農地の固定資産税はいくら?種類別の計算方法と節税のポイント
一般農地と特定市街化区域農地では、固定資産税が同じ面積でも100倍以上違います。
農地の固定資産税の基本:農地の種類別いくらかかるか
農地には大きく分けて4つの区分があり、それぞれで固定資産税の額がまったく異なります。この区分を最初に確認しておくことが、農地の税金を理解する上での基本です。
農林水産省が公表しているデータによると、固定資産税の目安は以下のとおりです(10aあたり)。
| 農地の区分 | 評価方法 | 固定資産税の目安(10aあたり) |
|---|---|---|
| 一般農地 | 農地評価 | 約1,000円程度 |
| 生産緑地 | 農地評価 | 数千円程度 |
| 一般市街化区域農地 | 宅地並評価+1/3特例 | 数万円程度 |
| 特定市街化区域農地 | 宅地並評価+1/3特例 | 数十万円程度 |
一般農地とは市街化調整区域に位置する農地のことで、農業が継続的に営まれることを前提に評価されます。東京ドーム(約1.3ha)に近い規模の一般農地でも、年間の固定資産税は数千円に収まるケースが多く、税負担は非常に軽いです。
一方、特定市街化区域農地(首都圏・中部圏・近畿圏の市街化区域内農地)になると話が変わります。10aあたり数十万円の税額となり、同じ面積でも一般農地と比べると100倍を超える差が生じます。これは重要なポイントです。
生産緑地は市街化区域内にありながら、行政から生産緑地の指定を受けた500㎡以上の農地です。本来なら高い税額を課される市街化区域内にあっても、指定を受けることで一般農地と同水準の農地評価が適用されます。
参考:農林水産省が公表する農地税制の詳細はこちらでも確認できます。
農地の固定資産税の計算方法:評価額と負担調整措置の仕組み
農地の固定資産税の基本計算式は「固定資産税評価額(課税標準額)×1.4%」です。ただし農地の場合、「本則税額」と「調整税額」の二通りを計算して、低いほうが実際の税額になります。
この仕組みを「負担調整措置」といいます。農地の価格が急激に上昇した際に、一気に税負担が重くならないよう、なだらかに税額を上げる制度です。
📌 一般農地・生産緑地の計算式
$$\text{本則税額} = \text{評価額} \times 1.4\%$$
$$\text{調整税額} = \text{前年度の課税標準額} \times \text{負担調整率} \times 1.4\%$$
負担調整率は「負担水準(前年度課税標準額÷今年度評価額)」によって決まります。
| 負担水準 | 負担調整率 |
|---|---|
| 0.9以上 | 1.025 |
| 0.8以上0.9未満 | 1.05 |
| 0.7以上0.8未満 | 1.075 |
| 0.7未満 | 1.10 |
たとえば、今年度の一般農地の評価額が100万円、前年度の課税標準額が70万円だとします。負担水準は0.7(=70万円÷100万円)となるため、負担調整率は1.075です。
調整税額の計算は次のようになります。
$$\text{調整税額} = 70\text{万円} \times 1.075 \times 1.4\% = 10,535\text{円}$$
本則税額(100万円×1.4%=14,000円)より調整税額(10,535円)のほうが低いため、この年の固定資産税は10,535円です。つまり調整税額が原則ということですね。
📌 市街化区域農地(一般市街化区域農地)の計算式
市街化区域農地は宅地並評価となりますが、評価額の1/3を課税標準とする特例が適用されます。
$$\text{本則税額} = \text{評価額} \times \frac{1}{3} \times 1.4\%$$
評価額が3,000万円の一般市街化区域農地であれば、本則税額は次のとおりです。
$$\text{本則税額} = 3,000\text{万円} \times \frac{1}{3} \times 1.4\% = 14\text{万円}$$
一般農地と比べて評価額そのものが宅地に近い水準になるため、結果として税額は大きく跳ね上がります。これは大きな注意点です。
参考:農林水産省の公表資料(全農地区分の計算方法や負担調整措置を網羅)
農地の固定資産税がかからないケース:免税点と減免制度
農地を所有していても、固定資産税が一切かからないケースがあります。これを知らずに過払いしていると損です。
まず「免税点」の制度があります。同一市区町村内で同一名義人が所有するすべての土地の課税標準額の合計が30万円未満の場合、固定資産税は非課税となります。
