアと日本の2カ国のみとも言われています。

ただし、「直接禁止する法律がない」ことと「何の規制もない」ことはまったく別の話です。外国人との不動産取引には、①外為法(外国為替及び外国貿易法)、②重要土地等調査法、③犯収法(犯罪収益移転防止法)、の3つの法的枠組みが複雑に絡み合っており、それぞれに届出義務・確認義務・罰則規定があります。

不動産従事者が「規制なし」と思い込んだまま取引を進めると、知らぬうちに法令違反の片棒を担ぐリスクがあります。これが原則です。

特に見落とされやすいのが「居住者」と「非居住者」の区別です。外為法では、日本国内に住居を持ち、生活の拠点が日本にある人を「居住者」と定義しています。在留カードを持って日本で暮らしている外国人は「居住者」です。一方、海外に居住しており、観光や短期滞在で来日した外国人は「非居住者」となります。

この区別が、外為法の届出義務の発生有無を決定づけます。「外国人だから全員届出が必要」という勘違いも、「外国人だから全員不要」という勘違いも、どちらも実務ではNGです。

また、WTO(世界貿易機関)のサービス貿易一般協定(GATS)により、日本は加盟時に外国人の不動産取引を制限する「留保」をしませんでした。これが、他国のように「外国人は新築のみ」「購入に政府承認が必要」といった強い規制を導入しにくい根本的な理由になっています。

オーストラリアでは外国人は新築物件しか購入できず、フィリピンでは土地の所有権自体が認められていません。カナダは2023年から外国人の住宅購入を原則禁止し、当初2年の時限措置を2027年1月まで延長しました。日本の規制の緩さは、こうした国際比較をすると際立って見えます。

参考:外国人への不動産販売における実務上の注意点(田宮合同法律事務所)

外国人に不動産を販売する際に注意すべきこと|三井住友トラスト不動産

外国人不動産購入と外為法の届出義務——別荘・セカンドハウスには要注意

外為法の届出が必要なケースを、不動産従事者として正確に把握しておくことは必須です。

非居住者が日本国内の不動産を取得した場合、取得から20日以内に日本銀行を経由して財務大臣に「権利の取得に関する報告書」を提出しなければなりません。この報告書の提出を怠った場合、外為法第55条違反として50万円以下の過料が科される可能性があります。

届出が必要です。これが大原則です。

ただし、以下の4つのケースに該当する場合は届出が免除されます。

  • ①「自分または家族が居住するための住宅」として取得する場合
  • ②国内で非営利目的の業務を行う非居住者が、その業務のために取得する場合
  • ③非居住者本人の事務所用として取得する場合
  • ④他の非居住者から取得する場合(すでに非居住者が所有していた物件の売買)

注意が必要なのが①の「居住用」の解釈です。「別荘」「セカンドハウス」「バケーション用」は、この「居住用目的」に該当しません。本人が常時居住しないために「投資目的の資本取引」とみなされ、届出が必要になります。

つまり、「居住用と言っていたのに実は別荘だった」という場合、非居住者本人だけでなく、仲介業者も確認義務を果たしたかどうかが問われます。取引の際には、購入目的を書面でしっかり確認しておくことが現場レベルの対策として有効です。

なお、この報告書の作成・提出は、取得者本人のほか、仲介業者など居住者である代理人が代わりに行うことも可能です。外国語対応が難しい顧客の場合、業者側でサポートする体制を整えておくと、顧客満足度の向上にもつながります。

参考:非居住者が日本国内の不動産を取得した際の外為法上の手続きについて(財務省公式)

非居住者による本邦の不動産等取得に係る報告|財務省

外国人不動産購入と重要土地等調査法——特別注視区域では罰則が発生する

2022年9月に全面施行された「重要土地等調査法(重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律)」は、不動産業者が特に注意すべき法律のひとつです。

厳しいですね。

この法律は外国人の土地購入を直接禁止するものではありませんが、防衛省・自衛隊施設、米軍施設、海上保安庁施設、原子力発電所、重要港湾、空港などからおおむね1,000メートルの範囲内に「注視区域」が設定されています。さらに重要度が高い場所は「特別注視区域」に指定され、ここでは土地・建物の所有権移転をともなう契約を締結する前に、内閣府への事前届出が義務付けられます。

