特定街区とは宅建で問われる制限と試験対策

特定街区とは宅建で押さえる都市計画の重要制度

特定街区内の土地は、容積率・建ぺい率・斜線制限など建築基準法のほぼ全てが適用されないため、重要事項説明で「用途地域だけ確認すればOK」と考えると、説明不足で後から法的リスクを負う可能性があります。

📌 この記事の3ポイント要約
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特定街区は21種類の地域地区の一つ

都市計画法第9条20項に基づく「地域地区」の一種。街区単位で容積率・高さ・壁面の位置を個別に定めることができ、一般の建築基準法規制がほぼ丸ごと適用除外になる特殊な区域です。

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定めるのは「3つだけ」、適用除外は多数

特定街区で都市計画に定めるのは「容積率の最高限度」「高さの最高限度」「壁面の位置の制限」の3点。一方、建ぺい率・日影規制・斜線制限などは全て適用されなくなります。

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高度利用地区との違いが宅建試験の頻出ポイント

特定街区は「区画の整った街区」に指定されるのに対し、高度利用地区は「老朽化した建物の密集地」に指定されます。この違いが宅建試験でひっかけとして出題されます。

特定街区の基本定義と宅建試験における位置づけ

特定街区(とくていがいく)とは、都市計画法第9条20項に定める「地域地区」の一つです。地域地区とは、都市計画区域内の土地について用途や利用のあり方を21種類に分類したものですが、そのなかで唯一「街区」という名称を持つのが特定街区です。

「街区(がいく)」とは、道路に囲まれた一区画のことを指します。一般的な建築規制は敷地ごとに適用されますが、特定街区では複数の街区をまとめて一つの単位として総合的な制限をかける点が、他の地域地区とは根本的に異なります。これが要点です。

宅建試験において、この制度は都市計画法の分野(法令上の制限)として出題されます。試験で直接問われる問題数は多くありませんが、高度地区・高度利用地区・高層住居誘導地区と並んで比較問題として登場することが多く、それぞれの違いを正確に把握していないと失点につながります。

特定街区制度は、1961年(昭和36年)の建築基準法改正によって創設された歴史ある制度です。創設の目的は、それまでの31m絶対高さ制限を突破して、大規模な超高層ビルを合法的に建てるためでした。制度適用の第1号は「東京都市計画霞が関3丁目特定街区」であり、日本初の超高層ビルである高さ147m・36階建ての霞が関ビルディング(1968年竣工)がここで誕生しました。つまり約60年以上の実績がある制度ということですね。

不動産従事者にとって重要なのは、この制度が単なる試験知識にとどまらない点にあります。売買・賃貸の仲介業務において特定街区内の物件を扱う際には、一般の建築基準法規制が適用されないことを正確に理解したうえで重要事項説明を行う義務があります。

【重要事項説明】建築基準法第60条(特定街区)の解説|まちづくり・都市計画・不動産取引ブログ(建築基準法第60条との関係、適用除外条項の詳細リストを確認できます)

特定街区で定める3つの内容と宅建試験の攻略ポイント

宅建試験において特定街区で最も問われるのは、「都市計画に何を定めるか」という点です。これは非常にシンプルで、以下の3点だけです。

定める内容 ポイント
容積率最高限度 通常の用途地域の容積率に代わり、個別に定められる
②建築物の高さの最高限度 超高層ビルに対応する独自の最高限度を設定
壁面の位置の制限 建物を道路や境界から後退させてオープンスペースを確保

3つだけ覚えておけばOKです。

ここで一つ注意が必要なのは「建ぺい率」についてです。高度利用地区では都市計画の内容に「建ぺい率の最高限度」が含まれますが、特定街区では含まれません。この違いが過去問でひっかけとして出題されています。

宅建試験の過去問(2001年・問17肢4)では、「特定街区に関する都市計画には、建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合並びに建築物の高さの最高限度及び壁面の位置の制限を定めることとされている」という出題があり、正解は「正しい」でした。「延べ面積の敷地面積に対する割合」とは容積率のことなので、内容を正確に理解しておく必要があります。

