賃料減額請求と法定利率の違いを理解し交渉リスクを防ぐ方法

賃料減額請求と法定利率の適用場面

賃料減額請求を受けたとき年1割の利息だけで済むと思ってませんか

この記事の3つのポイント
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過払い返還は年1割だが法定利率3%の場合もある

減額請求で確定した過払い額には年1割の利息が付きますが、賃貸人請求での不足額には法定利率3%のみ適用されるなど、状況で利率が変わります

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減額請求の特約は無効だが増額請求の特約は有効

普通借家契約では賃料を減額しない旨の特約は無効となり、借主は特約があっても減額請求できますが、増額しない特約は有効です

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増額請求の不足額は年1割だが過払いは法定利率のみ

増額請求で確定した不足額には年1割の利息がつきますが、借主が払いすぎた場合は法定利率3%の利息も請求できません

賃料減額請求における法定利率3%と年1割の使い分け

 

賃料減額請求において利率の適用場面を正確に理解していない不動産業従事者は、数十万円単位で損失を出すリスクを抱えています。借地借家法32条では、賃料減額請求後の利息について明確に区別されており、誤解したまま交渉を進めると取り返しのつかない事態を招きます。

賃料減額請求が行われた場合、賃貸人は減額を正当とする裁判が確定するまで、相当と認める額の賃料の支払いを請求できます。

つまり従前賃料です。

この段階では、賃借人が減額を主張しても、賃貸人は従前どおりの賃料を要求する権利を持っています。

裁判で減額が確定した場合、賃貸人が受け取っていた従前賃料と確定した賃料との差額(超過額)を、年1割の利息をつけて賃借人に返還しなければなりません。この年1割という高い利率は、賃借人が不当に高い賃料を支払い続けることへのペナルティとして設定されています。

しかし、別のケースでは法定利率3%が適用されます。それは賃料減額請求を受けた賃貸人が、賃借人の請求によって相当額を支払ってもらっていたものの、裁判確定後にその額が不足していた場合です。この不足額に対しては年1割ではなく、法定利率3%による利息を付して請求できます。

この違いは非常に重要です。

つまり、減額請求で過払いになった場合は年1割、減額請求で賃借人が相当と認める額を払っていたが不足していた場合は法定利率3%ということですね。

適用される利率を間違えると、賃貸人側は本来受け取れる金額を逃し、賃借人側は過大な利息を支払うリスクが生じます。契約書や請求書を作成する際には、どちらのケースに該当するかを慎重に判断する必要があります。

賃貸管理士塾の解説では、賃料増減請求における利息の取扱いについて、裁判確定までの流れと利率の違いが詳しく説明されています。

賃料減額請求で過払いが発生するメカニズム

賃料減額請求で過払いが発生する仕組みを理解していないと、賃貸人は返還請求に対して適切な対応ができず、交渉で不利な立場に立たされます。過払いは賃借人が減額を主張したにもかかわらず、賃貸人が従前の賃料を受け取り続けた結果として生じます。

借地借家法32条1項では、建物の賃料が土地・建物の租税負担の増減、経済事情の変動、近傍同種建物の賃料との比較により不相当となったときは、契約の条件にかかわらず当事者は将来に向かって賃料の増減を請求できると定めています。賃借人が減額請求の意思表示をした時点で、法的には相当な賃料額に減額される効力が生じます。

しかし、相当な賃料額について当事者間で争いがある場合、賃貸人は従前賃料の支払いを請求し続けることができます。賃借人がそれに応じて従前賃料を支払い続けていた場合、後に裁判で減額が認められると、支払済みの賃料が確定した相当賃料を上回る事態となります。

この上回った部分が過払い額です。

例えば、月額賃料20万円の物件で賃借人が15万円への減額を請求し、賃貸人が従前の20万円を請求し続けたとします。賃借人が20万円を1年間支払い続けた後、裁判で17万円が相当賃料と確定した場合、月3万円×12カ月=36万円が過払い額となります。この36万円に年1割の利息を付して返還しなければなりません。

1年間の利息は36万円×0.1=3万6,000円です。

賃貸人としては、減額請求を受けた時点で適正賃料の見積もりを専門家に依頼し、訴訟リスクを踏まえた上で従前賃料を請求し続けるか判断することが重要です。過払い返還と利息負担を考えると、早期に和解することが経済的に合理的な場合も少なくありません。

賃料減額請求の特約が無効になる法的根拠

賃料を減額しない旨の特約を契約書に盛り込んでいても、それが法的に無効となることを知らない賃貸人は多く、トラブルの火種となります。借地借家法32条1項ただし書では、一定期間賃料を増額しない旨の特約(不増額特約)は有効とされていますが、賃料を減額しない旨の特約(不減額特約)については明文規定がありません。

