組立保険とは工事の補償範囲と注意点を徹底解説

組立保険とは工事における補償の基本と実務の落とし穴

賠償責任保険に入っていても、自社の資材が現場で全損したら1円も出ません。

この記事でわかること
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組立保険の基本定義

機械・設備の据付・組立工事中の不測の事故による「自社の物の損害」を補償する保険。賠償責任保険とは補償対象が異なる。

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対象工事と対象外工事

電気設備・空調・給排水工事などは対象。建物本体の建築工事・解体・撤去工事は対象外。追加工事は別途契約が必要。

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知らないと損するポイント

公共工事では加入必須のケースあり。補償期間延長の手続き漏れで保険金ゼロの事態も。包括契約なら手配ミスを防げる。

組立保険とは何か|建設工事保険との根本的な違い

 

組立保険とは、工事現場において建物の内装・外装、冷暖房・給排水・電気・ガスなどの設備工事、あるいは各種機械設備の据付・組立工事中に、不測かつ突発的な事故によって生じた物的損害を補償する保険です。分かりやすく言えば、「自社が持ち込んだ資材・機器が現場で壊れたり盗まれたりしたときに損失を穴埋めしてくれる保険」です。

ここで最初に押さえておきたいのが、同じ建設系の保険として語られることの多い「建設工事保険」との違いです。建設工事保険の補償対象は、ビルや住宅・工場など建物そのものの建築工事(増築・改築・改装・修繕を含む)です。一方、組立保険は建物本体以外の設備・機械の据付・組立が主な対象となります。つまり、建物の躯体を作る工事が建設工事保険、そこに設置する設備を取り付ける工事が組立保険と考えると整理しやすいです。

また、「土木工事保険」という保険もあります。これは上下水道工事・トンネル・道路建設などの土木工事が対象で、組立保険とは別物です。3つの保険は対象工事の種類で完全に住み分けられており、何の工事をするかによってどれに入るかが決まる構造になっています。

実務上で特に注意が必要なのは、「組立保険に入っているから現場は大丈」という思い込みです。組立保険はあくまでも「自社の物の損害」を補償するものであり、第三者に損害を与えた場合の賠償責任は別途「請負業者賠償責任保険」でカバーする必要があります。2つの保険はまったく補う対象が異なります。それぞれ役割が違います。

組立保険の補償対象となる主な工事の種類は以下のとおりです。

  • 建物の内装工事・外装工事(内外装材・仕上げ材など)
  • ビル付帯設備工事(冷暖房・給排水・電気・ガス設備など)
  • 鋼構造物の建設工事(アンテナ・鉄塔・アーケード・煙突・歩道橋など)
  • 各種機械・装置の据付・組立工事(ボイラ・コンプレッサー・発電機・エレベーター・立体駐車場など)
  • 設備一式の工事(受変電設備・発電設備・冷凍冷却設備など)
  • 工場・プラント・発電所などの建設における設備一式の工事

逆に、以下のものは保険の対象に含まれません。

  • クレーンなどの工事用機械器具・工具およびその部品
  • 航空機・船舶・自動車などの車両
  • 設計図書・帳簿・有価証券・通貨
  • 原料・燃料・潤滑油・触媒などの消耗品類

工事用の重機や工具は組立保険の補償対象外です。これは見落としやすい盲点なので、現場を管理する立場の方は特に覚えておくべき点です。

参考:組立保険の補償範囲や支払い事例について詳しく確認できます。

損保ジャパン「組立保険のご案内」(PDF)

組立保険の工事における補償内容|保険金が出る事故・出ない事故

組立保険が保険金を支払うのは「不測かつ突発的な事故」による損害が基本条件です。つまり、偶然起きた事故であることが前提です。実際に保険金が支払われた事故例として、損保ジャパンが公開しているデータには次のようなケースが記録されています。