さらに試験頻出の確認事項として、特定街区は用途地域の内外を問わず定めることができるという点も押さえておきましょう。高層住居誘導地区が特定の用途地域内にのみ定められるのとは異なり、特定街区は指定エリアの縛りが異なります。

千代田区|特定街区の都市計画で定めるものと適用除外の建築基準法規定一覧(具体的な条文レベルで適用除外の範囲を確認できます)

特定街区で適用除外になる建築基準法の規制一覧

特定街区が指定されると、建築基準法第60条第3項の規定により、通常適用される多くの建築規制が適用されなくなります。これが特定街区制度の最大の特徴です。厳しいところですね。

適用除外となる主な規制は以下のとおりです。

  • 📌 容積率(法第52条):通常の用途地域別容積率ではなく、都市計画で定めた限度が適用される
  • 📌 建ぺい率(法第53条):通常の建ぺい率規制が外れる
  • 📌 敷地面積の最低限度(法第53条の2):最低敷地面積の縛りがなくなる
  • 📌 外壁の後退距離(法第54条)第一種低層住居専用地域等の後退距離規制が適用外
  • 📌 絶対高さ制限(法第55条):低層住居系の高さ10m・12m制限が適用されない
  • 📌 斜線制限(法第56条)道路斜線隣地斜線・北側斜線がすべて適用除外
  • 📌 日影規制(法第56条の2):中高層建築物の日影時間制限が適用されない
  • 📌 高度地区(法第58条)高度利用地区(法第59条)の規制も適用されない

これだけ広範囲に適用除外になるということですね。超高層ビルが30mも40mも壁面を離して建っているみなとみらいの光景をイメージすると理解しやすいです。あの開放感のある空間は、斜線制限や日影規制が適用されないからこそ生まれています。

不動産実務の観点から重要なのは、特定街区内の物件を扱う際に「通常の建築基準法のルールが通用しない」という前提で判断しなければならない点です。たとえば「日影規制対象外だから隣の高層ビルが日照を遮っても問題ない」という説明では、買主の理解を得られない可能性があります。売買時には、この適用除外の内容を噛み砕いて説明できるようにしておく必要があります。

国土交通省|建築基準法の特例制度一覧(特定街区を含む各制度の概要、斜線制限の緩和・日影規制の適用除外等をまとめた公式資料)

特定街区と高度利用地区の違い:宅建試験の頻出ひっかけを攻略する

宅建試験で特定街区が出題されるとき、必ずといってよいほどセットで登場するのが「高度利用地区」との比較です。両者は目的が似ているだけに混同しやすく、試験でのひっかけポイントになっています。

以下の表で両者の違いを整理しましょう。

比較項目 特定街区 高度利用地区
指定エリアの性質 区画の整った街区 老朽化した建物が密集する地区
指定単位 街区単位(道路に囲まれたブロック) 用途地域内の特定区域
都市計画に定める主な内容 容積率・高さ最高限度・壁面の位置 容積率の最高・最低限度、建ぺい率最高限度、建築面積の最低限度、壁面の位置
「高さ」を定めるか ✅ 定める(最高限度) ❌ 定めない
代表的な事例 西新宿高層ビル群、みなとみらい 再開発前の住宅密集地域

「高度利用地区は高さを定めない」が原則です。

混同しやすいのは名前のイメージです。「高度利用」という語感から「高さを定める」と思いがちですが、高度利用地区が定めるのは容積率の最高・最低限度と建ぺい率の最高限度、建築面積の最低限度であって、高さは定めません。

一方、特定街区は「高さの最高限度」を定めます。超高層ビルが際限なく高くなるのを防ぐために、最高限度を設けているわけです。

さらに踏み込んだポイントとして、高度利用地区は「小さな敷地に低い建物を建てることを禁じて、高い建物を建てさせる」という積極的な介入が特徴的です。このため、一定以下の敷地面積や建築面積では建物を建てられないという制限も設けられています。これに対し特定街区は、街区全体を一つのまとまりとして計画的に整備することを目的としており、使われなかった容積率を隣接街区に移転する「容積移転」も認められています。これは使えそうです。

イクラ不動産|特定街区とはどのような地区なのか(高度利用地区との違いや容積移転の仕組みをわかりやすく解説しています)

