売却基準価額と買受可能価額の仕組みと競売入札の基本

売却基準価額と買受可能価額の違いを正しく理解する

売却基準価額で入札すれば、実は保証金が全額没収されることがあります。

売却基準価額・買受可能価額 3つのポイント
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売却基準価額は「裁判所が決めた基準額」

不動産鑑定士の評価書を基に裁判所が決定する競売物件の指標額。市場価格より約3割低く設定されるが、これが「最低落札価格」ではない点に注意が必要です。

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買受可能価額は売却基準価額の「8割」

入札できる最低ラインは売却基準価額の80%。ただし東京・横浜などの都市部では実際の落札価格が売却基準価額の1.5倍を超えるケースも珍しくありません。

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保証金は売却基準価額の「2割」が必須

入札前に売却基準価額の20%を保証金として納付。落札後に代金を払わないと全額没収されるため、資金計画は落札価格ベースで立てる必要があります。

売却基準価額とは何か:競売不動産の基準となる価額

売却基準価額とは、裁判所が競売不動産に設定する「入札の基準となる価額」です。 不動産鑑定士(評価人)が物件を調査・評価し、その評価書を基に裁判所が最終的な金額を決定します。 鑑定評価がそのまま採用されるわけではなく、占有者の状況など物件特有の事情が加味された上で裁判所が独自に決定する点が重要です。mbp-japan+2

この価額は、物件明細書・現況調査報告書・評価書の「三点セット」とともに公開されます。 算出の計算過程も評価書に明記されており、入札希望者は閲覧室でこれらを確認できます。 三点セットは競売物件を判断するための最も重要な資料であり、任意売却を検討する所有者にとっても参考になります。courts+2

売却基準価額は市場価格そのままではありません。競売では買受人が内覧できない・占有者がいる等のリスクがあるため、一般的な評価額に「競売特有の減価率」をかけて算出されます。 その結果、市場価格より約3割低く設定されるのが一般的です。

参考)競売物件の価格が市場価格より安くなる理由とは?任意売却との価…

つまり「鑑定評価額=売却基準価額」ではない、が基本です。

買受可能価額の計算方法:売却基準価額の8割が入札最低ライン

買受可能価額は、売却基準価額から20%を差し引いた金額です。 民事執行法第60条の規定により、入札できる最低金額はこの買受可能価額以上と定められています。e-lifestage+1

たとえば、売却基準価額が1,000万円の物件であれば、買受可能価額は800万円です。 800万円以上であれば入札が可能で、最高額を入札した人が落札できます。つまり800万円は「スタートライン」であって「落札価格の目安」ではありません。

800万円以上なら問題ありません、ただし保証金も忘れずに。

入札前には売却基準価額の20%に相当する「買受申出保証額」を保証金として納付する必要があります。 上の例では200万円の先払いが必要です。東京ドームのグラウンド面積(約13,000㎡)に例えるなら、入札は「グラウンドに入るためのパス代」として200万円を預けるイメージです。落札できなかった場合は全額返還されますが、落札後に残代金を払わなければ没収されます。zennichi+1

売却基準価額と実際の落札価格の乖離:1.5倍は想定すべき

「買受可能価額で買えると思っていた」という認識は要注意です。実際の落札価格はほとんどのケースで売却基準価額を上回ります。 東京・横浜などの都市部では、落札価格が売却基準価額の平均1.5倍程度になることも珍しくないとされています。

売却基準価額が1,000万円の物件の場合、落札相場は1,500万円前後と想定しておく必要があります。買受可能価額の800万円での落札は、都市部の人気物件ではほぼ不可能に近いのが現状です。意外ですね。

物件の種別・立地・占有状況によって乖離の幅は大きく変わります。競売物件の情報収集には、裁判所が運営する「BIT(不動産競売物件情報サイト)」が活用できます。過去の落札事例も検索できるため、自分が狙う物件エリアの落札相場を事前に確認する一手間が非常に有効です。

BIT(不動産競売物件情報サイト)で過去の落札事例を確認できます。

BIT 不動産競売物件情報サイト(裁判所運営)

買受申出保証額の没収リスクと資金計画の注意点

保証金(買受申出保証額)が没収されるケースは、思っているより身近にあります。 落札後に残代金の支払いができなかった場合、納付済みの保証金は全額没収され、債権者の債権の一部に充当されます。cvmax+1

保証金は落札できなかった場合は全額戻ります。 しかし、落札後に「資金の目途がつかなかった」「ローンが通らなかった」といった理由であっても、容赦なく没収されます。これは法律上の規定であり、例外はありません。痛いですね。

参考)競売物件とは?仕組み・メリット・リスク・購入の流れを徹底解説…

競売物件は原則として住宅ローンを使いにくい場合があることも頭に入れておきましょう。通常の金融機関ローンでは内覧不可・現況のまま引渡しというリスクが審査に影響します。競売物件への入札を検討する際は、現金または競売専門の融資に対応した金融機関の事前確認が条件です。資金計画は保証金(売却基準価額の20%)+落札価格(売却基準価額の1.5倍前後)のトータルで試算する必要があります。

競売融資に対応する金融機関については、事前に金融機関へ直接問い合わせて確認するのが確実です。

任意売却との比較:競売より3〜5割高く売れる現実

債務者側の視点から見ると、競売と任意売却では最終的な売却価格に大きな差が生じます。競売での売却価格は市場価格の50〜70%程度になることが一般的です。 たとえば市場価格2,000万円の住宅なら、競売では1,000〜1,400万円程度が相場です。

参考)任意売却と競売で価格差が生じる?!価格差が生じる理由を解説

一方、任意売却は市場に近い価格での売却が可能です。競売と任意売却の価格差はおよそ3〜5割とされており、 残債の圧縮・諸費用の負担軽減につながります。不動産業従事者として顧客対応をする場合、競売が開始される前に任意売却の選択肢を提示することが、顧客の経済的損失を大きく抑える可能性があります。

競売開始決定後でも任意売却は可能な期間があります。入札期日が迫るまでの間に任意売却を成立させることができれば、競売を取り下げる形で手続きが進みます。この「タイミング」を見極めるのが不動産業従事者の腕の見せどころです。

任意売却と競売価格の差や手続きの流れについては下記も参考になります。

任意売却と競売で価格差が生じる理由を解説(REEMS)

任意売却の手続きや関連知識については、全国任意売却協会が詳しい情報を公開しています。

売却基準価額の解説(全国任意売却協会)