筆界未定地の売買を境界確定と解消手続きで進める方法

筆界未定地の売買を境界確定と解消手続きで進める方法

筆界未定地の売買は「完全に不可能」だと思われがちですが、実は重要事項説明を省略しただけで宅建業法違反となり免許取消処分を受けるリスクがあります。

📋 この記事の3つのポイント
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筆界未定地でも売買は「法的に可能」

土地の所有権は存在するため売買自体は違法ではありません。ただし買主への境界明示と重要事項説明が不可欠で、説明不足は損害賠償リスクに直結します。

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解消費用は30万〜100万円超、期間は最短3ヶ月から

筆界確認(民民査定)で30〜80万円・3〜6ヶ月、筆界特定制度で40〜100万円超・6ヶ月〜1年が目安です。隣地の協力状況により大きく変わります。

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解消せずに売ると市場価格の5〜7割まで下落も

筆界未定地のまま専門買取業者に売却する場合、通常の仲介売却と比べて30〜50%前後の価格ダウンが起きるケースもあります。境界確定がいかに重要かがわかります。

筆界未定地とは何か・売買における基本的な定義

筆界未定地とは、地方公共団体が実施する地籍調査の際に、隣接土地との境界(筆界)が確認できず、未定のまま処理された土地のことです。不動産登記法第123条に定義される「筆界」とは、土地の登記がなされた際に定められた境界線を指します。これは隣地所有者との合意で変更できる「所有権界」とは異なり、法的に確定されるまで個人の合意だけでは動かせない性質を持っています。

筆界未定地かどうかを確認するには、法務局で取得できる公図(地図)を見るのが最も確実です。公図上では、複数の地番が「〇+〇」のようにひとつの区画にまとめられた状態で表示されています。また、登記事項証明書の表題部・地図番号欄に「国調筆界未定地」と記載されていれば、その土地は筆界未定地です。

宅建事業従事者として大切なのは、こうした確認を仲介前に必ず行う点です。不動産会社であればオンライン登記情報提供サービスを活用できるため、調査コストも抑えられます。登記事項証明書と公図の両方を確認する、が基本です。

筆界未定地が生まれる主な原因は4つあります。①境界をめぐる所有者間のトラブルで合意が得られなかった、②境界付近に建物・塀など障害物があって物理的に確認できなかった、③地籍調査当日に土地所有者が立ち会えなかった、④調査時点で合筆処理が絡み一部が未処理となった、などです。相続から数十年が経過した後に初めて筆界未定と判明するケースもあり、売却の相談を受けた時点で初めて発覚することも珍しくありません。


参考:不動産登記法に基づく筆界の定義など、法律の条文については以下で確認できます。

e-Gov 不動産登記法(第123条等)|法令全文の確認に

筆界未定地の売買が難しい4つの理由と宅建業者のリスク

筆界未定地の売買が通常取引より困難になる理由を整理すると、大きく4つに分けられます。宅建業者として関わる場合、このすべてが業務上のリスクになり得ます。

① 分筆・合筆・地積更正ができない

筆界未定地は、分筆登記(土地を分割)も合筆登記(土地を合併)も原則として行えません。地目変更や地積更正(面積の正確な変更)も困難です。つまり、土地の活用計画がほぼすべて止まる状態になります。買主が「一部を売却して残りに家を建てたい」という計画を持っていた場合、取引後にその計画が実行できないことが判明し、売主と仲介業者に対する損害賠償請求につながる可能性があります。

② 住宅ローンの担保設定が困難になる

金融機関は担保評価の際に境界・面積が確定していない土地のリスクを嫌います。筆界未定地には抵当権設定が非常に難しく、結果として買主が住宅ローン審査に通らないケースが多発します。不動産購入者の大多数がローンを利用することを考えると、実質的に買い手が大幅に限られることになります。これが売却が長期化・難航する直接的な原因のひとつです。

③ 建築確認申請が通りにくい

境界が不明確な土地では、建築基準法上の建築確認申請が困難になることがあります。買主が「更地に新居を建てたい」というニーズを持っている場合、この制約が致命的です。売買後に発覚すれば、契約不適合責任として売主が責任を追う可能性があります。宅建業者としては事前調査と説明が必須です。

