水道料金の値上げ理由と不動産経営への影響を解説

水道料金の値上げ理由と不動産経営への影響

老朽化した水道管の更新費用は、全国で約139兆円にのぼると試算されています。

📋 この記事の3ポイント要約
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値上げの主因は「老朽化インフラ」

全国の水道管の約2割(約15万km)が法定耐用年数40年を超えており、更新費用の確保が値上げの最大要因です。

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人口減少で「薄まる」コスト負担

利用者が減るほど一人あたりの負担が増える構造です。2050年には現在の水道料金が平均1.5〜2倍になる試算も出ています。

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不動産経営への直撃リスク

共用部の水道料金は家主負担になるケースが多く、値上げが続けば収支計画の見直しが必要になります。早めの対策が収益を守ります。

水道料金の値上げ理由①:水道管の老朽化と更新費用の膨大さ

水道料金が値上がりしている最大の理由は、全国に張り巡らされた水道管の老朽化です。厚生労働省(現・国土交通省水管理・国土保全局)の資料によると、2022年時点で法定耐用年数40年を超えた水道管は全体の約21.1%、距離にして約15万kmにのぼります。これは、地球を約3.7周分の距離に相当する長さです。

膨大です。

新が必要な水道管をすべて交換するためのコストは、全国合計で約139兆円と試算されています。単純に現在の水道事業者の年間更新ペースで計算すると、すべてを交換し終えるまでに100年以上かかるという試算まであります。

これが「老朽化問題」の深刻さです。

不動産従事者の視点で言えば、この老朽化はリスクを二重に孕んでいます。一つは水道料金の値上げというコスト増加リスク。もう一つは、老朽化した水道管が引き込まれている物件では、水道本管の工事が行われた際に給水管の引き直し工事を求められるケースがあるという点です。特に昭和40〜50年代に建てられた集合住宅や戸建て住宅では、鉛製の給水管がいまだ使われている場合があり、自治体によっては交換を促す補助金制度を設けています。

法定耐用年数超過の水道管割合 全国の更新に必要な費用試算 現状の年間更新率
約21.1%(約15万km) 約139兆円 約0.7%/年(完了まで約140年)

自治体の補助金情報は各市区町村の水道局サイトで確認できます。所有物件のある自治体のページをブックマークしておくと、改修コストを抑えるチャンスを逃しません。

参考:水道管の老朽化・耐震化の現状と更新費用に関する国土交通省の統計・資料

国土交通省 水道インフラの現状と課題

水道料金の値上げ理由②:人口減少による水道事業の収支悪化構造

水道事業は、利用者が多ければ多いほど一人あたりのコストが薄まる「規模の経済」が働くビジネス構造です。ところが日本の人口は2008年の約1億2800万人をピークに減少に転じ、2023年時点で約1億2400万人、2050年には約1億人を下回ると推計されています。

これが収益構造を直撃します。

人口が減ると水の使用量が減り、料金収入が減ります。しかし、水道管の維持費や人件費、施設の電気代といった固定費はそう簡単には減りません。結果として、残った利用者で同じコストを分担するため、一人あたりの負担が増える構造になります。

厚生労働省の試算では、2050年には全国平均の水道料金が現在の1.5〜2倍になる可能性があるとされています。月額5,000円の水道料金が7,500円〜1万円になるイメージです。

痛いですね。

不動産オーナーにとって特に影響が大きいのは、マンションや賃貸アパートの共用部分です。廊下・エントランス・駐車場などの共用スペースに使う水道料金は、基本的にオーナー負担となります。空室が増えて入居者が減っても、共用部の水道は止めるわけにいきません。人口減少と空室率の増加が重なると、水道コストは二重に圧迫してきます。

  • 🏢 マンション共用部の水道料金:オーナー負担が原則
  • 📊 入居者減少 × 水道料金値上げ = 収支ダブルパンチ
  • 📌 対策:節水型設備への切り替えで固定費を圧縮する

節水型トイレやセンサー式蛇口への交換は、初期投資こそかかりますが、年間で数万円単位のコスト削減になるケースもあります。リノベーションの機会があれば、節水設備の導入を検討リストに加えておくのが現実的です。

水道料金の値上げ理由③:水道の民営化(コンセッション方式)と料金への影響

2018年に改正水道法が成立し、自治体が水道施設の所有権を持ったまま、運営権を民間企業に売却できる「コンセッション方式」が導入されました。民営化の目的は、民間のノウハウを活用して効率的な経営を実現し、老朽化対策の財源を確保することです。

