液状化ハザードマップ全国の確認方法と取引上の注意点
液状化ハザードマップは説明義務の対象外です。
液状化ハザードマップ全国版の主要な確認方法
全国規模で液状化リスクを確認する場合、国土交通省が提供する複数のプラットフォームを活用できます。最も代表的なのは「重ねるハザードマップ」です。このサイトでは「地形区分に基づく液状化の発生傾向図」と「都道府県液状化危険度分布図」の2種類が公開されています。
地形区分に基づく液状化の発生傾向図は、全国を約250m×250mのメッシュ単位で分類し、液状化の発生傾向を5段階で表示しています。これは250m四方ごと、つまり縦横約250mの範囲をひとつの単位として評価しているということです。特定の地震を想定せず、地形が持つ一般的な地盤特性から相対的な液状化リスクを示しているのが特徴です。
つまり広域的な傾向がわかるということですね。
一方で都道府県液状化危険度分布図は、各都道府県が独自に実施した地震被害想定調査の結果をまとめたものです。こちらは特定の地震を想定し、地域特有の条件を考慮した液状化危険度を示しています。都道府県ごとに想定地震の位置や規模、評価手法が異なるため、凡例や表示方法も統一されていません。
2024年10月30日からは、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」でも液状化の発生傾向図が確認できるようになりました。このプラットフォームでは、地価や都市計画、周辺施設などの情報と液状化リスクを同時に地図上で重ね合わせて確認できます。不動産取引における総合的な判断材料として活用できる点が大きなメリットです。
こちらは全国の液状化発生傾向図を確認するための基本的なプラットフォームです。
液状化情報に加えて地価や都市計画など不動産取引に必要な複数の情報を同時に確認できます。
液状化ハザードマップ全国の自治体別作成状況
全国の自治体における液状化ハザードマップの作成状況は、地域によって大きく異なります。2018年時点の調査では、液状化ハザードマップを作成・公開している自治体は42都道府県の365市区町村にとどまり、全国の市区町村の約2割程度という状況でした。
これは驚くほど少ない数字です。
栃木県、島根県、山口県、長崎県、大分県の5県では、当時液状化ハザードマップを作成している自治体がゼロという状況でした。液状化被害のリスクが相対的に低い地域や、過去に大規模な液状化被害の実績がない地域では、マップ作成の優先順位が低くなる傾向があります。
ただし近年では状況が改善傾向にあります。国土交通省は液状化ハザードマップの作成を推進しており、2023年の防災・減災の取り組みとして、液状化ハザードマップの作成・公表率100%を目標に掲げました。対象となる約1,350市町村での整備が進められています。
自治体が作成する液状化ハザードマップは、地域の詳細なボーリングデータや地盤調査結果を反映しているため、国が提供する全国版よりも精度が高い場合があります。特に宅地の液状化リスクを評価する際には、自治体版のマップが有用です。しかし250mメッシュ単位での評価には限界があり、狭い範囲で発生する液状化を正確に表現できないこともあります。
メッシュの大きさが課題になるわけですね。
不動産業従事者としては、取引対象物件の所在地で自治体独自の液状化ハザードマップが作成されているかを確認し、存在する場合は国の全国版と併せて参照することで、より正確なリスク評価が可能になります。
液状化ハザードマップと不動産取引における重要事項説明の関係
液状化ハザードマップと重要事項説明の関係は、不動産業従事者にとって法的リスクを左右する重要なテーマです。結論から言えば、液状化ハザードマップの説明は宅建業法上の重要事項説明の義務対象には含まれていません。
2020年8月に宅建業法施行規則が改正され、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地の説明が義務化されました。しかしこの義務化の対象は「水防法に基づく水害ハザードマップ」のみであり、地震による液状化ハザードマップは含まれていません。
義務対象は水害だけということですね。
ただし法的義務がないからといって、説明責任まで免除されるわけではありません。過去の裁判例では、液状化危険度マップで「液状化の危険度が極めて高い」と記載されている土地について、その事実を説明しなかった仲介業者に対して説明義務違反が認められたケースがあります。この事例では、実際に液状化が発生していない段階でも、媒介契約の解除と手数料の返還が認められました。
