営業保証金供託と届出の手続き
国債で供託すると10年で消滅時効が完成して取り戻せなくなります。
営業保証金供託の基本的な仕組みと金額
宅地建物取引業の免許を取得しただけでは、不動産業を開始することはできません。免許取得後に営業保証金を供託し、その旨を免許権者に届け出て初めて営業が可能になります。この営業保証金は、取引相手が不動産業者との取引で損害を受けた場合に、その損害を弁済するための制度です。
供託金額は主たる事務所(本店)で1,000万円、従たる事務所(支店)1ヶ所につき500万円です。つまり本店と支店が2つあれば、合計2,000万円を供託する必要があります。この金額は、取引の安全性を確保するために法律で定められた最低限の保証額となっています。
供託先は主たる事務所の最寄りの供託所(法務局)に限定されます。支店が複数あっても、すべて本店最寄りの供託所にまとめて供託する仕組みです。供託方法は現金だけでなく、国債、地方債、政府保証債などの有価証券も認められています。ただし有価証券の場合、評価額で計算されるため額面よりも多く供託する必要があります。
供託後は、供託書の写しを添付して免許権者(国土交通大臣または都道府県知事)に届出をします。この届出を完了して初めて営業開始が認められます。
東京都の営業保証金供託済届出書の様式と作成方法について詳しい説明があります
営業保証金供託届出の期限と免許取消のリスク
営業保証金の供託と届出には、厳格な期限が設けられています。免許を受けた日から3ヶ月以内に届出をしなければ、免許権者は届出をすべき旨の催告を行う義務があります。これは「催告をしなければならない」という必要的な処分です。
催告を受けてからさらに1ヶ月以内に届出をしない場合、免許権者は免許を取り消すことができます。つまり、最長でも免許日から4ヶ月以内に届出を完了しなければ、免許取消のリスクに直面することになります。せっかく取得した免許が無効になれば、申請手数料や準備にかけた時間がすべて無駄になります。
催告は義務ですが、免許取消は任意です。
つまり免許権者が「取り消すことができる」という裁量権を持っているということです。しかし実務上は催告後も届出がない場合、ほぼ確実に取消処分が行われます。
また、営業保証金を供託せずに宅建業を開始した場合、業務停止処分の対象になります。これは宅建業法違反として厳しく処分される行為です。供託前に営業活動を行うことは、たとえ契約が成立していなくても違法行為となります。
免許取得後は速やかに供託手続きを進め、遅くとも2ヶ月以内には届出を完了させるのが実務上の安全策です。期限ギリギリでの対応は、書類不備などのトラブルで間に合わなくなるリスクがあります。
営業保証金の還付による不足額の供託手続き
営業保証金は、宅建業者との取引で損害を受けた債権者が供託所に還付請求をすることができます。還付が実行されると、供託している営業保証金が減少し、法定額に不足が生じることになります。この不足状態を放置すると営業停止のリスクがあるため、速やかな追加供託が求められます。
還付により不足が発生した場合、免許権者から宅建業者に対して「不足額を供託すべき旨」の通知が送られます。宅建業者は、この通知を受け取った日から2週間以内に不足額を供託しなければなりません。さらに、供託した日から2週間以内に、その旨を免許権者に届け出る必要があります。
この2週間という期限は非常に短いです。
通知を受けてから供託まで2週間、供託から届出まで2週間という二段階の期限があります。実質的には、通知受領から最長4週間以内にすべての手続きを完了させる必要があります。期限を過ぎると業務停止処分を受ける可能性があるため、通知を受けたら最優先で対応すべき事項です。
不足額の供託も、最初の供託と同様に主たる事務所の最寄りの供託所で行います。現金または有価証券での供託が認められており、有価証券の場合は評価額で計算されます。供託後は供託書の写しを添付して届出書を提出します。
還付請求がされるケース自体が稀ですが、万が一の際には迅速な対応が求められます。日頃から供託額を把握し、通知が来た場合の対応フローを社内で確認しておくことが重要です。
営業保証金を有価証券で供託する際の時効リスク
営業保証金は現金だけでなく、国債、地方債、政府保証債などの有価証券でも供託できます。有価証券での供託は、現金を拘束せずに済むというメリットがありますが、重大な落とし穴があります。
それが消滅時効の問題です。
国債証券の消滅時効は、償還日の翌日から10年で完成します。利息については利払日から5年で時効となります。時効が完成すると、その国債は現金化できなくなり、営業保証金として機能しなくなります。