方向性は理解できます。

ただし、海外の事例を見ると民営化が必ずしも料金低下につながらないことがわかっています。フランスのパリ市は2010年に民営化した水道を再公営化しており、その理由の一つに「民間事業者への委託後に水道料金が約265%上昇した」という事実があります。宮城県は2022年4月に日本初の広域水道コンセッションを導入しましたが、導入後の料金・サービス変化については今後の注視が必要な状況です。

意外ですね。

不動産従事者として押さえておきたいのは、物件が所在する地域の水道事業者が今後民営化・広域化の対象になるかどうかです。民営化されると料金改定の仕組みが変わる可能性があり、長期保有物件の収支シミュレーションに影響します。所有物件の自治体が属する都道府県の水道ビジョンや審議会の情報を定期的に確認しておくことが、リスク管理の第一歩です。

参考:改正水道法とコンセッション方式に関する詳細は国土交通省の公式ページで確認できます。

国土交通省 水道法の改正について

水道料金の値上げ理由④:電気代・薬品代などの運営コスト上昇

水道水をつくるには、ポンプで水を汲み上げ、浄水場でろ過・消毒し、高台のタンクや配水池に送り届けるというプロセスが必要です。このすべての工程で電気を使います。

電気代が上がれば、水道料金も上がります。

2022年以降のロシアによるウクライナ侵攻を契機としたエネルギー価格の高騰は、水道事業者の運営コストを直撃しました。一般的な浄水場では、電気代が総コストの15〜20%を占めるとされており、電気代が2倍になれば料金全体に数%〜十数%の影響が出ます。

加えて、塩素などの消毒薬品費や、施設の維持・補修に必要な資材費も値上がりしています。人件費の上昇も見逃せません。水道技術者の高齢化と後継者不足により、一人あたりの人件費が上昇傾向にあります。

これも基本的な構造問題です。

不動産管理の現場では、建物内の給水ポンプや受水槽の電力コストも同様に上昇しています。特に中規模以上のマンションで受水槽方式を採用している場合、ポンプの電気代が月に数万円単位でかさむケースもあります。直結給水方式への切り替えや、インバーター制御型ポンプへの更新を検討することで、ランニングコストを抑えられる場合があります。

コスト要因 水道料金への影響の目安
電気代(浄水ポンプ等) 総コストの15〜20%を占める
薬品費(塩素・凝集剤等) 2022年以降に顕著な上昇
人件費・技術者確保コスト 後継者不足で単価上昇傾向

水道料金の値上げ理由⑤:不動産オーナーが今すぐできるコスト管理の独自視点

ここまで紹介してきた値上げの理由は、いずれも「外部環境の変化」です。個人のオーナーがインフラの老朽化を止めることも、人口減少を防ぐこともできません。しかし、その影響を「受けるだけ」にならないための動き方は存在します。

対策できます。

まず有効なのが、物件ごとの「水道料金の実費精算型契約」の見直しです。賃貸物件で水道料金を賃料に含めて一括請求している場合、値上がり分をオーナーが全額吸収することになります。一方で、入居者に実費を負担してもらう契約形態に変更すれば、値上がりリスクを適切に転嫁できます。ただし、既存入居者への変更は合意が必要なため、新規契約のタイミングや更新時に条件を整えておくことが重要です。

次に注目したいのが「水道料金の地域差」を活用した物件選びの視点です。一般的にはあまり知られていませんが、日本国内の水道料金は地域によって最大で約10倍もの差があります。東京都の標準的な家庭(1ヶ月20㎥使用)の料金が約2,000円台であるのに対し、北海道・夕張市などの一部地域では同じ使用量で約8,000円を超えるケースもあります。

これは大きな差ですね。

地方物件を検討する際には、現在の水道料金だけでなく「その自治体の水道財政が健全かどうか」を調べることが収益予測の精度を高めます。総務省が公開している「地方公営企業決算状況調査」では、各自治体の水道事業の財政状況を確認することができます。料金改定の予定や水道ビジョンの内容を確認しておくことで、数年後の収支を先読みしやすくなります。

実費精算への移行を検討する場合、賃貸管理会社や不動産会社に契約書のひな形の確認を依頼するのが最も手間のかからない進め方です。一度の確認作業が、長期にわたるコスト管理の安定につながります。

参考:各自治体の水道料金の比較や財政状況は以下で確認できます。

総務省 地方公営企業決算状況調査