専用水道とは水道法で定める基準と管理義務の全解説

専用水道とは:水道法が定める定義・基準・管理義務

専用水道の対象かどうかを「給水人数だけ」で判断していると、水道法違反で罰則を受けるリスクがあります。

📋 この記事の3つのポイント
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専用水道の定義を正しく理解する

水道法第3条第6項に基づく「専用水道」の定義は、給水人数・水量・受水槽容量の3つの基準で判断します。どれか一つでも該当すれば対象になります。

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管理義務と法的リスクを把握する

専用水道の設置者には水質検査・施設点検・水道技術管理者の選任など複数の義務があり、違反すると100万円以下の罰金が科されます。

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不動産取引における実務上の注意点

マンションや大型施設の売買・仲介時に専用水道の有無を見落とすと、買主・売主双方に重大なトラブルが生じます。重要事項説明での確認が必須です。

専用水道とは:水道法第3条第6項による正式な定義

専用水道とは、水道法第3条第6項に規定された、自己の水を供給するための水道のことです。ただし「自己の水を供給する」という一文だけでは対象かどうか判断できません。水道法は3つの数値基準を定めており、そのいずれかに該当する場合に初めて「専用水道」として法的な規制対象となります。

まず1つ目の基準は、常時100人を超える者にその居住に必要な水を供給するものです。ここでいう「居住に必要な水」とは、飲料水・炊事用水・浴用水などの生活用水を指します。大型マンションや社員寮、学生寮などが典型的な該当例です。

2つ目の基準は、1日最大給水量が20立方メートルを超えるものです。20立方メートルとは2万リットル相当で、一般家庭の1日使用量(約200〜300リットル)の約70〜100世帯分にあたります。これは規模感をイメージするうえでの目安になります。

3つ目の基準は、水道事業者からの供給水のみを水源とし、その水を受ける水槽の有効容量の合計が100立方メートルを超えるものを除外する(いわゆる「簡易専用水道」に当たるものを除外する)点で、専用水道と簡易専用水道の境界線を形成しています。つまり給水量・人数の基準を超えれば専用水道、それ以下であれば簡易専用水道の管轄になるという整理です。

結論は「3つの基準のどれかに当てはまるか」が判断軸です。

不動産の現場では、築年数の古い大型賃貸物件や企業の社員寮、保養施設、ホテル・旅館などで専用水道に該当するケースが多く見られます。物件調査の段階で水道種別の確認を怠ると、のちの取引トラブルに直結するため、早期の確認が重要です。

参考:水道法(e-Gov法令検索)— 第3条第6項に専用水道の定義、第6項以降に専用水道と簡易専用水道の区分が規定されています。

e-Gov 法令検索
電子政府の総合窓口(e-Gov)。法令(憲法・法律・政令・勅令・府省令・規則)の内容を検索して提供します。

専用水道と簡易専用水道の違い:水道法上の規制レベルを比較する

専用水道と簡易専用水道は、どちらも「自家用の水道設備」という点では共通していますが、水道法上の規制の重さがまったく異なります。これは見落とされがちな重要な違いです。

専用水道は水道法第25条の2以降の条文が適用され、厚生労働省令で定める技術基準への適合義務、水質基準に関する検査の実施義務、そして水道技術管理者(専任)の選任義務が課されます。水道技術管理者は水道の維持管理に関する技術的責任者であり、資格要件が法定されています。

一方、簡易専用水道(受水槽容量が10立方メートルを超えるもの)は水道法第34条の2が適用され、年1回の登録検査機関による検査の受検義務が主な義務となります。規制内容のボリュームとして専用水道の方が格段に重く、違反リスクも高いと言えます。

厳しいところですね。

以下の表で、主な違いを整理します。

項目 専用水道 簡易専用水道
給水規模の目安 常時100人超 または 1日20㎥超 受水槽容量10㎥超(上記未満)
水道技術管理者 選任必須(資格者) 不要
水質検査義務 定期的な自主検査(項目多数) 年1回の外部検査
確認申請 都道府県知事への確認申請が必要 不要
罰則 最大100万円以下の罰金 最大100万円以下の罰金(検査不受検等)

不動産仲介や売買の現場では、物件の水道種別をヒアリング・書類確認するだけでなく、必要であれば各都道府県の水道担当部局(例:東京都なら東京都水道局)に照会することで、専用水道としての届出がなされているかどうかを確認できます。この確認を重要事項説明に反映させることが、後日のトラブル防止につながります。

参考:厚生労働省「専用水道・簡易専用水道の概要」— 両者の法的区分や規制内容の違いが整理されたページです。

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水道対策について紹介しています。

専用水道の管理義務:水質検査・水道技術管理者・施設点検の実務

専用水道の設置者には、水道法によって複数の管理義務が課されています。義務を一つでも怠ると法的リスクが発生します。

① 水質検査の実施

専用水道の設置者は、定期的に水質検査を実施しなければなりません。水道法施行規則第15条に基づき、毎月・3ヶ月ごと・年1回など、検査項目によって頻度が異なります。例えば、一般細菌や大腸菌については毎月検査が必要であり、トリハロメタン類などは年1回以上の検査が求められます。

検査は都道府県知事の登録を受けた「水質検査機関」に委託するのが一般的です。費用は検査項目数や施設規模によって異なりますが、基本項目だけで年間数十万円規模になるケースもあります。

② 水道技術管理者の選任

これが原則です。専用水道の設置者は、水道技術管理者を1名選任し、維持管理の技術的な責任を担わせる義務があります(水道法第19条)。水道技術管理者になるためには、学歴・実務経験などの要件を満たす必要があり、例えば土木工学等の大学卒業後3年以上の実務経験、または高卒後7年以上の実務経験などが条件となっています。

