健康保険の変更手続き退職後に知らないと損する選択肢

健康保険の変更手続きを退職後に正しく進める方法

退職後、保険料を比べずに国民健康保険へ切り替えると、任意継続より年間10万円以上多く払うケースがあります。

この記事の3つのポイント
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手続きの期限は最短20日

退職翌日から20日以内に任意継続の申請をしないと、選択肢が一つ消えます。期限は絶対に守る必要があります。

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3つの選択肢を比較して選ぶ

任意継続・国民健康保険・家族の扶養のいずれかを選ぶことになります。保険料の試算をしてから決めるのが基本です。

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不動産従事者が見落としやすいポイント

宅建業の独立開業など、退職理由によって切り替えタイミングと保険料が大きく変わります。個人事業主になる場合は特に注意が必要です。

健康保険の変更手続きで退職後に選べる3つの選択肢

退職すると、それまで会社が半額を負担してくれていた健康保険から、自分で保険を選ぶ必要が生じます。選べる選択肢は大きく3つです。

1つ目は任意継続被保険者制度です。在職中に加入していた健康保険組合や協会けんぽにそのまま最長2年間継続加入できる制度で、退職後も同じ保険証を使い続けられます。ただし、これまで会社が半額負担していた分も自分で払うことになるため、保険料はおおむね在職時の2倍になります。

2つ目は国民健康保険(国保)への加入です。退職翌日から自動的に国保の加入義務が発生するため、他の選択肢を選ばなければ自動的にこちらになります。保険料は前年の所得をもとに計算されるため、収入が高かった年の翌年は保険料が高くなりやすい点に注意が必要です。

3つ目は家族の扶養に入ることです。配偶者やなど、社会保険に加入している家族の扶養に入れれば、自分の保険料の負担はゼロになります。ただし、年収130万円未満(60歳以上または障害者の場合は180万円未満)であることが条件です。

つまり「退職=国保一択」ではありません。

不動産会社を退職して独立開業や転職を考えている場合も、この3択の中から自分の状況に合ったものを選ぶことになります。どれが得かは収入や家族構成によって異なるため、後述する比較ポイントを参考にしてください。

退職後の健康保険切り替え手続きの期限と必要書類

手続きには期限があります。これは最重要ポイントです。

任意継続を選ぶ場合、申請期限は退職翌日から20日以内です。この20日を1日でも過ぎると、任意継続の申請は受け付けてもらえなくなります。在職中に「もし退職したら任意継続にしようかな」と考えていても、退職後の慌ただしさの中でこの期限を見逃してしまうケースが実際に多く報告されています。

20日というのは、ちょうど3週間弱の期間です。退職の挨拶や引き継ぎ、転職活動の準備などで慌ただしい時期と重なりやすいため、退職日が決まった時点でカレンダーに期限を書き込んでおくことを強くおすすめします。

申請先は、協会けんぽに加入していた場合は全国健康保険協会の都道府県支部、健康保険組合に加入していた場合はその組合となります。

必要書類は以下が一般的です。

  • 任意継続被保険者資格取得申出書
  • 退職を証明する書類(会社によっては不要な場合も)
  • マイナンバーカードまたは本人確認書類

国民健康保険への切り替えは、退職翌日から14日以内が手続き期限とされているケースが多いです(自治体によって異なる)。窓口は住んでいる市区町村の役所です。必要書類として、退職日がわかる書類(離職票・退職証明書・健康保険資格喪失証明書など)とマイナンバーが確認できるものを持参します。

健康保険資格喪失証明書は、会社に依頼して発行してもらう書類です。退職前または退職直後に依頼しておくとスムーズです。

任意継続と国民健康保険の保険料を退職前に比較する方法

どちらが安いかは、試算してみなければわかりません。これが原則です。

任意継続の保険料は、退職時の標準報酬月額をもとに計算されます。ただし、上限が設けられており、2025年度の協会けんぽの場合、標準報酬月額の上限は30万円です。つまり、月収が高かった人ほど任意継続の保険料に「天井」がある分、国保より割安になる可能性があります。

例えば、月収50万円で退職した場合を考えてみましょう。任意継続であれば標準報酬月額30万円を上限として計算されますが、国民健康保険は実際の所得(年収600万円)をベースに計算されるため、国保の方が高くなるケースが多いです。

