ホテルと旅館の違い法律で知る許可と営業種別の全知識

ホテルと旅館の違いを法律から理解する許可・種別・構造設備の全知識

ホテルの名称がついていれば、旅館業法でホテルとして届け出が必要だと思っていませんか?実は2018年以降、「ホテル」と「旅館」は法律上まったく同じ営業種別として扱われるため、名称だけで許可区分を判断すると申請ミスにつながります。

この記事の3つのポイント
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2018年の法改正で「ホテル営業」「旅館営業」は統合済み

旅館業法の改正により、かつて別々の種別だったホテル営業と旅館営業は「旅館・ホテル営業」として一本化。名称が「ホテル」でも「旅館」でも、取得する許可は同じです。

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用途地域によっては許可取得そのものができない

第一種・第二種低層住居専用地域や中高層住居専用地域など住居系地域の多くでは、旅館・ホテル営業は建築基準法上認められません。物件選定前の用途地域確認が必須です。

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2023年改正で旅館業の許可は物件売買で承継可能に

2023年12月施行の改正旅館業法により、事業譲渡の手続きを経れば買主が許可を取り直さずに営業者の地位を引き継げるようになりました。不動産取引実務に直結する重要な変更点です。

ホテルと旅館の違いを旅館業法の「営業種別」から整理する

 

不動産の仕事をしていると、宿泊施設物件の取引や土地活用の提案場面で「ホテルと旅館の違いは?」と問われることが少なくありません。感覚的には「ホテルは洋式・旅館は和式」というイメージが浮かびますが、法律の観点からはそれほど単純ではありません。

旅館業法は宿泊施設の営業に関するルールを定めた法律で、もともとは「ホテル営業」と「旅館営業」を別の区分として規定していました。具体的には、ホテル営業は「洋式の構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」、旅館営業は「和式の構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」として区別されていたのです。

つまり法律上の区分が原則です。

改正前の旧法では客室数の要件も異なり、ホテルは10室以上・旅館は5室以上が必要とされていました。洋室か和室かという構造の違いだけでなく、規模要件でも2つの種別は別物として扱われていたわけです。

ところが、平成29年(2017年)に旅館業法の一部改正が公布され、翌平成30年(2018年)6月15日に施行された改正法によって、この二つの営業種別は「旅館・ホテル営業」として統合されました。これが現在の法律上の実態です。法律の上では「ホテル」と「旅館」の区別はなくなりました。

以下の表で改正前後の主な変化を整理しておきましょう。

項目 改正前(旧法) 改正後(現行法)
営業種別 ホテル営業・旅館営業の2区分 旅館・ホテル営業として統合
最低客室数 ホテル10室以上、旅館5室以上 廃止(1室でも可)
客室面積基準 ホテル洋室9㎡以上、旅館和室7㎡以上 原則9㎡以上(寝台なし7㎡以上)に統一
フロント設置 原則義務 ICT代替設備で不要(条件あり)

不動産実務の視点からは、「建物の外観がホテル風だから旅館業の許可もホテル営業で取っているはず」という思い込みは禁物です。現行法では申請する営業種別はすべて「旅館・ホテル営業」に統一されています。これが基本です。

ホテルと旅館の違いに影響する旅館業法の構造設備基準と許可申請の流れ

法律上は統合されたとはいえ、旅館業の許可を取得するためには一定の構造設備基準をクリアしなければなりません。この基準を理解しておくことは、収益物件や土地活用を提案するうえで非常に重要です。

現行の旅館・ホテル営業における主な構造設備基準は以下の通りです。

  • 客室の床面積:1室あたり原則9㎡以上(ベッドがない場合は7㎡以上)
  • 衛生設備:適切な数のトイレ・洗面所・入浴施設。ただし近隣に公衆浴場がある場合、施設内浴室を免除できる自治体もあります
  • 換気・採光・照明:十分な環境基準を満たすこと
  • 防火設備:自動火災報知設備・誘導灯・消火器など(消防法基準に従う)
  • フロント(玄関帳場):原則必要だが、ICT設備で代替可能(後述)

