被相続人居住用家屋等確認書とQ&A
確認書発行に確定申告期限の1ヶ月前申請では間に合わない可能性があります。
被相続人居住用家屋等確認書の発行期間と申請タイミング
被相続人居住用家屋等確認書の発行には、申請から通常7日~10日程度の期間が必要とされています。
しかし、これはあくまで標準的な期間です。
実際には市区町村によって発行期間にばらつきがあり、2週間程度かかる自治体も珍しくありません。
特に注意が必要なのは確定申告期間中の申請です。確定申告の時期である2月から3月にかけては、申請が集中するため審査に1ヶ月以上要する場合があります。これは多くの相続人が確定申告期限に合わせて駆け込みで申請するためです。
つまり標準期間の認識は危険です。
さらに、申請書類に不備や疑義が生じた場合は、追加書類の提出が必要になり、さらに日数を要することになります。書類の記載漏れがある場合や、関係機関への照会等が必要な場合も、追加の時間がかかります。
不動産業従事者として顧客にアドバイスする際は、確定申告期限の最低でも1ヶ月半前、できれば2ヶ月前には申請を済ませるよう案内することが重要です。特に複数の相続人がいる場合や、老人ホーム入所のケースなど複雑な要件の確認が必要な場合は、さらに余裕を持ったスケジュールを組む必要があります。
確定申告期限に間に合わなければ、せっかくの3,000万円特別控除(相続人3人以上の場合は2,000万円)を受けられなくなる可能性があります。
申請時期のリスクをしっかり伝えましょう。
八王子市の被相続人居住用家屋等確認書発行に関する詳細情報(発行期間の目安や確定申告期間の混雑状況について)
被相続人居住用家屋等確認書で複数相続人がいる場合の申請方法
複数の相続人が空き家特例を適用する場合、基本的には相続人ごとに個別の申請書を作成し提出する必要があります。これは各相続人がそれぞれ独立して特例の適用を受けるためです。
ただし、添付書類については効率化が可能です。多くの市区町村では、複数の相続人が同時に申請する場合に限り、被相続人の住民票除票や売買契約書のコピーなどの共通書類は1通のみの提出で済むケースがあります。
添付書類の共有が認められます。
ただし、相続人の住民票の写しについては、相続人全員分の提出が必須となります。これは各相続人が被相続人と同居していなかったことを確認するために必要な書類だからです。
実務上の注意点として、相続人が3名の場合、申請書を3セット用意する必要があります。一方で、相続人の中に特例の適用を希望しない人がいる場合は、希望する相続人のみが申請すれば問題ありません。
全員での申請は必須ではないのです。
また、令和6年1月1日以降の譲渡では、相続人の数が確認書に記載される項目として追加されました。これは相続人が3人以上の場合、特別控除額が1人あたり2,000万円に減額される改正に対応したものです。
不動産業従事者としては、相続人が複数いる案件では、早めに全員の意思を確認し、申請希望者を把握しておくことが重要です。申請のタイミングを揃えれば書類の準備も効率化できます。
大阪市の被相続人居住用家屋等確認書に関するFAQ(複数相続人の申請ルールについての詳しい説明)
被相続人居住用家屋等確認書の必要書類が揃わない場合の対処法
被相続人居住用家屋等確認書の申請では、原則として定められた書類の提出が必要です。しかし、相続から時間が経過していたり、事情により書類が入手できないケースも少なくありません。
代表的なのが住民票除票が取得できない場合です。住民票の除票は保存期間が経過すると廃棄されてしまうため、相続開始から長期間経過している場合は取得できません。この場合、戸籍の除籍謄本(死亡日の確認用)と戸籍の附票(死亡時点の住所確認用)で代替できます。
書類がなくても対応可能です。
さらに、法務局が発行する「法定相続情報証明制度」の証明書でも代替可能とされています。これは相続関係を一覧図で証明する制度で、複数の手続きで活用できるため便利です。
老人ホームの入所契約書や介護保険証については、すでに返却済みで手元にないケースがあります。入所していた施設にコピーが残っていないか確認しましょう。もし施設にも残っていない場合は、「要介護認定等決定通知書」「介護サービス計画書」「介護保険給付費通知」などでも代替可能とされています。
建物の閉鎖事項証明書が取得できない場合は、解体工事の請負契約書や工事費用の領収書など、取壊した物件の特定と取壊し日が確認できる書類で対応できます。未登記の建物では固定資産税評価証明書や固定資産土地・家屋名寄帳で建築年を証明することができます。
