法定相続分の計算例と相続人別の割合
法定相続分を「全員で均等に分ければいい」と思っていると、相続トラブルで損害賠償を請求されるケースがあります。
法定相続分の計算例:配偶者と子が相続人の基本パターン
法定相続分とは、民法900条が定める「相続人それぞれが遺産を受け取れる割合」のことです。遺言がない場合に適用されます。
最も多いパターンが「配偶者+子」の組み合わせです。この場合、配偶者が2分の1、子全員で残り2分の1を均等に分けます。
たとえば遺産が6,000万円で、相続人が配偶者・長男・次男の3人なら次のようになります。
| 相続人 | 法定相続分 | 取得額(遺産6,000万円の場合) |
|---|---|---|
| 配偶者 | 1/2 | 3,000万円 |
| 長男 | 1/4 | 1,500万円 |
| 次男 | 1/4 | 1,500万円 |
子が3人なら、子の取り分2分の1を3等分するため、一人あたり6分の1(約1,000万円)になります。これが基本です。
不動産業務では相続登記や売買の場面でこの計算を頻繁に使います。素早く正確に計算できるかどうかが、顧客からの信頼に直結します。
法定相続分の計算例:配偶者と直系尊属(父母・祖父母)のケース
子がおらず、被相続人の親(直系尊属)が存命の場合は、配偶者が3分の2、直系尊属が3分の1を受け取ります。
具体例で確認しましょう。遺産が9,000万円で相続人が配偶者・父・母の場合は以下の通りです。
| 相続人 | 法定相続分 | 取得額(遺産9,000万円の場合) |
|---|---|---|
| 配偶者 | 2/3 | 6,000万円 |
| 父 | 1/6 | 1,500万円 |
| 母 | 1/6 | 1,500万円 |
直系尊属が複数いれば、3分の1を人数で均等割りします。シンプルです。
注意点として、祖父母が相続人になれるのは「父母が全員すでに死亡している場合のみ」です。親が1人でも存命であれば、祖父母は相続人になれません。これは実務でも見落とされがちなポイントです。
不動産の相続登記をサポートする際は、相続関係説明図を作成して直系尊属の生死を必ず確認しましょう。戸籍を遡って確認することが大切です。
法定相続分の計算例:配偶者と兄弟姉妹の相続分と代襲相続
子もなく直系尊属も全員亡くなっている場合、兄弟姉妹が相続人となります。この場合は配偶者が4分の3、兄弟姉妹全員で4分の1です。
遺産が8,000万円で相続人が配偶者・兄・妹の3人なら以下の通りです。
| 相続人 | 法定相続分 | 取得額(遺産8,000万円の場合) |
|---|---|---|
| 配偶者 | 3/4 | 6,000万円 |
| 兄 | 1/8 | 1,000万円 |
| 妹 | 1/8 | 1,000万円 |
ここで重要なのが「代襲相続」です。兄弟姉妹がすでに亡くなっていた場合、その子(被相続人の甥・姪)が代わりに相続人となります。
ただし、子の場合と違い兄弟姉妹の代襲相続は1代限りです。甥・姪の子(大甥・大姪)は代襲相続できません。これが原則です。
不動産取引の現場では、この「1代限り」ルールを知らずに相続人調査を誤るケースが実際に起きています。甥・姪の子まで戸籍を遡らないよう注意しましょう。
法定相続分の計算例:半血兄弟と非嫡出子のケース
少し複雑なのが、父母の一方のみを同じくする「半血兄弟姉妹」が相続人に含まれるケースです。
民法900条4号ただし書きにより、半血兄弟の法定相続分は全血兄弟の2分の1と定められています。
たとえば遺産4,800万円で、配偶者なし・全血の兄・半血の妹が相続人なら次のようになります。
- 🔵 全血の兄:取得割合 2/3 → 3,200万円
- 🟡 半血の妹:取得割合 1/3 → 1,600万円
全血と半血を同率にしてしまうと、遺産分割協議が無効になる可能性があります。注意が必要です。
また、2013年の最高裁決定・民法改正以降、非嫡出子(婚外子)の法定相続分は嫡出子と同等になりました。かつては2分の1でしたが、現在は区別なし。これは見逃せない改正点です。
最高裁判所 平成25年9月4日決定(非嫡出子相続分違憲決定)
この改正を知らずに古い計算方法を使うと、依頼者への説明が誤りになります。必ず現行法で確認しましょう。
法定相続分の計算例:不動産実務で使う相続分の早見表と注意点
不動産業従事者が現場でとっさに参照できるよう、主なパターンを一覧にまとめます。
| 相続人の組み合わせ | 配偶者 | その他 |
|---|---|---|
| 配偶者+子1人 | 1/2 | 子:1/2 |
| 配偶者+子2人 | 1/2 | 各子:1/4 |
| 配偶者+子3人 | 1/2 | 各子:1/6 |
| 配偶者+父母2人 | 2/3 | 各親:1/6 |
| 配偶者+兄弟2人 | 3/4 | 各兄弟:1/8 |
| 配偶者のみ | 全部 | — |
| 子2人のみ(配偶者なし) | — | 各子:1/2 |
実務上の注意点を整理します。
- 📌 遺産分割協議書に法定相続分と異なる割合を記載することは合法。協議で自由に決められます。
- 📌 相続放棄した相続人は「最初からいなかった」扱いになり、他の相続人の取り分が増えます。
- 📌 特別受益(生前贈与など)がある場合は「みなし相続財産」に加算して計算し直す必要があります。
- 📌 寄与分がある相続人がいれば、その分を先に差し引いてから残りを法定相続分で分配します。
特別受益と寄与分の存在で、計算が大きくずれるケースは少なくありません。これは使えそうです。
不動産の相続登記では、相続人全員の法定相続分を正確に把握したうえで、登記申請書を作成する必要があります。法務局への申請前に司法書士との連携を取ることで、申請漏れや誤記を防げます。
不動産業者として相続の基本を把握しておくことは、顧客からの信頼獲得にもつながります。
法定相続分の計算は「基本パターン+例外ケース」を押さえれば対応できます。上の早見表をブックマークして、現場でぜひ活用してください。