つまり、法定額に不足が生じた状態になるのです。
時効完成による不足が発覚した場合、免許権者から不足額供託の通知が送られます。通知を受けた日から2週間以内に不足額を供託しなければ、業務停止処分の対象となります。償還期限や時効完成日を管理していなければ、突然不足状態に陥り、緊急での供託を迫られることになります。
国債で供託している業者は、償還日と時効完成時期を定期的に確認し、時効完成前に差し替え手続きを行う必要があります。差し替えとは、供託している有価証券を新しいものに入れ替える手続きです。差し替えを行った場合は、遅滞なく免許権者に届け出なければなりません。
東京都や大阪府などの免許権者は、国債証券で供託している業者に対して定期的に注意喚起を行っています。しかし最終的な管理責任は業者側にあるため、自社で償還期限を把握し、計画的に対応することが不可欠です。
静岡県の営業保証金に関する届出ページには、国債の時効に関する重要な注意事項が記載されています
事務所増設時の営業保証金追加供託の実務ポイント
宅建業者が新たに支店を開設する場合、その支店分の営業保証金を追加供託する必要があります。支店1ヶ所につき500万円を、主たる事務所の最寄りの供託所に供託し、その旨を免許権者に届け出てから、新設した事務所での営業を開始できます。
ここで注意すべきは、弁済業務保証金分担金(保証協会加入の場合)とは期限の扱いが異なる点です。保証協会の社員が事務所を増設する場合、増設した日から2週間以内に分担金を納付しなければなりません。しかし営業保証金の場合、「いつまでに供託しなければならない」という具体的な期限は法律で定められていません。
期限がないということですね。
ただし、供託と届出を完了するまで新事務所での営業はできません。つまり実質的には、事務所の開設準備と並行して供託手続きを進め、営業開始までに届出を完了させる必要があります。開設日を決めているのに供託が間に合わないという事態は避けなければなりません。
事務所増設の変更届出と営業保証金供託済届出は別の手続きです。まず事務所の新設について変更届出を行い、その後に追加分の営業保証金を供託し、供託済届出を提出するという流れになります。変更届出の受理後でなければ供託できないわけではありませんが、供託前に事務所を開設して営業することは違法です。
支店開設を計画する際は、変更届出と供託手続きの両方を考慮したスケジュールを組むことが重要です。供託から届出まで最低でも1週間程度は見ておくべきでしょう。法務局の混雑状況によっては、供託書の受理に時間がかかる場合もあります。
保証協会への切り替えで公告なしに営業保証金を取り戻せる理由
営業保証金制度を利用していた宅建業者が、宅地建物取引業保証協会(全宅連または全日本不動産協会)の社員となった場合、公告をすることなく直ちに営業保証金を取り戻すことができます。これは営業保証金の取戻しにおける重要な例外規定です。
通常、営業保証金を取り戻す場合は、官報で6ヶ月以上の期間を定めて債権申出の公告をしなければなりません。公告費用は数万円かかり、申出期間が経過するまで取り戻すことができません。しかし保証協会の社員になる場合は、この公告手続きが不要になります。
公告が不要な理由は、保証協会が弁済業務保証金を供託しているためです。保証協会に加入すると、その業者の取引相手は保証協会の弁済業務保証金から還付を受けられるようになります。つまり個別の営業保証金がなくても債権者保護が図られるため、公告する必要がないのです。
保証協会の社員となった業者は、社員の地位を取得した日から1週間以内に営業保証金を供託した旨の届出を免許権者に行い、その後速やかに取戻し手続きを行います。取り戻した資金は、保証協会への分担金支払いや事業資金に充てることができます。
本店のみで1,000万円、支店が複数あればさらに高額になる営業保証金を、公告なしですぐに取り戻せることは大きなメリットです。保証協会への加入費用と分担金(本店60万円、支店1ヶ所10万円)を考慮しても、資金効率の面で保証協会加入を選択する業者が多い理由がここにあります。
ただし保証協会の社員の地位を喪失した場合は、地位を失った日から1週間以内に営業保証金を供託し、さらに2週間以内に届出をしなければなりません。この期限は非常に短いため、脱退する場合は事前に供託準備を整えておく必要があります。
営業保証金制度の詳細な解説と、還付・取戻しの仕組みについて図解で説明されています

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