④ 重要事項説明での説明義務が生じる

宅地建物取引業法に基づき、仲介する宅建業者は買主に対して重要事項説明書を交付し、宅建士が説明する義務を負います。筆界未定地であることは当然この説明対象となります。説明が不十分だった場合、買主からクレームや損害賠償請求が来るだけでなく、行政からの業務改善指示・指示処分・業務停止処分・最悪の場合は免許取消という行政処分を受けるリスクがあります。厳しいところですね。


参考:宅建業法上の重要事項説明義務違反と行政処分については以下で詳しく解説されています。

重要事項の説明義務違反の罰則・処分内容の解説(2026年版)

筆界未定地の売買を解消する3つの方法と費用・期間の比較

筆界未定地の売買を有利に進めるには、まず「境界を確定させること」が原則です。境界確定の方法は主に3つあり、状況に応じた選択が求められます。

方法1:筆界確認(民民査定)【最も推奨】

隣地所有者全員の立ち会いのもと、土地家屋調査士が測量を実施し、全関係者が合意した境界線を記載した「筆界確認書」を作成する方法です。費用の目安は35万〜80万円、期間は3〜6ヶ月が一般的です。全方法の中で費用・期間ともに最もコストが低く、関係者全員が納得した形で進められるため、まず目指すべき選択肢です。ただし隣地所有者の協力が大前提となります。

方法2:筆界特定制度【隣地が非協力の場合】

法務局の「筆界特定登記官」が筆界調査委員の意見をもとに、客観的な調査結果として筆界の位置を特定する公的制度です。申請手数料は固定資産評価額をもとに算出され、たとえば対象2筆の評価額合計が5,000万円の場合、申請手数料は9,600円と少額です。ただし現地測量費用が別途必要で、総費用は40万〜100万円以上になることもあります。期間は6ヶ月〜1年が目安です。裁判のような法的強制力はありませんが、公的機関の判断が得られるため、その後の売却交渉や境界確定訴訟の証拠として有効です。

方法3:境界確定訴訟【最終手段】

他の方法でどうしても解決できない場合の最終手段です。裁判所が判決で境界を確定させるため、法的強制力があります。費用は100万〜300万円、期間は2〜3年以上が一般的で、精神的・時間的負担も最大です。弁護士費用も別途発生します。隣地所有者との関係が決定的に悪化するリスクもあるため、慎重に検討する必要があります。

方法 費用目安 期間目安 法的強制力 隣地の協力
筆界確認(民民査定) 35万〜80万円 3〜6ヶ月 なし(合意) 必要
筆界特定制度 40万〜100万円超 6ヶ月〜1年 限定的 不要
境界確定訴訟 100万〜300万円 2〜3年以上 あり(判決) 不要

費用・期間・関係性への影響を踏まえると、まず方法1の「筆界確認(民民査定)」から着手するのが合理的です。それが難しければ方法2、最終的に方法3という順が基本です。


参考:筆界特定制度の申請手数料の計算方法(法務局公式PDF)

法務局|筆界特定の申請手数料の算出方法(公式資料)

筆界未定地の売却価格への影響と仲介・買取の選択基準

筆界未定地の売買では、価格面でどの程度の影響が出るかを正確に把握しておくことが重要です。結論から言うと、筆界未定のまま売却する場合、通常の仲介売却価格と比べて大幅な値下がりを避けることができません。

一般的な買取業者への売却では、通常の不動産でも仲介価格の70〜90%程度が相場とされています。筆界未定地の場合はそれに加えてリスクプレミアムが上乗せされるため、市場価格の50〜70%前後まで下落するケースも出てきます。たとえば市場価格3,000万円の土地であれば、筆界未定のまま買取業者に売却した場合、1,500万〜2,100万円程度になる可能性があるということです。痛いですね。

