土砂災害特別警戒区域の建築制限と不動産取引の注意点

土砂災害特別警戒区域の建築制限と不動産取引での実務対応

特別警戒区域(レッドゾーン)に指定された土地では、構造基準を満たしていない建物の売買契約が無効になるケースがあります。

📋 この記事の3ポイント要約
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建築制限の対象は「居室あり建築物」

特別警戒区域内では、居室を有する建築物の新築・増築・改築に建築確認が必要。都市計画区域外でも例外なく適用されます。

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開発行為は原則「許可制」

住宅宅地分譲や要配慮者利用施設の建築目的の開発行為は、都道府県知事の許可が必要。基準を満たさなければ許可されません。

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重要事項説明での告知義務あり

不動産取引時には宅建業法に基づく重要事項説明で区域指定の有無を必ず説明する義務があります。見落とすと宅建業法違反になります。

土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)の建築制限とは何か

土砂災害特別警戒区域(通称「レッドゾーン」)は、急傾斜地の崩壊や土石流などが発生した場合に、建築物に損壊が生じ、住民の生命・身体に著しい危害が生じるおそれがあると都道府県知事が指定した区域です。 同じ土砂災害関連の指定でも、危険性が比較的低い「土砂災害警戒区域(イエローゾーン)」とは明確に区別されており、レッドゾーンにはより厳しい規制が課されます。

参考)土砂災害特別警戒区域・土砂災害警戒区域についてわかりやすくま…

規制の根拠となるのは「土砂災害防止法(土砂法)」第24条・第25条です。 つまり建築基準法だけでなく、土砂法との二重チェックが必要ということですね。

参考)https://www.sabo.pref.hiroshima.lg.jp/portal/kaisetsu/keikaihelp/05_07.htm

不動産業に携わる方にとって重要なのは、この区域内にある物件の取り扱いが、通常の土地・建物とは大きく異なる点です。建築可否の確認から重要事項説明まで、専門的な知識なしに取引を進めると、法的リスクを抱えることになります。

参考)土砂災害特別警戒区域での制限について – 愛知県

近年、ゲリラ豪雨や集中豪雨の増加により、全国で特別警戒区域の指定件数は増加し続けています。 今後も指定範囲が広がることが予測されており、不動産業従事者として最新情報を把握しておくことが不可欠です。

参考)指定されたら最後?土砂災害特別警戒区域 – 再建築不可の買取…

国土交通省「土砂災害防止法の概要」:土砂法の立法趣旨・規制内容の公式解説。建築制限の法的根拠を確認する際の一次資料として活用できます。

土砂災害特別警戒区域の建築制限「構造規制」の具体的な内容

特別警戒区域内で居室を有する建築物を新築・増築・改築する場合、想定される土砂の衝撃力に対して安全な構造であることを、事前に建築確認で確認する必要があります。 これは都市計画区域の内外を問わず適用されます。都市計画区域外だから確認不要というのは誤りです。sabo.pref.hiroshima+1

「居室を有する建築物」が対象です。つまり物置や車庫など居室のない建築物は、この構造規制の対象外となります。 倉庫だけを建てるなら問題ありません。ただし、後から居室に転用する場合は改めて規制が適用されるため注意が必要です。

参考)https://www.sabo.pref.hiroshima.lg.jp/portal/kaisetsu/keikaihelp/faq/q05.htm

構造規制の具体的な基準は、区域ごとに「急傾斜地の崩壊等の自然現象により建築物に作用する衝撃」に対して安全な基準として公示されます。 数値は各特別警戒区域の指定内容によって異なるため、対象物件ごとに該当する都道府県の建設事務所や市役所建築課で確認が必須です。

  • 🏠 新築:必ず構造規制に適合した設計で建築確認を申請
  • 🔨 増築:増築部分だけでなく建物全体への影響を考慮して確認申請
  • 🔧 改築:既存建物の一部を壊して建て直す場合も対象
  • 🚫 居室なし(倉庫・車庫など):この構造規制は適用外

確認申請は着工前に行うことが必要です。 着工後に判明した場合、工事停止命令が出るリスクもあります。着工前の確認が原則です。

国土交通省「土砂災害特別警戒区域内における居室を有する建築物の構造基準」(PDF):構造規制の技術的基準の詳細が記載されている公式資料。設計時・確認申請時の参考資料として活用できます。

土砂災害特別警戒区域の建築制限「特定開発行為の許可制」と不動産業者が陥りやすいミス

特別警戒区域内では、建築物の構造規制に加えて「特定開発行為の許可制」という規制があります。 これは住宅宅地分譲や、社会福祉施設・学校・医療施設など要配慮者利用施設の建築を目的とする開発行為に対して、都道府県知事の許可が必要となるものです。pref+1