宅建業法第47条第1項は、取引の相手方等の判断に重要な影響を及ぼす事実について、故意に事実を告げず、または不実のことを告げる行為を禁止しています。液状化リスクは建物の安全性に直結する情報であり、「判断に重要な影響を及ぼす事実」に該当すると解釈される可能性があります。
違反すると業務停止処分だけでなく、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの併科という重い罰則が科されます。
さらに損害賠償請求のリスクもあります。
説明義務違反を不法行為と構成した場合、買主が損害を知った時から3年で時効消滅しますが、それまでは法的責任を追及される可能性が残ります。
重い責任が伴うわけですね。
不動産業従事者としては、液状化ハザードマップが公表されている地域での取引では、法的義務の有無にかかわらず、顧客に対して積極的に情報提供を行うことがリスク回避の基本戦略となります。過去に液状化被害があった土地や、ハザードマップで高リスクと評価されている土地については、その情報を明確に説明し、記録として残すことが重要です。
液状化リスクと不動産業者の説明責任について、裁判例を交えた詳細な解説が掲載されています。
液状化ハザードマップの見方とPL値の理解
液状化ハザードマップを正確に読み解くためには、PL値(液状化指数)の理解が不可欠です。PL値とは、その地点における地盤の液状化の激しさの程度を総合的に表す指標です。深度20mまでの地盤を1m毎に評価し、それぞれの深さでの液状化の可能性を積算して算出します。
PL値による液状化危険度の判定基準は、一般的に以下のように区分されています。PL=0の場合は「液状化危険度はかなり低い」、0<PL≦5の場合は「液状化の危険度は低い」、5<PL≦15の場合は「液状化の危険性が高い」、15<PLの場合は「液状化の危険性が極めて高い」と評価されます。
数値が高いほど危険ということですね。
PL値の算出には、各深度でのFL値(液状化に対する安全率)が用いられます。FL値は1m毎の深度で計算され、FL≦1.0で液状化する可能性ありと判断されます。このFL値に深度の補正係数をかけて積分した値がPL値です。例えばPL値が37.6と算出された場合、これは「液状化の危険性が極めて高い」という評価になります。
ハザードマップ上では、このPL値を基に色分けして表示されているケースが多く見られます。青色や緑色で表示される地域は液状化リスクが低く、黄色からオレンジ、赤色になるにつれてリスクが高まります。ただし自治体によって色分けの基準や凡例が異なるため、必ず凡例を確認する必要があります。
色だけで判断すると誤る可能性があるわけです。
国土交通省の「地形区分に基づく液状化の発生傾向図」では、PL値ではなく地形区分ごとの液状化発生割合を基に5段階で評価しています。過去の地震で液状化が発生した地点を250mメッシュごとに整理し、埋立地22.6%、三角州・海岸低地22.3%、旧河道21.5%、干拓地16.4%という順で発生割合が高くなっています。
不動産業従事者が顧客にハザードマップを説明する際には、単に色だけを示すのではなく、PL値の数値や評価基準を具体的に伝えることが重要です。また250mメッシュという広い範囲での評価であることを説明し、個別の敷地レベルでは地盤調査が必要であることも併せて伝えるべきです。
液状化危険度の判定方法やPL値の詳細な解説が掲載されており、専門的な知識を習得できます。
液状化ハザードマップ全国版の精度と限界
全国版の液状化ハザードマップには、利用する際に理解しておくべき精度の限界があります。最も重要なのは、250m×250mのメッシュ単位での評価という点です。このメッシュサイズは、おおよそ縦62.5m×横62.5mのサッカーコート約4面分に相当する広さです。
これは思ったより広い範囲です。
メッシュ内で面積比率の大きくなる地形(微地形)を基に作成されているため、特定の地点における詳細な地盤状況までは反映されていません。例えば、あるメッシュの大部分が台地であっても、その一角に埋立地や旧河道が存在する場合、その局所的なリスクは表現されない可能性があります。
土木学会の研究論文でも、「液状化は狭い範囲でおきることが多く、メッシュ表示ではこれを表現できないことに留意する必要がある」と指摘されています。実際の液状化被害は数十メートル単位で発生することもあり、250mメッシュでは細かな変動を捉えきれません。
