保証債務仕訳2級の基本処理と実務応用
保証人契約を結んだだけでは仕訳不要です。
保証債務とは何か基本概念の理解
保証債務とは、他者の債務について保証人として責任を負う義務のことを指します。具体的には、債務者が借入金の返済ができなくなった場合に、保証人が代わりに返済する義務を負うという契約です。
不動産業の現場では、賃貸契約における連帯保証人や、事業資金の借入における保証人など、さまざまな場面で保証債務が発生します。簿記2級で学ぶ保証債務の処理は、こうした実務の会計処理に直結する重要な論点です。
保証債務の特徴は「偶発債務」という性質にあります。偶発債務とは、現時点では債務ではないものの、一定の条件が満たされた場合に将来債務となる可能性がある債務のことです。債務者が正常に返済を続けている限り、保証人は実際に支払いをする必要がありません。
つまり、発生するかどうか不確実な債務なのです。
簿記上、保証契約を結んだ時点では実際の債務は発生していないため、通常の仕訳は不要です。しかし、将来リスクを財務諸表の利用者に伝えるため、備忘記録を残すことが実務では重要になります。
これが対照勘定法による処理です。
不動産業で特に注意が必要なのは、保証債務の金額が高額になりやすい点です。例えば、テナントの賃料保証であれば月額賃料の数ヶ月分から年単位の金額になることもあります。事業用不動産の取引では数百万円から数千万円規模の保証債務を負うケースも珍しくありません。
保証債務見返と保証債務の対照勘定法
対照勘定法とは、保証債務という偶発債務を帳簿上で記録するための特殊な処理方法です。保証契約を結んだ時点で「保証債務見返」という資産勘定と「保証債務」という負債勘定を同額で計上します。
これが基本の仕訳です。
保証契約締結時の仕訳は以下のようになります。A社の借入金50万円の保証人になった場合を見てみましょう。
📌 借方:保証債務見返 500,000円 / 貸方:保証債務 500,000円
この仕訳の意味を丁寧に解説します。借方の「保証債務見返」は、将来債務者が返済できなかった場合に自社が支払った金額を債務者に請求できる権利を表しています。一方、貸方の「保証債務」は、債務者が返済できない場合に自社が負う支払義務を表しています。
対照勘定の特徴は、必ず借方と貸方に同額が計上される点です。これにより貸借対照表上では相殺されて表示されないため、財務諸表の金額自体には影響を与えません。しかし、帳簿上には記録が残るため、どのような保証債務があるかを忘れずに管理できるのです。
つまり備忘記録ということですね。
対照勘定法の最大の目的は、財務諸表の注記情報として開示するための記録を残すことにあります。会社法や金融商品取引法では、一定規模以上の保証債務について財務諸表の注記での開示が義務付けられています。対照勘定で記録しておけば、決算時にどの保証債務を注記すべきか漏れなく把握できます。
不動産業の実務では、複数の物件で保証債務を負っているケースも多いです。そのため、保証債務ごとに補助簿を作成し、保証先・保証金額・保証期間・保証対象債務の内容などを詳細に記録しておくことが推奨されます。簿記2級の試験では補助簿までは問われませんが、実務では必須の管理方法です。
注記の義務があるため、対照勘定で記録しておくと便利です。
保証債務の肩代わり時の立替金処理方法
債務者が返済できず保証人が肩代わりする場面での仕訳は、簿記2級で最も重要な出題ポイントです。この時点で実際の債務が確定するため、対照勘定の取り消しと立替金の計上という2つの仕訳が必要になります。
具体例で見ていきましょう。A社の借入金300万円の保証人になっていた当社が、A社の返済不能により銀行から元本300万円と利息15万円の合計315万円の支払いを求められ、小切手を振り出して支払ったケースです。
📌 借方:立替金 3,150,000円 / 貸方:当座預金 3,150,000円
📌 借方:保証債務 3,000,000円 / 貸方:保証債務見返 3,000,000円
1つ目の仕訳は実際の支払いを表します。ここで重要なのは、利息15万円も含めて立替金として処理する点です。利息は本来債務者が負担すべきものであり、保証人が負担する費用ではありません。そのため、支払利息ではなく立替金に含めて債務者に請求することになります。
立替金は元本と利息の合計額です。
2つ目の仕訳は対照勘定の取り消しです。保証債務が実際の債務に変わったため、備忘記録としての対照勘定は不要になります。元本の金額300万円について、保証契約時の仕訳の逆仕訳を行います。
これで偶発債務の記録が帳簿から消えます。
試験では「立替金」「未収入金」「貸付金」のどれを使うかが問われることがあります。判断基準は問題文に列挙されている勘定科目から選ぶのが原則です。また、回収期間が短期なら立替金や未収入金、長期返済の契約を結ぶなら貸付金という使い分けもあります。