⚠️ 事前届出を忘れた場合・虚偽の届出をした場合の罰則は、6か月以下の懲役または100万円以下の罰金です(法第26条)。さらに、機能阻害行為(通信妨害・施設への侵入準備など)に対する中止命令に従わない場合は、2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科せられます。

対象区域の指定は2022年末の第一次指定から順次拡大されており、2025年末時点で全国583カ所が指定済みです。

不動産従事者として見落としてはならないのが、この法律は外国人に限らず日本人にも適用されるという点です。つまり、外国人取引だけ注意していればよいわけではありません。

ただし、2023年度の公表結果では、指定区域内での全取得件数のうち外国人・外国法人による取得は約2.2%にとどまっており、特に中国が54.7%、韓国が13.2%、台湾が12.4%という内訳が明らかになっています。安全保障上の懸念が高まっている背景のひとつです。

不動産の重要事項説明書には、この法律に基づく区域指定の有無を記載する必要があります。「特別注視区域内かどうか」は、内閣府のウェブサイトで確認できます。物件の所在地を事前にチェックするフローを社内で標準化しておくことをおすすめします。

参考:重要土地等調査法の概要と不動産取引への影響(LIFULL HOME’S Business)

重説に追加された重要土地等調査法とは?不動産取引への影響を解説|LIFULL HOME’S Business

外国人不動産購入に伴う2026年度からの国籍届出義務化——不動産会社が今すぐ準備すべきこと

規制の流れが、急速に変わっています。

2025年12月16日、法務省は不動産の所有権移転登記にあたり、国籍情報の提供を義務化すると正式発表しました。2026年度早期の施行が予定されており、登記申請書に国籍記入欄が新設されます。この義務は外国人だけでなく、日本人も含む全申請者が対象です。

なぜ日本人も対象になるのでしょうか?

理由は明快で、外国資本が日本国籍を持つ人物を名義人として不動産を取得するケースや、帰化した元外国人との区別を行うためです。全員を対象にすることで、制度の実効性を担保する狙いがあります。

また、2026年4月からは外為法の省令改正により、これまで居住目的を含む一部のケースでは届出が不要だったものが、届出対象が拡大される方向で整備が進んでいます。さらにデジタル庁は2027年度を目処に、収集した国籍情報を一元管理する「不動産関係ベース・レジストリ」の整備も計画しています。

なお、収集された国籍情報はプライバシー保護の観点から登記簿には記載されません。行政内部で活用される情報として管理される仕組みです。

🏢 不動産会社が今すぐ取り組むべき3つのこと

対応項目 具体的な内容
書類チェックリストの 外国人顧客向けにパスポート・在留カード・国籍証明書類を確認するリストを整備
契約書・重要事項説明書の見直し 日本語版が正本であることの明記、転売禁止条項の検討
社内研修の実施 外為法・重要土地等調査法・国籍届出義務化の3つを担当者全員に周知

これは使えそうです。

登記申請時に国籍証明書類の提出が求められる場合に備えて、取引開始の早い段階で書類を揃える習慣を社内に定着させることが重要です。特に海外居住の外国人との取引では、宣誓供述書や公証書類の取得に時間がかかるため、スケジュール管理にも注意が必要です。

参考:国籍記入義務化に向けた不動産会社の対応ポイントを解説(LIFULL HOME’S Business)

不動産登記の国籍記入が義務化!外国人取引で不動産会社が準備すべきこととは|LIFULL HOME’S Business

外国人不動産購入取引の実務フロー——犯収法対応から決済・税務まで

外国人との不動産売買では、通常の取引フローに加えて確認すべき事項が数多くあります。順を追って整理します。

まず契約前の段階で、犯収法(犯罪による収益の移転防止に関する法律)に基づく本人特定事項の確認が義務です。購入者が個人の場合は「氏名・住所・生年月日」、法人の場合は「名称・本店所在地・実質的支配者」を確認します。日本に居住する外国人の場合はパスポートや在留カード、海外居住者の場合はパスポートや外国政府・国際機関発行の書類が対象です。

