ベタ基礎布基礎の違いとは
新築物件を扱う際、顧客から「ベタ基礎ならシロアリは安心」と言われることがあります。
ベタ基礎の構造と特徴
ベタ基礎とは、建物の床下全体に鉄筋コンクリートを打設する基礎工法のことです。基礎の立ち上がり部分と底盤が一体化しており、建物を「面」で支える構造になっています。建築基準法関連法令では、立ち上がり部分の高さが地上部分で300mm以上、厚さは120mm以上、底盤の厚さも120mm以上と定められています。
つまり面で支えるということですね。
床下全体がコンクリートで覆われているため、地面と建物の木造部分が直接接触しません。地盤と接している面積が広いため、建物の重量が分散されて地盤にかかる負担が軽減されます。このため、軟弱な地盤や不均一な地盤条件でも安定した支持力を確保できる特徴があります。
また、地中からの湿気の侵入を防ぐ効果があります。床下全体がコンクリートで覆われているため、地面からの水分が上がりにくく、木材の腐食やカビの発生リスクを低減できます。これにより建物の耐久性を高めることができるというわけです。
阪神淡路大震災以降、耐震性の観点からベタ基礎の採用が急速に広まりました。住宅金融支援機構の「フラット35住宅実態調査」によると、新築の木造住宅に採用される基礎の割合は、ベタ基礎が95.2%に対し、布基礎は4.7%という結果になっています。現在の新築住宅市場では、ベタ基礎が圧倒的な主流です。
布基礎の構造とメリット
布基礎とは、建物の柱や壁など構造躯体の直下にのみ、逆T字型の鉄筋コンクリートを配置する基礎工法です。必要な箇所にだけ基礎を設けるため、「線」や「点」で建物を支える構造となっています。床下の中央部分には基礎がなく、土壌が露出している状態が一般的です。
結論は線で支える構造です。
布基礎の最大のメリットは、コストを抑えられることです。一般的な費用として1㎡あたり、布基礎は9,000円~13,000円、ベタ基礎は10,000円~14,000円といわれています。30坪の住宅であれば約10万円の差額、場合によっては30万~40万円ほどの工事費用差が出ることもあります。使用するコンクリートや鉄筋の量が少ないため、材料費と施工費の両方で経済性に優れています。
また、布基礎は地中深くに基礎を打ち込む構造のため、根入れの深さを確保しやすいという特徴があります。これは地震で加わる横からの力に対して有利に働きます。特に鉄骨造のような重量のある建物では、布基礎の深い根入れが構造的に適している場合があります。
寒冷地での施工にも適しています。北海道や東北地方のように冬季に地面が凍結する地域では、凍結深度より深い位置に基礎を設置する必要があります。布基礎であれば、凍結による基礎の持ち上がり(凍上現象)を防ぎやすく、寒冷地の住宅建築では現在でも採用されているケースが多いです。実際、北海道では布基礎の採用率が87.7%と圧倒的に高くなっています。
ベタ基礎と布基礎の費用比較
基礎工事の費用は、建物の規模や地盤条件によって大きく変動します。現在の日本の戸建て住宅で最も標準的なサイズである30坪(約99㎡)の場合、基礎工事費用の目安は150万円から240万円となります。これは、坪単価を5万円から8万円として計算した場合の金額です。
ベタ基礎は布基礎と比較して、材料費が高くなる傾向にあります。床下全体にコンクリートを敷くため、使用するコンクリート量が多く、鉄筋の本数も増えます。また、掘削する土の量も多いため、残土処理費用も加算されます。これらの要素が重なり、布基礎より10万円から40万円程度高くなることが一般的です。
厳しいところですね。
ただし、地盤条件によっては布基礎のほうが総コストが高くなることもあります。地盤の支持力が不足している場合、布基礎では地盤改良工事が必要になることがあります。地盤改良工事の費用は、工法や深度により50万円から150万円程度かかることもあり、基礎工事費用の差額を上回る可能性があります。
一方、ベタ基礎は面で荷重を分散するため、比較的弱い地盤でも追加の地盤改良が不要になるケースがあります。地盤の許容支持力が20kN/㎡以上あればベタ基礎が適用可能とされており、30kN/㎡以上必要な布基礎と比較して、地盤条件のハードルが低いのです。このため、長期的な視点で見ると、ベタ基礎のほうがコストメリットがある場合もあります。
顧客への提案時には、基礎工事費用だけでなく地盤改良費用も含めた総額で比較することが重要です。見積もりを取得する際は、地盤調査結果を踏まえて、両方の基礎工法の総工費を提示してもらうことで、正確なコスト比較ができます。
ベタ基礎のシロアリ被害リスク
「ベタ基礎ならシロアリの心配はない」という説明を顧客にしていませんか。実は、シロアリ駆除専門サービスの調査により、意外な事実が判明しています。構造上、シロアリが侵入しづらいと考えられてきたベタ基礎の被害件数が、布基礎の約2倍に達しているという結果が報告されました。
どういうことでしょうか?