特定街区の容積移転という独自の仕組みと実務への影響

宅建の試験対策サイトではあまり深く掘り下げられませんが、特定街区には「容積移転」という実務上も重要な仕組みがあります。意外ですね。

容積移転とは、隣接する複数の街区を一体的に計画した場合に、一方の街区で使い切れなかった容積率を、もう一方の街区に上乗せして利用できる制度です。

具体的なイメージとして、たとえばAブロック(低い歴史的建築物を保存するため容積を使い切れない)とBブロック(超高層ビルを建てたい)が隣接しているとします。AブロックからBブロックへ容積率を「移転」することで、Aブロックでは歴史的建築物を保全しながら、Bブロックには通常よりも高い建物を建てることが可能になります。

この仕組みが実際に活用されている事例としては、霞が関ビルディングの計画が知られています。制度創設(1961年)後、第1号として霞が関3丁目が特定街区に指定され、超高層化を進めながら隣接エリアのオープンスペースを確保するという計画が実現しました。

不動産従事者にとってこの知識が実務で活きる場面は、主に以下の2つです。

  • 🔑 隣接地への眺望・日照への影響の説明:特定街区があれば容積移転が起き、予想以上に高い建物が建つ可能性があることを説明できる
  • 🔑 開発計画の見通しを買主に伝える:周辺に特定街区があれば、将来の都市計画変とあわせて買主にリスクとして開示できる

特定街区は現在(令和2年3月時点)、全国19都市・114地区・194.1haに指定されています。東京ドームの敷地面積が約4.7haなので、114地区・194.1haというのは「東京ドーム約41個分」に相当します。数字で見ると広さのイメージが掴みやすいですね。

特定街区内の物件を扱う際は、都市計画課の窓口や各自治体の都市計画図で事前に確認することが必須です。「◯◯市 特定街区」とインターネットで検索すれば指定状況を調べることができますが、個別の規制内容は街区ごとに異なるため、必ず窓口での直接確認が必要です。

国土交通省|都市計画現況調査(特定街区の全国指定状況・地区数・面積の最新データを確認できます)

特定街区の宅建試験対策まとめと重要事項説明での注意点

ここまでの内容を整理します。宅建試験の観点からは、次の4点を確実に押さえておけばほぼ対応できます。

  • ✅ 特定街区は都市計画法の「地域地区」21種類のうちの一つ(唯一「街区」の名称を持つ)
  • ✅ 都市計画で定めるのは「容積率」「高さの最高限度」「壁面の位置の制限」の3点のみ
  • ✅ 指定されると建ぺい率・日影規制・斜線制限などの建築基準法規制がほぼ丸ごと適用除外になる
  • ✅ 高度利用地区との違いは「指定エリアの性質」と「高さを定めるかどうか」の2点

宅建試験の法令上の制限は毎年8問出題されます。そのうち都市計画法は2〜3問が相場で、特定街区単体での出題より、高度地区・高度利用地区との比較問題として登場するパターンが多いです。過去問で繰り返し確認することが最善の対策です。

また、実務面での注意点も忘れてはなりません。宅建業法施行令第3条第1項第2号に基づく重要事項説明の内容には、建築基準法第60条第1項・第2項(特定街区)が明記されています。つまり特定街区に該当する物件を取り扱う際は、その規制内容を重要事項説明書に記載して説明する義務が生じます。

説明すべき内容が変わります。

通常の用途地域の物件と同様に「容積率○%、建ぺい率○%」と説明してしまうと、特定街区では建ぺい率の規制がそもそも建築基準法上は適用されず、代わりに特定街区の都市計画で個別に定められた内容が優先されます。この点を誤解したまま説明すると、買主への情報提供が不正確になるリスクがあります。

現地調査や役所調査の際には、都市計画課(都市計画法)と建築指導課(建築基準法)の両窓口で確認し、指定内容を正確に把握することが資格者としての責務です。インターネットの都市計画図のみで判断することは避け、必ず窓口での確認を行うようにしましょう。

国土交通省|重要事項説明における各法令に基づく制限等の概要一覧(建築基準法第60条を含む重要事項説明対象条文の公式リスト)