許可が下りる条件は厳格です。土砂災害を防止するための対策工事計画が、安全確保に必要な技術的基準に従っていると知事が判断した場合のみ許可されます。 許可なく開発を進めると、法違反となります。

参考)土砂災害特別警戒区域|区域指定|土砂災害防止法|福岡県砂防課

不動産業者が陥りやすいミスは、「個人が自分で住む住宅を建てる場合は許可不要」と思い込むことです。実際には、住宅宅地分譲目的であれば個人でも許可が必要であり、これを見逃すと開発業者側・仲介業者側双方に問題が生じます。厳しいところですね。

  • 🏘️ 住宅宅地分譲目的の開発行為:都道府県知事の許可が必要
  • 🏥 社会福祉施設・学校・医療施設の建築目的の開発行為:同様に許可が必要
  • 🏡 自己居住用の一戸建て新築(分譲でない):開発許可制の対象外だが構造規制は適用

これは使えそうです。仲介の段階で許可取得状況を確認するチェックリストを持っておくだけで、後々のトラブルを大幅に減らせます。

福岡県「土砂災害特別警戒区域での対策」:特定開発行為の許可制と構造規制の両面を端的にまとめた行政ページ。業務チェック用に活用できます。

土砂災害特別警戒区域の建築制限と重要事項説明・告知義務の実務ポイント

不動産取引において、対象物件が土砂災害特別警戒区域内にある場合、宅地建物取引業法に基づく重要事項説明で必ずその旨を説明しなければなりません。 これは宅地建物取引士が記名押印した重要事項説明書に記載し、買主・借主に口頭で説明することが義務付けられています。

参考)不動産を売買する際は要注意!土砂災害警戒区域は土地の評価も下…

説明すべき内容は「区域内である事実」だけに止まりません。建築制限の概要(構造規制・開発許可の必要性)についても、相手方が理解できるよう説明する責任があります。 告知漏れは宅建業法違反となり、業務停止処分などの行政処分のリスクがあります。

また、特別警戒区域内の宅地は土地評価額にも影響します。 固定資産税評価においても、特別警戒区域内の宅地は一定の評価減が認められており、税額にも反映されます。これは知っていると得する情報です。

参考)土砂災害特別警戒区域内にある宅地の評価

  • 📋 重要事項説明書に「土砂災害特別警戒区域内」の記載が必須
  • 🗣️ 口頭での説明も義務(書面だけでは不十分)
  • 💴 土地評価額・固定資産税評価に影響する可能性がある
  • ⚖️ 告知漏れは宅建業法違反業務停止処分のリスクあり
  • 🔍 売主が区域指定を知らない場合もあるため、業者側で事前確認が必要

区域指定の有無は、各都道府県のハザードマップや「土砂災害情報システム」で確認できます。 取引前に必ずオンラインで確認する習慣をつけることが実務上のリスク管理の第一歩です。

不動産流通推進センター「土砂災害警戒区域の重要事項説明」:重要事項説明での告知義務の具体的な記載方法と実務上の注意点を解説。説明書作成時の参考として活用できます。

土砂災害特別警戒区域の建築制限における「独自視点」:既存建物の売買と既存不適格の扱い

あまり知られていないのが、特別警戒区域が「後から指定」された場合の既存建物の扱いです。 区域指定前に建てられた建物が指定後に建築基準法上の構造規制を満たさない状態になった場合、その建物は「既存不適格建築物」となります。

既存不適格建築物はすぐに違法となるわけではありません。ただし、増築・改築・大規模修繕を行う際には、現行の構造規制への適合が求められることがあります。 意外ですね。「現状のまま住み続けるだけなら問題なし」でも「少し増築しようとした途端に多額のコストが発生する」というケースが現実に起きています。

売買の実務においては、買主がこの「既存不適格」の状態を把握していないと、購入後に増改築や大規模修繕をしようとした段階で初めて問題が発覚します。 発覚後に「説明がなかった」というクレームに発展するリスクがあります。痛いですね。

このリスクを回避するためには、取引前に対象建物が区域指定前後どちらに建てられたかを確認し、建築確認済証や検査済証の取得年月日と区域指定年月日を照合することが有効です。市区町村の窓口または各都道府県の砂防担当部署で指定年月日を確認できます。

  • 📅 建物の建築確認年月日と区域指定年月日を照合する
  • 📁 建築確認済証検査済証の有無と取得年月日を確認
  • 🏛️ 区域指定年月日は都道府県の砂防担当窓口で確認可能
  • 💬 既存不適格の状態であることを重要事項説明書に明記する

既存不適格の状態が明確になれば、その分を価格交渉の根拠にすることもできます。つまり適切な調査が双方にとってメリットになるということですね。

愛知県「土砂災害特別警戒区域での制限について」:区域指定後の建築制限の概要をパンフレット形式で解説。既存建物への影響を確認する際に活用できます。