この結果の背景には、ベタ基礎の採用率の高さがあります。現在の新築木造住宅の95.2%がベタ基礎を採用しているため、母数が圧倒的に多いのです。築年数が15年未満の物件は9割以上が「ベタ基礎」で構成されており、逆に築年数が20年を超える建物では圧倒的に「布基礎」が多くなっています。つまり、築浅物件はベタ基礎が多く、築古物件は布基礎が多いという構成比の違いが、被害件数の差に表れているわけです。
それでも、ベタ基礎は布基礎よりシロアリ被害を受けにくい構造であることは事実です。日本しろあり対策協会の調査では、布基礎+土壌の被害発生率に比べて、ベタ基礎の被害発生率は低いことが確認されています。床下がコンクリートで覆われているため、地中からの直接侵入が防がれるからです。
ただし、ベタ基礎でも侵入経路は存在します。セパレーターの隙間、水抜き穴、配管周り、コンクリートのひび割れなどは、シロアリ侵入のリスクが高い箇所です。築20年を超えた物件では、ベタ基礎でも約2割がシロアリ被害に遭っているというデータもあります。
5棟に1棟という高い確率です。
顧客への説明では「ベタ基礎は布基礎よりシロアリ被害のリスクは低いが、完全に防げるわけではない」と正確に伝えることが重要です。新築時の適切な防蟻処理と、築後の定期的な点検が必要であることを併せて説明しましょう。防蟻処理の効果は一般的に5年程度とされているため、5年ごとの再処理を推奨することで、顧客の信頼を得ることができます。
上記リンクでは、基礎構造別のシロアリ被害発生率の詳細なデータが確認できます。
顧客への説明資料として活用できる内容です。
ベタ基礎布基礎の選定基準と地盤調査
不動産業従事者として知っておくべきなのは、基礎の選定は地盤調査の結果に基づいて行われるということです。建築基準法施行令第93条では、地盤の許容応力度を国土交通大臣が定める方法で地盤調査を行い、その結果に基づいて定めることが義務付けられています。
基礎を選ぶ基本的な判断基準は、地盤の許容支持力です。国土交通省告示第1347号では、布基礎では30kN/㎡以上、ベタ基礎の場合20kN/㎡以上の地盤支持力が必要とされています。この数値は、1平方メートルあたりに何キロニュートンの荷重を安全に支えられるかを示すものです。
つまり20kN以上が条件です。
地盤調査では、主にスウェーデン式サウンディング試験が用いられます。この試験では、地盤の硬さをN値として数値化します。N値5以上であれば一般住宅の建築は可能な場合が多いとされていますが、これはあくまで目安です。基礎地盤として満足するためには、N値20以上の土質か、岩盤であることが望ましいとされています。
地盤が軟弱な場合は、地盤改良工事が必要になります。地盤改良工事には、表層改良工法(軟弱層が2m以内)、柱状改良工法(軟弱層が2~8m)、鋼管杭工法(軟弱層が8m以上)などがあり、軟弱層の厚さによって工法が選定されます。それぞれ費用が大きく異なるため、地盤調査結果は総工費に直結する重要な情報です。
顧客への説明時には、地盤調査報告書の見方を簡単に説明できると信頼度が上がります。特に、地盤の許容支持力の数値と、それに基づいてどの基礎工法が適しているかを明確に伝えることが重要です。「この地盤は20kN/㎡以上あるのでベタ基礎が適用できます」といった具体的な説明ができれば、専門性をアピールできます。
寒冷地の物件を扱う際は、凍結深度の確認も必要です。建築基準法施行令第22条では、凍結深度より深い位置に基礎の下端を設置することが求められています。寒冷地でベタ基礎を導入する場合は、温暖な地域よりも根入れを深くする手間が発生し、コストが増加します。この点を顧客に事前に説明しておくことで、後のトラブルを防げます。
上記リンクでは、地盤の許容応力度と基礎の設計基準について詳細な解説が記載されています。基礎選定の法的根拠を確認できる資料として有用です。

