直接還元法とDCF法の違いと使い分け

直接還元法とDCF法の違いと使い分け

還元利回り1%の誤差で評価額が17%も変わります。

この記事の3ポイント要約
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直接還元法は1年間の純収益で評価

年間純収益を還元利回りで割って不動産価格を算出する簡便な方法で、安定収益物件の短期評価に適しています。

計算がシンプルで迅速な判断が可能です。

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DCF法は複数年の収益変動を反映

将来のキャッシュフローを毎年予測し、現在価値に割り引いて評価する手法です。収益変動や売却価格まで織り込むため、長期投資判断に向いています。

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利回り設定のわずかなズレが大損失に

還元利回りが1%違うだけで評価額が約17%も変動します。割引率や最終還元利回りの設定ミスは、数百万円から数千万円単位の評価誤差を生む原因となります。

直接還元法とDCF法の基本的な違い

 

不動産の収益評価において、直接還元法とDCF法は収益還元法という同じカテゴリに属しながら、評価期間と計算の複雑さで大きく異なります。両者の違いを正確に理解することが、適切な評価手法選択の第一歩です。

直接還元法は、1年間(一期間)の純収益を還元利回りで割り戻すシンプルな計算式を用います。計算式は「不動産価格=年間純収益÷還元利回り」となります。たとえば年間純収益が800万円、還元利回りが5%なら、不動産価格は800万円÷0.05=1億6,000万円です。この方法は収益が安定している物件、すなわち賃料変動が少なく空室リスクも低い収益物件に適しています。計算が簡便なため、迅速な価格査定や初期段階のスクリーニングで重宝されます。

対してDCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー法)は、複数年にわたる将来のキャッシュフローを個別に予測し、それぞれを割引率で現在価値に換算して合計する手法です。つまり毎年の収益を別々に計算するということですね。さらに保有期間満了時の売却価格(残存価格)も織り込みます。

予測期間は一般的に5〜10年が目安です。

この手法では家賃の上昇や下落、空室率の変化、修繕費用の増加など、時間経過による収益変動を細かく反映できます。

国土交通省の不動産鑑定評価基準では、収益還元法の適用方法について詳しく解説されています

両手法の最大の違いは「時間軸の扱い方」にあります。直接還元法は単年度の収益を基準に永続的な価値を算出するのに対し、DCF法は複数年の変化を個別に捉えた上で総合評価を行います。どちらを選ぶかは物件特性と評価目的次第です。

直接還元法のメリットとデメリット

直接還元法の最大の強みは、計算の簡便性と結果の理解しやすさにあります。不動産業従事者にとって、顧客への説明がしやすく、意思決定のスピードを上げられる点は実務上の大きなメリットです。

計算に必要な要素は年間純収益と還元利回りの2つだけ。純収益が明確で、市場の還元利回りデータが入手できれば、電卓一つで評価額を算出できます。初心者でも理解しやすく、複雑なツールやソフトウェアを必要としません。また、収益が安定している築浅のアパートや稼働率の高いテナントビルなど、賃料変動リスクが小さい物件では、直接還元法でも十分に信頼できる評価が可能です。さらに複数物件を短時間で比較したい場合や、投資判断の初期段階でのスクリーニングにも適しています。

一方で、デメリットも存在します。最も大きな弱点は、将来の収益変動を考慮できない点です。築年数が経過すれば修繕費は増えますし、周辺環境の変化で賃料が下落するケースもあります。こうした要因を直接還元法では織り込めません。また、還元利回りの設定次第で評価額が大きく変動する点にも注意が必要です。前述のとおり、還元利回りが1%異なれば評価額は約17%も変わります。たとえば1億円の物件なら、1,700万円もの差が生じる計算です。これは東京23区内のワンルームマンション1戸分に相当する金額です。

ニッセイ基礎研究所の直接還元法に関するレポートでは、還元利回り設定の注意点が詳細に解説されています

還元利回りの適正な設定には、取引事例や類似物件との比較、地域特性の把握が不可欠です。この判断を誤ると、過大評価または過小評価のリスクが高まります。

DCF法のメリットとデメリット

DCF法の最大の利点は、将来の収益変動を詳細に反映できる点にあります。不動産投資では長期保有が前提となるケースが多く、時間経過に伴う賃料変動や費用増加を織り込める評価手法は、投資判断の精度を大きく高めます。

