土地の区画形質の変更の定義と開発許可で知っておくべきこと
500㎡未満の造成でも、市街化調整区域なら無許可で3年以下の懲役リスクがあります。
土地の区画形質の変更の定義と都市計画法上の位置づけ
「土地の区画形質の変更」は、都市計画法第4条第12項に登場する重要なキーワードです。同条文では開発行為を「主として建築物の建築又は特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更」と定義しており、この言葉が開発許可制度全体の入口となっています。
不動産実務に携わる方なら誰もが耳にするフレーズですが、「区画形質」の3つの要素をそれぞれ正確に説明できる人は意外と少ないものです。つまり、定義の理解があいまいなまま業務を進めると、許可が必要な行為を見落とすリスクが生じます。
区画形質の変更は、次の3つのうちいずれか1つに該当すれば成立します。
- ① 区画の変更:道路・水路等の公共施設の新設・変更・廃止により、一団の土地利用形態の区画を変更すること
- ② 形の変更:切土または盛土によって土地の高さや形状を変えること
- ③ 質の変更:農地・雑種地など宅地以外の土地を、建築物の敷地や特定工作物の用地として利用できる状態に変えること
3つがすべて揃わないといけないわけではありません。1つで十分です。
なお、よく混同されるのが「分合筆」の扱いです。土地の合筆・分筆は登記上の権利区画を変えるものであり、物理的な利用形態を変えるわけではないため、ここでいう「区画の変更」には該当しません。これは実務上のつまずきポイントになりやすいので覚えておく価値があります。
また、建築確認を受けた建築工事に伴う掘削や基礎打ちは、「区画形質の変更」には含まれません。これも重要な例外です。建物を建てることを目的とした確認申請の枠内で行われる造成工事は、開発行為としての許可申請を別途必要としないという整理になっています。
参考:区画形質の変更の定義について自治体の解説をまとめた公式情報
土地の区画形質の変更における「形の変更」の具体的な基準
「形の変更」は、切土・盛土による土地の造成工事全般を指しますが、実務上は「どこまでの造成が開発行為に該当するのか」という判断が難しい場面があります。鎌倉市の審査基準を例に取ると、以下のような高さ基準が目安として用いられています。
- 高さ2メートルを超える切土を行うもの
- 高さ1メートルを超える盛土を行うもの
- 一体の切盛土で高さ2メートルを超えるもの
- 30センチメートルを超える切土・盛土で、市街化調整区域のすべて、または市街化区域で面積の合計が500㎡以上のもの
数字で見るとイメージがしにくいかもしれませんが、高さ2メートルというのはだいたい一般的な乗用車の全高と同じくらいです。切土1段分でもその高さを超えると、形の変更として区画形質の変更に該当する可能性があります。厳しいところですね。
重要なのは、自治体によって基準の取り扱いが異なる点です。全国一律の数値基準があるわけではなく、各都道府県や市区町村が独自に審査基準を設けています。特に大規模造成を行う前には、必ず管轄の開発審査課に事前相談することが基本です。
「形の変更」と関連が深いのが「盛土規制法」(宅地造成及び特定盛土等規制法)です。2023年5月に施行されたこの法律は、盛土による災害防止を強化するためのもので、都市計画法上の開発許可を取得していても別途規制の対象になるケースがあります。1つの造成工事に複数の法令が絡む場合があるということですね。
参考:盛土規制法と開発許可の関係についての国土交通省解説
土地の区画形質の変更における「質の変更」と農地転用の関係
「質の変更」とは、農地・山林・雑種地など宅地以外の土地を、建築物の敷地または特定工作物の用地とする形態上の性質変更のことです。農地から宅地へ転換する行為がその代表例で、不動産実務では特によく登場します。
ここで混乱しがちなのが、農地転用(農地法)と開発許可(都市計画法)の関係です。どちらも農地を宅地に転換する際に関わってくるため、「どちらか一方を取れば十分」と思われがちですが、実際には両方の手続きが必要になる場合があります。
- 農地転用許可(農地法4条・5条):農業委員会または農林水産大臣等に申請。農地を農業以外の用途に使うための手続き。
- 開発許可(都市計画法29条):都道府県知事等に申請。建物を建てることを目的として土地の区画・形・質を変更する際の手続き。
たとえば、市街化区域の農地(面積1,000㎡以上)に住宅を建てるために農地を整備・造成する場合、農地転用の届出に加え、都市計画法上の開発許可も必要になります。どちらか一方だけでは足りません。