その後、A社から立替金315万円を回収した場合の仕訳は以下のようになります。
📌 借方:現金 3,150,000円 / 貸方:立替金 3,150,000円
現金で回収されたため、立替金が消滅します。銀行振込の場合は「普通預金」などの勘定科目を使います。回収時の仕訳は通常の債権回収と同じシンプルな処理です。
不動産業では、回収が困難なケースも少なくありません。その場合は貸倒引当金の設定や貸倒損失の計上が必要になりますが、これは簿記2級の別論点として学習します。保証債務自体の処理としては、ここまでの流れを押さえておけば十分です。
上記リンクでは、債務の保証に関する重要仕訳の解説と問題が掲載されており、試験対策として活用できます。
保証債務が解除された場合の仕訳処理
債務者が無事に借入金を返済し、保証人としての責任が解除される場合の処理も理解しておきましょう。これは肩代わりとは逆のパターンで、対照勘定の取り消しのみで完結します。
A社が銀行への借入金50万円を期日に全額返済し、当社の保証人としての責任がなくなった場合の仕訳は以下の通りです。
📌 借方:保証債務 500,000円 / 貸方:保証債務見返 500,000円
対照勘定の逆仕訳です。
この仕訳により、保証契約時に計上した対照勘定が完全に相殺され、帳簿から消えます。実際の金銭の動きは一切ないため、現金や預金の勘定科目は登場しません。あくまで備忘記録の取り消しという性質の仕訳です。
不動産業の実務では、賃貸借契約の終了時にこのパターンが発生します。テナントが無事に契約期間を全うし、未払い賃料などもなく退去した場合、連帯保証人としての責任も消滅するため、同様の処理を行います。
保証債務の解除時期を正確に把握することが重要です。債務者が返済を完了した時点、または保証契約が正式に解除された時点で仕訳を行います。契約書の内容によっては、債務完済後も一定期間は保証責任が継続する場合もあるため、契約条項の確認が不可欠です。
簿記2級の試験では、保証債務の解除と肩代わりを混同させる引っかけ問題が出題されることがあります。問題文をよく読み、「無事に返済された」という表現があれば解除、「返済できなかった」とあれば肩代わりと判断しましょう。
試験では問題文の表現に注意が必要です。
実務では、保証債務台帳などの補助資料に解除日と解除理由を記録しておきます。後日の監査や税務調査で保証債務の変動を説明する際に、この記録が証拠資料となります。
不動産業特有の保証債務と簿記2級の範囲
不動産業では保証債務が日常的に発生しますが、簿記2級で学ぶ範囲と実務で必要な知識には若干の違いがあります。試験対策と実務対応の両面から整理しておきましょう。
簿記2級の試験範囲に含まれるのは、借入金などの債務保証に関する基本的な処理です。保証契約時の対照勘定による備忘記録、債務の肩代わり時の立替金処理、保証解除時の対照勘定取り消しという3つのパターンが中心となります。
一方、実務では賃貸保証会社との契約、家賃債務保証、敷金・保証金の取り扱いなど、より複雑な保証関係が絡みます。特に2020年4月施行の民法改正により、個人根保証契約では極度額の設定が必須となるなど、法的な要件も厳しくなっています。
不動産業で頻出する保証の種類を整理しておきます。
• 賃貸借契約の連帯保証人:賃料・原状回復費用などの保証
• 家賃保証会社による保証:第三者機関による保証サービス
• 事業用不動産の融資保証:金融機関への債務保証
• 売買契約の履行保証:手付金や残代金支払いの保証
簿記2級では主に3つ目の融資保証のパターンが出題されます。賃貸借契約の保証については、簿記の範囲というより宅建や賃貸不動産経営管理士の範囲となります。資格試験ごとに求められる知識が異なる点を理解しておきましょう。
試験では融資保証が主な出題対象です。
不動産業の経理担当者として注意すべきは、保証債務の金額管理です。不動産取引は高額なため、保証債務も数百万円から億単位になることがあります。財務諸表の注記では、保証先ごとに保証額を総額表示することが原則とされているため、正確な記録が求められます。
また、保証債務が現実化するリスクが高まった場合には、引当金の設定も検討する必要があります。債務者の経営状態が悪化し、返済不能の可能性が高まったケースでは、保証債務履行損失引当金を計上することがあります。これは簿記2級の範囲を超える1級レベルの論点ですが、実務では重要です。
上記リンクでは、保証債務の仕訳を漫画形式でわかりやすく解説しており、初学者でも理解しやすい内容になっています。
簿記2級の学習では、基本的な3パターンの仕訳を確実にマスターすることが合格への近道です。不動産業の実務知識は、試験合格後に業務を通じて深めていけば十分でしょう。まずは試験で問われる範囲を優先的に学習することをおすすめします。