  • 台風により外装改修工事中の外壁型枠が脱落 → 損害額110万円
  • 給水用配管の組立時に閉止プラグの取り付け忘れで漏水、階下の制御盤が絶縁破壊 → 損害額390万円
  • 突風により鋼製主桁(橋梁)が転倒 → 損害額2,000万円
  • 集中豪雨による増水で地下2階の機械設備が冠水、送風機・電動機・焼却炉が損傷 → 損害額1,800万円
  • 夜間に電話ケーブルが盗難・残線も絶縁破壊 → 損害額1,000万円

1件で数百万から数千万円規模の損害が現実に起きています。これが補償されるかどうかは、事業の存続に関わる問題になりえます。

補償の対象となる主な事故原因は以下のとおりです。

  • 火災・爆発・破裂
  • 台風・暴風雨・洪水・落雷などの自然災害
  • 土砂崩れ・地盤沈下・隆起
  • 電気のショート・アーク・過電流などの電気的現象
  • 作業員の過失・施工ミス・組立作業の欠陥
  • 設計・材質・製作の欠陥
  • 盗難

注目すべきは「作業員の過失や施工ミス」が補償対象に含まれている点です。工事現場でのヒューマンエラーは頻繁に起きます。それがカバーされるのは大きな利点です。

一方で、保険金が支払われないケースも把握しておく必要があります。

  • 契約者・被保険者・工事現場責任者の故意・重過失または法令違反による損害
  • 地震・噴火・津波による損害
  • 風雨・雹(ひょう)・砂塵の「吹込み・漏入」による損害(台風本体の水害は対象、吹込みは対象外という細かい区分あり)
  • 自然の消耗・劣化・錆(さび)による損害
  • 戦争・暴動・テロ行為による損害
  • 工事期間の遅延・能力不足による損害賠償責任
  • 残材調査で発見された紛失・不足の損害

地震が対象外なのは見落としがちです。日本では地震リスクが高いにもかかわらず、標準の組立保険では補償されません。地震リスクを別途カバーしたい場合は、保険会社に特約の有無を確認する必要があります。

参考:三井住友海上による保険金支払いの主な事故パターンが確認できます。

三井住友海上「組立保険 保険金をお支払いする主な場合」

組立保険の工事期間と補償開始タイミングの盲点

組立保険は加入したからといって、すべての期間が自動的に補償されるわけではありません。補償の開始・終了タイミングを正確に理解しておかないと、事故が起きた瞬間にカバーされていないという最悪の事態になります。これが実務上の最大の落とし穴です。

補償の開始については、「保険期間の初日」または「工事現場で輸送機関から荷卸しが完了した時のいずれか遅い時」から始まります。つまり、保険期間内に着工した工事でも、資材が現場に搬入されて荷卸しが完了するまでは補償が始まっていないということです。荷卸し前の損害は対象外が原則です。

ただし、保険会社によっては「荷卸危険補償特約」を付けることで、輸送機関からの荷卸し作業中の損害も補償できる場合があります。この特約が付いているかどうかで、補償の手厚さが変わります。また、一部の保険会社では資材をトラックに積み込んだ時点から補償が始まるプランも提供されています。建設資材が運搬中に交通事故などで破損するリスクも現実にあるため、可能であれば補償範囲が広いプランを選ぶのが賢明です。

補償の終了については次のような決まりがあります。

  • 工事の対象物が発注者へ引き渡された時点
  • 引き渡しを要しない場合は工事が完了した時点
  • 引き渡し前に保険の対象物が操業を開始した場合はその時点

工期が延びた場合は要注意です。予定の引渡し日を過ぎても引き渡しが完了していない場合、保険期間が自動的に延長されることはありません。保険期間満了前に延長手続きを行わなければ、工期延長後の事故は補償されません。手続きが1日遅れただけで数千万円の損害が補償されない事態もありえます。工期が変更になった時点で、すぐに代理店に連絡することが必要です。

