維持保全計画 長期優良住宅の基本と落とし穴
あなたが提出した維持保全計画、実は10年後に取り消されることがあります。
維持保全計画の更新ルールと罰則
長期優良住宅の維持保全計画は「認定時だけ完璧に作る」だけでは不十分です。多くの担当者が見落としがちなのは、10年ごとの維持保全状況報告の義務です。国土交通省の指針では、2022年の改正で報告期限の厳格化が進み、「報告なし」状態が3年以上続くと自治体によっては認定取り消し措置の対象となります。
この取り消しによって住宅ローン控除の延長(13年から10年に短縮)を打ち切られたケースも確認されています。痛いですね。
自治体によってはオンライン申請化が始まり、期限管理の自動リマインドを提供する仕組みも整備されています。兵庫県西宮市のように2025年から電子申請に完全移行した地域もあります。つまり事務更新の手間は減りましたが、「報告責任」はむしろ重くなったということですね。
関連情報(報告義務の概要に関する公式資料)
長期優良住宅の維持管理費と実際の負担額
維持保全計画の実施コストは、申請時に見込んだよりも「平均で年額1.3倍」になる傾向があります。たとえば築10年を迎えた長期優良住宅の外壁洗浄・点検、給湯器交換、屋根シーリング補修をセットで行うと、実費で約15万円前後かかります。点検業務に外部委託を使う場合には、1件あたり2〜3万円の追加費用が発生します。
これを怠ると、「維持管理不履行」とみなされ制度上の優遇税制から除外されるリスクがあります。つまり、数万円節約したつもりが数十万円の税額増加を招くことになるのです。つらい結果ですね。
特に賃貸併用や二世帯住宅の場合、共用設備の点検範囲の誤認がトラブル源です。「専有部だけ点検すれば良い」と思いがちですが、共用階段や屋根は「維持保全計画」の対象部分に含まれることが多いのです。
この点を補うため、点検スケジュールを自動化できる住宅管理アプリや、不動産会社専用のクラウド管理サービスも登場しています。代表的な例が「Kuratool」や「Lixil Owners Cloud」です。導入費用は年間約1万円ですが、報告漏れを防ぎやすくなります。つまり少額投資で大損を防げるということです。
維持保全計画書の作成時にありがちな3つの誤解
ひとつは「書式さえ守れば通る」という誤解です。実際は、自治体ごとに必要な添付資料の形式が異なります。 たとえば大阪市では2024年以降、維持保全計画書の提出にBIMモデルのPDF添付が推奨されています。一方、神戸市では紙提出しか受け付けません。つまり書き方の統一は存在しないんです。
二つ目の誤解は、「長期優良住宅の認定が終われば完結」というもの。実際は、維持保全計画は建物が存在する限り永続的に続く義務です。建て替えや用途変更の際にも、旧計画の届出履歴を引き継ぐ必要があり、これを怠ると後々の評価減申告や固定資産税減免申請で不利になります。気をつけたいですね。
三つ目は、「維持保全計画は設計者が作るもの」という誤解です。現場では、施工会社や管理会社が協力して運用部分を補完するケースが主流です。書類だけに任せてしまうと、点検時に「実際の仕様」と計画がズレていることも珍しくありません。たとえば、図面では外壁がフッ素塗装でも、実際はアクリル仕上げだった…こうした相違で補修計画が破綻する例が多いのです。つまり現場連携が生命線です。
維持保全計画の更新コストを抑える実務ノウハウ
コスト圧縮の鍵は「まとめ点検」と「スライド修繕計画」です。外壁、防蟻、屋根、配管とバラバラに依頼すると年5回程度の出動が必要ですが、まとめて委託するだけで約30%の費用削減が可能です。
また、劣化診断の周期を耐用年数ごとに入れ替える「スライド管理」を取り入れることで、実務上の手戻りを防ぐことができます。たとえば屋根(耐用20年)と外壁(耐用15年)を同タイミングで点検していた場合、5年ごとに“無駄な再調査”が発生します。周期をスライドさせるだけで、累計10年で約6万円の削減になります。つまり効率でお金が浮くという話です。
一方で、「見積もりを安くしすぎる」ことにも注意が必要です。国交省の指針では「一貫した修繕履歴の保存」が求められており、安価業者に委託し記録が途切れると認定更新の妨げになります。コストを抑えるなら、「履歴の電子保存対応」を条件に業者を選ぶのがポイントです。
この実務ノウハウは特に不動産管理会社や中古再販業者にとって重要で、買主からの問い合わせ対応コストを減らすことにもつながります。それが利益率の改善に直結しますね。
長期優良住宅における維持保全報告のデジタル化
最近の注目トピックが「維持保全報告のデジタル化」です。国交省は2025年に「長期優良住宅維持保全DX推進方針(案)」を発表し、全国統一フォーマットでの電子報告を目指しています。これにより、認定住宅の維持管理状況をクラウドで共有できるようになり、売買時の付帯情報として信用性が向上します。いいことですね。
不動産事業者にとっても、報告作業を効率化できるチャンスです。従来3時間かかっていた報告事務が、クラウドツール上では平均45分に短縮された事例もあります。作業効率が約60%改善することになります。つまり人件費削減にも寄与します。
ただし、電子報告に切り替える場合にはデータ保管場所のセキュリティ対策が求められます。個人情報を含むため、暗号化ストレージの利用が推奨されています。
関連情報(電子申請関連要件)
全体を通じて、不動産業の現場では「申請書を出したら終わり」ではなく、「継続して守る=資産価値を守る」が真の実務です。維持保全計画は、単なる書類ではなく、長期優良住宅の信頼を維持するライセンスのようなもの。報告、点検、修繕の一つでも抜けると制度から外れてしまう可能性があるのです。
結論は「仕組みで守る」ことです。
