アスベスト含有建材の年代別リスクと不動産取引の注意点

アスベスト含有建材の年代と不動産取引リスクを正しく知る

「1975年以前の建物にしか含まれない」と思っていると、2004年建築の物件でも損害賠償を請求されます。

この記事の3つのポイント
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含有建材の使用年代は「2004年まで」が正解

吹き付け材は1975年に禁止されたが、スレート・窯業系サイディングなど成形板系は2004年まで製造が続いた。「新しめの物件だから安心」は危険な思い込みです。

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事前調査の違反は50万円以下の罰金+免許取消リスク

解体・改修工事前のアスベスト調査は全建物が対象。築年数に関係なく、報告を怠れば罰則と宅建業者の免許取消処分に直結する場合があります。

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重要事項説明の「無」は「含有なし」ではない

重要事項説明書の「調査結果の記録:無」は「調査した記録がない」という意味。「アスベストなし」と誤解したまま取引すると買主からクレームが発生するリスクがあります。

アスベスト含有建材が使われた年代一覧と規制の流れ

 

アスベスト(石綿)は、その優れた耐火性・断熱性・防音性から「夢の素材」とも呼ばれ、日本では戦後の高度経済成長期を支えた建築材料です。しかし長期間にわたって繊維を吸い込むと肺がんや悪性中皮腫を引き起こすことが明らかになり、段階的に規制が強化されてきました。

不動産従事者が真っ先に押さえるべきなのは、「規制の歴史は一度ではなく、4段階に分かれている」という点です。

規制の時期 規制の内容
1975年(昭和50年) クリソタイル含有率5重量%超の吹き付け作業を原則禁止
1995年(平成7年) 基準が1重量%超に変、アモサイト・クロシドライトも追加
2004年(平成16年) 1重量%超の吹き付け材以外の10品目も製造・使用禁止
2006年(平成18年) 全6種のアスベストを対象に、含有量0.1重量%超の全製品を全面禁止

この段階的な規制があるため、「1975年以前の建物だけが危ない」という理解は大きな誤りです。

つまり建材の種類によって危険な年代がまったく異なるということですね。たとえば吹き付け石綿は1956年〜1975年が主な使用期間ですが、住宅の屋根材として広く使われた石綿含有住宅屋根用化粧スレートは1961年〜2004年まで製造が続きました。外壁材の窯業系サイディングも1960年〜2004年まで使用されていたのです。

「2000年代初頭に建てた一戸建て」でも、屋根や外壁にアスベスト含有建材が使われている可能性が十分にあります。これは多くの不動産従事者が見落としやすいポイントです。

主要な建材ごとの製造時期をまとめると以下のようになります。

  • 吹き付け石綿(レベル1):1956年〜1975年
  • 石綿含有吹き付けロックウール(レベル1):1961年〜1987年
  • 石綿含有保温材(レベル2):〜1980年
  • 石綿含有ケイ酸カルシウム板第2種(レベル2):1963年〜1997年
  • 石綿含有窯業系サイディング(レベル3):1960年〜2004年
  • 石綿含有住宅屋根用化粧スレート(レベル3):1961年〜2004年
  • 石綿含有スレートボード(レベル3):1952年〜2004年
  • 石綿含有石膏ボード(レベル3):1970年〜1986年
  • 石綿含有ビニル床タイル(レベル3):1952年〜1987年
  • 石綿含有壁紙(レベル3):1969年〜1991年

2004年が多くの建材の製造終了年として並んでいることが目を引きますね。規制強化のタイミングで大多数の製品が製造中止となったためです。ただし、煙突用石綿断熱材だけは2004年まで製造されており、例外的に長く使われていた建材のひとつです。

実際の建物調査にあたっては、国土交通省・経済産業省が公開している「石綿(アスベスト)含有建材データベース」を活用することで、製品名・品番・製造時期ごとのアスベスト含有状況を無料で確認できます。

参考:石綿(アスベスト)含有建材データベースについては以下のリンクから確認できます。

国土交通省・経済産業省「石綿(アスベスト)含有建材データベース」|製品名・型番・製造時期からアスベスト含有状況を無料で検索できる公的ツール

アスベスト含有建材の発じん性レベル別・不動産従事者が知るべきリスク

アスベスト含有建材はその危険度(粉じんの飛び散りやすさ)によって、レベル1・レベル2・レベル3の3段階に分類されています。不動産従事者として重要なのは、「どのレベルがどこに使われているか」を建物の用途や年代から推測できるようになることです。

