相続登記にかかる費用はいくら?3種類の内訳と総額の目安
評価額が同じ不動産でも、あなたの相続登記費用が数十万円高くなることがあります。
相続登記の費用①:登録免許税の計算方法と相場
相続登記で必ず発生するのが「登録免許税」です。これは不動産の名義を書き換えるときに国へ納める税金で、相続税や固定資産税とはまったく別物です。
登録免許税の計算式はシンプルです。
| 計算式 | 税率 |
|---|---|
| 固定資産評価額 × 0.4% | 1,000分の4 |
評価額が1,000万円なら4万円、3,000万円なら12万円、5,000万円なら20万円が登録免許税の目安です。不動産1棟を相続するだけでも、立地によっては登録免許税だけで30万円以上になるケースもあります。これは要注意です。
評価額は「固定資産評価証明書」か「固定資産税納税通知書の課税明細書」で確認できます。課税価格の1,000円未満は切り捨て、算出した税額の100円未満も切り捨てとなります。計算のズレを防ぐには、まず固定資産評価証明書の年度を確認することと、相続する不動産を漏れなく把握することが重要です。この2点が基本です。
| 固定資産評価額 | 登録免許税 |
|---|---|
| 500万円 | 2万円 |
| 1,000万円 | 4万円 |
| 2,000万円 | 8万円 |
| 3,000万円 | 12万円 |
| 5,000万円 | 20万円 |
| 8,000万円 | 32万円 |
| 1億円 | 40万円 |
なお、遺言書によって相続人以外が「遺贈」として取得する場合、税率は0.4%ではなく2.0%に跳ね上がります。評価額3,000万円の物件なら登録免許税が12万円から60万円になる計算です。痛いですね。
不動産に携わる仕事をしていると、お客様から「相続なのになぜこんなに税金が高いの?」と聞かれることがあります。それはこの遺贈のケースに該当しているか、評価額が高い物件を複数所有しているケースがほとんどです。
参考:登録免許税の免税措置の詳細は法務局の公式ページで確認できます。
相続登記の費用②:必要書類の取得費用と忘れがちな実費
相続登記には多くの証明書が必要で、それぞれ取得に手数料がかかります。「書類代なんてたいした金額じゃない」と思われがちですが、相続人の数や被相続人の本籍地移動が多い場合は、合計で2万円以上になることもあります。
主な書類の取得費用は以下の通りです。
| 書類の種類 | 1通あたりの手数料 |
|---|---|
| 戸籍謄本 | 450円 |
| 除籍謄本 | 750円 |
| 改製原戸籍 | 750円 |
| 戸籍の附票 | 300円 |
| 住民票(除票) | 300円 |
| 印鑑証明書 | 300円 |
| 固定資産評価証明書 | 300〜400円 |
| 登記事項証明書(謄本) | 490〜600円 |
相続人が子2人のシンプルなケースなら、書類取得費は合計8,000円〜1万円程度に収まることが多いです。一方、被相続人の法定相続人が兄弟姉妹になるケースでは、戸籍を過去にさかのぼって収集する必要があり、20通以上の書類が必要になることも少なくありません。書類代の合計が2万円を超えることもあります。
さらに忘れてはならないのが郵送費や交通費です。役所が遠方の場合、郵送で戸籍を取り寄せる際には定額小為替を使います。この定額小為替は1枚200円の手数料がかかります。50円の小為替でも1,000円の小為替でも、1枚につき200円かかる仕組みです。意外ですね。
法務局への申請を郵送で行う場合は、書留やレターパック(370〜520円)の費用も必要です。完了後の書類返送用の返信封筒も忘れずに準備しましょう。こうした実費は事前に把握しておくことが条件です。
相続登記の費用③:司法書士報酬の相場と費用が増えるケース
司法書士への報酬は案件によって大きく異なりますが、一般的な相場は5万〜15万円程度です。ただし、これはあくまで目安であり、事案の複雑さによっては30万円、50万円、さらには100万円を超えることもあります。
司法書士報酬が高くなる主な要因は次の通りです。