具体的には、賃料の段階的な上昇または下落、空室率の変化予測、大規模修繕のタイミングと費用、設備更新による賃料競争力の回復、最終的な売却価格(残存価格)の設定など、複雑な要素を一つの評価に統合できます。特に開発予定物件や大規模リノベーション後の物件など、収益構造が時期によって大きく変わる案件では、DCF法でなければ適正な評価ができません。また、証券化対象物件や不動産ファンドの組入資産の評価では、DCF法の適用が原則とされています。投資家への説明責任を果たす上でも、DCF法による詳細な収益予測は有効です。

しかし、DCF法にも明確な弱点があります。まず計算が複雑で、専門知識と時間を要する点です。エクセルや専用ソフトウェアを使った計算が一般的ですが、将来キャッシュフローの予測、割引率の設定、残存価格の算定など、各段階で専門的な判断が求められます。また、予測の精度が評価結果を大きく左右するため、楽観的すぎる収益予測や不適切な割引率設定は、実態とかけ離れた評価額を生み出します。割引率が1%変われば、評価額は10〜20%変動することも珍しくありません。

DCF法の主なデメリットは以下のとおりです。

・将来予測の不確実性が高い場合、評価の信頼性が低下する

・割引率の設定に専門的知識が必要で、恣意性が入りやすい

・計算に時間とコストがかかり、簡易な評価には不向き

・前提条件の妥当性を検証する手間が増える

将来予測が困難な物件や、収益が安定している物件では、DCF法の複雑さがデメリットになる場合もあるということです。

直接還元法とDCF法の使い分け基準

実務において、直接還元法とDCF法のどちらを採用すべきかは、物件特性と評価目的によって判断します。適切な使い分けができれば、評価の精度と効率を両立できます。

直接還元法が適している場面は、収益が安定している物件の評価、短期間での売買判断が必要な場合、複数物件の初期スクリーニング、顧客への説明を簡潔に行いたい場合などです。具体的な物件タイプとしては、築浅で満室稼働のアパート、長期契約の事業用テナントが入居するビル、駅近で賃料下落リスクが低いマンションなどが該当します。これらは将来の収益変動が小さいため、単年度の純収益をベースにした評価でも十分な精度が得られます。

対してDCF法が必要となるのは、収益が時期によって大きく変動する物件、開発中または開発予定の物件、大規模修繕やリノベーションを予定している物件、証券化やファンド組入れが前提の物件、長期保有を想定した投資判断などです。具体的には、新築後に段階的に賃料が上昇する予定の物件、テナント退去後に賃料改定が見込まれるビル、築古物件でリノベーション後の賃料アップを狙う案件などがあります。こうした物件では、単年度の収益だけで評価すると実態を反映できません。

OwnersBookの収益還元法解説記事では、両手法の使い分けについて具体例を交えて説明されています

実務では両手法を併用するケースも多くあります。たとえば直接還元法で簡易評価を行った後、DCF法で詳細検証を実施する方法です。両者の評価額に大きな乖離がある場合は、前提条件を見直す必要があります。不動産鑑定評価では、直接還元法とDCF法の両方を適用し、それぞれの評価額をウエイト付けして最終評価額を決定する手法が一般的です。たとえばDCF法60%、直接還元法40%といった配分を行います。

物件タイプや評価目的に応じて柔軟に使い分けることが大切です。

直接還元法とDCF法における利回り設定の実務ポイント

還元法の評価精度を左右する最大の要素は、利回り(還元利回り・割引率)の設定です。わずか1%の誤差が評価額に10〜20%もの影響を与えるため、根拠に基づいた慎重な設定が求められます。

直接還元法の還元利回りは、対象物件の純収益を不動産価格で割った比率として定義されます。実務では類似物件の取引事例から還元利回りを抽出する方法が一般的です。たとえば同一エリアで築年数や構造が似た物件の成約事例を3〜5件集め、それぞれの還元利回りを算出して平均値や中央値を採用します。国土交通省の不動産価格指数や一般財団法人日本不動産研究所が公表するキャップレートデータも参考になります。