レベル1(最も飛散性が高い)は、鉄骨の耐火被覆や天井への吹き付けに使われた材料です。一般の戸建て住宅には使われていないケースが多いですが、1970〜80年代に建設されたビルや商業施設、学校・病院では頻繁に見られます。含有率が60〜70%と高く、劣化すると空気中に飛散しやすいため、取り扱いには最も厳重な対策が必要です。

レベル2(飛散性が高い)は、配管・ボイラー周りの保温材や断熱材が該当します。1980年以前に施工された工場・プラント・商業ビルによく見られます。こちらも密度が低く崩れやすいため、除去時はレベル1同等の飛散防止措置が求められます。

レベル3(比較的飛散性が低い)が、不動産取引において最も注意が必要なカテゴリです。これが原則です。なぜなら、一般の戸建て住宅・マンション・店舗ビルに最も広く使われているのがこのレベルだからです。屋根のスレート、外壁のサイディング、内装の石膏ボード、床のビニルタイルなど、ごく普通の建材として多くの物件に使われています。

「レベル3は比較的低リスク」という表現は、飛散性がレベル1・2より低いというだけであって、解体・切断・研磨といった作業を行えばアスベスト繊維が飛散する可能性は十分にあります。リフォームや解体の場面でも対策が不要というわけではありません。

実務で特に気をつけたいのは、石膏ボードです。石膏ボードはアスベスト含有品か否かの見分けが非常に難しく、外見ではほぼ判断できません。1970年〜1986年に製造されたものが対象ですが、設計図書に記載がない場合は分析調査に頼るしかないケースもあります。見た目では判断できないということですね。

参考:アスベスト含有建材の発じん性レベルと建材種別一覧は国土交通省の資料が詳しいです。

国土交通省「目で見るアスベスト建材 第二版」|部位別・建材種別のアスベスト含有建材をビジュアルで確認できる実務向け資料

アスベスト含有建材の事前調査義務と不動産従事者への罰則リスク

「解体するのは施工業者だから、不動産屋には関係ない」という考えは通用しません。これが一番危ない思い込みです。

2022年4月に改正大気汚染防止法が施行され、建築物等の解体・改修工事を行う際には、建築物石綿含有建材調査者などの有資格者による事前調査と、都道府県への報告が義務化されました。さらに2023年10月からは、一定の建物については有資格者でなければ現場調査ができないルールになっています。

違反した場合の罰則は決して軽くありません。

  • 大気汚染防止法違反(調査・報告義務違反):3か月以下の懲役または30万円以下の罰金
  • 石綿障害予防規則違反(事前調査の未実施):50万円以下の罰金(労働安全衛生法第120条)
  • 宅建業法違反(重要事項説明の不備):業務停止処分宅建士証の返納・悪質な場合は免許取消

金銭的なペナルティだけでなく、「免許取消し」という事業継続に直結するリスクがあることが重要です。一件の見落としが事務所全体の信頼を損なう可能性があります。

さらに見落とされやすい重要事項説明のルールがあります。宅建業法第35条により、不動産業者は「アスベスト使用に関する調査記録が存在するかどうか」を確認し、買主に説明する義務を負います。

ここで注意が必要なのは「記録がない=書かなくていい」ではないという点です。調査記録が存在しない場合は「調査が行われていない旨」を明記しなければなりません。重要事項説明書の当該欄を空欄にすることはNG行為です。厳しいところですね。

また、「調査結果の記録:無」と書かれた重説書を「アスベストなし」と買主が誤解したまま取引が進んだ後に問題が発覚したケースでは、説明義務違反として損害賠償請求に発展する可能性があります。

事前調査の省略が認められるのは、2006年9月以降に着工されたことが設計図書等の書面で確認できる建物のみです。口頭での確認では省略の根拠になりません。書面で確認することが原則です。

解体・改修工事の事前調査義務については環境省の情報が最も包括的です。

環境省「石綿(アスベスト)飛散防止対策」|大気汚染防止法改正の概要・事前調査の義務化・罰則規定を含む公的情報

アスベスト含有建材の年代から見る不動産売買での実務チェックリスト

年代の知識を実務に活かすには、取引フローに確認ステップを組み込むことが大切です。フローが定まっていなければ、知識があっても確認漏れは起きます。

以下のフローを参考にしてください。

ステップ1:着工年を確認する

まず登記簿謄本や建築確認通知書で着工年を確認します。2006年9月以降着工であれば、書面確認のみで目視調査を省略できる可能性があります。2006年以前の着工なら、建材の年代と種別を踏まえた詳細な確認が必要です。

