空き家特例チェックシート活用法と適用要件を完全解説

空き家特例チェックシート活用と適用要件

建物と土地を別々に相続した顧客は控除を受けられません

この記事の要点
📋

国税庁チェックシートで事前確認

チェックシートを活用すれば「はい」「いいえ」形式で適用可否を10項目以内で判定でき、顧客への説明時の見落としを防げます

⚠️

区分所有登記は即アウト

二世帯住宅でも区分所有登記されていれば特例適用不可、登記簿謄本での確認が必須です

💰

相続人3人以上で控除額減額

令和6年改正により相続人が3人以上の場合、各人の控除額が3000万円から2000万円に減額されました

空き家特例チェックシートの基本構造と使い方

国税庁が公開する「相続した空き家を売却した場合の特例チェックシート」は、空き家の3000万円特別控除の適用可否を判定するための公式ツールです。令和6年分用の最新版では、10項目程度の質問に「はい」「いいえ」で答えることで、特例が使えるかどうかを自己診断できる仕組みになっています。

不動産業に従事する方なら、このチェックシートを顧客との初回面談時に活用することをおすすめします。

適用要件の見落としを防げるからです。

チェックシートは国税庁の各地方組織のWebサイトからPDF形式でダウンロード可能です。福岡国税局、東京国税局など、各地域の税務署が管轄エリア向けに同一フォーマットを提供しています。質問内容は全国共通ですが、年度ごとに改正が反映されるため、必ず最新年度版を使用してください。令和6年分では相続人が3人以上の場合の控除額減額が反映されています。

フローチャート形式になっているのが大きな特徴です。最初の質問で「いいえ」を選ぶと即座に「特例の適用を受けることはできません」の判定に進むため、無駄な時間をかけずに済みます。

顧客に提案する際は、チェックシート記入前に登記事項証明書固定資産税納税通知書、被相続人の住民票の除票などの基礎資料を揃えておくとスムーズです。これらの書類があれば、その場で正確に質問へ回答できます。

国税庁福岡国税局の令和6年分チェックシートはこちら(PDF形式で全2ページ、質問項目と添付書類一覧を掲載)

空き家特例の適用要件で見落としやすい5つのポイント

不動産業従事者が顧客案件で最も見落としやすいのが「建物と土地の両方を相続している」という要件です。建物は長男、土地は次男が相続したケースでは、どちらも特例を適用できません。チェックシートの質問1で必ず確認される項目ですが、遺産分割協議の段階で気づかないと取り返しがつきません。

区分所有登記の有無も盲点です。完全分離型の二世帯住宅でも、区分所有登記されていなければ適用可能ですが、区分所有登記がある場合は即座に対象外となります。外見だけでは判断できないため、必ず登記事項証明書で確認する必要があります。マンションは基本的に区分所有建物なので最初から対象外ですね。

昭和56年5月31日以前の建築という築年数要件も誤解が多いポイントです。なぜこの日付なのか、理由は建築基準法の耐震基準改正日だからです。旧耐震基準の建物のみが対象となり、それより新しい建物は最初から特例の対象になりません。

建築年月日は登記事項証明書で確認できます。

相続開始直前に被相続人が一人暮らしだったかという要件も重要です。配偶者や子供と同居していた場合は原則として適用不可となります。ただし老人ホーム入所中に亡くなった場合は、要介護認定を受けていれば特例対象となる例外があります。入所直前まで一人暮らしで、入所後も家屋を事業用・賃貸用に使っていなければ問題ありません。

1億円以下という譲渡価額要件は、共有名義の場合に注意が必要です。判定は各人の持分金額ではなく、物件全体の売却代金で行います。兄弟3人で共有し、合計1億2000万円で売却した場合、各人の取得金額が4000万円ずつでも全員が適用不可です。

空き家特例の令和6年改正内容と実務への影響

令和6年1月1日以降の譲渡から、相続人が3人以上の場合の特別控除額が各人2000万円に減額されました。従来は相続人の人数に関わらず各人3000万円だったため、大幅な変更といえます。