重要なのは、書類が揃わないからと諦めないことです。国土交通省のガイドラインでも、住民票の記載により確認できない場合であっても、代替書類、補完書類及び申請者へのヒアリング等で適用要件充足を確認できる場合は、確認書が交付されるとしています。
書類の準備で困ったときは、早めに市区町村の担当窓口に相談することです。どのような代替書類が認められるか、具体的な対応方法を教えてもらえます。
国土交通省の空き家の発生を抑制するための特例措置の詳細資料(代替書類の取扱いについての説明)
被相続人居住用家屋等確認書で相続人の住所が同一の場合の取扱い
被相続人居住用家屋等確認書の申請で意外と多いトラブルが、相続人の住民票の住所が被相続人の住所と同一になっているケースです。空き家特例の要件として「被相続人以外に居住していた人がいなかった」という条件があるため、相続人が同じ住所に住民票を置いていると、特例が適用できないと思われがちです。
しかし、住民票の住所が同一でも特例を受けられる場合があります。実際には別の場所に居住していたことを証明できればよいのです。
住民票の住所が同じでも大丈夫です。
具体的には、相続人が住民票の異動をしないまま他の住所地で居住していた場合、賃貸借契約書や郵便物などで実際の居住地を証明することで確認書が発行されます。これは単身赴任や学生の下宿など、実態として別居していたケースが該当します。
また、相続人が老人ホーム等の施設に入所していた場合も同様です。老人ホームの入所契約書で被相続人の家屋に居住していなかったことを証明できれば問題ありません。
さらに、隣接する別棟の建物に住んでいた場合も注意が必要です。住宅地図等で隣り合う建物が同一の住居表示になっていても、別の家屋であることが確認できれば大丈夫です。市区町村の担当者が住宅地図や現地調査で別の建物であることを確認します。
不動産業従事者として押さえておくべきは、住民票の住所だけで判断しないことです。実際の居住実態を証明する書類を準備するよう、顧客にアドバイスしましょう。申請前に市区町村の窓口で相談しておくことで、スムーズな申請が可能になります。
住民票の住所が同じでも諦める必要はありません。実態を証明する準備を整えて申請することが重要です。
被相続人居住用家屋等確認書における令和6年改正の影響と実務対応
令和6年(2024年)1月1日以降の譲渡から、空き家特例に重要な改正が加えられました。最も大きな変更点は、相続人が3人以上の場合、特別控除額が1人あたり2,000万円に減額されることです。
従来は相続人の人数に関わらず、1人あたり3,000万円の控除が受けられました。しかし改正後は、被相続人居住用家屋および敷地等を相続または遺贈により取得した相続人の数が3人以上の場合、1人あたりの控除額が2,000万円に制限されます。
相続人が3人以上で控除額減少します。
この改正に伴い、被相続人居住用家屋等確認書の申請様式も変更されました。令和6年1月1日以降の譲渡の場合、申請書には相続人の数を記載する項目が追加されています。市区町村は確認書に相続人の数を記載し、税務署がそれを基に控除額を判断します。
実務上の注意点として、相続人の数のカウント方法があります。これは「被相続人居住用家屋および被相続人居住用家屋の敷地等の両方を取得した相続人」の数です。家屋だけ、または土地だけを相続した人は、この人数にカウントされません。
例えば、兄弟4人が相続人で、そのうち3人が家屋と土地の両方を相続し、1人が土地のみを相続した場合、控除額の算定に使われる相続人数は3人となり、1人あたり2,000万円の控除となります。
また、令和6年改正では譲渡の柔軟化も図られました。譲渡時点では耐震基準を満たしていない、または取壊しが完了していない場合でも、譲渡日の属する年の翌年2月15日までに耐震改修または取壊しを完了すれば特例が適用されるようになりました。
これは売買実務において大きな変更です。
従来は譲渡前に耐震改修または取壊しを完了する必要がありましたが、譲渡後の対応でも認められるようになったのです。買主側で取壊しを行う契約でも、期限内に完了すれば特例が使えます。
不動産業従事者としては、この改正内容を正確に理解し、顧客に適切にアドバイスすることが求められます。特に相続人が3人以上のケースでは、控除額の減額について事前に説明しておくべきです。また、譲渡後の耐震改修・取壊しが認められることは、売買条件の交渉において有利な材料となります。