1980年代以前の着工であれば、レベル1・2のアスベスト含有材が使われている可能性も念頭に置いた対応が求められます。

ステップ2:既存の調査記録を確認する

売主・オーナーに過去の調査報告書の有無を確認します。書類が存在する場合は、「建築物石綿含有建材調査者証番号」の記載があるかを確認することで、その調査書が正式なものかどうかを判断できます。これは実務での最小限のチェックポイントです。

口頭で「調査済みです」と言われただけでは書類の確認にはなりません。必ず報告書の現物か写しを取得してください。

ステップ3:解体・改修工事の予定を確認する

解体や大規模改修が予定されている場合は、有資格者による事前調査を発注者(売主または買主)に促す必要があります。

注意すべき点として、リフォームも事前調査の対象になります。床・壁・天井の改修であっても、既存建材の撤去・切断・破砕を伴う作業があれば調査義務が生じます。「大規模工事でないから不要」という判断は誤りです。

ステップ4:重要事項説明書への記載を確認する

「調査の結果」「調査を行っていない旨」のいずれかを必ず記載します。当該欄を空欄にすることはNG行為です。記録がないなら「ない」と書くことが義務の範囲です。

実務で活用できる調査書式のサンプルは、環境省・厚生労働省・国土交通省が共同発行している「建築物の解体等に係る石綿飛散防止対策マニュアル」に含まれています。書式の雛形として手元に置いておくと実務に役立ちます。

不動産従事者だけが気づける「築年数では語れない」アスベストの盲点

不動産の現場には、建材の知識だけでは見抜けない落とし穴がいくつかあります。意外ですね。

盲点①:同じ製品名でも製造時期によって含有状況が異なる

たとえば「トムレックス」という名称は吹き付け材の商品名でありながら、現場では吹き付け材全般の総称として設計図書に記載されることがあります。実際の製品が「トムレックス」でなくても「トムレックス」と書かれているケースが存在します。図面の記載と実物が一致していない可能性があるため、必ず目視と書面の両方で確認することが必要です。

盲点②:1975年以降の吹き付け材でも含有の可能性がある

「1975年に吹き付け禁止になったから、それ以降の建物は大丈」という理解は誤りです。1975年の規制は「含有率5重量%超」のものが対象であり、それ以下の含有率の吹き付け材は1989年まで製造が続いていました。吹き付けロックウールについては1987年まで含有品が製造されています。1975年〜1989年の建物は要注意です。

盲点③:改修歴のある建物では複数世代の建材が混在する

築年数が古くても、1990年代や2000年代にリフォームが行われた建物では、複数の年代の建材が同一建物内に混在している場合があります。古い建材の上に新しい建材を重ね張りしているケースも珍しくなく、内部にアスベスト含有建材が残存している可能性があります。「最近リフォームしたから大丈夫」は根拠のない判断です。

盲点④:窯業系サイディングは外観での判断が困難

窯業系サイディングは1960年〜2004年にかけてアスベスト含有品が製造されています。問題は、アスベストを含む製品と含まない製品が外見上ほぼ同じで、目視のみでは区別が難しい点です。1980年代〜1990年代の物件で外壁を判断するには、製品名から石綿含有建材データベースで確認するか、サンプルを採取して分析調査に出す必要があります。

実務でこれらの盲点を押さえておくことは、売主・買主双方のトラブル防止に直結します。

たとえば、リフォーム済みの築30年物件を「外観もきれいで問題なし」と判断して重説に何も記載しなかった場合、後日解体工事の際にアスベストが検出されて損害賠償請求を受けるリスクがあります。知らないと損する情報です。

物件の背景を深く調べる姿勢が、不動産従事者としての信頼につながります。年代と建材の組み合わせを知っているだけで、事前に「この物件は要確認」と判断できるようになります。

参考:アスベスト含有建材の年代別リスクの詳細は以下の資料が参考になります。

国土交通省「アスベスト対策Q&A」|建築物の所有者・不動産関連業者向けに通常使用中の建物に関する疑問をQ&A形式で解説した公式情報



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