フロントの話は使えそうです。

かつてはフロント(玄関帳場)の設置が義務付けられており、これがホテル・旅館開業の大きなコストになっていました。しかし2018年改正で顔認証システムやビデオ通話などICT機器による本人確認が条件を満たせばフロント設置が不要となり、さらに2025年4月1日施行の「旅館業における衛生等管理要領」の改正によって、ICT活用の本人確認ルールが一段と整備されました。具体的には、宿泊者の顔と旅券を画像で照合できるシステムなどを活用することで、完全無人のフロントレス運営が可能になっています。

許可申請の流れについても整理しておきましょう。

ステップ 内容 目安期間
①物件確認 用途地域・建物用途の確認 開始直後
②事前相談 保健所・消防署・建築指導課への相談 1〜2週目
③書類作成 平面図・設備図面・申請書類の準備 2〜4週目
④消防設備工事 必要に応じて自動火災報知設備等の設置 並行して実施
⑤申請提出 保健所への許可申請書提出 4〜5週目
⑥現地調査 保健所職員による立入検査 5〜7週目
⑦許可証交付 基準クリア後に許可証発行・営業開始 7〜8週目以降

許可取得までの合計期間は通常2〜3ヶ月が目安です。建物の用途変更や消防工事が必要な場合は、さらに1〜2ヶ月追加される場合があります。費用面では、保健所への申請手数料が約2〜3万円、行政書士報酬が10〜20万円程度、消防設備の設置・改修費として数万〜数十万円が一般的です。

物件購入後に「旅館業許可が取れない立地だった」という事態は避けたいですね。

旅館業法における旅館・ホテル営業と簡易宿所営業の許可要件の詳細解説(RTT行政書士事務所)

ホテルと旅館の違いにも関わる用途地域の制限と不動産実務への影響

旅館業の許可申請で最初にして最大の関門となるのが、物件の用途地域との適合です。旅館・ホテル営業は建築基準法上の「ホテルまたは旅館」用途に分類されるため、どの用途地域に建物があるかによって、そもそも営業できるかどうかが決まります。

用途地域は全国一律のルールです。

日本の市街化区域には13種類の用途地域があり、旅館・ホテルが建築・営業できる地域は限られています。具体的には次の通りです。

用途地域 ホテル・旅館の営業 備考
第一種・第二種低層住居専用地域 ❌ 不可 最も厳しい住宅系地域
第一種・第二種中高層住居専用地域 ❌ 不可 中高層マンション地域
田園住居地域 ❌ 不可 農地と住宅の共存地域
第一種住居地域 ⚠️ 条件付き可 3,000㎡以下に限り可能
第二種住居地域準住居地域 ✅ 可
近隣商業・商業・準工業地域 ✅ 可
工業地域・工業専用地域 ❌ 不可 工業系地域

不動産従事者の実務で特に注意が必要なのは、「第一種低層住居専用地域の閑静な一戸建てエリア」や「中高層マンションが多い第一種中高層住居専用地域」に所在する物件を「宿泊施設転用可能な物件」として紹介してしまうケースです。これらの地域では旅館業法の許可が下りないため、投資家に大きな損害を与えるリスクがあります。

第一種住居地域の注意点も補足します。第一種住居地域は「3,000㎡以下に限り可能」という条件付きです。延べ床面積が3,000㎡を超える大型ホテルを計画する場合は、第一種住居地域でも建てられないことになります。東京ドームのグラウンド(約13,000㎡)と比べれば、3,000㎡はその約4分の1以下の規模感です。

さらに、市街化調整区域での旅館業営業は原則として難しいという点も覚えておきたいところです。市街化調整区域では建築行為自体に開発許可が必要なうえ、既存建物の用途変が認められないケースが多いためです。地方の古民家活用やリゾート系施設の提案をする際は、事前に建築指導課への確認が必須です。

ホテル・旅館が営業できる用途地域と市街化調整区域の詳細解説(行政書士けいしー)

