田園住居地域いつから始まり何が変わったか完全解説

田園住居地域はいつから始まり何が変わったのか

田園住居地域の農地で300㎡以上の工事を許可なく進めると、契約後でも取引が無効になるリスクがあります。

📋 この記事の3ポイント要約
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施行は2018年4月1日(平成30年)

平成29年に都市計画法が改正・公布され、翌年2018年4月1日から田園住居地域の運用が始まった。用途地域追加は25年ぶりの出来事。

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農地300㎡以上の開発は原則不許可

田園住居地域内の農地で土地の形質変更や建築を行う場合は市町村長の許可が必要。300㎡以上は原則不許可という厳しい規制がある。

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重要事項説明の対象が追加された

田園住居地域の創設により宅建業法も改正。農地における建築等の規制と用途規制が、宅建業者が説明すべき重要事項に追加された。


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田園住居地域はいつから施行されたのか:公布日と施行日の違い

田園住居地域が法律上に生まれたのは、平成29年(2017年)4月の都市計画法改正によるものです。ただし、法律の「公布」と「施行」には明確な違いがあります。公布とは国会で制定された法律が天皇によって公式に発布される日のことであり、施行とはその法律が実際に効力を持つ日のことです。つまり、田園住居地域という制度が法的に誕生したのは2017年4月の「都市緑地法等の一部を改正する法律」の公布時点ですが、実際に用途地域として運用が開始されたのは、2018年(平成30年)4月1日です。

不動産実務では、この二つの日付を混同しないことが重要です。「2017年から始まった」と回答してしまうと、正確には施行前の状態を指していることになります。施行前は、たとえ法律上に田園住居地域という区分が存在していても、各自治体の都市計画として実際に指定・運用されていなかったのです。

また、用途地域の追加としては、1992年(平成4年)6月の都市計画法改正で8種類から12種類に増えて以来、実に25年ぶりの出来事でした。つまり、現在働いている多くの不動産従事者が入社してから、用途地域の種類は一度も変わっていなかったことになります。新人研修でそのまま使い続けてきた資料が「12種類」と記載されていた場合、2018年以降は情報が古くなっているため注意が必要です。

公益社団法人 全日本不動産協会:田園住居地域の法的位置づけと宅建業法との関係

田園住居地域が創設された背景:生産緑地2022年問題との関係

「なぜこのタイミングで新しい用途地域が追加されたのか」という疑問に答えるには、生産緑地の2022年問題を理解することが欠かせません。

1992年(平成4年)に生産緑地法が改正され、都市部に残る農地のうち保全すべきものが「生産緑地」として指定されました。指定を受けた農地は、農業継続を条件に固定資産税の大幅な減免と相続税の支払い猶予という優遇措置を受けられます。いいことですね。

ところが、この制度には「指定から30年が経過すると、農地所有者が自治体に買取りを申し出ることができる」という仕組みがあります。自治体が買い取らない場合、農地は不動産業者などへの売却が可能になります。生産緑地の指定が始まった1992年から30年が経過するのが2022年です。国土交通省のデータによると、全国の生産緑地は約1万3千ヘクタールあり、その約8割が2022年に期限を迎えるとされていました。

大量の農地が一気に宅地化され市場に放出されると、特に三大都市圏では不動産価格が急落する可能性があると懸念されたのです。田園住居地域は、この流れに歯止めをかけ、都市部の農地を保全するための用途地域として、2017年の法改正・2018年施行という形で間に合わせるように創設されました。

つまり、田園住居地域の創設は2022年問題と切り離せない関係にあります。実際に2022年を迎えても大規模な宅地化は起きませんでしたが、それは特定生産緑地制度の創設など、別の対策も並行して打たれたためです。不動産取引の際に農地が絡む案件では、こうした制度的背景を把握しておくことが取引の安全性を高めることにつながります。

2022年問題と田園住居地域の新設:生産緑地との関係をわかりやすく解説

田園住居地域いつから始まった制限内容:農地の開発規制と建築規制

2018年4月1日の施行と同時にスタートした制限内容は、大きく「開発規制」と「建築規制」の2つに分けられます。

開発規制では、田園住居地域内の農地(耕作の目的に供される土地)において、以下の行為を行う者は市町村長の許可を受けなければならないと定められています。

  • 土地の形質の変更(造成・掘削など)
  • 建築物・工作物の建築・建設
  • 土石その他政令で定める物件の堆積(駐車場や資材置き場のための造成を含む)

この規制で特に注意すべきなのが、農地の面積が300㎡以上の場合、開発行為は原則不許可になるという点です。300㎡というのは、テニスコート(縦23.77m×横10.97m)をほぼ1面分並べた広さのイメージです。これ以上の農地は、用途地域が変更されない限り、開発が実質的に封じられる形となります。