一方で、市街化区域内の農地転用については農業委員会への届出のみで済む場合(いわゆる「届出農転」)もありますが、この場合でも開発行為の面積要件を超えていれば別途許可が必要です。農地転用と開発許可は別々の法律に基づく別々の手続きである、という整理が基本です。
実務で農地絡みの案件を扱うときは、農地法・都市計画法・農振法(農業振興地域の整備に関する法律)の3つが同時に絡むケースも珍しくありません。農振除外の手続きが必要な場合はさらに時間がかかるため、スケジュール管理の観点からも早めに専門家(行政書士・土地家屋調査士)に相談することが現実的な対処法です。
参考:農地転用と開発許可の手続きの違いについて
市街化調整区域での区画形質の変更が特に危険な理由
土地の区画形質の変更に伴う開発許可制度の中で、不動産従事者が最も注意しなければならないのが市街化調整区域です。市街化区域では、面積が1,000㎡未満(三大都市圏の既成市街地等は500㎡未満、条例により300㎡まで引き下げ可能)の開発行為は許可不要となる場合があります。しかし市街化調整区域では、面積がどれだけ小さくても原則として全ての開発行為に許可が必要です。
「小さな造成だから大丈夫だろう」という判断は通用しません。これが原則です。
市街化調整区域は市街化を抑制すべき区域として都市計画法上明確に位置づけられており、その性質から規制が格段に厳しくなっています。たとえば、農地に小屋を建てるために10坪(約33㎡)の土地を整地しただけであっても、それが区画形質の変更に該当し、かつ目的が建築にあるなら開発行為として許可申請が必要になります。
許可なく造成を始めてしまった場合、行政から中止命令と原状回復命令が発せられます。造成した土地を元の状態に戻す費用は事業者の全額負担です。さらに、都市計画法第89条により、3年以下の懲役または200万円以下の罰金という刑事罰の対象にもなります。個人・法人ともに処罰対象である点も見落とせません。
加えて、行政によって違反事業者として公表されるリスクもあります。一度公表されると取引先や金融機関への信用に影響が出るため、金銭的ペナルティだけにとどまらない損害につながります。
市街化調整区域の案件を扱う際には、建築主や施工会社と合意する前に必ず開発許可の要否を確認するプロセスを組み込んでおくことが、トラブルを防ぐ最大の予防策です。管轄の開発審査課への事前相談は無料で行えるため、まず確認する習慣をつけておくとよいでしょう。
参考:東京都の開発許可制度の詳細と市街化調整区域の規制について
区画形質の変更に「該当しない」行為の見分け方(実務の独自視点)
開発許可制度の理解において、「何が開発行為に当たるか」と同じくらい重要なのが「何が開発行為に当たらないか」を正確に知ることです。該当しない行為を誤って開発行為と判断してしまうと、不必要な時間・コスト・手続きが発生します。
開発行為に該当しない代表的な行為を整理すると、次のようになります。
- 単なる分合筆(登記上の権利区画の変更のみで、物理的な利用形態を変えない)
- 建築確認を受けた建築工事に伴う掘削・基礎打ち(建築行為の延長として扱われる)
- 建築基準法第42条第2項による道路後退(セットバック)
- 駐車場や資材置き場を目的とした造成(建築物の建築・特定工作物の建設が目的でない場合)
- 仮設建築物の設置に伴う軽微な造成
駐車場の造成については特に注意が必要です。建物を建てる目的がなく、単に駐車スペースとして整地するだけなら「開発行為」には該当しない、というのが原則です。これは意外ですね。しかし、同じ駐車場でも1ha以上の自動車車庫の建設等が絡む場合には第二種特定工作物に該当し、開発許可が必要になるケースもあります。
「建築物の建築または特定工作物の建設の用に供する目的で行う」という要件が成立するかどうかが、開発行為の判断の核心にあります。つまり、目的が変われば同じ造成でも許可不要になることがあります。
この判断は行政窓口でも意見が分かれることがあり、事前相談の重要性はここにもあります。国土交通省が公表している「開発許可制度運用指針」では、「山林現況分譲」「菜園分譲」等と称して実質的に開発行為を行いながら「建築不可」の文言を入れる脱法的手法についても言及されており、悪意の有無にかかわらず実態で判断されることが明記されています。
国土交通省の運用指針は最新版が随時更新されているため、定期的にチェックしておくことをお勧めします。
参考:開発行為の詳細な判断基準についての国土交通省公式指針
国土交通省「開発許可制度運用指針(PDF)」
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