人工改変地の扱いも限界のひとつです。過去の地震では、埋立地や干拓地、低地の盛土造成地、台地・丘陵部の谷埋め盛土造成地などで顕著な液状化被害が発生しています。しかし全国版マップでは、こうした人工改変地の詳細な位置までは反映されていません。そのため、マップ上で液状化の発生傾向が弱い場合でも、その区域にある埋立地などでは液状化が発生する可能性があります。
つまりマップは目安に過ぎないということです。
また「地形区分に基づく液状化の発生傾向図」は、特定の地震や震度を考慮した液状化危険度ではなく、あくまで地形から想定される相対的な発生傾向を示したものです。過去の液状化被害の実態を考慮すると、最も脆弱な地域(埋立地など)では震度5程度から液状化被害が発生しており、震度が大きくなるほど発生傾向も高まります。
水部の扱いにも注意が必要です。原則として河道や湖沼などの水部は評価対象外ですが、メッシュの一部に陸部が含まれる場合は、その面積の大小に関わらず陸部として評価されることがあります。そのため水部に見える場所でも液状化傾向が表示されているケースがあります。
不動産業従事者としては、こうした限界を理解した上で、ハザードマップを補完する情報源として、自治体が作成する詳細版マップ、古地図、ボーリングデータ、過去の液状化発生履歴などを総合的に活用することが求められます。特に高額物件や重要な取引では、個別の地盤調査を推奨することがリスク管理の基本となります。
液状化ハザードマップを活用した不動産業務上の対策と顧客対応
液状化ハザードマップを不動産業務に効果的に活用するためには、段階的なリスク評価と顧客対応の戦略が必要です。まず物件調査の初期段階で、対象地域の液状化リスクを把握することから始めます。
具体的には、物件の住所を入力して国土交通省の「重ねるハザードマップ」や「不動産情報ライブラリ」で液状化の発生傾向を確認します。さらに該当自治体が独自の液状化ハザードマップを作成している場合は、そちらも併せてチェックします。自治体版は地域のボーリングデータを反映しているため、より詳細な評価が可能です。
調査結果は記録に残すことが重要です。
液状化リスクが高いと判定された場合、顧客への説明方法が重要になります。まず液状化という現象がどのようなものか、地震時に地盤が一時的に液体のようになり、建物が傾いたり沈下したりする可能性があることを平易な言葉で説明します。次にハザードマップの見方を具体的に示し、対象物件の所在地がどの危険度区分に該当するかを明示します。
説明時には、液状化対策の費用相場も併せて伝えることで、顧客が購入判断する際の材料を提供できます。一般的な地盤改良工事による液状化対策の費用は80万円~200万円程度です。建物の規模や地盤の状況によって変動しますが、この金額を物件価格に加えた総額で資金計画を立てる必要性を説明します。
金額を具体的に示すと判断しやすくなりますね。
一方で、すでに建物が沈下や傾斜を起こした後の修復工事は、1,000万円を超えるケースもあります。この大きな金額差を示すことで、事前対策の重要性を理解してもらえます。また葛飾区など一部の自治体では、液状化対策工事に対する助成金制度があり、工事費用の1/2(上限130万円)が助成されます。こうした制度の情報も提供すると、顧客の負担感を軽減できます。
契約書類の作成時には、液状化リスクについて説明した事実を記録として残すことが法的リスクを回避する上で重要です。重要事項説明書の備考欄や特記事項欄に「液状化ハザードマップにおいて○○と評価されている地域であることを説明済み」といった記載を加え、顧客の署名捺印を得ることで、後日のトラブルを防ぐことができます。
リスクが低い地域であっても、その旨を記録しておくべきです。
また顧客に対しては、ハザードマップが250mメッシュでの広域評価であることを説明し、個別の敷地レベルでは建築前に地盤調査を実施することを推奨します。地盤調査の費用は一般的なSWS試験で5万円程度、ボーリング調査で15万円~30万円程度です。この比較的少額の投資で、数百万円の被害を回避できる可能性があることを伝えます。
液状化ハザードマップの作成方法や評価基準について、国土交通省が詳細な技術資料を公開しています。
不動産業従事者としては、液状化リスクの情報提供が顧客の信頼獲得につながることを認識すべきです。法的義務がないからといって情報を隠すのではなく、透明性の高い取引を心がけることで、長期的な顧客関係の構築とリスク回避の両立が実現できます。