元金均等返済シミュレーションで住宅ローンの総額を把握する
元金均等返済を選んだお客様は、変動金利が上がっても5年ルールに守られないので返済額が毎月変わります。
元金均等返済シミュレーションの基本的な仕組みと計算式
元金均等返済とは、毎月の返済額のうち元金部分が常に一定で、利息は残高に応じて減っていく返済方式です。 返済が進むほど毎月の支払総額が減るのが特徴で、返済初期が最も負担が重くなります。
参考)https://www.smbc.co.jp/kojin/jutaku_loan/column/kinri_calculation/
毎月の返済額は「元金 ÷ 返済回数 + 前月ローン残高 × 月利」で計算します。 3,000万円を金利1.0%・35年(420回)で借りた場合、毎月の元金返済額は約71,428円(3,000万円 ÷ 420回)で一定です。
参考)【簡単解説】住宅ローンの返済額計算方法&簡単シミュレーション…
これが基本です。利息部分だけが毎月減っていくため、返済回数を重ねるほど総支払いは確実に減少します。
参考)住宅ローンの計算方法は?計算式や月々の返済シミュレーションを…
返済初期と後期では支払総額がどれだけ違うか、具体的にイメージしてみましょう。
| 時期 | 元金(月) | 利息(月) | 合計返済額(月) |
|---|---|---|---|
| 初回(1回目) | 71,428円 | 25,000円 | 約96,428円 |
| 10年後(120回目) | 71,428円 | 18,000円前後 | 約89,000円前後 |
| 20年後(240回目) | 71,428円 | 11,000円前後 | 約82,000円前後 |
| 最終回 | 71,428円 | ほぼ0円 | 約71,500円 |
返済が進むにつれ利息が減る分、毎月の支払額も自然に下がっていく構造です。
参考)元利均等返済と元金均等返済 どちらの返済方法の方がお得?
元金均等返済シミュレーションで分かる元利均等返済との総返済額の差
総返済額が少なくなるのが元金均等返済の最大の魅力です。 同じ借入金額・借入利率・返済期間であれば、必ず元金均等返済のほうが総返済額は少なくなります。
参考)お得なのは「元利均等返済」と「元金均等返済」のどっち? 金利…
借入5,000万円・金利1.5%・35年の条件でシミュレーションすると、元利均等返済の総返済額は約6,956万円、元金均等返済は約6,754万円で、差は約202万円になります。 この差は約2年分の保育料に相当する金額で、家計への影響は決して小さくありません。
参考)元利均等返済と元金均等返済ではどっちがお得?違いやメリット・…
金利が低い場合はどうでしょうか? 金利1.2%・3,000万円・30年の条件では、差額は約44万円程度と縮小します。 金利水準が低いほど総返済額の差は小さくなる傾向があります。
つまり低金利局面では差が縮みますが、金利上昇局面ほど元金均等返済の節約効果が大きくなるということです。 不動産のプロとして顧客に提案する際、現在の金利水準と将来の金利変動を踏まえた説明が求められます。
参考:元利均等返済と元金均等返済の数値比較(リクルート Money Career)
元利均等返済と元金均等返済 どちらの返済方法の方がお得?|リクルート Money Career
元金均等返済シミュレーション利用時に見落としがちな住宅ローン控除の関係
住宅ローン控除(減税)の観点では、元金均等返済が必ずしも有利とは限りません。 控除額は年末のローン残高に対して一定率が適用されるため、元金が早く減る元金均等返済では、控除額も早く減少してしまいます。
これは意外ですね。 総返済額は元金均等の方が少ないのに、税制控除の面では元利均等の方が有利になる逆転現象が起きます。
参考)住宅ローン控除によって元利均等も元金均等も大した差はない|上…