具体的な影響を数字で見てみましょう。3人の兄弟が共有で相続した空き家を6000万円で売却し、取得費と譲渡費用の合計が1000万円だったケースで計算します。

譲渡所得は5000万円です。

改正前なら各人が3000万円控除できたため、控除総額は9000万円となり、5000万円の譲渡所得は完全に相殺され課税ゼロでした。改正後は各人2000万円で控除総額6000万円となり、5000万円を控除しきれるため結果的に課税ゼロです。

しかし譲渡所得が7000万円のケースでは状況が変わります。改正前は課税ゼロでしたが、改正後は1000万円に課税されることになります。長期譲渡所得税率20.315%を適用すると約203万円の税負担です。

この改正により、相続人が多い案件ほど税負担が増える構造になりました。顧客への提案時には、相続人の数を最初に確認し、改正後の控除額で試算することが必須です。

なお相続人が2人以下の場合は従来通り各人3000万円の控除が適用されます。

つまり2人なら最大6000万円まで控除可能です。

空き家特例における耐震基準適合と売却後改修の新制度

旧耐震基準の建物を売却する際、従来は売却前に耐震改修工事を完了させるか、建物を取り壊す必要がありました。令和6年改正により、売却後に買主が耐震改修や取り壊しを行う場合でも特例適用が可能になっています。

改正後の仕組みはこうです。売却時点では耐震基準を満たしていなくても、売買契約で買主が耐震改修または取り壊しを行うことを明記し、売却日の翌年2月15日までに工事を完了すれば特例が使えます。工事完了後に耐震基準適合証明書を取得し、確定申告時に添付する流れです。

この改正により売主の初期負担が大幅に軽減されました。従来は売却前に100万円から300万円程度の耐震改修費用を自己負担する必要があり、資金繰りがネックとなるケースが多かったためです。

実務では売買契約書に特約条項を入れることが重要です。「買主は本物件を取得後、令和○年2月15日までに耐震改修工事を完了し、耐震基準適合証明書を取得する」といった文言を明記します。これにより売主が確定申告で特例を適用する際の根拠となります。

ただし買主が期限内に工事を完了しなかった場合のリスクは売主が負います。特例適用できなければ、売主に多額の追徴課税が発生する可能性があるため、買主の資力や工事計画の実現可能性を慎重に見極める必要があります。信頼できる買主であるかの見極めが重要ですね。

耐震基準適合証明書は、建築士事務所登録をしている建築士、指定確認検査機関、登録住宅性能評価機関が発行できます。

発行費用は5万円から15万円程度です。

空き家特例の必要書類と被相続人居住用家屋等確認書の取得手順

空き家特例の適用には、確定申告時に複数の書類を税務署に提出する必要があります。中でも最も重要なのが「被相続人居住用家屋等確認書」で、これは市区町村の窓口でしか取得できません。

被相続人居住用家屋等確認書は、空き家が特例の要件を満たしていることを市区町村が証明する書類です。申請先は物件所在地の市区町村の建築指導課や住宅政策課などの担当部署となります。自治体によって窓口名称が異なるため、事前に電話で確認してください。

申請に必要な書類は概ね以下の通りです。被相続人居住用家屋等確認申請書(各自治体の様式)、売買契約書の写し、登記事項証明書または閉鎖事項証明書、被相続人の住民票の除票、相続人全員の住民票、電気・ガスの閉栓証明書または使用廃止証明書などが求められます。

老人ホーム入所のケースでは、要介護認定を受けていたことを証明する介護保険被保険者証の写し、入所時期を証明する施設の入所契約書や入所証明書、入所前まで家屋に居住し入所後は使用していなかったことを証明する電気・ガスの閉栓証明書などが追加で必要です。