一方、建築規制については、低層住居専用地域(第1種・第2種)の制限がベースとなっています。具体的な数値は以下のとおりです。

項目 田園住居地域の制限
建ぺい率 30〜60%(10%きざみ)
容積率 50〜200%
絶対高さ制限 10m または 12m
北側斜線制限 立ち上がり5m+勾配1.25
外壁後退 1m または 1.5m

絶対高さ10m〜12mという制限は、一般的な2階建て住宅であれば概ね問題ありませんが、3階建て以上にはほぼ対応できません。農地に日照を確保するという農業上の観点からも、低層での建築が求められる地域です。

建築用途面での田園住居地域ならではの特徴として、地元で生産された農産物の販売所や農家レストランは床面積500㎡以内であれば建設可能という点があります。一方で第1種低層住居専用地域には建てられない床面積150㎡以内のコンビニエンスストア等の店舗や飲食店も許可されています。農業と生活の利便性を両立させる設計になっているということですね。

国土交通省:田園住居地域の活用エリアイメージと制度概要

田園住居地域いつからの重要事項説明義務:宅建業者が押さえるべき実務ポイント

田園住居地域の創設は、不動産取引における重要事項説明の内容にも直接影響しています。これが原則です。

都市計画法によって田園住居地域が追加されたことに伴い、宅建業法も改正されました。宅建業者が宅地建物取引士をして契約成立までに相手方へ説明させなければならない事項として、次の2点が新たに加わっています。

  1. 田園住居地域内の農地における建築等の規制(都市計画法第52条第1項)
  2. 田園住居地域内における用途規制(建築基準法第48条第8項)

この変更が発生したのは2018年4月1日の施行日です。以降の取引では、対象となる物件が田園住居地域に含まれていれば、上記事項を漏れなく説明する義務が生じています。

実務上で特に気をつけたいのは、「現時点では全国でほとんど指定されていない」という認識から対応が甘くなるケースです。現在(令和5年3月時点)の指定は北海道・本別町の1か所のみ(面積33ヘクタール)ですが、今後の都市計画変更で新たに指定されるエリアが出てくる可能性はゼロではありません。また、物件の用途地域を調査する際に田園住居地域の有無を確認する手順を業務フローに組み込んでおかないと、将来的にリスクが生じます。

重要事項説明の説明義務に違反した場合、宅建業法に基づく行政処分(指示処分・業務停止処分など)の対象となりえます。厳しいところですね。法改正の度に確認事項を更新しておく習慣が、リスク回避の基本です。

国土交通省:重要事項説明における各法令に基づく制限等についての概要一覧(田園住居地域対応版)

田園住居地域いつからの指定状況:全国でなぜ1か所しか指定されないのか

田園住居地域は2018年4月に施行されましたが、国土交通省の令和5年3月時点の調査では、全国での指定はわずか1か所(北海道・本別町、面積33ヘクタール)にとどまっています。この1か所への指定も2021年(令和3年)のことですから、施行から3年以上、実際には日本のどこにも指定されていなかった用途地域でした。意外ですね。

なぜ広まらないのかについては、いくつかの構造的な理由があります。

まず、2022年問題が想定ほどの影響をもたらさなかった点があります。特定生産緑地制度の導入などにより、多くの生産緑地所有者が10年延長を選択したため、一気に農地が宅地化される事態は回避されました。田園住居地域を指定する緊急性が薄れたといえます。

次に、指定自体に対するデメリットの大きさという問題があります。川崎市が行ったアンケート調査によると、田園住居地域が指定されることのデメリットとして「開発が制限されることで農地の売買がしにくくなる」を挙げた人が64.4%、「用途地域が変更されない限り農地への開発制限がかかり続ける」を挙げた人が61.6%と、60%超が具体的な不利益を指摘しています。農地所有者や地域住民の合意形成が難しいという実態があるわけです。

さらに、唯一指定されている北海道・本別町のケースを見ると、都市部の農地保全を目的とした制度のはずが、広大な農業地帯である北海道で最初に指定されるという皮肉な状況になっています。実際に本別町の役場担当者も「日本初の指定を目指したわけではなく、そういう認識はなかった」と述べています。制度と実態のギャップを象徴するエピソードです。

不動産従事者としては、「田園住居地域は実質的にまだ機能していない制度」と軽視するのではなく、今後の都市計画の動向として定期的に情報をアップデートしておく視点が大切です。都市局長・住宅局長通知で自治体に積極指定を促す通知も出ているため、今後の制度普及を見越した対応が求められます。

初の田園住居地域が北海道・本別町で指定:現地レポートと指定の経緯