- 🏠 不動産の筆数(物件数)が多い:田畑・山林を多数所有している場合など。1筆ごとに作業量が増えます。
- 📍 異なる管轄法務局に不動産が点在している:東京と大阪に不動産があれば、それぞれ別申請が必要です。管轄が増えるたびに数万円単位で加算されます。
- 👥 相続人の数が多い・相続人の調査が難しい:兄弟姉妹が相続人になる場合、戸籍収集だけで数ヶ月かかることもあります。
- 🔄 数次相続が発生している:最初の相続が未解決のうちに次の相続が発生しているケースです。相続関係が複雑になるほど費用は増えます。
- 📝 遺産分割協議書の作成が必要:協議書の作成が含まれる場合は3万〜5万円程度が別途加算されることが多いです。
「評価額が同じなら費用も同じ」というのは誤解です。同じ2,000万円の不動産でも、1筆の土地と建物だけのシンプルなケースと、10筆以上の農地を含む複雑なケースでは、司法書士報酬が数倍異なることがあります。
また、司法書士報酬の見積もりには注意が必要です。基本報酬が安く見えても「戸籍収集は別料金」「遺産分割協議書作成は別料金」となっている事務所も多く存在します。依頼前にすべて込みの総額を確認することが大切です。結論は「安い報酬」ではなく「含まれる内容」で比べることです。
司法書士報酬の実際の相場と事例については以下の記事が参考になります。
相続登記の費用シミュレーション:ケース別の総額はいくら?
費用の概念がわかったところで、具体的な金額感をつかんでおきましょう。以下は代表的な3パターンのシミュレーションです。
【ケース1】戸建て(土地+建物)を子2人が相続するシンプルなケース
評価額の合計が3,330万円(土地2,220万円+建物1,110万円)の場合を想定します。
| 費用の種類 | 金額 |
|---|---|
| ①登録免許税(3,330万円×0.4%) | 約13万3,200円 |
| ②書類取得費(戸籍・住民票など10通程度) | 約8,000円 |
| ③司法書士報酬 | 5万〜10万円 |
| 合計 | 約19万〜24万円 |
【ケース2】マンションを兄弟3人で相続するケース
建物評価額2,500万円、敷地権評価額411万円(敷地全体2億円×敷地権割合10万分の2,055)のマンションを想定します。
| 費用の種類 | 金額 |
|---|---|
| ①登録免許税(2,911万円×0.4%) | 約11万6,400円 |
| ②書類取得費(戸籍が20通以上になる可能性) | 約2万円 |
| ③司法書士報酬 | 5万〜10万円 |
| 合計 | 約18万〜23万円 |
兄弟姉妹が法定相続人になるケースは、戸籍の収集通数が多くなる傾向があります。シンプルな子相続とは費用が変わりやすいので注意が必要です。
【ケース3】複数不動産・複数法務局管轄の複雑なケース
不動産を全国に複数所有していた被相続人の相続では、管轄法務局ごとに別申請が必要になります。司法書士報酬が1管轄増えるごとに1万円前後加算されることも珍しくありません。相続人が10人以上いる「メガ相続」と呼ばれるケースでは、司法書士報酬だけで数十万〜100万円超になることもあります。
不動産従事者として覚えておくべき点は、顧客の相続登記が単純そうに見えても、蓋を開けてみると筆数や管轄が多くて費用が倍以上になるケースは珍しくないということです。早めに司法書士に相談することが、顧客へのアドバイスとしても重要です。
相続登記の費用を安くする方法:見落としがちな免税措置と節約術
費用を抑えるには、使える制度と手順を知っておくことが先決です。知らないと損する情報が複数あります。
🔵 ① 100万円以下の土地の登録免許税免税措置(令和9年3月31日まで)
評価額が100万円以下の土地については、相続による所有権移転登記の登録免許税が0円になります。農村部の田んぼや山林など、評価額の低い土地を複数所有しているケースでは見逃せない制度です。注意点として、建物は対象外です。また、土地を複数まとめて申請する場合は、1筆ごとに100万円以下かどうかを判断します。合計で判断するわけではありません。免税措置を受けるには、申請書に免税の根拠条項の記載が必要です。これは必須です。