申請から交付まで2週間から1か月程度かかるのが一般的です。確定申告期限ギリギリでは間に合わないため、売却が決まったら速やかに申請することをおすすめします。

国土交通省の空き家特例措置ページでは、各種様式と申請手順の詳細を確認できます

空き家特例チェックシートを顧客対応で活用する実践テクニック

不動産業従事者が顧客面談でチェックシートを活用する際、最初に確認すべきは相続発生日と現在日の関係です。相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日が売却期限となるため、この期限を過ぎていれば他の要件を確認する意味がありません。

例えば令和3年7月10日に相続が開始した場合、3年を経過する日は令和6年7月9日で、その年の12月31日つまり令和6年12月31日が期限です。この日までに売買契約を締結し、引き渡しを完了する必要があります。期限が迫っている顧客には、スケジュール優先で動くことを助言してください。

チェックシート記入は顧客と対面で行うことを推奨します。一人で記入させると誤解や見落としが発生しやすいためです。特に「相続開始直前に被相続人以外に居住していた人はいませんでしたか」という質問は、老人ホーム入所の例外規定を知らないと誤った回答をする可能性があります。

登記簿謄本を見ながら区分所有建物の有無を確認する際は、「敷地権」や「専有部分」といった文言があれば区分所有登記の可能性が高いです。二世帯住宅で各世帯に家屋番号が別々に振られていれば、区分所有登記されている証拠となります。

1億円要件の判定では、他の相続人が既に持分を売却していないか確認が必須です。長男が令和5年に持分を4000万円で売却し、次男が令和6年に残りの持分を7000万円で売却する場合、合計1億1000万円となり次男は特例を適用できません。相続人間で売却時期や価格を調整できれば、各人が1億円以下になるよう分割売却する戦略も考えられます。

チェックシートで「いいえ」の判定が出た場合でも、代替策を提案できることがあります。取得費加算の特例は空き家特例と併用できませんが、どちらか有利な方を選択できるため、両方の試算を行って顧客に提示するとよいでしょう。取得費加算の特例は相続税を支払った人が相続開始から3年10か月以内に売却する場合に使えます。

空き家特例適用時の実務上の注意点とトラブル回避策

空き家特例を適用する際、相続から売却までの間に家屋や土地を一度でも使用すると特例が使えなくなるリスクがあります。居住用、事業用、貸付用のいずれかに使った時点でアウトです。

実務でよくあるのが、相続後に荷物の整理のため数日間滞在したケースです。単なる片付けや清掃であれば居住とはみなされませんが、寝泊まりをして生活の実態があれば居住用使用とされる可能性があります。電気・ガス・水道を再開した記録があると、税務署に使用実態を疑われるため注意が必要です。

貸付用使用の判定も微妙です。無償で族に貸した場合は使用貸借となり貸付用に該当しませんが、賃料を受け取っていれば貸付用使用となります。また一時的に物置として近隣住民に貸した場合も貸付用とみなされる可能性があります。相続後は空き家のまま維持することが最も安全です。

共有名義の場合、相続人間での意見調整も重要な課題です。3人兄弟で共有している場合、全員が同時に売却しなければ特例を最大限活用できません。一人だけ持分を先に売却すると、残りの相続人が後で売却する際に1億円要件の判定で不利になる可能性があるためです。

確定申告を忘れると特例が使えない点も要注意です。譲渡所得がゼロ円になる場合でも、特例適用のためには確定申告が必須となります。申告期限は売却した年の翌年3月15日までです。期限を過ぎると特例が適用できず、本来払わなくてよい税金を納めることになります。

書類の保存期間にも配慮してください。税務調査は通常5年以内に行われるため、売買契約書、領収書、確認書などの関連書類は最低5年間保管する必要があります。デジタルデータでバックアップを取っておくことをおすすめします。

顧客が複数の不動産を相続している場合、どの物件に空き家特例を適用するかの選択も重要です。同一の被相続人から相続した物件については、特例を使えるのは1回のみだからです。譲渡益が最も大きい物件に特例を使うのが基本戦略となります。