具体的には、3,000万円借入・金利1.0%・住宅ローン控除率0.7%の場合、控除期間13年間の控除総額は元利均等返済の方が数十万円多くなるケースがあります。 控除を含めた「実質的な総負担」で比較することが、顧客への正確な説明には欠かせません。
| 比較項目 | 元利均等返済 | 元金均等返済 |
|---|---|---|
| 総返済額 | 多い | 少ない |
| 住宅ローン控除(13年間) | 有利(残高が多い) | 不利(残高が早く減る) |
| 実質的な差 | 控除を加味すると縮小 | 想定より節約効果が小さいことも |
住宅ローン控除が適用される期間での繰上返済も同様の理由で慎重に判断する必要があります。 控除期間が終わってから繰上返済するのが基本です。
参考:住宅ローン控除と返済方式の関係(ラビットホーム)
住宅ローン控除によって元利均等も元金均等も大した差はない|ラビットホーム
元金均等返済シミュレーションで確認すべき5年ルール・125%ルールの適用外リスク
変動金利で住宅ローンを組む場合、「5年ルール」と「125%ルール」という返済額を守るセーフティネットがあることは多くの人が知っています。 5年ルールは5年間返済額を変えない仕組み、125%ルールは見直し後の返済額を前回の125%以内に抑える仕組みです。
参考)住宅ローンの「5年ルール・125%ルール」がない銀行はある?…
しかし、元金均等返済を選んだ場合、これらのルールは原則として適用されません。 元金均等返済は利息部分が毎月変動する仕組みのため、返済額を固定してしまうと「元金均等」という原則が成り立たなくなるからです。money-career+1
これは見落としがちなリスクです。 変動金利が急上昇した場合、元利均等返済なら5年間は返済額が変わらないのに対し、元金均等返済は翌月から返済額が増加します。
参考)住宅ローン元金均等返済には5年・125%ルール適用されないっ…
例えば金利が1.0%から2.5%に上昇した場合、初回返済額が96,428円だったとすると、利息部分だけで月1万円以上跳ね上がる計算になります。 この点を顧客に事前に説明しないと、後々クレームの原因になりかねません。
参考:5年ルール・125%ルールの詳細解説(SBI新生銀行)
住宅ローン変動金利の5年ルールと125%ルールとは?|SBI新生銀行
元金均等返済シミュレーションを活かした不動産従事者向け顧客提案の実践ポイント
不動産業界では、元金均等返済を顧客に積極的に提案しない傾向があります。 初期返済額が高いために顧客の抵抗感が強く、成約に繋がりにくいという現場の事情があるからです。
参考)【住宅ローン】元金均等返済が選ばれない理由!? | 株式会社…
しかし、顧客の長期的な利益を考えれば、元金均等返済のシミュレーションを一緒に提示することは信頼構築の手段になります。 初回に返済額が高くても、繰上返済なしで200万円超の節約になるケースを具体的な数字で示すと、顧客の判断基準が変わることがあります。
参考)元利均等返済と元金均等返済の違いとは?各メリットや注意点を解…
また、元金均等返済を提案する前に確認しておくべきことが2つあります。
- 🏦 取り扱いの有無:三菱UFJ銀行・三井住友銀行・楽天銀行・みずほ銀行・住信SBIネット銀行など、元金均等返済を扱っていない主要金融機関が複数存在する
- 📊 審査基準の違い:審査時の返済負担率は初回の高い返済額で計算されるため、元金均等返済を選ぶと融資可能額が元利均等返済より低くなるケースがある
残債割れを防ぐ観点でも、元金均等返済は有効です。 物件売却が発生しやすい転勤・離婚・相続などのケースでは、ローン残債が早く減る元金均等返済の方が売却しやすい状況を作れます。これは不動産従事者が顧客に付加価値として伝えられる情報です。
結論は、顧客の収入・家計の安定度・金利見通し・売却可能性の4点を踏まえてシミュレーションを比較提示することが最適な提案です。 どちらか一方だけを勧めるのではなく、両方の数字を並べて見せることが、顧客の信頼を得る最短経路です。
参考:元金均等返済が選ばれない理由と業界の実態(FP事務所コラム)