還元利回りの設定で考慮すべき要素は以下のとおりです。

・立地条件(駅からの距離、商業施設の有無など)

・物件の築年数と構造(耐用年数の残存期間)

・賃料水準の安定性(周辺相場との比較)

・テナントの信用力(空室リスクの大きさ)

・地域の不動産市場動向(供給過多や需要増加の傾向)

利回りが低いほど物件価格は高く評価されます。優良物件はリスクが低いため、投資家が低い利回りでも受け入れるためです。

DCF法における割引率は、将来キャッシュフローを現在価値に換算する際の利率です。一般的に4〜7%の範囲で設定されることが多く、安全性の高い国債利回りにリスクプレミアムを上乗せして算出します。リスクプレミアムは物件固有のリスク(築年数、立地、構造など)や市場リスク(景気変動、金利変動など)を反映させた上乗せ分です。たとえば10年国債利回りが1%で、物件のリスクプレミアムを4%と設定すれば、割引率は5%となります。

また、DCF法では保有期間満了時の売却価格を算出するための最終還元利回りも設定する必要があります。最終還元利回りは、保有期間中の割引率よりも若干高めに設定するのが一般的です。その理由は将来時点では建物の老朽化が進んでおり、リスクが増大するためということですね。

利回り設定のミスを防ぐには、複数の情報源からデータを収集し、客観性を担保することが重要です。

直接還元法とDCF法の計算例と比較

両手法の違いを具体的な数値で比較すると、評価額の差と計算プロセスの違いが明確になります。ここでは同じ物件を両手法で評価した場合の結果を示します。

【物件概要】

・築10年の賃貸マンション

・年間賃料収入:1,200万円

・年間経費(管理費・税金等):300万円

・年間純収益(NOI):900万円

【直接還元法による評価】

還元利回りを5%と設定した場合、不動産価格は以下のとおりです。

$$\text{不動産価格} = \frac{900万円}{0.05} = 1億8,000万円$$

計算はこれだけです。

シンプルですね。

【DCF法による評価】

以下の前提条件で計算します。

・保有期間:5年

・割引率:5%

・1年目〜5年目の純収益:各年900万円(固定)

・5年後の売却価格(残存価格):1億7,000万円(最終還元利回り5.3%で算出)

各年の現在価値を計算すると以下のようになります。

$$\text{1年目の現在価値} = \frac{900万円}{(1+0.05)^1} ≒ 857万円$$

$$\text{2年目の現在価値} = \frac{900万円}{(1+0.05)^2} ≒ 816万円$$

$$\text{3年目の現在価値} = \frac{900万円}{(1+0.05)^3} ≒ 777万円$$

$$\text{4年目の現在価値} = \frac{900万円}{(1+0.05)^4} ≒ 740万円$$

$$\text{5年目の現在価値} = \frac{900万円}{(1+0.05)^5} ≒ 705万円$$

$$\text{残存価格の現在価値} = \frac{1億7,000万円}{(1+0.05)^5} ≒ 1億3,316万円$$

これらを合計すると、DCF法による評価額は以下のとおりです。

$$\text{DCF評価額} = 857 + 816 + 777 + 740 + 705 + 13,316 = 1億7,211万円$$

【両手法の評価額比較】

・直接還元法:1億8,000万円

・DCF法:1億7,211万円

・差額:789万円(約4.4%の差)

この例では比較的近い評価額となりましたが、これは収益が安定していると仮定したためです。賃料下落や空室率上昇を織り込んだ場合、DCF法の評価額はさらに下がります。

たとえば3年目以降に賃料が年5%ずつ下落すると仮定した場合、DCF法の評価額は1億5,500万円程度まで下がる可能性があります。直接還元法では1億8,000万円のままなので、この場合の差額は2,500万円、差率は約13.9%にもなります。これは中古の区分マンション1戸分に相当する金額です。

このように、将来予測の内容によって評価額は大きく変動するため、前提条件の設定が極めて重要ということです。

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