仲介と買取、どちらを選ぶべきか

宅建業者が顧客に提案する際の判断軸は「売却の緊急性」と「境界確定の難易度」の2点です。

  • 🏃 急いで売却したい場合:筆界確定の手続きを省略し、訳あり物件専門の買取業者に売却する方法が現実的です。数日〜数週間での現金化が可能で、測量費用も不要です。ただし価格の大幅な下落は覚悟する必要があります。
  • 📈 できるだけ高値で売りたい場合:筆界確認(民民査定)で境界を確定させてから、通常の仲介で売却する方が最終的な手取りが多くなる可能性が高いです。費用35万〜80万円・期間3〜6ヶ月がかかりますが、隣地との関係が良好であれば十分に割に合います。

隣接地所有者との関係性が良好かどうかが、最初の判断ポイントです。まず土地家屋調査士に相談し、隣地との関係性を踏まえた現実的な見通しを確認することをお勧めします。

なお、筆界が未定のまま売買が成立した後に買主からトラブルが発生した場合、仲介業者としての責任問題に発展します。売主・買主の双方が筆界未定の状況を十分理解したうえで取引を進めることが大原則です。


参考:地籍調査の全国的な進捗状況(令和6年度末で全国平均53%)

国土交通省 地籍調査Webサイト|全国の地籍調査実施状況

宅建事業従事者だけが知っておくべき筆界未定地の実務対応ポイント

一般向けの記事ではほとんど触れられない、宅建事業従事者として現場で直面する実務的なポイントを整理します。ここが知られていないと、思わぬ損害賠償やトレーニング不足の宅建士への処分リスクにつながります。

ポイント1:地籍調査は全国の53%しか完了していない

国土交通省の令和6年度末データによると、全国の地籍調査対象地域のうち進捗率は53%にとどまっています。つまり残り47%の土地は「いつ筆界未定地と指摘されても不思議ではない状態」にあります。特に都市部では地籍調査が進んでいないエリアも多く、取引対象の土地が将来的に筆界未定として処理されるリスクがある、という視点も持つ必要があります。

ポイント2:地籍調査の立ち会いを怠ると「巻き込まれ型」で筆界未定になる

自分の土地の筆界未定は直接的なリスクですが、じつは隣地の所有者が地籍調査に立ち会わなかっただけで、自分の土地まで筆界未定に巻き込まれることがあります。顧客が地籍調査の通知を受け取った際には、必ず現地立ち会いに参加するよう強く推奨することが必要です。立ち会いを怠ると、当事者でないにもかかわらず土地の価値が大幅に下がるリスクが生まれます。これは予防できるデメリットです。

ポイント3:公図の「+(プラス)記号」を見落とすと重要事項説明が漏れる

公図上の筆界未定の表示は、地番が「〇+〇」というように複数の地番がひとつの区画にまとまった形で表示されます。オンライン登記情報取得の際にこの記号を見落とすと、重要事項説明書への記載が漏れ、宅建業法違反のリスクが生じます。取引開始前に公図を必ず確認し、「+」が付いていないかチェックする習慣が重要です。確認ルーティンに組み込んでおきましょう。

ポイント4:筆界と所有権界の「ズレ」が売買後にトラブルになるケース

筆界(登記上の境界)と所有権界(隣地所有者間で合意した境界)は、必ずしも一致しません。長年の実態利用の中でズレが生じているケースがあり、特に古くから続く住宅地でよく見られます。売買契約後に「筆界に合わせると実際の塀の位置と違う」という問題が浮上し、売主・買主・仲介業者の三者を巻き込んだトラブルに発展することがあります。これを防ぐには、測量図と現地の塀・境界標の位置を照合する調査が不可欠です。

ポイント5:専門買取業者は「訳あり物件の再販」を前提に購入する

筆界未定地を買取業者に売却した場合、業者はその後に境界確定・地図訂正・地積更正登記を自社で実施して再販します。つまり業者側はそのコスト(30万〜80万円超)を見越した価格で買い取っているため、低い買取価格には明確な理由があります。顧客に「なぜ買取価格が低いのか」を正確に説明できると、信頼性が高まります。原則は「解消コスト分が差し引かれている」と説明すればわかりやすいです。


参考:境界未確定土地の購入における法的リスクや筆界・所有権界の違いの詳細

不動産投資DOJO(弁護士執筆)|筆界未定地の購入リスクと3つの解消方法