判例では、普通建物賃貸借において不減額特約は借地借家法32条の趣旨に反するため無効と解釈されています。借地借家法は借主の保護を主な目的としており、経済情勢の変化により賃料が不相当に高額となった場合に、借主が救済される手段を奪うことは許されないという理念があるためです。

つまり、契約書に「契約期間中は賃料を減額しない」と明記されていても、借主はそれに拘束されず減額請求権を行使できます。

これは強行規定です。

一方、定期建物賃貸借契約(借地借家法38条)においては、不増額特約も不減額特約もどちらも有効とされています。定期借家は期間満了で契約が終了し更新がないため、普通借家とは異なる取扱いがなされているのです。

不動産業従事者が賃貸借契約書を作成する際には、普通借家か定期借家かで特約の効力が変わることを正確に理解しておく必要があります。普通借家で不減額特約を入れても法的効力がないため、賃貸人に安心感を与えるだけで実際の保護にはなりません。

むしろ、特約があることで賃貸人が誤解し、減額請求を不当に拒否して後に高額な利息付きで返還を求められるリスクが高まります。

厳しいところですね。

不動産法律アドバイスの解説では、普通借家における不減額特約の無効性について詳しく説明されており、契約実務での注意点が示されています。

賃料減額請求における調停前置主義と実務の流れ

賃料減額請求で当事者間の協議が調わない場合、いきなり訴訟を提起することはできず、まず調停を申し立てる必要があります。これを調停前置主義といい、民事調停法24条の2に規定されています。訴訟前に調停を経ることで、裁判所が間に入って話し合いによる解決を図る機会が設けられているのです。

調停では、調停委員が双方の主張を聞き取り、適正な賃料額について合意形成を支援します。不動産鑑定士の意見を参考にすることもあります。調停で合意に至れば、調停調書が作成され、これは確定判決と同じ効力を持ちます。

調停が不成立となった場合、訴訟に移行します。

訴訟では、賃料の適正額を判断するために、不動産鑑定が実施されることが一般的です。鑑定費用は数十万円かかることもあり、訴訟は長期化する傾向があります。判決が確定するまでには1年以上かかるケースも珍しくありません。

この期間中、賃貸人は相当と認める額(通常は従前賃料)の支払いを請求でき、賃借人もそれを支払う義務があります。ただし、後に判決で減額が認められれば、過払い分を年1割の利息付きで返還しなければならないリスクを賃貸人は負います。

不動産業従事者としては、減額請求を受けた時点で、調停や訴訟に発展する可能性を見据えた対応を取ることが求められます。早期に弁護士や不動産鑑定士に相談し、適正賃料の見込みを把握しておくことで、調停での合意形成がスムーズになり、訴訟リスクを回避できます。

賃料減額請求と増額請求における利率の非対称性を活用する戦略

賃料減額請求と増額請求では、利息の適用ルールに非対称性があり、これを理解していないと交渉戦略を誤ります。増額請求では、借主が支払った額に不足があった場合、その不足額に年1割の利息を付して支払わなければなりません。一方、借主が増額を拒否して従前賃料を払い続け、後に増額が認められなかった場合、借主が払いすぎた分について利息を請求することはできません。

この非対称性は、賃貸人にとって増額請求を行いやすくする制度設計となっています。増額請求が認められれば差額に年1割の利息が付き、認められなくても借主に利息を払う必要がないからです。

逆に、減額請求では賃借人の保護が強く働きます。減額が認められれば過払い分に年1割の利息が付きますが、減額が認められず借主が相当と認める額(従前賃料より低い額)を払っていた場合、不足額には法定利率3%しか付きません。

この仕組みは借地借家法が借主保護を基本理念としていることの現れです。

不動産業従事者がこの非対称性を理解していれば、賃貸人側として増額請求を行う際には強気の交渉ができます。一方、減額請求を受けた際には、過払い返還のリスクを正確に見積もり、早期和解の判断材料とすることができます。

例えば、月10万円の物件で賃借人が8万円への減額を主張し、賃貸人が従前の10万円を請求し続けた場合、1年後に9万円が相当と確定すれば、過払い額は月1万円×12カ月=12万円となります。年1割の利息1万2,000円を加えると、賃貸人は13万2,000円を返還しなければなりません。これを考えると、早期に9万円で和解する方が合理的かもしれません。

直法律事務所の解説記事では、賃料増額請求における利息計算の実務と、借主・貸主双方のリスクについて具体的な事例とともに解説されています。

[除籍本] 不況下の賃貸借契約 中田真之助 [賃料減額請求/継続賃料算定方法 賃料/保証金の減額請求 更新料支払義務 賃貸借契約に関する判例]