外部委託(指定管理者や維持管理会社)を通じて選任することも可能です。ただし、選任の事実は書面で管理し、行政への報告義務を果たすことが求められます。

③ 施設の定期点検と記録の保存

専用水道の設備(配管・ポンプ・受水槽・浄水設備など)は定期的に点検・清掃を行い、その記録を3年間保存することが義務付けられています。清掃は年1回以上の実施が必要で、清掃を行った者の氏名や日時・内容を記録します。記録保存の期間が3年間という点は、不動産売買時の書類引き継ぎにも関係してくるため、実務上の重要ポイントです。

④ 事故発生時の報告義務

水質基準を超える水道水が供給された場合や、給水設備の破損・汚染が疑われる場合は、都道府県知事への報告義務があります(水道法第22条の3)。これを怠った場合も罰則の対象となります。

これは使えそうです。不動産管理受託の契約書類に「専用水道の管理義務の承継」についての条項を明記しておくことで、管理会社と所有者の責任分界点を明確にできます。

専用水道の確認申請:都道府県知事への手続きと不動産取引への影響

専用水道を新設・改造・増設する場合は、着工前に都道府県知事(または政令市長・中核市長)への確認申請が必要です(水道法第32条)。これが見落とされることが多い手続きです。

確認申請には、施設の設計図書(配管図・構造図)・水源に関する書類・水質検査計画などの書類が必要で、都道府県によっては申請から確認済証の交付まで数週間〜1ヶ月以上かかることがあります。この期間を見込まずに工事を進めると、着工が違法状態となるリスクがあります。

不動産取引への影響という観点では、既存の専用水道付き物件を取得する場合に特に注意が必要です。具体的には以下の点を必ず確認してください。

  • ✅ 専用水道としての確認申請・確認済証が存在するか
  • ✅ 水道技術管理者が選任されているか、または選任予定者がいるか
  • ✅ 最新の水質検査記録が適切に保存されているか
  • ✅ 受水槽の清掃記録・点検記録が3年分揃っているか
  • ✅ 都道府県への各種報告・届出が滞りなく行われているか

これらの書類が不完全な状態で物件を引き渡された場合、新たな所有者が過去の違反の責任を引き継ぐリスクがあります。実際、物件取得後に水質検査の未実施が発覚し、行政指導・改善命令を受けたケースは全国的に散発しています。

売主に対して上記の確認事項をデューデリジェンス(物件精査)の一環として要求することは、不動産取引の基本的な自衛策といえます。確認申請書類の有無は、重要事項説明書の「飲用水・排水等に関する施設の整備状況」欄で明記することが望ましいです。

参考:東京都水道局「専用水道の確認申請について」— 東京都内の専用水道設置に必要な手続き・書類・審査フローの詳細が掲載されています。

お探しのページは見つかりません。 | 東京都水道局

不動産従事者が見落としがちな専用水道の独自リスク:管理会社・オーナー間の責任分界

専用水道に関する法的義務は「設置者」に帰属しますが、不動産実務の現場では「オーナーと管理会社のどちらが義務を果たすべきか」が曖昧なまま放置されているケースが少なくありません。これは見逃しやすい構造的なリスクです。

水道法上の「設置者」はあくまで専用水道を保有する法人または個人(=所有者)です。しかし実際の維持管理は建物管理会社が担うことが多く、管理委託契約に「専用水道の法定管理業務」が明記されていないと、水質検査の未実施・水道技術管理者の選任漏れが長期間にわたって放置されるリスクがあります。

痛いですね。こうした状況が発覚した場合、行政指導を受けるのは所有者(設置者)ですが、管理会社も契約上の債務不履行として損害賠償請求を受ける可能性があります。

具体的なリスク回避策として、管理委託契約には以下の条項を盛り込むことが推奨されます。

  • 📝 「水道技術管理者の選任・届出を管理会社が行う」旨の明記
  • 📝 「水質検査の実施・記録保存を管理会社が代行する」旨の明記
  • 📝 「法令改正があった場合に管理会社がオーナーへ速やかに通知する」旨の明記
  • 📝 「定期報告(年1回以上)で専用水道の管理状況をオーナーへ書面報告する」旨の明記

こうした契約整備は、万一の行政処分時に責任の所在を明確にするうえでも有効です。

また、複数棟を管理している場合は専用水道台帳(独自書式)を整備し、各物件の水道種別・水道技術管理者氏名・次回検査予定日・確認済証番号などを一元管理することが望ましいです。Excelや物件管理システムに専用水道フラグを立てるだけで、定期確認の抜け漏れ防止に大きく貢献します。

さらに踏み込むと、近年は専用水道の維持管理を丸ごと受託する「水道維持管理専門会社」へのアウトソーシングが増えています。水道法の専門知識を持つ担当者が不在の管理会社では、こうした外部委託を検討することも現実的な選択肢です。

水道法の改正動向にも注目が必要です。2024年以降、老朽化した給水設備の更新義務や台帳整備の強化について、厚生労働省による政省令改正の議論が続いています。不動産管理の現場では、水道法の改正情報を定期的に確認しておくことが、将来的なリスク管理につながります。

これが原則ですね。管理義務の所在を書面で明確にした上で、専門家との連携体制を整えることが、専用水道リスクへの最も現実的な対応策です。

参考:公益社団法人日本水道協会「水道の維持管理指針」— 水道施設の点検・清掃・記録保存に関するガイドラインが整理されています。

https://www.jwwa.or.jp/