最低制限価格とは何か入札の仕組みと活用法

最低制限価格とは何か入札での仕組みを徹底解説

最低制限価格を下回っても「交渉次第で受注できる」と思っていませんか?実は1円でも下回ると即失格です。

この記事のポイント
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最低制限価格の基本

最低制限価格とは、入札において設定される「これ以上安くしてはいけない下限価格」のこと。公共工事の品質確保を目的とした制度です。

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失格リスクと注意点

最低制限価格を1円でも下回る入札は即失格。価格の事前非公表・ランダム係数採用など自治体ごとに運用が異なります。

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不動産実務での活用ポイント

低入札価格調査制度との違いを理解し、自治体ごとの設定方式を把握することが、公共入札で生き残る最短ルートです。

最低制限価格とは何か:入札における基本的な定義

最低制限価格とは、公共工事や業務委託における入札で、発注者(主に国・地方自治体)があらかじめ設定する「入札価格の下限値」のことです。この価格を下回る金額で入札した場合、入札者は自動的に失格となります。交渉の余地はありません。

なぜこのような制度が存在するかというと、極端に安い価格での落札は、工事や業務の品質低下・手抜き工事・下請けへのしわ寄せを招く危険があるからです。特に不動産業界では、公共施設の建設や修繕工事に関わる機会も多く、この仕組みを正確に理解しておくことは業務上の必須知識といえます。

根拠法令は「公共工事の品質確保の促進に関する法律」(品確法)および「地方自治法施行令第167条の10の2」です。品確法は2005年に制定され、その後2014年・2019年と改正を重ねています。

つまり「安ければ安いほど有利」という考え方は通用しません。

最低制限価格は発注者が算出した予定価格(上限)に対して、一定の範囲内の割合で計算されるのが一般的です。国土交通省の基準では、予定価格の「70〜90%の範囲内」で設定することが推奨されています。ただし具体的な割合は発注機関ごとに異なるため、入札参加前に必ず各自治体・機関の公告文や入札説明書を確認する必要があります。


参考:最低制限価格制度の根拠となる品確法の改正内容と運用指針はこちら。特に第7条・第8条に最低制限価格の活用が明記されています。

国土交通省:公共工事の品質確保の促進(品確法)について

最低制限価格と予定価格の関係:入札における設定方式の違い

最低制限価格と混同されやすいのが「予定価格」です。予定価格は入札金額の「上限」であり、これを超えた入札は無効になります。一方、最低制限価格は「下限」です。この2つを同時に守りながら入札価格を設定しなければならない点が、公共入札の難しさの一つです。

予定価格と最低制限価格の関係を整理すると次のようになります。

項目 予定価格 最低制限価格
役割 入札金額の上限 入札金額の下限
超過・下回った場合 入札無効 即失格
公表タイミング 事後公表が主流 原則として非公表
根拠 地方自治法施行令第167条の10 地方自治法施行令第167条の10の2

最低制限価格は「原則として事前非公表」という点が重要です。これは事前に公表してしまうと、業者がギリギリその価格に合わせるいわゆる「ぴったり入札」が横行し、競争性が失われるためです。

設定方式には主に2種類あります。1つ目は「固定方式」で、予定価格に対して一定の割合(例:85%)を乗じて計算する方法です。2つ目は「ランダム係数方式」で、あらかじめ設定した係数の範囲(例:0.85〜0.90)の中から当日くじ引きなどでランダムに係数を決定します。後者は特に「ぴったり入札」対策として東京都や大阪府など多くの自治体で採用されています。

ランダム係数方式は対策が難しいですね。

結論は「設定方式の確認が勝負の前提」です。入札前に発注機関のウェブサイトや入札説明書でどちらの方式が採用されているかを必ず確認しましょう。

最低制限価格の計算方法:入札で失格にならない積算の基本

最低制限価格の計算は、国土交通省が公表している「中央公契連モデル」が広く普及しています。このモデルは複数の要素(直接工事費・共通仮設費・現場管理費・一般管理費等)に対してそれぞれ異なる割合を乗じて合算するものです。

国土交通省モデルにおける計算の概要は以下の通りです。

  • 直接工事費:予定価格の対象額の97%
  • 共通仮設費(率計上分):90%
  • 現場管理費:90%
  • 一般管理費等:55%

これらを合算した値が最低制限価格の基礎となります。ただし最終的な最低制限価格は「予定価格の70〜90%の範囲内」に収めるよう調整されます。範囲外になる場合はその上限または下限に設定されます。