重要なのは「その農地だけ」ではなく、「同じ市区町村内の土地評価額の合計」で判定される点です。たとえば単独の農地の評価額が25万円でも、同じ市区町村内に別の土地(評価額10万円)を所有していれば合計35万円となり、免税点を超えてしまいます。
一般農地であれば評価額が非常に低いため、300坪(約10a)程度の農地1筆だけであれば免税点以下となるケースも少なくありません。確認する価値があります。
次に「減免制度」があります。主に以下の2つのケースで税額が減免されます。
- 被災者の減免:東日本大震災のような大規模災害では、市町村長が指定した区域の土地・家屋について課税免除の特例が設けられた実績があります。災害の被害程度に応じた減免が各自治体で設定されています。
- 生活保護受給者の減免:各市町村ごとに制度が異なりますが、生活保護の認定を受けた後の納期分から減免が適用される自治体も多数存在します。
また農林水産省の制度として、農地中間管理機構に農地を貸し付けた場合(貸付期間10年以上)に固定資産税の課税標準額が軽減される特例(平成28年度改正)もあります。条件が条件です。
自治体ごとに制度の内容が異なるため、農地を所有している市区町村の窓口や、農業委員会に確認するのが確実です。
農地の固定資産税の評価額の調べ方:課税台帳・縦覧制度の活用
農地の固定資産税がいくらになるかを知るには、まず「固定資産税評価額(課税標準額)」を把握する必要があります。調べ方は主に3つです。
① 納税通知書に同封の課税明細書を確認する
毎年4〜6月頃に届く「固定資産税納税通知書」の中に、課税明細書が同封されています。そこに各土地の評価額・課税標準額・税額が記載されています。最も手軽な確認方法です。
② 役所で固定資産課税台帳を閲覧する
農地が所在する市区町村の役場(資産税課・税務課)で、固定資産課税台帳の閲覧を申請できます。本人確認書類が必要です。委任状があれば代理人による閲覧も可能です。
③ 固定資産評価証明書を取得する
役所の窓口で申請すれば、固定資産評価証明書(手数料:自治体により異なるが1通数百円程度)を取得できます。評価額だけでなく、地目・地積なども記載されているため、農地転用の際にも役立ちます。
加えて「縦覧制度」も活用できます。毎年4〜6月(自治体によって異なる)の縦覧期間中は、自分が所有する農地と同一市区町村内の他の土地の評価額を比較できます。評価額の妥当性に疑問がある場合は、縦覧後に「審査の申出」を行うことで、評価額の見直しを求める手続きが可能です。
不動産取引の現場では、固定資産評価証明書の数値をもとに仲介時の資料作成を行うケースも多いため、取得方法を把握しておくと業務がスムーズになります。
東京都主税局|固定資産税にかかる土地・家屋の縦覧制度について(参考)
農地転用と固定資産税の関係:タイミングで税額が大きく変わる
農地を宅地等に転用する際、固定資産税が大きく上がることはよく知られています。しかし「いつ転用するか」によって、その年の税額が変わることを見落としている不動産従事者は意外と多いです。
固定資産税は毎年1月1日(賦課期日)時点の「現況」で課税されます。これが決定的なポイントです。
たとえば、12月30日に農地転用を行った場合、翌年1月1日の時点ではすでに宅地(または雑種地)としての課税地目に変更されているため、翌年分の固定資産税は宅地として計算されます。農地よりも評価額が高い分、税額も一気に跳ね上がります。
一方、1月2日以降に農地転用を行った場合、1月1日時点ではまだ農地として扱われるため、その年の固定資産税は農地の評価額で課税されます。転用後すぐに宅地として活用しても、その年1年間は農地の税額が適用されます。
💡 年明け直後の1〜3月に転用手続きを進めることで、翌年以降まで農地としての税率が1年間長く続きます。節税効果は農地の立地や評価額によって異なりますが、市街化区域農地や特定市街化区域農地では年間の税額差が数十万円になる場合もあります。これは使えそうです。
また、農地転用の許可・届出がされると、現況がまだ農地であっても課税地目が変更される自治体があります(彦根市などが公表している事例あり)。転用手続き後は課税がいつ切り替わるかを各市区町村に必ず確認することが重要です。転用後の税額変化を事前に把握しておくことが原則です。
なお、農地転用の手続き費用は、自己所有農地の転用申請だけなら約10万円〜、購入農地への転用申請では約20万円〜が目安とされています。転用後は地目変更登記(費用はゼロ〜司法書士費用数万円)も1ヶ月以内に行う必要があります。忘れると10万円以下の過料が課されるリスクがあるため、必ずセットで進めましょう。
彦根市|農地転用の固定資産税への影響(自治体の実例として参考になります)
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