次に登記手続きです。日本人の場合は住民票印鑑証明書があれば手続きが進みますが、外国人の場合は在留資格によって必要書類が異なります。

🗂️ 購入者別の必要書類早見表

購入者区分 住所証明 署名・印鑑証明に相当するもの
国内居住の外国人(中期在留者) 住民票 印鑑証明書
国内居住の外国人(短期在留者) 宣誓供述書(在日大使館認証) サイン証明書
海外居住の外国人 宣誓供述書(本国公証人認証) サイン証明書または宣誓供述書
台湾・韓国出身者 各国の住民登録証明書 各国の印鑑証明書(制度あり)

この書類準備が、外国人取引の中で最も時間がかかる工程です。

決済については、海外からの送金(被仕向送金)が関わる場合、着金まで2〜3営業日かかるのが一般的です。契約書上の決済日に着金が間に合わないリスクがあるため、決済日は余裕を持って設定するか、送金スケジュールを事前に書面で確認しておくことが重要です。

税務面では、非居住者または外国法人が不動産を購入した場合、納税管理人の選任が必要です。固定資産税・所得税など各種税務手続きの代理人として機能するもので、不動産の所在地を管轄する税務署長に「納税管理人届出書」を提出します。不動産会社や税理士が納税管理人に就くケースもあります。

また、非居住者・外国法人から不動産を買い取る側の業者は注意が必要です。購入対価の支払いの際、売主が負担すべき所得税および復興特別所得税を源泉徴収する義務が買主に発生します(税率10.21%)。これを知らずに代金全額を支払ってしまうと、後から買主が追徴課税を受けるリスクがあります。

参考:外国人の不動産売買に関する規制と業務対応(全日本不動産協会)

外国人の不動産売買・購入に規制はある?取引のポイントと注意点|全日本不動産協会

外国人不動産購入の規制強化の今後の展望——不動産業者が備えるべき変化

規制の議論は、2026年以降も続きます。

2026年3月2日付の日本経済新聞の報道によれば、政府は外国人のマンションなどの住宅購入についても議論する有識者会議を新設する方針を固めました。2026年夏をめどに基本的な方針をとりまとめ、法規制に向けた骨子案を作る予定とされています。

注目すべきは、規制強化の動きが「安全保障」から「住宅価格」の文脈にも広がっている点です。東京を中心とした新築マンション価格の高騰と、外国人投資家による購入の増加が結びつけられて報じられることが増えました。一般社団法人不動産協会が2025年11月25日に、購入したマンションの引き渡し前の転売を禁止する対応方針を正式に発表したのも、こうした流れの一環です。

意外ですね。

ただし、日本がカナダやオーストラリアのように「外国人の不動産購入全面禁止」に踏み切る可能性は、専門家の間でも低いと見られています。前述のWTO・GATSの制約に加え、インバウンド投資の促進という経済政策との矛盾が生じるためです。外国資本が日本の不動産市場を下支えしている側面も否定できません。

一方で「緩やかな規制強化」の流れは確実に続きます。現在進行中の制度整備をまとめると、以下のとおりです。

📌 2025〜2027年に予定される主な制度変更

時期 内容
2025年7月〜 国土利用計画法の届出書式に国籍等の記載欄追加(法人)
2026年4月〜 外為法省令改正により外国人不動産取得の届出対象を拡大
2026年度早期 不動産登記時の国籍記入義務化(個人・法人とも)
2027年度目処 「不動産関係ベース・レジストリ」による国籍情報の一元管理

不動産業者として重要なのは、これらの変化を「他社より先に把握し、先に体制を整えること」です。法改正対応が遅れると、外国人顧客へのサービス品質に影響が出るだけでなく、コンプライアンス上のリスクも生まれます。

制度が変わるたびに、国土交通省や日本銀行・財務省の公式サイトで最新情報を確認する習慣を持つことが大切です。また、外国人との取引が多い会社であれば、外国人不動産取引に詳しい司法書士・弁護士・税理士と顧問契約を結んでおくことが、実務上の大きな安心材料になります。

参考:外国人の不動産取得をめぐる新たな制度改正の動き(ステレックス法律事務所)

外国人の不動産取得をめぐる新たな制度改正の動き|Stellex Law Firm