国民健康保険の保険料は、前年の所得・加入者の人数・住んでいる自治体によって大きく異なります。同じ年収でも、住む市区町村によって年間数万円から十数万円の差が出ることもあります。意外ですね。

比較の手順は次のとおりです。

  1. 協会けんぽや加入していた健康保険組合のWebサイトで任意継続の保険料を確認する
  2. 住んでいる自治体のWebサイトまたは役所窓口で国保の試算をしてもらう
  3. 2つの金額を比較し、2年間トータルで安い方を選ぶ

不動産業に従事していた方で、歩合給などで年収が高かった場合は、任意継続の上限効果が大きく働くケースが多いです。一方、退職後すぐに収入がゼロまたは大幅に下がるという方は、翌年の国保料が低くなる可能性があるため、1年目は任意継続・2年目は国保への切り替えという戦略も有効です。

任意継続中に国保へ切り替えるためには、かつては「保険料の未納」という抜け道しかありませんでしたが、2022年1月の法改正以降、任意継続被保険者の申し出による脱退が可能になっています。これは使えそうです。

全国健康保険協会:任意継続被保険者制度について(保険料・手続き方法の詳細)

退職後に家族の扶養に入るための健康保険手続きと条件

扶養に入れれば保険料はゼロです。ただし、条件があります。

社会保険上の被扶養者になるためには、主に以下の条件を満たす必要があります。

  • 年収が130万円未満であること(60歳以上または障害者は180万円未満)
  • 被保険者(扶養してくれる家族)と生計を同一にしていること
  • 被保険者の年収の2分の1未満であること(例外あり)

不動産会社を退職後に家族の扶養に入る場合、「退職後の収入見込み」で判断されます。つまり、退職前の年収が高くても、退職後の収入見込みが年間130万円未満であれば扶養に入れる可能性があります。

ただし、個人事業主として宅建業を開業した場合は収入の見込みが発生するため、扶養認定が難しくなります。フリーランスとして不動産コンサルを始める場合も同様です。収入がゼロの間だけ扶養に入り、収入が発生したら国保か任意継続に切り替えるという流れが現実的です。

扶養の申請に必要な書類は、扶養者(家族)が勤める会社の健康保険組合によって異なります。一般的には以下が求められます。

  • 被扶養者異動届
  • 退職日が確認できる書類(離職票・退職証明書など)
  • 収入見込みを確認できる書類(非課税証明書や誓約書など)

扶養の認定には数週間かかる場合があるため、退職後すぐに病院に行く予定がある場合は注意が必要です。認定前は保険証が使えないため、医療費が全額自己負担になるリスクがあります。

不動産従事者が独立開業する際に忘れやすい健康保険の変更手続き

宅建業者として独立する場合、健康保険の手続きは開業届と同時に考える必要があります。見落としがちな点です。

個人事業主として宅建業を開業すると、健康保険は国民健康保険に加入するのが原則です。法人を設立して代表取締役になる場合は、法人の社会保険(健康保険・厚生年金)に加入することが義務付けられています。

不動産会社の社員として退職した後に個人で開業するケースでは、退職から開業届の提出まで数週間のブランクが生じることがあります。この期間中も健康保険の加入義務があるため、任意継続または国保に加入しておく必要があります。国保に加入する場合は、退職翌日から14日以内に役所で手続きをしておきましょう。

また、不動産仲介会社に勤めながら副業として不動産投資を行っている場合、会社を退職して不動産オーナーに専念するという選択肢もあります。この場合でも、不動産所得が年間130万円以上見込まれるならば家族の扶養には入れないため、国保への切り替えが必要です。

法人設立による社会保険加入については、設立直後から加入義務があります。設立後5日以内に年金事務所への届け出が必要で、これを怠ると未加入期間の保険料をさかのぼって請求されるリスクがあります。1か月でも未加入期間があると、数十万円単位の追徴が発生することも珍しくありません。痛いですね。

日本年金機構:新たに事業所を設立したときの健康保険・厚生年金保険の手続き

独立開業を検討している場合は、開業前に社会保険労務士や税理士に相談することで、保険料の試算と最適な加入タイミングについてアドバイスをもらうことができます。「開業届を出してから考えよう」と後回しにすると、遡及請求や空白期間のリスクが高まるため、退職前の段階から確認しておくことが重要です。

厚生労働省:退職した後の医療保険(任意継続・国保・扶養の公式情報)