ホテルと旅館の違いを超えた新・旅館業法:2023年改正で変わった不動産売買の実務

旅館業法は2023年12月13日にも大きな改正が施行されました。不動産従事者にとって特に重要なのが「事業譲渡による許可の承継」です。これが実務を大きく変えます。

改正前は、旅館やホテルが入った物件を売買する際、買主が新たに旅館業の許可を取り直す必要がありました。許可の取得には前述の通り2〜3ヶ月と相応のコストがかかるため、売買成立までのハードルが高く、宿泊施設物件の流動性が低い一因にもなっていました。

今は仕組みが変わりました。

2023年改正により、事業譲渡の手続きを踏むことで、買主(譲受人)が旅館業の許可を取り直さずに「営業者の地位」を承継できるようになりました。具体的には、保健所に対して「事業譲渡の事前承認申請」を行い、承認を得たうえで事業譲渡の効力を発生させる、という手順が必要です。

手順の順序が条件です。

この順序を間違えると承継できないため注意が必要です。事業譲渡の効力が先に発生してしまうと、保健所の承認が受けられなくなります。不動産売買契約のタイミングと行政手続きのタイミングを連動させる調整が実務上のポイントになります。

また、改正前の旅館業法では会社分割や合併といったM&Aの場合は法人に限り許可承継が認められていましたが、個人は対象外でした。今回の改正で個人でも事業譲渡による許可承継ができるようになったことは、民間の小規模宿泊施設の売買活性化に直結する大きな変更点です。

なお、この改正と合わせて「迷惑行為客への宿泊拒否」や「感染症対策の協力要請」に関するルールも整備されました。物件売買後に受ける運営面のリスクも把握しておくと、投資家への説明がより充実します。

2023年旅館業法改正で変わった事業譲渡・許可承継の実務解説(健美家)
厚生労働省:旅館業法改正の概要(公式ページ)

ホテルと旅館の違いを知らないと損する:無許可営業の罰則と不動産取引のリスク管理

旅館業法に定められた許可を取得せずに宿泊業を営むことは「無許可営業」にあたり、厳しい罰則の対象となります。不動産従事者が知っておくべき観点は、自分自身が営業するケースだけでなく、売買・賃貸借の媒介において関与する物件がこのリスクを抱えていないかという点です。

罰則の水準は侮れません。

2018年の法改正以前、無許可営業に対する罰金の上限はわずか3万円と低額でした。これが改正後は最大「6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金、あるいはその両方」へと大幅に引き上げられています。さらに旅館業法に関するその他の違反については50万円以下の罰金が科される可能性があります。

罰則が33倍以上に跳ね上がった、というのが事実です。

不動産実務において考えられるリスクシナリオは以下のようなものがあります。

  • ✅ 売主から「旅館業の許可物件」として購入したが、許可が廃止・失効していた
  • 賃貸借契約で「宿泊利用可能」として貸したが、借主が旅館業許可なく民泊営業していた
  • ✅ 物件購入後にホテル転用を計画したが、用途地域が営業不可エリアだった
  • ✅ 事業譲渡で旅館物件を取得したが、承継手続きの順序を誤り許可が引き継げなかった

特に賃貸契約のケースでは、借主が無許可で民泊・ホテル営業を行っている事実を把握しながら見過ごした場合、貸主や仲介者が行政からの指導対象となる可能性もあります。「旅館業の許可の有無を物件調査の項目に加える」という習慣を持つことが、リスク回避につながります。

一方で、旅館業の許可を持つ稼働中の物件は、純粋な賃貸住宅として同じ立地・面積の物件と比べて収益性が大きく異なることがあります。宿泊ニーズの強いエリアでは、賃貸住宅として月額10万円の家賃相当の物件が、旅館業許可を持つ宿泊施設として運営すれば1泊5万円の宿泊料を得られるケースもあります。許可の価値を正確に見極めることが、物件の本来の収益力を顧客に伝える力につながります。

無許可の旅館業営業に関する罰則の詳細(松山市・行政公式ページ)



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