さらに気をつけなければならないのが「追加工事」の扱いです。当初の契約内容に含まれていなかった追加工事部分は、新たに保険を契約しなければ補償対象外となります。途中でスコープが広がるケースは珍しくありません。その都度、保険の更新・追加を確認する運用ルールを持つことが重要です。

タイミング 補償状況 注意点
資材の運搬中 原則対象外 特約(荷卸危険補償等)で対応可
現場での荷卸し完了後〜引渡しまで 補償対象 保険期間内に限る
工期延長後(手続き未了) 対象外 期間延長手続きが必須
引渡し後・操業開始後 対象外 完成後は別の保険で対応
追加工事分(別途未契約) 対象外 追加契約が必要

組立保険の工事保険料の計算と包括契約の活用メリット

組立保険の保険料は、「保険金額×料率」という構造で決まります。料率は工事内容・工事期間・工事の場所・過去の損害実績などによって異なります。設計の欠陥リスクが高い大型プラントや複雑な機械設備工事は料率が高くなる傾向があり、一般的な内装・設備工事は比較的低くなります。

保険金額の設定方法はシンプルです。基本的には「請負金額+支給材料の金額−保険の対象に含まれない工事の金額」で計算します。解体・撤去・分解・取片付け工事が含まれている場合は、その工事費は除外します。消費税は保険金額に含めた額で設定するのが原則です。

保険金の支払い計算式も確認しておきましょう。

支払われる保険金=(損害の額 − 自己負担額)×(保険金額 ÷ 請負金額)

自己負担額(免責金額)は損保ジャパンの場合、標準では工事の種類によって以下のように設定されています。

  • 建物の内・外装工事:2万円
  • 冷暖房・給排水・電気・ガスなどのビル付帯設備:2万円
  • プラント物件:10万円
  • 保険金額150万円未満のその他物件:2万円

免責金額を高く設定することで保険料を下げることもできます。財務体力がある企業では、小さな損害は自己負担とし、大型事故に備えて保険料を抑える戦略も合理的です。

具体的な保険料の目安として、三井住友海上の公開資料によれば「ビルの冷暖房設備の設置工事(東京都・工期2ヶ月・請負金額5,000万円・損害賠償責任特約付)」の場合の保険料は約10万円です。5,000万円の工事リスクを10万円の保険料でヘッジできると考えると、コストパフォーマンスは非常に高いと言えます。

年間を通じて複数の工事を請け負う会社には「包括契約(総括契約)」がおすすめです。包括契約には2つの方式があります。

  • 確定保険料方式:最近の会計年度の年間完成工事高をもとに保険料を算出し、通知・精算が不要。手続きが最もシンプル。
  • 暫定保険料方式:個々の工事内容を都度通知し、確定精算を行う。工事内容に応じた正確な保険料設定が可能。

包括契約の最大のメリットは「加入漏れ防止」です。個別契約の場合、工事ごとに都度申し込みが必要なため、忙しい時期に手続きを忘れて無保険状態で工事を始めてしまうリスクがあります。包括契約なら1年分をまとめて自動的に補償できます。保険料が最大10%割引になる点も見逃せません。

参考:三井住友海上の組立保険における保険料例が掲載されています。

三井住友海上「組立保険 保険料例」

組立保険と工事に関する不動産業者が押さえるべき受注リスク

不動産業に関わる立場から見たとき、組立保険の知識が薄いと「受注機会の損失」と「事故時の自腹リスク」という2つの大きなデメリットが生じます。この2点が原則です。

まず受注リスクについてです。組立保険は法的な加入義務のない任意保険ですが、工事の発注者や元請け会社が加入を条件として求めるケースが多くあります。特に公共工事では、国土交通省発注工事を含む多くの案件で、建設工事保険または組立保険への加入が入札参加資格・受注条件として設定されています。無保険の状態では入札そのものに参加できない事例もあります。