具体例を挙げましょう。予定価格が1億円の工事で、上記計算の結果が8,300万円だった場合、これは予定価格比83%に当たり、70〜90%の範囲内に収まるため、最低制限価格は8,300万円に設定されます。一方、計算結果が6,500万円(65%)になった場合は範囲外のため、下限の70%=7,000万円に引き上げられて設定されます。

これは使えそうです。

建設業者・不動産業者が入札参加の見積りを作成する際には、このロジックを逆算することで「どこまで価格を下げられるか」のおおよその目安をつかむことができます。ただし計算式は地方自治体ごとに独自の変形・修正が加えられているケースもあるため、国土交通省の標準モデルだけを頼りにするのは危険です。


参考:中央公契連モデルの最新版(2023年改定)と計算例はこちら。積算担当者が一次資料として確認すべき内容です。

国土交通省:最低制限価格及び低入札価格調査基準の改定について

最低制限価格と低入札価格調査制度の違い:入札前に必ず確認すべきポイント

最低制限価格と混同されがちな制度に「低入札価格調査制度」があります。この2つは目的こそ似ていますが、運用が大きく異なります。

低入札価格調査制度とは、一定水準を下回る入札があった場合に、発注者が「その価格で適正に履行できるか」を調査し、問題なければ落札を認める制度です。つまり低入札価格調査制度では、基準を下回っても「即失格」にはなりません。

比較項目 最低制限価格制度 低入札価格調査制度
基準を下回った場合 即失格(自動排除) 調査の上、判断
適用される工事規模 比較的小〜中規模が多い 大規模工事に多い
調査プロセス なし あり(業者に説明義務)
落札可能性 基準以下は0% 調査次第で可能性あり

どちらの制度が適用されるかは、工事の規模・種別・発注機関によって異なります。例えば国土交通省直轄工事では、設計金額が2億円を超える案件には低入札価格調査制度が適用されるケースが多いです。一方、市区町村発注の工事では最低制限価格制度が採用されていることがほとんどです。

どちらが適用されるか、が最初の確認事項です。

不動産関連業者が自治体発注の工事や修繕に関わる場合、大半は最低制限価格制度が適用されるケースと考えてよいでしょう。しかし油断は禁物です。入札公告文の「入札方式」欄で必ず確認する習慣をつけることが、失格リスクを防ぐ第一歩になります。


参考:低入札価格調査制度の仕組みと適用事例の詳細はこちら。最低制限価格制度との使い分け方針が解説されています。

国土交通省:低入札価格調査制度及び最低制限価格制度の活用について(PDF)

不動産従事者が知らないと損する:入札で最低制限価格を下回った業者の末路と実務対策

最低制限価格を下回った入札が即失格になることは先述しましたが、実務上の影響はそれだけにとどまりません。失格が続くと、自治体によっては入札参加資格の審査に影響するケースもあります。これは入札実績の減少が経営事項審査(経審)の点数に響くためです。

経審の点数は完成工事高・技術者数・財務状況などで決まりますが、その中でも「工事種別の完成工事高」は大きなウェイトを占めます。失格続きで落札実績がゼロになると、経審点数が下がり→入札参加資格のランクが下がる→参加できる案件が減る、という悪循環が生じます。

痛いですね。

実務上の対策として、まず「積算ソフト・サービスの活用」が挙げられます。例えば「建設物価」や「積算資料」(一般財団法人建設物価調査会発行)などの単価データベースを参照し、積算精度を高めることが基本です。これにより最低制限価格を上回る現実的な価格を算出しやすくなります。

次に「過去の落札データの分析」が有効です。多くの自治体は落札結果(落札価格・落札率・参加業者数)をウェブサイトで公表しています。例えば東京都の場合、「東京都電子調達システム」から過去の落札結果データをダウンロードできます。落札率の傾向を把握することで、適正な入札価格レンジの目安が立てやすくなります。

読者の行動は「過去データを調べる」の一つだけで十分です。まずは参加予定の発注機関のサイトで直近1年分の落札結果を確認することから始めましょう。

また、もし社内に積算担当者がいない場合、建設コンサルタント会社や積算代行サービスへの委託を検討する価値もあります。入札案件の規模にもよりますが、積算代行費用は工事金額の0.5〜1%程度が相場です。落札できれば十分ペイできるコストといえます。

最低制限価格の理解が落札率に直結します。


参考:東京都電子調達システムの落札結果検索ページ。過去の公共工事の落札金額・落札率を案件ごとに確認できます。

東京都電子調達システム