地積規模の大きな宅地の評価とマンション用地の減額特例

地積規模の大きな宅地の評価とマンション用地への適用ポイント

マンション用地でも地積規模の大きな宅地の評価を使えば、相続税評価額が最大40%近く下がるケースがあります。

📌 この記事の3つのポイント
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マンション用地にも適用できる条件がある

地積規模の大きな宅地の評価は、一定の要件を満たせばマンション敷地にも適用可能。見落とすと相続税を数百万円単位で過大申告するリスクがあります。

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「規模格差補正率」の計算が評価額を大きく左右する

補正率は面積と所在地区分によって異なり、三大都市圏では500㎡以上、それ以外では1,000㎡以上が適用ラインです。計算ミスは即、過大・過少申告に直結します。

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「マンション適地」に該当すると適用除外になる

容積率400%(東京特別区は300%)以上の地域に所在する宅地はマンション適地として除外。この判定を誤ると評価が大幅に変わります。

地積規模の大きな宅地の評価とは何か:制度の基本とマンション用地への関係

 

地積規模の大きな宅地の評価とは、2018年(平成30年)1月1日以後の相続・贈与から適用されている財産評価基本通達20-2に基づく評価方法です。それ以前の「広大地評価」に代わるもので、より客観的・画一的な計算式が導入されました。

広大地評価の時代は、税理士によって評価額に大きなばらつきがあり、争いも多発していました。制度改正は実務の安定化を目的としています。

対象となるのは、三大都市圏(首都圏・近畿圏・中部圏の一部)では500㎡以上、それ以外の地域では1,000㎡以上の宅地です。東京都であれば、おおよそテニスコート2面分(約500㎡)以上の宅地が対象ラインになるイメージです。

適用によって土地の評価額から「規模格差補正率」が差し引かれ、評価額を最大で約35〜40%程度引き下げることができます。マンション用地のような大面積の土地はこの恩恵を受けやすい一方、後述する「マンション適地除外」の壁もあります。つまり大きな土地なら自動的に適用できるわけではないということです。

不動産従事者として相続案件に関わる場合、この評価の適用可否を最初の段階で確認することが実務の基本です。

参考:国税庁「地積規模の大きな宅地の評価」に関する法令解釈通達

国税庁 財産評価基本通達 第2章 第7節(宅地の評価)

マンション用地に地積規模の大きな宅地の評価が適用される要件と容積率の壁

マンション用地への適用を検討する際、最初に確認すべき要件は「用途地区」と「容積率」の2点です。これが実務上の最大の関門になります。

地積規模の大きな宅地の評価が適用できない土地として、財産評価基本通達20-2は明確に除外規定を設けています。具体的には次の土地が対象外です。

この中で特にマンション用地との関係で重要なのが、容積率による除外です。容積率400%(東京特別区は300%)以上の地域は「マンションを高密度に建てられる土地」として分割せずに利用することが想定されており、そもそも規模の大きさによる減価が生じないと国税庁は判断しています。

容積率は要注意です。たとえば東京都心部のマンション敷地が商業地域(容積率400〜600%)に指定されていれば、面積が1,000㎡を超えていても適用除外になります。一方、第一種住居地域(容積率200〜300%)であれば東京特別区でも適用可能です。

実務では、対象地の都市計画情報を各自治体のGISサービスや都市計画図で必ず確認します。国土交通省の「都市計画情報提供サービス」を使えば、全国の容積率をオンラインで調べることができます。

国土交通省 都市計画情報等インターネット提供サービス

規模格差補正率の計算方法と地積規模の大きな宅地の評価額の求め方

適用要件をクリアしたら、次は実際の計算です。評価額の計算式は以下の通りです。

評価額の計算式:

路線価 × 奥行価格補正率 × その他補正率 × 規模格差補正率 × 地積(㎡)

規模格差補正率は次の式で求めます。

規模格差補正率 =(地積 × A + B)÷ 地積 × 0.8

A・BはエリアごとのパラメータでA・Bは面積区分により異なります。国税庁が公表している係数表を使います。

三大都市圏のA・B係数表(参考):

地積(㎡) A B
500以上1,000未満 0.95 25
1,000以上3,000未満 0.90 75
3,000以上5,000未満 0.85 225
5,000以上 0.80 475

具体例で確認します。三大都市圏の普通住宅地区に1,200㎡のマンション敷地(路線価200,000円/㎡)があった場合を計算します。

規模格差補正率 =(1,200 × 0.90 + 75)÷ 1,200 × 0.8
        =(1,080 + 75)÷ 1,200 × 0.8
        = 1,155 ÷ 1,200 × 0.8
        = 0.9625 × 0.8
        ≒ 0.77