つまり、組立保険に入っていないと受注の機会自体を失う可能性があります。見積もり段階で保険費用を計上しておくことは、入札・受注活動において必須の準備と言えます。

次に事故時の自腹リスクについてです。不動産業者が管理・仲介する物件で内装や設備の工事を発注する立場にある場合も、工事業者が組立保険に加入しているかどうかは確認すべきポイントです。未加入の業者が施工中に数百万円規模の損害を出した場合、業者の資力によっては損害が回収できないケースがあります。発注側のリスク管理としても、工事業者の保険加入状況の確認は有効な対策です。

また、元請け業者が組立保険に入っている場合でも、下請け業者が別途加入すべきケースがあります。元請けの保険が「自社施工分のみ」を補償する設計になっている場合、下請けが持ち込んだ資材は補償の対象外となることがあるためです。契約書の補償範囲を確認し、自社分の補償に空白がないか点検することが大切です。

さらに、工事の発注側である不動産会社が施主として組立保険の保険契約者になるパターンも存在します。施主側が手配した支給材料が損傷した場合、その材料の金額を保険金額に加算して設定していなければカバーされません。保険の設計段階でこの部分を漏らさないようにしましょう。

参考:建設業における組立保険と賠償責任保険の違いを詳しく解説しています。

カイシャのホケン「組立保険と賠償責任保険は全く別物!」

組立保険で工事の補償を最大化する特約と選び方の実務ポイント

組立保険の補償内容は基本プランのままでは不十分なケースも多く、現場の状況に合わせた特約の追加が有効です。代表的な特約とその活用シーンを整理します。

  • 損害賠償責任補償特約:第三者の身体障害・財物損壊に対する法律上の損害賠償責任を補償。基本の組立保険には賠償責任が含まれないため、この特約は実質必須と言えます。
  • 特別費用補償特約:復旧作業に急行貨物割増運賃や残業・休日・夜間の割増賃金が発生した場合、それを復旧費に算入できるようにする特約。工期の制約が厳しい工事に有効です。
  • 荷卸危険補償特約:輸送機関からの荷卸し作業中の損害をカバーする特約。標準の補償は荷卸し完了後からのため、この期間をカバーしたい場合に追加します。
  • 残存物の解体及び取片づけ費用補償特約:損害を受けた保険対象の残存物の取片付けに必要な費用を補償する特約。大型設備の場合、残存物の処理費用だけで数十万円規模になることもあります。

特約の内容は保険会社によって異なります。これは大事な点です。加入前に複数の保険会社のプランを比較し、自社の工事内容に合った補償設計を組み立てることが重要です。

保険会社を選ぶ際のチェックポイントは以下のとおりです。

  • 補償の開始タイミング(積み込み時からか、荷卸し後からか)
  • 特約の種類と費用
  • 包括契約の選択肢があるか
  • 自己負担額(免責金額)の設定の柔軟性
  • 事故発生時の対応スピード・窓口体制

主要な組立保険の取り扱い保険会社には、損保ジャパン・三井住友海上・AIG損保・あいおいニッセイ同和損保・東京海上日動などがあります。いずれも法人向け損保の実績が豊富です。見積もりを複数社に依頼して比較するのが最もコストパフォーマンスの高い選び方です。

なお、年間完成工事高が30億円以下の建設業者向けには、損保ジャパンの「工事シングルガード」のような、建設工事保険をベースに組立・土木を含むすべての工事を一括で補償できるパッケージ商品も存在します。工事の種類が多岐にわたる会社には管理コストの削減に役立つ選択肢です。

建設工事保険・組立保険・土木工事保険の3種類を個別に契約するより、こうしたパッケージ商品で一括管理する方が抜け漏れも少なく、保険料も効率的になることがあります。まずは取扱代理店に自社の工事内容を伝え、最適な補償プランの相談から始めると良いでしょう。

参考:AIGによる組立保険の補償範囲と特約内容について確認できます。

AIG損保「組立保険パンフレット」(PDF)



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