🔵 ② 数次相続の場合の免税措置
相続が未登記のまま相続人が亡くなってしまった「数次相続」のケースでは、亡くなった相続人名義とする土地の相続登記について登録免許税が免除されます。2027年3月31日までの申請が対象です。
🔵 ③ 自分でできる書類収集で報酬を削減する
司法書士事務所によっては、戸籍収集を自身で行う部分を省くと、報酬が下がる事務所もあります。自分で役所に行ける時間と体力がある場合は、書類収集の一部を自ら行うことで費用を抑えられます。ただし、書類の種類や通数を誤ると補正や再取得が必要になるため、事前に司法書士に確認してから動くのが安全です。
🔵 ④ 複数の司法書士事務所に見積もりを依頼する
司法書士報酬は自由化されており、同じ案件でも事務所によって金額が異なります。2〜3社に見積もりを依頼し、含まれるサービス内容を揃えて比較することが大切です。「報酬だけが安い」事務所では後から追加費用が発生するリスクもあります。
⚠️ 注意:行政書士や民間会社への依頼は違法になる場合がある
相続登記の代理申請は司法書士の独占業務です。司法書士資格のない者が登記を代理したり、登記書類を作成することは法律で禁止されており、違反した場合は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」という刑事罰の対象となります。インターネット上には民間会社や行政書士事務所が相続登記を請け負うように見えるサービスがありますが、実態は提携する司法書士に再依頼するため、直接依頼より費用が高くなることがほとんどです。費用の節約を目的にするなら、司法書士事務所に直接依頼するのが原則です。
登録免許税の免税措置の根拠となる法令の詳細は以下の公式情報で確認できます。
相続登記の費用を誰が払う?義務化後に見落とせない実務ポイント
2024年4月から相続登記が義務化されました。知らなかったでは済まない変化です。
相続登記の費用は、法律上の規定はなく「誰が払ってもよい」とされています。一般的には、不動産を相続した人が負担するケースが多いですが、相続人が複数いる場合は遺産分割の話し合いの中で費用負担の割合を決めることもあります。
義務化の概要をまとめると次の通りです。
- 📅 期限:相続の発生を知ってから3年以内に登記申請が義務
- 💰 違反した場合:正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象
- 🕐 遡及適用あり:2024年4月1日以前の相続も対象(2027年3月31日が期限)
不動産従事者として顧客と接する場面では、相続が絡む物件を扱うことがあります。相続登記が済んでいない物件は売買の際に手続きが煩雑になり、取引が遅延するリスクがあります。顧客に対して「相続登記は3年以内が義務」という点を早めに案内することは、トラブル防止の観点からも重要です。
また、「相続登記したら相続税が別にかかる」と誤解している顧客もいます。相続税と登録免許税は別物で、相続登記の有無によって相続税が変わることはありません。顧客の不安を解消するためにも、この点を正確に説明できることが大切です。相続税の有無は財産総額と基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人数)で判断します。
相続登記の義務化を受けて、司法書士への依頼が増えている一方、「相続人申告登記」という簡易手続きも新設されました。これは、正式な相続登記の代わりとして申請義務を一時的に果たすための手続きです。最終的に名義変更を完結させるには別途、正式な相続登記が必要ですが、急いで遺産分割協議を行わなくてよい点ではメリットがあります。この仕組みを知っておくと、顧客へのアドバイスの幅が広がります。
義務化の詳細と過料の仕組みについては法務省の公式情報を参照してください。
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