この補正率0.77を用いると、評価額は補正なしの場合と比べて23%の減額です。路線価200,000円/㎡で1,200㎡の土地なら、補正なし2億4,000万円のところ、約5,520万円の減額効果が生まれます。これは大きい数字ですね。

なお、規模格差補正率の最小値は0.60とされており、いかに大面積でも40%超の減額にはなりません。0.60が下限と覚えておけばOKです。

国税庁 地積規模の大きな宅地の評価(計算例・チェックシート)

マンションの区分所有と地積規模の大きな宅地の評価:敷地権・持分への適用可否

ここが実務で最も見落とされやすいポイントです。分譲マンションの区分所有者が相続した「敷地権(土地の持分)」に、地積規模の大きな宅地の評価を適用できるかどうかという問題があります。

結論は原則として適用できません。区分所有のマンション敷地については、財産評価基本通達の「区分所有に係る宅地の評価(2022年改正)」が適用されるためです。2024年1月1日以後の相続等については、マンションの区分所有に係る宅地はいわゆる「マンション評価通達」(令和5年通達)による評価が優先されます。

マンション評価通達と地積規模通達は別物です。区分所有のマンション敷地持分については「一棟評価×持分割合」の手順が基本であり、地積規模の大きな宅地の評価を単純に重ねることはできません。

一方、マンション用地を「一棟の賃貸マンションを所有するオーナーが土地全体を持つ」ケース(土地の区分所有なし)であれば、話は変わります。単独所有または共有の場合は、敷地全体について適用要件を満たせば地積規模の大きな宅地の評価の対象になりえます。

つまり「区分所有か・土地全体の所有か」で適用の可否が分かれるということですね。評価の入り口でこの区別が必須です。

相続税申告において、区分所有マンション敷地の誤評価は税務調査の指摘事項になりやすい領域です。2022年以降のマンション評価通達の改正内容とセットで確認する姿勢が、実務対応として求められます。

国税庁 マンションに係る財産評価基本通達に関する説明資料(令和5年改正)

地積規模の大きな宅地の評価でマンション用地の相続税が変わる:実務対応と見直しのタイミング

実際の相続税申告業務において、地積規模の大きな宅地の評価の適用を検討すべきタイミングは複数あります。見落としは過大申告・過少申告の両方を引き起こすため、確認プロセスを組み込むことが重要です。

まず相続開始直後の「財産把握フェーズ」で、対象地の面積・所在地域・容積率を確認します。この3点セットが基本です。特に都市部のマンション用地は容積率が高い地域に立地していることが多く、最初の段階で適用除外を確認しておくことで、後の無駄な計算を防げます。

次に、過去の申告の見直し(正の請求)です。2018年の制度改正前に旧広大地評価で申告した土地でも、申告期限から5年以内であれば更正の請求が可能です。ただし2018年以降の申告について、地積規模の大きな宅地の評価の適用を失念していた場合も更正の請求で取り戻せるケースがあります。期限があります。

更正の請求の時効は申告期限から5年(国税通則法23条)ですが、場合によっては10年の除斥期間が絡むこともあります。過去案件のレビューは早めに着手することをおすすめします。

実務上の確認チェックポイントをまとめます。

  • ✅ 三大都市圏か否かの確認(500㎡ / 1,000㎡の適用ラインが変わる)
  • ✅ 用途地域・容積率の確認(工業専用地域・容積率400%/300%超の除外)
  • ✅ 市街化調整区域の確認(原則除外。宅地分譲実績がある場合は別途判断)
  • 区分所有か土地単独所有かの確認(区分所有への単純適用は不可)
  • 路線価地域か倍率地域かの確認(倍率地域は別途評価方法あり)
  • ✅ 規模格差補正率の計算(係数表のA・Bを地積に応じて選択)

相続税申告を担当する税理士や不動産鑑定士との連携が不可欠です。特に広大なマンション用地は、不動産鑑定評価を併用することで、路線価評価よりさらに適正な評価額を求められる場合があります。鑑定評価は有料ですが、評価差額が数千万円規模になる案件では費用対効果が十分に見込めます。これは使えそうです。

実務の現場では「面積が要件を満たしているのに適用を見落とした」「容積率を調べずに適用してしまった」という両方向のミスが報告されています。確認プロセスのチェックリスト化が、申告ミスを防ぐ最も現実的な対策です。

国税庁 地積規模の大きな宅地の評価に関するチェックシート(PDF)

三訂版/不動産評価の実践手法